東京・春・音楽祭―東京のオペラの森2017― 東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ vol.4 忘れられた音楽――禁じられた作曲家たち 〜《Cultural Exodus》証言としての音楽

よみがえる亡命作曲家たちの名曲

 野蛮さは文化においてもしばしば横行する。特に20世紀には出自、信条、政治動向などによって人生の方向を変えざるを得なくなった才能は少なくない。ウィーン国立音楽大学教授のゲロルド・グルーバーはそんな亡命音楽家研究の第一人者だが、グルーバーが同じくこの分野を得意とするフルーティスト、ウルリケ・アントンとともに企画したレクチャー・コンサートが東京・春・音楽祭で実現する。

 取り上げられる作曲家はバルトーク(ハンガリー農民組曲)を除き、あまりなじみがないと思うので、簡単に紹介しよう。ヘルベルト・ツィッパー(1904〜97、弦楽四重奏のための幻想曲「経験」)はユダヤ系でダッハウの強制収容所に収監されたが、後に保釈されてフィリピンに渡り、戦後はアメリカを中心に活躍した。収容所で作曲した「ダッハウの歌」が知られている。マリウス・フロトホイス(1914〜2001、オーバード)はオランダ生まれの評論家・作曲家で、コンセルトヘボウのポストをナチに奪われた。モーツァルト研究の大家としても著名である。ポーランド出身のミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96、フルートとピアノための12の小品)はナチのポーランド侵攻を受けてソ連に移住するが、スターリン体制下でも苦難の道を歩んだ。ショスタコーヴィチとの親交は、ソ連時代の彼の創作を支えるものであった。ハンス・ガル(1890〜1987、フルートと弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ)はユダヤの出自を問われマインツの教職を去った後、イギリスに渡りそこで生涯を過ごした。

 彼らの作品には前衛音楽を思わせる難解性はほぼなく、旋律的で分かりやすい。ピアノはドイツに住みミュンヘンで教鞭もとる川﨑翔子。

文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年2月号から)


東京・春・音楽祭―東京のオペラの森2017― 東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ vol.4 忘れられた音楽――禁じられた作曲家たち 〜《Cultural Exodus》証言としての音楽
3/20(月・祝)15:00 上野学園 石橋メモリアルホール
問合せ:東京・春・音楽祭チケットサービス03-3322-9966
http://www.tokyo-harusai.com/

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