長富 彩(ピアノ) ゆかりの地を巡り、ベートーヴェンへの想いを馳せて

インタビュー
2017.1.8
長富 彩(ピアノ) ©井村重人

長富 彩(ピアノ) ©井村重人


 デビュー以来、ヴィルトゥオーゾ・ピースを中心に録音してきた長富彩が、30歳の節目を迎え、オール・ベートーヴェン・アルバムをリリースする。

「いつか挑戦したいけれど、まだ先になると思っていました。でもチャンスが訪れたのです」

 去る9月、念願だったリストのピアノ協奏曲を弾くことになり、ハンガリー留学時代の師ジョルジュ・ナードルを久々に訪ねようと考えていたという長富。そんななか次の録音の話が持ち上がり、ベートーヴェンの優れた解釈者でもあるナードルのもと仕上げをし、ソナタを収録する挑戦を思いついた。

「いろいろなタイミングが重なって、今やるしかないと。しかも、宝くじでちょうど飛行機代くらいになる15万円が当たって(笑)」

 収録曲は、「悲愴」、30番のソナタと、「創作主題による32の変奏曲」。

「『悲愴』は昔から第2楽章に強いこだわりがあって、絶対に録音を残したいと思いました。晩年の30番も、少しでも作曲家の望みに近づこうと取り組みました。ハンガリーに行く前、久しぶりにウィーンのベートーヴェンの散歩道を訪れたところ、その風景があまりにすばらしくて。ベートーヴェンは苦しみの中、ここを歩くことで癒され、小さな幸せを感じながら曲を書いたのだと思いを馳せました。若い今の私が『30番』を記録しておくのも良いだろうと思われるかもしれませんが、私自身はそれ以上のものを目指しました」

 ナードルとは、ベートーヴェンのテンポ感などについてさまざまな意見を交わしたという。

「一番注意されたのは、リテヌートをしてはいけないということ。古典派の作品でむやみにテンポを揺らすべきでないのはもちろんですが、フレーズの終わりに自然と出るようなわずかなものについても、音色で表現できるのだから余計なことをしてはいけないと。今回レッスンを受けたことで、自信をもって録音に臨めました。やはり作品が生まれた土地の空気を吸い、尊敬する師の教えを受けることが自分には必要だと感じましたね」

 年明けと6月にはベートーヴェンを中心としたプログラムでリサイタルを行う。

「実はデビュー以来、プレッシャーから抜け出せない時期が続いたのですが、良い音楽仲間との出会いや演奏活動の広がりによって、1年ほど前にようやくふっきれました。楽譜への向き合い方も変わり、本番前の怖さがなくなったんです。オペラシティでは『テレーゼ』、コピスみよしでは『月光』など、収録曲以外のソナタにも挑戦します。最近は、音楽を創ることがとにかく楽しい。30代も、貪欲に勉強を続けていきたいと思います!」

取材・文:高坂はる香


長富 彩(ピアノ)
CDリリース記念コンサートシリーズ Aya Nagatomi Piano Recital
2017.1/22(日)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール(テレビマンユニオン03-6418-8617)、
2/5(日)15:00 コピスみよし(049-259-3211)、
6/11(日)17:00 宗次ホール(052-265-1718)、
6/17(土)19:00 ザ・シンフォニーホール(テレビマンユニオン03-6418-8617)
http://www.ayanagatomi.com/

CD
『Aya Nagatomi plays Beethoven』
テレビマンユニオン 
TVU-S-4-001
¥2778+税

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