札幌国際芸術祭、横浜トリエンナーレの楽しみ方は? 『アートフェア東京』で語られた関係者たちのトークをレポート
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トークイベントの様子(写真左から山本敦子、帆足亜紀、佐藤直樹)
2017年は大型芸術祭から新しい芸術祭まで、数多くの芸術祭が開催されるスペシャルイヤーとなっている。2017年3月16日から19日まで開催されたアート見本市『アートフェア東京2017』では、18日にトークセッション『2017年芸術祭の楽しみ方~街をまるごと楽しむ都市型芸術祭』が行われた。札幌国際芸術祭の企画メンバーである、アートディレクターの佐藤直樹、横浜トリエンナーレ組織委員会プロジェクトマネージャーの帆足亜紀、アートプロデューサーの山本敦子が登壇し、盛り上がりをみせる都市型芸術祭の楽しみ方を語った。
『札幌国際芸術祭2017』企画メンバー・佐藤直樹
まず、8月6日から札幌で開催される『札幌国際芸術祭2017』の見どころを、企画メンバーである佐藤直樹が語った。3年に1度開催される札幌国際芸術祭。第1回の2014年は「都市と自然」をテーマにアーティスト・坂本龍一がゲストディレクターを務めたが、2回目となる今年はゲストディレクターに音楽家・大友良英を迎え「芸術祭ってなんだ?」をテーマに、前回とはまた違った展開をみせる。佐藤は「今回もディレクターの色がよく出ている。音楽家の大友良英らしい企画として、一般の子ども達による即興オーケストラを実現させるプロジェクトなども進行中だ」と明かした。
魅力満載の札幌全体が会場に
芸術祭の舞台となるのは、佐藤が「アートフェスがやっていなくても面白い街」と明言する札幌の市街地や、自然溢れる札幌芸術の森など近郊の市内各所だ。中でも、佐藤がまず行ってほしいと挙げたのがモエレ沼公園である。イサム・ノグチの構想から造られた公園は、自然とアートが融合した美しい景観を楽しむことができる。佐藤は「行く度に興奮する素晴らしい場所。そこでどんなアートプロジェクトが立ち上がるにせよ、とにかく面白いから足を運んでほしい」と自信をのぞかせた。
『札幌国際芸術祭2017』レトロスペース坂会館
街中では、様々なところでアートイベントが開催される。注目のスポットとして、佐藤はレトロスペース坂会館と大漁居酒屋てっちゃんを紹介。「レトロスペース坂会館は私設博物館で、ありとあらゆる昭和の雑貨が集っている。都築響一さんや大竹伸朗さんが『参った』と言ったとか。大漁居酒屋てっちゃんもまたすごい場所。どちらも、行って驚かない人はいない」と語った。そんな唯一無二な場所も芸術祭が焦点を当てる。
『札幌国際芸術祭2017』大漁居酒屋てっちゃん
札幌を活かそうとするアーティストや音楽家が集結
参加アーティストの最終発表は5月となるが、毛利悠子、クワクボリョウタ、宇川直宏、刀根康尚、マレウレウなど国内外で活躍するアーティスト達が、芸術祭開催に向け着々とプロジェクトを進行中だ。彼らについて佐藤は「どこかで完成した作品をここで発表するというよりは、自分の表現として次の段階にいくために札幌という場所を活かそうとみんな取り組んでいる」と述べた。
『札幌国際芸術祭2017』参加アーティスト・毛利悠子
他にも地元のデザイナーたちと組んで進めている『札幌デザイン開拓145年展』などがラインナップ。「8月の開催に向けて、これをやったら面白いんじゃないかと思うものを何も諦めずに進めている。開催期間中、札幌は本当面白いと思う。お約束します」と佐藤は笑顔を見せた。
養老孟司など、異分野の専門家も会議に参加
続いて、8月4日から横浜で開催される『ヨコハマトリエンナーレ2017』について、横浜トリエンナーレの歴史も踏まえながら、横浜トリエンナーレ組織委員会事務局プロジェクトマネージャーの帆足亜紀が語った。
『ヨコハマトリエンナーレ2017 星と星座とガラパゴス』 メインビジュアル
日本の国際芸術祭の草分け的存在である横浜トリエンナーレは今年で6回目を迎える。みなとみらいを拠点にしつつ、赤レンガ倉庫などの古いものが混在する街の風景を活用しながら展開してきた国際展だ。今年は横浜港のシンボル、横浜市開港記念会館も会場のひとつとして使われる。
『ヨコハマトリエンナーレ2017』開催会場、横浜みなとみらい
