3ピースとなった新生waterweedの新作にせまるインタビュー - とんでもない進化をとげた新しいメロディック・ハードコアを聴け
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waterweed
Tomohiro Ohga(Ba. & Vo.)、Hiroshi Sakamoto(G.&Cho.)、Shigeo Matsubara(Dr.)からなるwaterweed。ポスト・ハードコア的な要素も強いメロディック・ハードコア・バンドだ。
2003年に大阪にて結成され、以来メンバーチェンジや活動休止、メンバーの脱退等を経て現在の3ピースでのスタイルを確立し絶賛活動中の彼らから、この編成になって初のフルアルバムとなる『Brightest』がこのたび届けられた。
前作のショート・アルバム『Landscape』(全9曲)で展開された3ピースならではのシンプルさから、かつての4ピース時と遜色のないほどの楽曲構成や作品性を伺わせ、ある意味3ピースの限界に挑戦しているようにも映る今作。以前にも増したスケール観やダイナミズム、ドラマ性や景色感を多分に擁した楽曲と、歌詞面でも受け手に委ねられる余白も生まれた、まさに聴き手と共有できる部分が更に加味された作風も特徴的だ。
waterweedは今作と共に、まだ出会っていない人たちも含め、多くの人を巻き込み、飲み込み、進んでいく!!
waterweed
――前作が3ピーススタイルになっての第一弾だったこともあり、割とシンプルになった印象があったのですが、今回は同じ3ピースながらも4ピース時代とそう遜色のない作品内容にまで成長していて驚きました。
Tomohiro Ohga(以下Ohga) : 元々4人編成だったのがギターが抜けて、この3人になったのが1年半ぐらい前になるのかな。あの時はそれこそ、その3か月後には『Landscapes』のレコーディングが決まってましたからね。「このまま3人で続けて行こう!!」とは話をしていたものの、”さて、どうしたもんか…”と(笑)。
――新しいギターを入れずに、この3人でどう録ろうかと?
Ohga : ですね。今まで通り4人編成時同様ツインギターの体で新曲を作るのか? 3人になったんで、3ピースならではの曲をいちから作っていくのか? その辺りをメンバー間で沢山話し合いしました。
――サポートでもいいからもうひとりギタリストを入れて凌ぐ発想は?
Ohga : いかんせん時間も無かったし。そこまで心の余裕もなかったし(笑)。“もうこうなったら3人で出来ることを演ってみよう!!”“とりあえずこの3人だけで録ってみよう!!”ってなりました。
――そこから今作への移行は?
Ohga :『Landscapes』を出してツアーをして、あの作品からの楽曲も各地で沢山演って。それを経て3ピースの音源として作ったのが今作『Brightest』なんです。言い換えると3ピースに心身が馴染んでキチンと出せる最初のアルバムとでも言うか…。
――では、3ピースバンドとして確立できて満を持しての今作のリリースだと自負していたり。
Ohga : してますね。役割分担的にも、“ここでこれぐらいギターを攻めても大丈夫やな”とか。“ここはあえて弾かなくていいな…”とか。“ここはあえてギターを前面に出す代わりに、ベースはこうしよう、ドラムはこうしよう!!”等々、ダビングの加減や方法論も分かってのレコーディングでしたからね。あの頃よりかは数倍進化した作品だと自負しています。
――今更ですが、『Landscapes』が、あの内容でメンバー脱退後わずか3ヶ月で録られていたことに改めて感心しました。
Ohga : 今回は更に突き詰めてますから。
Shigeo Matsubara (以下Matsubara): 3ピースになって最初の頃はそれこそ色々と戸惑ってました。自分もこれまでに3ピースのバンドという経験が無かったし、試行錯誤の連続。やはり4人から3人になって音の変化ももの凄くありましたから。それこそ、どうしたら良いかが分からない状態でしばらく続けていました。
――いわゆる手さぐりの中、それでも進んでいったと?
Matsubara : そうなんです。3人になって半年ぐらいは、それこそ初心者みたいな感覚でライヴに臨んでました。『Landscapes』のツアーを終えて、自信や確信になって、やっとこの今の体勢の準備が整った感はあります。それこそこのアルバムからのツアーを経て、3ピースをより強固なものにしていって、どんどん進化していきたいんです。
――分かります。今作で私が“おっ!!”と感じたのは、いわゆる速さだけに頼らずテンポを落としたり、ハーフにすることによるダイナミズムの表し方だったりしたんです。それによりドラマ性のある曲がしっかり表れている印象を持ちました。
Ohga : そのスケール感やダイナミズムは意識したところでもあって。パワーコードとツービート、アルペジオが主流の3ピースバンドは他にも腐るほどいますからね(笑)。別に自分たちは、そこで頂点を目指したいわけじゃないし。
――では、どこを目指して?
Ohga : 自分たちらしさを追求しつつ、3ピースの限界ですね。
waterweed / Hiroshi Sakamoto
――Sakamotoさんは?
