世界の北野武、タップダンスの第一人者HIDEBOHがあの映画『座頭市』以来の顔合わせ

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2015.9.4

戦後70年!タップを通じて友情を育んだ敵国同士の兵士を描くファンタジー

この企画は、長い間公私にわたってお付き合いをさせてもらっていて、タップの師匠でもあるHIDEBOHさんありきで作ったんだよね。はじめは映画で、って考えていたんだけど、むしろ舞台向きかなって思ってさ。生で観た方が楽しめるかな、ってね。公演を楽しみにしているよ。
 
 とは、あの北野武のコメント。なんだか「海に響く軍靴」のタイトルを見ただけで、その物語を想像してキュンとしてしまったけれど、それよりもあの「世界の北野」が、(確証はないけどおそらく初めて)演劇に自身がずっと温めていた題材を提供してくれたことに、もだ。その相手は、北野監督の映画「座頭市」で大きな話題を集めた“下駄タップ”で振り付け・総合演出・出演をつとめたHIDEBOH。農民たちがそろって下駄でタップを踏む奇想天外なシーンを覚えている人も多いだろう。

 舞台の世界ではすでに注目を集めていた彼が、一躍お茶の間の知るところとなった。そんなHIDEBOHの両親もタップ・ダンサーで、特に父上は漫才師として浅草の舞台にも立っていたそう。そして舞台でタップも踏む様子を、北野監督もよく袖から見ていた時代もあった。そんなだから実はHIDEBOHが幼少のころからの出会っていたのだ。

 改めてHIDEBOHを紹介しておく。6歳でタップンダンスを始め、グレゴーリー・ハインズに出会い、その紹介でヘンリー・ルタンに師事、後に音楽性の高いリズムタップを現代音楽と融合させたオリジナルの「Funk-a-Step」を考案するなど、いわゆる従来のなごやかなショー・タップのイメージを劇的に変えてきた。昨年末には、本作の会場でもある博品館劇場で、なかなかスケジュールが合わなくて出演できなかった復活『Shoes On!』に参加し、さすがの存在感を発揮していたっけ。調べていたら、「HIDEBOH タップダンスHERO」なんてゲームにもなっているんだ(へえ〜)。

 さて北野武の原案とは? フィリピン・ルパング島に戦後約30年間も潜伏、ひとり戦争を続けていた小野田寛郎さんに着想を得て紡ぎだしたファンタジーだ。戦時中、南太平洋の孤島に漂流した日本兵とアメリカ兵。偶然出会い、本当だったら敵対すべき二人が、救助され無事帰還する日を夢見て、手を握り合い、協力して共同生活を営む。アメリカ兵は、本国では差別されてきた黒人タップダンサー。日本兵もアメリカ文化が好きだったため、少尉までにしか昇進できなかった。歌い、踊り、そしてアメリカ兵は日本兵にタップダンスを教える日々を過ごすうちに終戦を迎える。しかし晴れて本国に帰っていくアメリカ兵に対し、共に新たな人生を歩もうと誘われたにもかかわらず島に残る日本兵。別れ別れになった二人。ところが時を経て、ある新聞記事をきっかけに若き日を過ごした島で再び邂逅を果たすーー。

 アメリカ兵役には、本場ブロードウェイで“アーバン・タップ”という新しいカテゴリーを生み、進化させているTamangoを迎える。島で生存する日本兵の記事を書き、狂言回しも務めるアメリカの女性記者役に島田歌穂。

 戦後70年、いろいろと戦争を振り返る機会は多いけれど、エンターテインメントにこそ世界をつなぐ力があるんだ、そんなふうに思える作品になったらいいなあ。さまざまなタップダンスの名作を生み出してきた博品館劇場に、また一つ伝説が生まれるか! 、9月5日(土)発売!
                     
イベント情報
「海に響く軍靴 FOOTSTEPS IN THE PACIFIC

日時:2015年10月30日(金)~11月15日(日)
会場:博品館劇場 
原案:北野武 脚本・演出:髙平哲郎 音楽:島 健 振付:HIDEBOH
出演:HIDEBOH Tamango 島田歌穂
公式サイト:http://www.theater.hakuhinkan.co.jp/pr_2015_10_30.html

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