今回はコンセプトを考えるにあたり、Sputniko!などアーティストに加えて、解剖学者の養老孟司や哲学者の鷲田清一など分野の異なる専門家のメンバーが集結。この時代をどう読み取って、何をやるのか、会議を重ねてきたそうだ。そこで決定したテーマが「島と星座とガラパゴス」だ。現在の世界の「接続性」と「孤立」の状況について様々な角度から考えていく。「同時代の表現である現代アートの国際展だからこそ、時代をどう読むかをつねに考えてきた。同時代をどう生きているのかのひとつのガイドラインになりたい」と第4回から運営に携わってきた帆足は述べた。気になる参加アーティストは4月に発表される。
『ヨコハマトリエンナーレ2017』構想会議メンバー
時代に寄り添ってきた横浜トリエンナーレ
現代アートの国際展として横浜トリエンナーレがいかに同時代に寄り添ってきたのか、その歴史に話は及んだ。第1回目が開催された2001年は、米国で同時多発テロが起きた年だ。そのときは横浜トリエンナーレでは椿昇と室井尚の作品を、みなとみらいのホテルの外側には巨大なバッタのバルーンを展示し「どこからでも見える展示。現代アートや国際展が定着していない時代にインパクトがあった」と帆足は述べた。
『横浜トリエンナーレ2001』での展示風景(椿昇+室井尚「インセクト・ワールド、飛蝗」)
4回目の2011年は東日本大震災があった混迷の年で「世界はどこまで知ることができるか?」がテーマだった。その3年後の2014年は「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」をテーマに据えた。帆足は「震災から3年経ち、忘れないと言いながら本当に大切なものを忘れているんじゃないかと。忘却というテーマを考えることで我々がこの時代をどうやって生きているのかを考えるきっかけになったと思う」と語った。
世界の中で日本、我々は今どこにいるのかということを、3年に1度、現代アートを通して考えてみて欲しい、と帆足は締めくくった。
横浜トリエンナーレ組織委員会事務局プロジェクトマネージャー・帆足亜紀
街にアートが入り込みやすい時代
両芸術祭の話を聞き終え、アートプロデューサーの山本敦子は「札幌も横浜も明治期に新たに作られた街という共通項があり、両芸術祭ともその当時の建物を会場に使っているのが面白い」と感想を述べた。山本の言葉を受けて佐藤は、まだ2回目の札幌芸術祭は手探り状態だとしながらも「時代を超えて残ってきた建物を見方を変えて再利用したり、文化施設にしたりする時期なのかなと感じている」と発言。山本は「建物的にもそうだし、街自体や住んでいる人もちょうど変わる時期なのかも。ちょうど両都市とも街にアートが入りこみやすい時期なのかもしれない」と頷いた。
また、帆足は「芸術祭や国際展は、定期的に続けることで街の変化をアートの視点で捉え直すこともできる」と続けた。「アートを通して街の変化を経済という大きな視点とはまた違った視点で見られる。そういう視点を提供するのは、都市型国際展のミッションだと思う」と気概をもって語った。
アートプロデューサー・山本敦子
芸術祭のお供に便利なアプリ『チラシミュージアム』も紹介
国内外で様々な国際芸術祭が開催されるようになってきた。海外では、ついに南極でも今年春にビエンナーレが開催されるほどの広がりを見せている。日本国内でも芸術祭のスペシャルイヤーというだけあって、札幌国際芸術祭、ヨコハマトリエンナーレを始め、種子島宇宙芸術祭、北アルプス国際芸術祭など注目の芸術祭が目白押しだ。
今回のイベントでは、そんな芸術祭のお供にお勧めのアプリ『チラシミュージアム』も紹介された。全国の美術館・博物館の展覧会、アートイベントの情報をチラシという形で見て探すことができる無料スマホアプリだ。そのまま
美術館・博物館の展覧会情報&クーポンアプリ『チラシミュージアム』
会期:2017年8月6日(日)~10月1日(日)
会場:札幌芸術の森(札幌市南区芸術の森2-75)、モエレ沼公園(札幌市東区モエレ沼公園1-1)、まちなかエリア、円山エリア、札幌市資料館(札幌市中央区大通西13)、JRタワープラニスホール(札幌市中央区北5条西2札幌エスタ11階)、札幌大通地下ギャラリー500m美術館(札幌市中央区大通西1~大通東2) 他
主催:札幌市、札幌国際芸術祭実行委員会
公式サイト:http://siaf.jp/
会期:2017年8月4日(金)〜11月5日(日) ※第2・4木曜日休場
主会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)、横浜赤レンガ倉庫1号館(横浜市中区新港1-1)
主催:横浜市、(公財)横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会
公式サイト:http://www.yokohamatriennale.jp/2017/