Hiroshi Sakamoto (以下Sakamoto): 4人から3人になって、より引き算が上手くなったかなって。いわゆる重要なところだけをしっかりと残せるようになったというか。それもあって作品にしても、シンプルなんだけど、決して足りない感じはしないんじゃないかな。
――特に今作では、これまでのみなさんにあまり見受けられなかった「抜き差し」も見られる箇所がありますもんね。あとは光景が浮かびやすい曲が増えた印象も持ちました。
Ohga : いやー、その辺りは狙っていたんで、感じてもらえてむっちゃ嬉しいです。細部や構成、音作りやメロディはもとより、コーラスワークやギターのリフ、リズム等の細部にまでこだわって今作は作ったので。そのように景色が見えてくるような気分になってもらえれば本望です。
――だけど不思議だったのは、ずっとライヴハウスで演ってきたにも関わらず、そこに留まらないほどのスケール感やダイナミズムを滲み出させているところなんですよね。
Ohga : 正直あまりライヴを意識して作りませんでしたから。前々作がライヴを超意識して作ったんです。全曲生演奏の映像も作ったぐらい。歌詞の内容もそのようなライヴハウスキッズ向けだったりしていたんですが、得てして自分たちが意図していない方向にとらえられていたり、こちらが提示したことに対して理解してくれてないところもあって。逆に前作の『Landscapes』は、ライヴを意識しなかったんですが、それが功を奏したところもあります。
――では、逆に今作で意識したところは?
Ohga : ライヴでの共有感ですね。色々なものを一緒に分かち合いたいなって。こちらで秩序やルール立てて説明したり言うのが好きじゃないので。曲と俺たちとお客さんとで馴染ませていき、いいライヴの空気を作れたらなってことぐらいです。「俺たちライヴバンドだから!!」って自分たちで言うのって、ちょっとダサいじゃないですか(笑)。自分たちでは言わないけど、実際に体感して、その辺りを感じてもらえたら嬉しいです。
――では、ここ数作では聴き手に余白を残してあげるところも意識していたり?
Ohga : もう、どんな風に捉えられても大丈夫です。
Matsubara : よりお客さんに伝わりやすくというところは意識しています。分かりやすいとは、ちょっと違ったニュアンスなんですが、ファストなものにしても、ガッと入ってガッと終わって。逆にミドルのところはしっかりとより伝えたいところを意識してプレイしたり。その辺りもみんなが聴いて一緒に楽しめるような作品にしたくて。それはもちろんこちら側から一方的に提示するのではなく、聴き手の皆さんに感じとってもらえたら嬉しい部分です。
waterweed / Shigeo Matsubara
――きっと多くの人に勘づいてもらえると思いますよ。
Matsubara : やっぱり速い曲だと伝え切れないところもあるじゃないですか。勢いや凄さだけに耳がいっちゃって。その辺りも、これまでの作品を通して自分たちでも勉強させてもらいましたからね。よりみんなで楽しめるように余白をとったので、その余白をみんなで埋めてもらえると嬉しいです。ある意味、作品の完成って、そこでもあるだろうし。
――では、今作はお客さんと一緒に完成させていく作品でもあると。
Matsubara : そうです!そうです!!
――確かに以前はみなさんの音楽性が有する切迫感や圧迫感がトゥーマッチに感じるところもありました。しかし最近の作品では、いい意味で余裕があったり、そこまでその辺りを感じなくなりました。
Sakamoto : サウンドの表現にしても、メロディックよりかはエモーショナルな方向性に向かっているところはあるかもしれませんね。いわゆる圧迫感や勢いだけでなく、もうちょっと自分らの表現の幅や引き出しは見せていきたいし、今作はそれがある程度それが出せた作品なんじゃないかな。
――いま<エモーショナルな方向性に向かっている>的な話が出ましたが、なんか凄く分かります。2000年代のエモバンドを彷彿とさせるニュアンスもあったりして。
Ohga : 分かりましたか(笑)。僕たちの好きなエモって、その辺りだったりするんです。メロディックで速くてメタリック等々、色々な要素があったんですが、色々なバンドと対バンしたり、ライヴを重ねていくうちに、勢いで盛り上がればいいやって感覚から変わってきて。もっとキチンと言いたいことも伝えたいし、もっと曲も感じ取って欲しい。そんな風にライヴへのスタンスも変わってきていて。なので、最後は昔からのみんなに耳馴染みのある代表曲で盛り上がって終わりってパターンから、伝えたい曲、演りたい曲を演るって方向性に移ってます。それで反応も良くなってきた実感もありますから。
――その実感はいいですね。
Ohga : 結局、盛り上がるのは以前から俺たちのことを知っている人たちだけだったというのは、今後なるべく避けていきたいところであって。ここ数年は前方の盛り上がっているキッズだけでなく、後方でゆっくり観ている人たちにも届けたいと思って演ってますから。その辺りが昨今の作品にも表れてくれていたら嬉しいです。今作でも盛り上がり目当てのモッシュパートはあえてハズしたところもあったし (笑)。
――昨今のwaterweedの作品からは、なんだか広いフィールドでライヴを演っている光景が浮かんでくるんです。
Ohga : 今作は特にスタジアムで演っている姿を想像しながら作っていましたから。楽曲にせよ、コーラスワークにせよ。
――リリックや歌はいかがですか?海外も含め、遠くの世界や亡くなった方への想いを馳せている歌詞が今回は印象的でした。
Ohga : 最近は海外の方からメッセージをもらったり、去年は韓国でライヴを演らせてもらったし。やはり海の外への想いは強くあります。その気持ちを赤裸々に色々と書き綴った感じですかね。
Matsubara : いやー、行けるものなら行きたいです、海外!
