『THE CONVOY SHOW』20代新メンバー、荒田至法、後藤健流、佐久間雄生、本田礼生の4名がフレッシュな風を吹き込む!『asiapan(アジァパン)』公開稽古レポート
集合写真
『THE CONVOY SHOW』は、作・構成・演出の今村ねずみを主宰に、1986年に結成された結成30年を超える歴史あるカンパニーだ。歌、ダンス、タップ、芝居を織り交ぜたノンストップ・エンターテインメントショウを、数百人規模の劇場から、果ては1万人を超える武道館まで繰り広げてきた。今回は、円熟期を迎えてもさらに活動の場を広げ続ける瀬下尚人、石坂勇、舘形比呂一、黒須洋壬、トクナガクニハル、50代の名ダンサーたち、そして還暦を迎える今村ねずみ6人に、熱いエネルギーをカンパニーに注ぎ込むフレッシュな20代の4名の10名体制。そして「全員が主役、全員が脇役」を合言葉に、コンボイDNAを未来の若手に継承しようとする今村ねずみの決意宣言ととれる「ザ・コンボイショウ 『asiapan(アジァパン)』」が、2月25日(土)の東京・赤坂ACTシアターを皮切りに、3月14日(火)の福岡・ももちパレスまで全13公演、日本全国を縦横無尽に駆け抜ける。今回は、本番を約10日後に控えた公開練習に立ち会うことができた。
今村ねずみの「さあ、行くか」とメンバーの背中を叩き鼓舞しながら発した掛け声に、稽古場で座って談笑していた4人の新メンバー、荒田至法、後藤健流、佐久間雄生、本田礼生が顔をキリッと立ち上がれば、そこには50代の錚々たるメンバーに慣れようと必死な姿や、おどおどした立ち振る舞いは一切ない。
稽古風景
約500人ものプロ・アマ問わずのオーディションを勝ち抜いた自信と、これまでの激しい稽古が彼らの表情を物語っていた。
10人が並び、荘厳なシンセ、そして激しい四分打ちキックのダンスミュージックがかかる。すでに幾多の練習で積み上げてきた統制されたダンス。動きは加速し、汗が飛び始めれば、激しい呼吸音が稽古場に入り乱れる。少しでも間が狂えば、音楽をストップさせて、メンバー全員で話し合う。そこには50代も20代も関係ない。今村ねずみの言う「全員が主役で脇役」の合言葉通りのコンボイ魂が根付いている。
稽古風景
フレッシュなメンバーのダンスが目をみはる。荒田至法のクールなダンス、後藤健流の激しくオリジナリティに溢れたダンス、佐久間雄生の完成されたダンス、本田礼生のアクロバティックなダンスは見ていて飽きない。そこに50代、そして還暦を迎える今村ねずみの名ダンサーたちの見事でしなやかなダンスが絡み合えば、見たことのないコンテンポラリーダンスが稽古場で爆発する。
本田礼生
「これ新作ね」と取材陣に向いて少しはにかみながら笑っていた今村ねずみ。どんなダンスかは見てからのお楽しみ。初見の筆者も圧倒されたので、何回も足を運んだリピーターでも文句のつけようのないかっこよさ間違いなし。これが赤坂ACTシアターの約1500人もの観客を驚かせるのだと思うと胸が勝手にワクワクする。たった10人の、何も言わずに手と足と体の動きだけのダンスが1500人の胸ぐらを掴んで離さなくなる圧倒的なカタルシスがある。
荒田至法
途中、踊っていた本田礼生の靴のゴム裏が剥がれて取れてしまうというハプニングがあり、「大丈夫です」と本田が声をはると、「ダメダメ、怪我するから、そういうところはしっかりしないと」と今村ねずみがはっきりと答える。そこには今村ねずみの『THE CONVOY SHOW』に必要なことをまるで子供を慈しむように諭す優しさがあった。
後藤健流
佐久間雄生
すると、スッと黒須洋壬が本田のそばにやってきて替えの靴を渡す。
壊れた靴を履き替える本田礼生
本田が「借りていいんですか」と話すと、「あげる」と何気なく答える黒須。「いいんだよ、先輩が言うんだからもらっちゃいなよ」と今村ねずみが笑って言えば、場が一気に和む。ここにはれっきとしたチーム力で形成されたカンパニーが存在していた。
2曲めに披露されたのは、和風のダンスミュージック。どこか和テイストなカクッとした踊りを、瀬下尚人、石坂勇、舘形比呂一、黒須洋壬、トクナガクニハルの50代メンバーがまるでお手本を見せるかのように引っ張る。それに負けじと4人のメンバーも必死について答える。確かに、チーム力で支えられたカンパニーだけれど、ちょっとしたライバル心があるからこそ、互いを高めてこられたのだろうと思わせられた。
稽古風景
「じゃあ、次はタップね」と今村が言うと、みながタップシューズに履き替える。新メンバーの後藤健流は2015年の『キャプテン・ハーロック』では振付を担当しただけあって、オリジナリティのあふれた凄まじいタッピングを披露した。彼のタッピングに50代のメンバーから「イエー!」の歓声が上がる。この曲はどこかジャジーなダンスナンバーで、それぞれのクールなソロが決め手になっている。荒田至法のクールネスはますます熱を帯始め、佐久間雄生のタッピングには隙がない。本田礼生がアクロバティックに空中で回転を決めれば、この曲では彼らが主役だと思わせる。そこには今村ねずみの巧みに練られた構成があるのだ。
