東京アンティーク散歩vol.5 代々木上原にある”情熱のモダンデザイン”アンティークショップ『グラフィオ/ビューロスタイル』

2017.2.13
レポート
アート

代々木上原・航研通りのグラフィオ/ビューロスタイル ヤンケル・ギンズバーグのルーサイト彫刻。珍しいモノに出会える店だ。

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東京近郊にある、上質なアンティークショップを巡っていく連載『東京アンティーク散歩』。今回は、代々木上原にあるアンティークショップ『グラフィオ/ビューロスタイル』をご紹介する。


 

駒場東大の文教地区にテイストを添える店

代々木上原・航研通りのグラフィオ/ビューロスタイル 外観

航研通り、別名「コスモス通り」という道をご存知だろうか。駒場東大キャンパスの裏、渋谷と目黒、世田谷の境界を抜ける道である。航研通りという名称は60年代まで道沿いに東大航空研究所があったためだ。

その後、1980年代までは東大宇宙航空研究所となり、コスモス(宇宙)通りとも呼ばれている。現在、航研通りにはモダンな建築や、ギャラリー、セレクトショップ、カフェなどが並び、文教地区とマッチした町並みを形成している。

通り沿いの東大正門前の風景は特に美しく、緑豊かなエントランスの奥に昭和初期建築の格調高い姿が見える。その正門の斜め向かい、渋谷方向に歩いていくと洒落たモダンデザイン家具が並ぶ店がある。ここが今日ご紹介するグラフィオ/ビューロスタイルである。

 

デザインプロダクト・ヴィンテージをいち早く扱う

天井の高い店内には絵画、家具、工芸品、雑貨などが整然と展示されている。扱われているのは20世紀後半のデザインプロダクトが中心だ。アート作品から数千円の雑貨まで商品はさまざま。他の店では見ることのできない珍しい品が多く、ひとつひとつ確かな審美眼で選ばれているのが分かる。その量とセレクトの良さは圧巻だ。

グラフィオ/ビューロスタイルは1999年に中目黒でデザインプロダクトを扱う店「グラフィオ」として開店した。2002年には同エリアにビジュアル古書を扱う姉妹店「ビューロスタイル」を開店。今でこそ似たような店は多いが、当時は2店とも珍しい形態だった。店主の村井氏に中目黒開店当時について聞いてみた。

「グラフィオを開いたときは、お店に来られた多くの方が目を輝かせてじっくりお店の中を見回してね。こんなのがほしかった、こんな店があったんだ!って喜んでくれました。それなりに衝撃的だったようです。というのも、当時はこうしたデザインを切り口に古物を扱う店は数えるほどしか無かった。ビューロスタイルもアートやデザインに特化した古書や雑貨を”クリエイティブなヴィンテージアイテム”として扱ったことで、デザイン関係者から一般のお客様まで幅広くご利用いただきました」

好評を得てスタートした中目黒エリアでの営業だが、十数年が経過し街の雰囲気がメジャー化し、それに伴い客層も変化した。そして2013年、大人っぽく落ち着いた空気を求めてここ代々木上原の航研通りに移転した。

 

20世紀が産んだ情熱と格好良さの集積

村井氏の前職は広告マーケティング関連の仕事である。学生時代はグラフィックアートに憧れてグラフィックデザインを勉強した。広告や企画の業務をこなすうち「店として自分自身を表現したい」という思いに駆られ退職。商材と業態を模索しているうちアンティークという入り口にたどりつき、昔から好きだった20世紀のモダンデザインを扱うことになる。しかし当時は前例の少ない商品カテゴリーだった。何もかも手探りでいろんな人に会い、多くのモノを見て知識を積み重ね、独自の手法でモダンデザインを凝縮した店へと成長させた。

村井氏に20世紀のデザインプロダクトの魅力について聞いてみた。

「20世紀はマスプロダクトとして商品が大量生産された時代でした。特に大戦後の1950年代以降、世界中で豊かな暮らしを彩る商品がすごい勢いで生み出されました。アーチストもデザイナーも周囲に追いつけ追い越せと必死になって背伸びしながら創作していた。時には手をかけすぎてコストを度外視したり……。当時のモノには、クリエイター達の創意工夫と切磋琢磨、夢や希望など、作り手の熱意がこもっている。僕自身この時代のプロダクトの創造性に強く惹かれ、そういうモノたちへ情熱を持ち続けた。その集積がこの店なんです」

20世紀後半のデザインプロダクトは、スタイリッシュで贅沢な見た目とは裏腹に泥臭い情熱の産物なのだ。「昔はネットがなかったし、おしゃれするにも必死だった。ファッションや音楽、趣味のためには足を使って探し時間やお金を費やしましたよ。その分、独自の感性を身につけられて満足も大きかった。ネット時代の今も……いや今だからこそ情熱もって能動的でないと、刺激的なものには出会えないし何も残らないよね」さらりと言う村井氏の言葉にハッとさせられる。

コンピューターの基盤をイメージした珍しい照明。

 

流行や売れ筋を追わない独自のセレクト

大きめのトゲトゲの箱。かなりのインパクト。

グラフィオ/ビューロスタイルの店内には「これはなに?」と思うようなものがあちこちにある。トゲトゲの大きな金属の箱、モンドリアン絵画のようなキャビネットなど驚くような品が眼を引く。個人的に面白さを感じたのは、図形が印刷されたアクリル柱のヤーコブ・アガムの作品だ。「ランデヴー」というタイトルがしゃれている。組み合わせによって図形パターンが変わる珍しいアートピースだ。

ヤーコブ・アガムの作品「ランデヴー」 置く位置によって図形が絶妙に変化する。

村井氏は言う。「未知のもの、驚きのあるものに出会えたときがとても楽しい。流行や売れ筋を追わず、独自のセレクトをお客様に提案するのがヴィンテージショップ本来の魅力です」

グラフィオ/ビューロスタイルに行けば、独特の個性と出会うことができる。情熱的なデザインプロダクト、媚びない格好良さをここで発見してほしい。

 

店舗情報
Graphio/büro-stil グラフィオ/ビューロスタイル

住所:東京都渋谷区上原2-32-7
渋谷ウェストレックス1F
TEL:03-5738-2107
E-Mail:info@graphio-buro.com
営業時間:12:00~21:00
定休日:火曜
http://www.graphio-buro.com/
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