【WBC】侍ジャパン、ベスト4で終戦! 4年に1度の「世界甲子園」の魅力

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 撮影=中溝康隆

撮影=中溝康隆

テレビの前で感じたのは悔しさよりも、寂しさだ。これで祭りが終わってしまうという寂しさ。でも、本当に楽しかった。

準決勝アメリカ戦での侍ジャパン敗退の瞬間、不思議なことにある種の充実感すらあった。まるで地元の高校が雨中の甲子園で惜しくも競り負けた時のような感覚だ。菅野や千賀はメジャー軍団相手に一歩も引かなかったし、守備でミスを犯した菊池や松田にしても、今大会の貢献度を考えると責める気にはなれない。筒香の打球の行方を追い、マンションの隣部屋のおっちゃんと壁を挟んで「あっ! あああっ……」なんて思わずハモる平日午後。みんな日本プロ野球の意地を見せてくれた。ついでに課題も見つかった。世界は広い。思えば遠くに来たもんだ。「もっとやれた」というよりは、「よくここまで勝ち進んだよ」なんつってその背中に拍手を送りたくなる、あの感じ。やっぱりWBCには「熱闘世界甲子園」という言葉が良く似合う。

今回のWBCは、過去大会でジャパンのエースを張ったメジャー投手組が全員不参加、偉大な天才イチローもいなければ頼みの二刀流・大谷翔平も直前に代表辞退。指揮官は世界の王や経験豊富な原辰徳ではなく、青年監督の小久保裕紀。最近野球から離れていたお父さんやキッチンのお母さんが知ってるビッグネームは、皆無と言っても過言ではない。日本代表の28名中なんと21名が初めてのWBCだ。平均年齢は過去最年少の27.6歳と、名実ともに若いチームで大会を戦うことになった。正直、戦前は不安でいっぱい。誤解を恐れず書けば、国内所属球団ではスター選手でも世界的には無名のチーム。だから、見ているこっちも謙虚になれた。いわば前回の「いくぞ3連覇」とは真逆の挑戦者の心境で大会に臨むことができたわけさ。

恐らく、事前の強化試合の不安定な戦いぶりを見て「これ大丈夫かよ?」「東京ラウンドで敗退すんじゃね……」「ていうか19時開始って何?」と思った野球ファンは多いはずだ。ゴメン、俺は思った。アントニオ猪木から「出る前から負けること考えるバカいるかよ」ってぶん殴られても文句は言えない弱気の虫。各メディアの論調も大会前の期待値はかなり低かったし、小久保監督は何をやっても非難される悪循環。そんな負のループを、大会が始まると吹き飛ばしてくれたのが若いチームの一体感とひたむきさだ。山田哲人とボールキャッチ少年の筋書きのないドラマ、道産子スラッガー中田翔の3試合連続アーチ、まさかの正捕手コバちゃん旋風。彼らを繋ぐのは、“友情・努力・勝利”の少年ジャンプイズムだ。気が付けば、「誰かの代表」ではなく、「俺らの代表チーム」になっていた。

いや、侍ジャパンだけじゃない。参加各国の本気度がやたらと高かったのも今大会の特徴だ。「ワールドシリーズのような気持ちでプレーできた」というガチコメントを頻繁に聞くようになった。日本と4時間46分の死闘を繰り広げたオランダ代表の絶対的4番打者バレンティンは、普段ヤクルトでは見せたことのないような必死の形相で外野フライを追いかける。いつの時代もグラウンド上の選手が発する熱は、やがて客席をも燃えさせる。観客動員数は大会史上最多の100万人を突破。09年の第2回大会で、日本代表が9試合中5試合を韓国代表と繰り返し戦ったグダグダ感と比較したら、WBCの大会システムも回を重ねるごとに成熟しているように思う。

もちろんクリアすべき課題も山積みだ。毎回議論を呼ぶ開催地・時期、いまだハードルが高いメジャー選手完全参加、さらに物議を醸したビデオ判定問題。準決勝のアメリカ戦でも、3回までに4度のビデオ判定で試合の流れはぶつ切り。野球という競技の質は上がっても、エンターテインメント性は著しく低下してしまう。全然関係ないけど、合コンで頻繁に「目の前のおネエちゃんのサラダ取り分けの仕方をビデオ判定」とかやってたらマジしんどい。やはりMLBで導入されてる6回までに1度、7回から試合終了まで2度ビデオ判定を要求できる回数制限ありの“チャレンジ制度”がベターな気がする。次回WBCがあるとしたら東京五輪翌年の2021年。野球界の時の流れは早い。その頃にはいったいどんな日本代表チームになっているだろうか?

4年に1度の祭りは終わった。来週末からペナントレースという名の日常が今年もまた始まる。さらば、小久保ジャパン。またどこかで。

See you baseball freak……

 
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