稽古風景
稽古風景
稽古風景
今回演奏された曲が、どの場所で、どの順序なのかはわからないけれど、おそらく今村ねずみの頭の中には、「全員が主役、全員が脇役」になれる結成30年を超えて初めて描ける新たなエンターテインメントショーを表現できる喜びにあふれているのだろう。
稽古風景
稽古風景
ひとときの休憩の後、今度は芝居のパートへ。ストーリーは、「アジアが題材で、遺跡群に囲まれたとある町のゲストハウスに日本人の旅行者や旅人が偶然集まって、それぞれの話が出てくるシュチエーション」と今村ねずみがSPICEのインタビューでも語っていた通り(参考記事ページ)、幼馴染の日本人旅行客2人がゲストハウス「sweet home SAKURA」にやってくるところから物語が始まる。とある某有名ダンスミュージック(聞いてみてのお楽しみ)をバックに一同が踊りだせば、そこには南国のパラダイスが広がっているような印象を受ける。
稽古風景
「(アジアに行って現地の)彼らに教わったのは、本当に前向きに生きること。家族を大事にとかシンプルなことだった。改めて日本人で良かったな、日の丸も良いなと思いましたよ。なんかそんな思いが入った作品ですね」とインタビューで語っていたように、“日本人とは?”、“日本人でいることとは?”という根源的な問いがテーマになっているので、これからどういった舞台になっていくのか興味を覚えた。
稽古風景
個人的には、幼馴染役の舘形比呂一の肩にかけていたショルダーバッグが「シドヴィシャスとナンシー・スパンゲン」の顔をプリントしたバッグでなんとなくツボにはまってしまった。実際に舞台でこのアイテムがどう作用していくのか。楽しみである。
稽古風景
稽古場取材後に、主催の今村ねずみにインタビューすることができた。改めてこの舞台にかける意気込みを聞けたことで、この舞台がますます楽しみになったわけである。
稽古風景
■今村ねずみインタビュー
――若いメンバーとの融合はいかがですか。
本当に刺激的です。30年近く固定のメンバーでやってきましたから、フレッシュさが違いますね。僕らがコンボイを始めた頃の世代なので、いろんなことを思い出しますよ。肉体的には負けているところはありますが、そんなのはどうだっていいやっていう感じになります。彼らのおかげでコンボイ魂を思い出すんですよ。
――若手に期待するところは。
めいいっぱい楽しんでいただきたい。そして、年長組と一緒になって舞台を駆け抜けほしいですね。最終的には、彼らが僕たちのコンボイショウを引き継いで、彼らなりのコンボイを作ってくれたら嬉しいかな。彼らも僕らの稽古場のDNAを体感してみて、他にはない現場ですと言っているので、これを糧にして新しいコンボイを未来に繋いでほしい。
若いですから思い切りの良さがありますし、もし彼らが自分の子供だったら、稽古場でどんな話をしたらいいのか想像しながら指導もします。だから、彼らは少なからずおじさんたちの中に入っても新鮮味を感じているでしょうね。ただ、ずっとやってきたメンバーと分け隔てなく、同じポジションで踊っていますし、普通なら下がれというところですけれど、上がってきたりもするので頼もしいですね。出会ってよかったな。
――本舞台の見どころを教えてください。
もちろんこれまでのコンボイをまっとうしようと思っていますが、今までにないコンボイになると思います。それでもこだわったのは、10人になっても、「全員が主役で全員が脇役」をやるという今までのコンボイのスタイルは貫くということです。唯一無二のザ・コンボイショウをお見せしたいと思います。
――SPICEの読者にひとことお願いします。
1回騙されたと思って来てください。50代と20代の世代の違う真剣なぶつかり合いはどんな舞台にもないですから。何より、僕たちオリジナルのエンターテインメントが詰め込まれたショウになっています。自分たちのスタイルは、他にはないスタイルなので、一度体験していただけたらうれしいですね。だからこう言えますね。答えは舞台にあります。絶対に損はさせませんよ(笑)。
集合写真
(取材・文・撮影:竹下力)
★関連記事:新生ザ・コンボイショウ『アジァパン』全国5都市で今春上演! 今村ねずみにインタビュー
<東京公演>
2017年2月25日(土)〜3月1日(水)
会場:TBS 赤坂ACTシアター
<札幌公演>
2017年3月5日(日)
会場:札幌市教育文化会館 大ホール
<愛知公演>
2017年3月8日(水)〜9日(木)
会場:東海市芸術劇場
<大阪公演>
2017年3月11日(土)〜12日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
<福岡公演>
2017年3月14日(火)
会場:ももちパレス
■作・構成・演出:今村ねずみ