トイレの中の芸術祭「おおいたトイレンナーレ2015」

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トイレの中で芸術祭?!

最近耳にすることも多くなった”トレインナーレ”、3年毎の芸術祭をそう呼ぶのですが、大分市では7月18日から9月23日まで、「おおいたトイレンナーレ2015」が開催されています。

よくよく目を凝らしますと、オヤジギャグの匂いしかしないこのネーミング。トイレですか…、と、力が抜けるわけですが、実際はどうなんだろう?と、行ってみました、おおいたトイレンナーレ。

 

大分駅の観光案内所や街角などでパンフレットを入手し、そのマップを手掛かりに町歩きが始まります。16の参加作家の作品は公立施設や商業施設、商店や飲食店などに設置されていて、夜しか見れないものもあったりします。作品形態も、トイレ全体でのインスタレーションや壁画、はてまた個室の密室空間を最大限に利用したもの、トイレ外まで展開するものなど様々です。

例えば、「目」の作品《見立線》。会場はセントポルタ中央町商店街の寝装店です。店内奥のレジの横を抜け、さらに奥までお店の方に案内され、普段は開放されていないだろうトイレに行き着きます。トイレの個室内に入るとプロジェクターから壁へ映像が投影されています。虫の目で擬似探検するような映像を見ているうち、店内から手を振ってくれる店主に画面上で遭遇したりします。

トイレ内で爆笑したのは初めてでした。このモリムラ寝装さんの、展示にまつわる一連の大胆な協力体制もまた、驚きを超えて感動ものです。

 

展示だけでなく「まちなかアートイベント」と称して、ワークショップやパフォーマンス公演、コンサートなどの企画が、トイレ内外で充実しています。

大分城址公園のトイレにも作品設置されている作曲家・安野太郎氏自作のリコーダー自動演奏機「ゾンビ」、そのコンサートは、DJブースのように機材が置かれ、安野氏がDJのようにエアーコンプレッサーのバルブをひねり、人間技では不可能であろう超絶技巧で、ソプラノからバスのリコーダー4本が曲を奏でます。大分銀行赤レンガ館という風情ある会場も相まってか、知っているようで知らないアコースティックの差音の響きは新感覚でした。

 

 

 街角のカフェ「府内珈琲」では、チェルフィッチュの新作公演《わたしは彼女に何もしてあげられない》が行われました。カフェの前の道いっぱいに客席を設け、観客は店頭に置かれたモニターと店内に向かって座ります。出演している女性は、シュールで孤独で少し危なっかしい世界観を独り語り続け、モニターの映像を通して観客にその声が届けられます。しかしそれは録画ではなく、実はカフェの一般客に紛れて店内の窓越しにあるテーブルに彼女が居り、今目の前でそれが行われていることに気づき、ハッとします。本人を目撃してしまい、他人事では済まされなくなったような戸惑いが起こり、この作品の題名がこれであることに安堵する、隅々まで緻密に構成され、無駄のない美しさが際立つ作品です。

 

また、詩人・上田假奈代による「トイレ連れ込み朗読」はトイレ空間を最大限に生かしたもので、一人づつトイレ内に誘導され、自作の詩の中から各々のために選び、彼女自身が囁くように読み上げます。パーソナルスペースを侵した度胸のいるシチュエーションにもかかわらず、2人きりのトイレから出る頃には、何か大切な贈り物を手渡されたか、はたまたどこか遠くへ手を引いて連れていってくれたかのような、言葉や声の不思議な力を考え直すような機会になりました。

 

展示も公演にも共通して言えることなのですが、舞台となっている街の方々の深い理解や惜しみなく協力する心意気と、彼ら自体がトイレンナーレを楽しんでいる様が、アーティストにも観客にも伝わっているようです。大規模なアートフェスではなくても、こうした愛とユーモアに溢れ、身の丈での展開で、しかし一つ一つの作品のクオリティが高く、イベントも目白押し。しかもそれらすべて無料で楽しむことができるのには驚きです。

トイレだから当然、用を足す場なのですが、美術館やギャラリーでは不可能な、パンツを下ろして解放的に、でも閉鎖的に鑑賞する作品などもあり、なんだかちょっと気恥ずかしいような、いけないことしてるような気分で作品と対峙する超プライベート感も、そうそう味わえない体験です。

最近は町歩きを楽しむ方が増えてきましたが、トイレのアート作品を手掛かりに、大分市街地に迷い込むという趣向、ニッチ好きにもたまらない展覧会でしょう。遠方から来られる方は、お隣り別府市で同時期開催中の「混浴温泉世界」と合わせて楽しむのがオススメです。

 

イベント情報
おおいたトイレンナーレ2015
 日時:2015年 7月18日〜9月23日
 会場:大分市中心市街地各所
※問い合わせ・イベントの予約など
おおいたトイレンナーレ 2015 インフォメーション
TEL: 070-5410-0335
MAIL: toilennale718[at]gmail.com
([at]部分を@に変更してからメールをして下さい)

 

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