東京アンティーク散歩vol.4 代官山にある“宝物でいっぱいのトランク” ヴィンテージショップ『CARBOOTS』
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代官山CARBOOTS
東京近郊にある、上質なアンティークショップを巡っていく連載『東京アンティーク散歩』。今回は、代官山にあるヴィンテージショップ『CARBOOTS』をご紹介する。
渋谷の裏側から恵比寿にかけて網の目のように広がるファッションの街、代官山。
大使館、ヒルサイドテラス、蔦屋書店が並ぶ高級感ただよう大通りから入ると、細い路地にはブティック、カフェ、雑貨店、美容院など個性的な路面店が軒を連ねる。どの店もおしゃれだが気取らない商店街の雰囲気をただよわせており、ぶらりと入りたくなる。
そんな代官山にヨーロッパの古着やアンティークを扱う老舗がある。ファッションが好きな人なら、“ぶらり”どころか入らずにはいられない、ヴィンテージショップ『CARBOOTS(カーブーツ)』である。
『CARBOOTS』エントランス
手頃なヨーロッパのヴィンテージファッション
代官山駅近く、住宅が並ぶ静かな通りに店はある。思わず「こんな場所にこんな店が?」と掘り出しものを発見したような気分になるだろう。店の扉をひらくと、外から見た感じよりも店内が広いことに驚く。洋服、アクセサリー、バッグ、靴、スカーフ、雑貨、手芸素材……ありとあらゆるヴィンテージのファッションアイテムが揃っている。女性ものだけでなく、男性ものもカバー。量、種類ともに豊富で、価格もリーズナブルに設定されている。イヴ・サンローランやシャネルなど、ハイブランドの服や雑貨もお手頃なのが嬉しい。
奥行きのある店内にはヴィンテージアイテムが勢ぞろい
レディース・メンズ両方のファッションアイテムが揃っている
バッグは種類が多く状態がいい
「全部見ようとしたら夢中になってお店から出られない!」と冗談まじりに店主の岩本氏に言うと、「お客さんの中には服だけ集中して見る方や、アクセサリーだけじっくり見る方もいますよ」とのこと。それだけ商品が豊富ということなのだ。アンティークのボタンやレースなどの手芸素材も充実しており、代官山に通うファッションクリエイターに人気だそう。お客様の年齢も20代から70代までと幅広い。つまり『CARBOOTS』は、“オールマイティーなヴィンテージファッション店”なのである。
ファッションクリエイターに人気のアンティーク素材。リボンのほかボタンや布も扱っており量が多い
カラフルなハイブランドのスカーフが目を引く
トランクいっぱいのロンドンカルチャー
店名の「CARBOOTS」とはイギリス英語で“車のトランク”という意味。何が出てくるかわからない、宝箱のような車のトランクをショップコンセプトにしている。
イニシャルのピンは小物に付けて楽しむアイテム
そして岩本氏は、まさにその“宝箱のような車のトランク”をロンドンで体験した人だ。
「店を始める前にイギリスを行き来して、アンティークを仕入れては東京の骨董市などで販売していました。あの時期は、最高に楽しかった! ロンドンの友達夫婦の車に乗せてもらって朝早くからあちこちガレージセールや蚤の市をまわって。友達は音楽関係の人だったからレコード探し、私はアンティーク探し。現地についたら解散して、それぞれ好きなものを探しに行くのです」と岩本氏は目を輝かせながら語る。行きは空っぽの車のトランクが、帰りには宝物でいっぱい! 聞いているだけで楽しさが伝わってくる。
学生時代、岩本さんは音楽とファッションに夢中だった。特に好きだったのはイギリスのロックカルチャーだ。その昔、イギリスの若者達は古着をファッションに取り入れ、自分達のスタイルを作りだしたという。スウィンギングロンドン、パンクなど、若者が新しい感覚で生み出したストリートカルチャーに影響された岩本氏は、高校時代から古着を楽しみ、着なくなった服や小物を代々木公園のフリーマーケットで売っていた。そんな方が店主を務めるのが、この『CARBOOTS』なのである。
良いものを大切に着て、おしゃれの眼を養う
珍しいBIBAのヴィンテージドレス。アールデコ柄だがテクノも感じさせる
「ちょうど珍しい服が入ってるので、良かったら」と岩本氏が柔らかな口調で持ってきてくれたのは、BIBAのワンピースだ。ベビーピンクのやわらかい素材にアールデコ調の柄が白くプリントされている。ギャザーがロマンチックだが、襟や柄がモダンな雰囲気を醸し出す。店内では、このフェミニンなワンピースに大ぶりで無機質なチョーカーを組み合わせて展示し、やわらかさの中にきりっと迫力が加わるスタイリングを提案していた。長い間ヴィンテージファッションを扱っているだけに、センスは抜群。岩本氏に相談すれば、自分では思いつかないようなスタイリングを提案してくれるに違いない。
近年はファストファッションが流行している。安い服を大量生産するために、生産国で縫製工場の大事故が起こったり、低賃金労働者の苦境もニュースになっている。さまざまな問題をはらむ低価格な洋服に対し、ヴィンテージをおしゃれに取り入れることについて岩本氏に聞いてみた。
「私はいいものを長く大切に着てほしいんです。直しては着て、直しては着て、という風に。昔の人はこころをこめてお洋服を作っています。一概には言えませんが、同じハイブランドでも昔のほうが布地、素材、縫製、ぜんぶ丁寧なんです。手のかけかたが違う。古着と関わっていると、粗雑な服が逆にきわだって見えてくるんです。ヴィンテージを着ることで見る目を養いながらおしゃれを楽しんでほしいなと思います」
その言葉通り、店内の古着や小物たちはどこか誇らしげだ。古くても良さを認められ大切にされているからだろう。代官山カーブーツの空間にはヴィンテージファッションの温かさがただよっている。今日も時を超えて愛されてきたファッションアイテム達が輝きを放ちながら、次のご主人様を待ち構えている。
CARBOOTS Instagram:https://www.instagram.com/carboots_/