Ohga : これまでも来日するアーティストと一緒にライヴを演ったり、ツアーを回ったりして、仲良くなって。「次はうちの国にライヴに来なよ!!」って言ってくれる海外のバンドが現われたり。育った環境や国は違えど、音楽やパンクロックが好きというところだけで繋がれるんだなというのを実感しているんで。全員、英語が得意じゃないけど、それでも関係ないなと。次は海外狙いですね、やっぱり。
Matsubara : どこの国で演ろうが、どんな場所で演ろうが、音を出せば対等だし一緒ですからね。イケるって妙な自信はあります。もう、こうなったら行かねば!!
waterweed / Tomohiro Ohga
――今作では得意のヘイトソングの割合もグッと減った印象があります。
Ohga : 今作でも、あるっちゃ、ありますけど(笑)。だけど昔みたいなモロにヘイトな歌詞からは移りつつあるかな。昔は単純に、「アイツむかつく!!」「アイツ誰やねん!!」みたいな歌詞ばっかり書いてましたからね。いま思えば器が小っちゃかったなって(笑)。それぐらいしか書くことがなかったんでしょう、昔は。あれから色々と経験を積んで、もっと色々なことを深く考えるようになったし。自分たちの生活のことや未だ音楽を続けさせてもらえている環境に居られることを始め、色々なことに感謝もしているし。だけど、決してこれで満足しているわけじゃないですからね。挑戦したいとことも沢山あるし。今の位置や居る場所に留まっていたいわけじゃないし。海外でもやりたいし、大きなところでもやりたい。それらのポジティブな気持ちも色々と綴れるようになったかなとは思っています。
――タイトルは『Brightest』で、リリックは別として、サウンドだけ聴くと全然『Brightest』じゃないのが面白いです(笑)。
Ohga : どこが『Brightest』やねん、って感じですよね(笑)。久々のフルアルバムだったし、1stフルアルバムに至っては、ほぼヘイトソングでしたから。そこから考えると大分『Brightest』かなって(笑)。それとは別に、自分たちにとっても『Brightest』な作品になったと思ってるし。もっと輝かしいこともやりたいし、輝かしい場所にも行きたいし、色々なことをやりたい、それを可能にするだけの楽曲を揃えましたよって意味も含めて、このタイトルにしました。
――今作を引っ提げてのツアーもありますね。
Ohga : 持ち時間も長いので、そのぶん色々な表現が出来るかなって。観ていて気持ちの良いスカッとする面もあれば、聴いていて何かを感じたり、考えてもらえるようなライヴを目指します。なんかモヤモヤしている人でも来てくれれば、何か得てもらえると思うので是非各会場に来て欲しい。お客さんも含め色々なところで色々な人といい関係を作っていきたいんで。
Matsubara : 同じ気持ちです。ホント色々な人に是非来て欲しい。なんならリクエストにも応えるし。僕ら即興で臨機応変に対応できるところもあるので。昨日もセットリストが決定したのが出番の20分前でしたからね(笑)。お客さんもそれぐらいの期待値で来て欲しいな。同じ空間を共有する僕たちをただ観に来ているだけ、そんな軽い気持ちで大丈夫です。立場は一緒ですから(笑)。是非友だち感覚でライヴに来て下さい。
Sakamoto : ほんまに友だち感覚で、それこそ友だちを作りにくる感じで気軽に気楽に遊びに来てもらえると嬉しいです。このツアーもみんなで楽しみながら一緒に作っていけたらなと思っています。
Matsubara : で、いつかはスタジアムで色々な友だちのバンドを集めてフェスを行いたいですね。あと、是非フェスに出たい!!
Ohga : 俺たちマジでフェス呼ばれない芸人ですから(笑)。
Matsubara : 主催者さん、試しに我々を呼んでみて下さい。絶対に「良かった!!」と言ってもらえるライヴをしますから。まっ、このアルバムでその状況も変えられると信じているので。是非多くの人に聴いて欲しいですし、ライヴにも遊びに来て欲しいです。
取材・文=池田スカオ和宏(LUCK’A Inc.) 撮影=樋口隆宏
waterweed / Brightest
Brightest Tour 2017 | section 1 |