上野耕平率いるサクソフォン四重奏 The Rev Saxophone Quartet が『サンデー・ブランチ・クラシック』に登場
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The Rev Saxophone Quartet
The Rev Saxophone Quartet がカフェで手に汗握るような演奏 “サンデー・ブランチ・クラシック”2016.11.20ライブレポート
才能溢れる若きソプラノサクソフォン奏者であり、ぱんだウインドオーケストラのコンサートマスターも務める上野耕平。これまでにも、ピアニスト・反田恭平とのデュオとして、ソロとして、何度もeplus LIVING ROOM CAFE & DININGでの『サンデー・ブランチ・クラシック』に出演してくれている彼には、もう一つの顔があった。それが、サクソフォン四重奏「The Rev Saxophone Quartet(ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット)」だ。
東京藝術大学同窓生である上野耕平(ソプラノサクソフォン)、宮越悠貴(アルトサクソフォン)、都築惇(テナーサクソフォン)、田中奏一朗(バリトンサクソフォン)というメンバーで、2013年に結成されたこのカルテットは、これまでに全国各地でリサイタルやアウトリーチ活動など、様々な演奏活動を行ってきたが、2017年3月2日に東京文化会館で、ついにデビューコンサートを行った。この日の『サンデー・ブランチ・クラシック』は、その前哨戦とも言える白熱した内容となった。
The Rev Saxophone Quartet
定刻になると、スーツ姿で颯爽と登場した4人。呼吸を整えると、一斉にそれぞれの持つ楽器に息を吹き込んだ。1曲目に演奏されたのは、カプースチン作曲の『8つの演奏会用エチュード』より「第一楽章 プレリュード」。同じサクソフォンという種類ながら、それぞれの個性溢れる音色がぶつかり合う。
ソロ演奏や、他の種類の楽器とのデュオ、トリオ、カルテットなどでの演奏を耳にすることは多いかもしれないが、純粋にサクソフォンの音だけで作られた音楽に触れたことがある方は、まだ少ないのではないだろうか。4つのサクソフォンの音が紡ぐメロディは、軽快で、何とも言えず心が湧きたつ。自然と心と身体がスウィングしてしまうような、純粋なワクワクする感覚がこみ上げてきた。
MC中の様子
演奏を終え、大きな拍手が贈られる中、まず上野が「皆さん、こんにちは! 僕らは、サックス四重奏として活動しております。それぞれの個性がぶつかって疾走しますので、一つのサウンド、個々の音色、両方を楽しんでいただければと思います。それでは、まずはメンバー紹介を!」と、宮越、都築、田中を紹介……しようとしたところ、何やら宮越の様子が落ち着かない。実は、1曲目の演奏中に靴紐がほどけてしまうハプニングがあり、いつ結び直そうかタイミングを伺っていたのであった。メンバー紹介、靴紐の結び直しを無事に終えたところで、2曲目へ。
4人が2曲目に選んだのは、バッハ作曲の「G線上のアリア」。この曲では先ほどのキレのよい音色とは。うって変わって4つの音がまろやかに溶け合う。この曲が生まれたのは、サクソフォンが誕生するずっとずっと前の時代だ。しかし、まるでサクソフォンのために書かれたと錯覚するような、厳かで優しく光指すようなサクソフォン四重奏ならではの音色で、古典を新しく聞かせてくれた。
「続いての曲は、ガラッと雰囲気を変えまして……」と宮越は、ベニー・グッドマンの「Sing sing sing~Memories of you」を紹介。宮越は、冒頭の靴紐がほどけてしまったハプニングで若干動揺していたらしく、上野に「なんか今日、珍しく緊張してますね(笑)」と突っ込まれ苦笑いしつつ、「前2曲とはまた違った、ジャズのかっこいい雰囲気をお楽しみください」と進めた。この日の演奏されたのは、川﨑龍によるアレンジで、一層モダンな雰囲気でカフェを包み込んでいく。後半、よりジャジーになっていく展開に、客席に座る聴衆の身体も揺れていた。
上野耕平(ソプラノサクソフォン) 宮越悠貴(アルトサクソフォン)
田中奏一朗(バリトンサクソフォン)、都築 惇(テナーサクソフォン)
