『熱海殺人事件 NEW GENERATION』開幕、味方良介&文音インタビュー
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(左から)文音、味方良介
2月18日、新宿・紀伊國屋ホールにて、故・つかこうへいの代表作『熱海殺人事件』が、新たな世代のキャストで開幕した(演出は岡村俊一、公演は3月6日まで)。
刑事部長の木村伝兵衛を演じるのは、味方良介。この大役を、24歳という若さで務める。ヒロインの婦人警官、木村伝兵衛と男女の仲である水野朋子役を務めるのは、文音。文音は、映画版『熱海殺人事件』(1986年公開)で同じく水野を演じた女優・志穂美悦子を母にもつ。開幕前日の公開リハーサルを終えた2人が、紀伊國屋ホールにてインタビューに答えてくれた。
『熱海殺人事件 NEW GENERATION』公開リハーサル
自分なりの木村伝兵衛、自分たちの『熱海殺人事件』
--初めに、木村伝兵衛について伺います。役作りで苦労された点はありますか?
味方良介(以下、味方) 35歳に見えないといけない、という点はすごく考えましたね。ずっしりとしていないといけませんし、自分より体の大きい熊田(演じる多和田秀弥さんは、身長185㎝)と対峙して「木村伝兵衛ですよ、私は!!」と、みせつけていかないといけない。それでまずは、大きい声を出そうと思いました!(一同、笑) アクセルを踏み続けていこう。誰かがへこたれそうになっても、俺はアクセルを踏んでいくよ。踏み続けていくよ、と。そこで勝負した部分はありますね。
『熱海殺人事件 NEW GENERATION』公開リハーサル
--実際、最後まであれだけの長台詞でも、澱みなく、余裕があるかのように演じておられましたね。木村伝兵衛は非常にクセの強い人物ですが、ご自身と重なるところはありますか?
味方 後半の「この人のために、何か、どうにかしてあげよう」という姿勢です。映画『パピヨン』のテーマが流れるシーンは、その優しさをまっすぐ台詞にするところなので、自分に近いものを感じます。
味方良介
文音 味方さんは、優しさをそぎ落とす作業も大変じゃありませんでしたか? 味方さんは根が優しくて、もともとの気質が、ものすごく面倒見のいい方なんです。人の面倒を見てあげたいほうですよね?
味方 そう、もっと言っていい! もっと俺を持ち上げていい!
文音 木村伝兵衛になるために、その優しさを削らないといけないのは大変なんじゃないかなと思いました。
(左から)文音、味方良介
味方:演出の岡村俊一さんにも言われたことなんですが「優しい。それはいい。その優しさをどう武器にするかだ」と。明日初日の幕が上がります。第一段階としてその準備はできています。次の段階として、優しさをどう武器にしていくかを考えつづけていくことで、自分なりの木村伝兵衛、自分たちの『熱海殺人事件』が出来ていくんだろうなと思っています。
ふたりの10年に少しでも近づくように
--文音さんは、水野朋子に共感できる部分はありますか?
文音 一人の人をずっと思い続ける、一途なところですね。共感を得やすいのかなと思います。
文音
--水野朋子を演じる上で、特に意識されていることを伺えますか?
文音 水野にとっての最優先事項は、いつでも『部長、木村伝兵衛を立てること』だと考えています。だから、常に部長をサポートしよう、常に部長の後ろを歩いて物事を進行しようと、気をつけてきました。それから、木村伝兵衛と水野朋子は、10年間という長い時間を捜査室で共に過ごした仲です。それを少しでもキャッチアップできたらいいなと思い、稽古場でも稽古の後でも、伝兵衛(味方さん)と密に話し合ってきました。
味方 作中、二人の関係を描いている部分は意外と少ないんです。木村伝兵衛も自分自身のことはあまり話さず内にためていく人です。それを感じとってサポートしてくれる水野を、綿密に作っていくのは大事な過程だったと思っています。
あの名台詞までの2分が勝負
味方良介
--稽古中、演出の岡村俊一さんからはどのようなリクエストがありましたか?
