WEBぶらあぼ特別インタビュー〜下野竜也(指揮)
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下野竜也 写真:大塚正昭
読売日本交響楽団首席客演指揮者の下野竜也が今年3月の一連の公演を最後に読響を離れる。
下野は2006年から13年まで読響の正指揮者を務め、13年から首席客演指揮者のポストにあった。
「2006年にスクロヴァチェフスキ先生が常任指揮者になられたときに、先生はご高齢なのでこれまでの常任指揮者のように頻繁に来日できない、ということで、そのアシストとして私が正指揮者をさせていただくことになりました。読響のシーズンのなかで、スクロヴァチェフスキ先生があまり取り上げられない、そしてアルブレヒトさんからの流れを継ぐ近現代作品や珍しいレパートリーを主に演奏する、というのが私の役割となりました。その後、13年に名称を首席客演指揮者にしていただきました」
実際、下野は読響とともに、「下野プロデュース・ヒンデミット・プログラム」というシリーズを手掛け、ヒンデミットの管弦楽のための協奏曲(日本初演)や「前庭に最後のライラックが咲いたとき 〜愛する人々へのレクイエム」などの珍しい作品を取り上げた。また、ドヴォルザークの全交響曲の演奏も行った。
11年間にわたる読響との関係に一つの区切りをつける3月公演の1つめのプログラム(大阪、鳥取、福岡、鹿児島)では、ブルックナーの交響曲第7番をメインに据える。
「正指揮者としての最後の演奏会で『一番好きな交響曲を指揮させてください』ということでブルックナーの交響曲第5番を演奏しました。読響とはこれまでブルックナーの交響曲は第4、5、9番をやりましたので、今回は第7番を取り上げることにしました。
学生時代の話ですが、私が最初に演奏で関わったブルックナーが第7番でした。鹿児島大学のオーケストラでトランペットを吹いたのです。そのときは堤俊作先生のアシスタントで指揮もしました。ブルックナーの第7番は、最初、第2楽章に惹かれましたね。深淵なワーグナー・チューバの響きに魅了されたんです。そしてその箇所がワーグナーが亡くなったことに触れ書かれたというエピソードを知って、音楽の聴き方が変わりました。流麗で旋律美にあふれた作品。崇高で官能さえ感じます」
下野竜也 写真:大塚正昭
首席客演指揮者としての最後のプログラム(東京、横浜)は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」で締め括る。
「読響の正指揮者になって初めての名曲シリーズで取り上げたのが『新世界』でした。読響とは、ドヴォルザークでスタートし、ドヴォルザーク・シリーズにも取り組みました。そしてこのたび、読響を離れるにあたって、もう一度、ドヴォルザーク。それも最初に取り上げた『新世界』を最後にもう一度演奏することで、読響へのお礼と応援してくださったお客様へのご挨拶としたいと思っています。
もちろんメロディの美しさが魅力的ですが、親しみやすさだけでなく、メロディ・メーカーとしての冴えも聴くことができます。一番好きな4楽章でそれまでの楽章のいろいろなことを回想していくところですね。何度指揮しても感動します。いわば、巨大なアーチ型の建造物。ブルックナーの交響曲第8番と同じ匂いを感じます。ウィーン留学時代に、マゼール&ウィーン・フィルで『新世界』を聴いたのですが、最後のフェードアウトがあまりにも美しく、『これが(タイトルにある)“From(から)”なんだ』と気づきました。でも一番最後に和音をきれいにディミヌエンドしていくのはとても難しいのです」
下野は読響との時代をこう振り返る。
「読響は、自分にとっては、“大きなオーケストラ”でした。若い指揮者が来ても、その新しいアイディアを受け入れてくれる度量の大きさがありました。そしてポジティヴ・シンキング。30代からもうすぐ50歳となる今日まで、勉強させていただいたオーケストラ。読響と過ごした時間は自分にとってとても重要でした。本当に感謝しています」
取材・文:山田治生 写真:大塚正昭
●第16回大阪定期演奏会
3月9日(木)19:00 フェスティバルホール
●鳥取特別演奏会《勝利のブルックナー》
3月10日(金)19:00 とりぎん文化会館 梨花ホール
●読響名曲シリーズ 福岡公演
3月11日(土)18:00 アクロス福岡シンフォニーホール
●鹿児島特別演奏会
3月12日(日)15:30 鹿児島市民文化ホール
曲目:
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
(ヴァイオリン:アレクサンドラ・スム)
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
●第195回土曜マチネーシリーズ
3月18日(土)14:00 東京芸術劇場
●第195回日曜マチネーシリーズ
3月19日(日)14:00 東京芸術劇場
●第94回みなとみらいホリデー名曲シリーズ
3月20日(月・祝)14:00 横浜みなとみらいホール
曲目:
パッヘルベル:カノン
フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲第1番
(ヴァイオリン:三浦文彰)
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界から」
問合せ:読売日本交響楽団
0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/
※鹿児島公演のみ、鹿児島市民文化ホール
099-257-8111
http://www.k-kb.or.jp/shibun/