4曲目は、アルトサックスとピアノのために書かれた曲「サクソフォン」を、四重奏バージョンで演奏。この曲は“サックスが笑う”曲だそうで、メロディの中に「ファッファッファッ」という独特のフレーズが何度も出てくる。あっちからもこっちからも、笑い声が上がっているようで、なんともファニー! 演奏中、仕掛け合う4人の顔も、まるで会話をしているようで、実に楽しそうだ。ちなみに、この曲は小学校でやると大爆笑になるという。世代を超えて、理屈を超えて「楽しい」が共有できるのは、音楽の醍醐味の一つである。
最後の曲は、3月2日のプログラムのトップにもなった、フランスの作曲家リヴィエによる「グラーヴェとプレスト」。グラーヴェは音楽用語で“重々しくゆるやかに”、そしてプレストは“きわめて速く”という意味を持つ。このタイトルの示す通り、グラーヴェとプレストの2つで構成されたこの曲は、サクソフォン四重奏のために作られた曲の中でも、特に有名な楽曲の一つに数えられる。
演奏に入る前、この曲について、宮越、都築、田中の3人は「ソプラノがめちゃめちゃ大変」「毎回、速さの新記録を目指しちゃうから」と口々に言った。それに対し、上野は「そういうあぶないフリはやめましょうよ(笑)」と応えつつ、「どうしても、熱くなってくるとね」と、やはり演奏に力が入る様子。
The Rev Saxophone Quartet
よしっと気合いを入れてから、まずグラーヴェとして重々しく始まったメロディは、やがてプレストとしてがらっとその表情を変える。複雑なテンポを刻むメロディで、仕掛ける上野、迎え撃つ宮越、都築、田中と、実に楽しそうにせめぎ合う。手に汗握るような演奏に、会場は大いに盛り上がり、熱い拍手を贈った。アンコールには、フォスター作曲の「国境の人々(スワニーリバー)」で応え30分を締めくくった。
終演後にサイン会も
終演後のインタビューでは、4人4様の感想を率直に語っていたメンバーたち。宮越は「この1年で5本の指に入るぐらいテンパってしまったんですけど(笑)。とてもアットホームな空気の中、右から左からお客さんの熱が全身に伝わってきたので、演奏していてとても楽しかったです」と笑い、上野は「ずっと、レヴとしても演奏させていただきたいなと思っていたので、叶って嬉しかったです。サクソフォンカルテットの息遣いややり取りを、この近距離で、手に取れるように感じていただけたのではないかと思います」と振り返った。
インタビューの様子
そして、「今日の演奏、今までと違くなかった?」と問いかけた上野。実際、聴く側にも“攻めてるな”と感じさせた演奏は、いい意味で演奏者側の彼らにもいい汗をかかせたらしく、4人とも個々に手応えを感じていた様子だった。
最後に「初めてサクソフォン四重奏を聞いたという方もいらっしゃるでしょうし、レヴを聞いてくれていた方もいらっしゃるでしょう。我々のカルテットは、刻一刻と変化していきます。これからも、日々の活動をSNSなどを通じて発信していきますので、皆さんどうぞご注目ください!」と語っていた4人。
The Rev Saxophone Quartet
ユニット名にある「Rev」は、エンジンの回転などを意味する「Rev.」に由来するという。デビューコンサートも終え、走り出した彼らの“これから”にますます期待だ。
取材・文=友成礼子 撮影=岡崎雄昌
クヮルテット名の「Rev」とは、エンジンの回転などを意味する「Rev.」が由来。音楽のもつ無限なエネルギーを我々4人が音として奏で、1つの方向へ疾走したい、という思いを込めている。これまでに全国各地でリサイタルやアウトリーチ活動など様々な演奏活動を行う。第41回藝大室内楽定期に出演。
また、サクソフォン四重奏のためのレパートリーはもちろん、新曲の委嘱や初演、ピアノや邦楽器などとの共演も積極的に行い、サクソフォン四重奏の更なる可能性を追求している。
上野耕平(ソプラノサクソフォン)
宮越悠貴(アルトサクソフォン)
都築惇(テナーサクソフォン)
田中奏一朗(バリトンサクソフォン)
鈴木舞/ヴァイオリン&實川風/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
4月9日
小野明子/ヴァイオリン&益田正洋/クラシックギター
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
尾崎未空/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html