味方 「お前は堂々としていていい。真ん中で構えていればいい。お前がやることは何でも正解なんだから、お前は木村伝兵衛なんだぞ」と言われました。特にオープニングですね。あの演出でガーンと出てスモークがドーンてきて《私ですが?》という台詞までは大丈夫なんです。勝負はそこからの2分です。《チャイコフスキーはお好きですか?》の台詞で勝負が決まるので「この2分に賭けろよ!」と言われています。
文音 水野が登場してからは堂々とできるんですよね?
味方 そうそうそうそう! 水野が出てくると「ああ、これでもう大丈夫だ」って安心する(笑)。
(左から)文音、味方良介
--味方さんからご覧になった、水野朋子の見どころといえる場面を教えてください。
味方 伝兵衛が舞台上にいない、熊田と大山と水野3人だけのシーンですね。中でも、伝兵衛がJALの格好で出てくる直前です。フレッシュな二人(多和田秀弥演じる熊田と、黒羽麻璃央演じる大山 )を相手に、「木村部長がいないこの場を仕切るのは、私ですよね?」とずっしりしていられるところは、文音ちゃんだから出せるものだと思います。
『熱海殺人事件 NEW GENERATION』公開リハーサル
--それは水野の魅力であり、文音さんの魅力でもありますね。
味方 文音ちゃんは物怖じしないよね? 堂々としていて、でもその中にかわいらしさもあって、たとえば不安な時は不安が顔に出ちゃうようなタイプなんですよ。稽古中も、私ここ不安です!って言わなくても分かります。
--見られていますね。
文音 私が、分かりやすいだけなんです……(苦笑)。
味方 言わなくても顔に出ちゃう、嘘をつけない、いい人なんです。
--文音さんからご覧になって、味方さん演じる伝兵衛の見どころは?
文音 伝兵衛は、見どころがいっぱいありますからね。初めのシーンも、クライマックスも凄いし…、(少し考えてから)口では滅茶苦茶なことをいっているけれど、裏に隠された言葉の理由とか意味が無茶苦茶優しいんです。水野が伝兵衛に惚れた理由も、尊敬している部分もそこだと思っています。伝兵衛は、本当はシャイで不器用で空回りしていて、仕事はキレるけれど女関係は本当にダメなんだなあって。それを隠すために、あんなこと※を言ったりするんじゃないかなと思っています。初見ではわかりにくいかもしれませんが、伝兵衛のそういうところは見どころですね。
※伝兵衛のツンデレぶり、空回りぶりは、ぜひ劇場でお楽しみください。
ひたすら稽古に励んだ
『熱海殺人事件 NEW GENERATION』公開リハーサル
--上演に向けて特に言っておきたいことは?
味方 とにかくどんだけ稽古好きなんだ!っていうくらい稽古しましたね。「明日はオフです」って言われて、「じゃあ自主稽古しようか」って集まるくらい稽古しましたね。それからキャスト4人の他に登場する、"爆弾”役の方々にも助けられました。ひとりの役者仲間という目線で、いろんな意見を聞かせてくれました。
文音 演じていると、その中に入ってしまって、自分の演技を客観視するのが難しくなるんです。そんな時、彼らのアドバイスはありがたかったですし、実際のお芝居にも反映されています。
--最後に読者の方にメッセージをお願いします。
味方 いいメンバーに巡りあえました。それに僕らは、本番以上に通し稽古をやってきたんです。こわいものはありません! が、しかし怖いです、でも大丈夫です!! ぜひ劇場に、僕らの『熱海殺人事件』を観にきてください。
(左から)文音、黒羽麻璃央、味方良介、多和田秀弥
『熱海殺人事件 NEW GENERATION』は、2017年3月6日まで、紀伊國屋ホールにて上演。
取材・文・撮影:塚田史香
■会場:紀伊國屋ホール (東京都)
■日程:2017/2/18(土)~2017/3/6(月)
■作:つかこうへい
■演出:岡村俊一
■出演:味方良介/文音/多和田秀弥/黒羽麻璃央
■公式サイト:http://www.rup.co.jp/atami.html