結成18年目のが〜まるちょばにインタビュー『That's が〜まるちょばSHOW ! +ロッケンロールペンギン』

インタビュー
舞台
2017.5.11
が〜まるちょば

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パントマイムを駆使したパフォーマンスで、国内のみならず海外の観客をも笑わせてきた2人組「が〜まるちょば」。結成18年目の彼らは今、『That's が〜まるちょばSHOW ! +ロッケンロールペンギン』と題したパフォーマンス公演で全国各地を巡っている。赤いモヒカンが目印のケッチ!と黄色いモヒカンのHIRO-PONに、思いや見どころを聞いた。

「僕らは体二つでお客さんと共有できる時間と空間を創れる」

––いま全国を巡演している公演は、『That's が〜まるちょばSHOW!』だけでなく、2007年のエジンバラ・フェスティバル・フリンジや2009年のブロードウェイで絶賛され、日本では2008〜09年に数回上演したきりの『ロッケンロールペンギン』もプラスされていますね。全体的な内容としてはどのような感じですか。

ケッチ! 今回の公演はいつも以上に分かりやすい内容になっています。なので、いつも小学生以上が対象なんですけど、今回は4歳未満がダメっていうことになっています。ファミリーでも楽しめるショーになっています。

HIRO-PON 最初から最後までパフォーマンスの内容です。例年のツアーですと、僕ら二人でストーリーものをやるんですけど、今回はストーリーものをやらずに、パフォーマンスだけです。休憩なしで、お客さんのノリ次第ですが、1時間30分〜40分くらいですね。

ケッチ! テーマは特にないのですが、一緒に楽しい時間を共有できたらなと思います。まぁ今回だけじゃなくいつでも思っていますけどね。

HIRO-PON もともと僕らが『東京JACK』という、東京都のいろんな地域、全62市区町村を回った時に、そういう時にしか来られないお客さんがたくさんいるんだなということが分かったんです。やっぱり僕らが地域に出向いていくと、観に来てくださるお客様がいるんだって。なおかつ、そういうお客さんがとても喜んでくれるんですね。なので、いつものツアーに来られないお客さんにも、観てもらって喜んでもらいたいという意思はあります。それができるのは僕らだけなのかな~とも思っていて。特に地方ですと、大きな建て込みの必要のある舞台がなかなかできないといった制約なども色々あると思うんですけど、僕らは体二つでちょっとの小道具でお客さんと共有できる時間と空間を創れますからね。僕らは東京都内だけではなく全国の色々な地域、とくに普段エンターテイメントがいかないような場所に行けたらいいなという思いがあります。もう始まっていますが、今回は51か所巡る予定になっています。

––「笑い」を創る上で心がけていることは何でしょうか?

ケッチ! 基本、同じことを何回もやるわけです。だから何回やっても必ず楽しむということですね。それをいつも心がけているというか......それが当たり前なんだけどなって思っています。自分自身初めてのことのように楽しむというか。新鮮な気持ちでね。

HIRO-PON 笑いって結局は心の動きですよね。面白いとか、喜怒哀楽があって、笑いにつながる。僕らはパントマイムを基本やっていて、言葉を使わずにお客さんに理解してもらう、感じてもらうためには、僕ら自身が喜怒哀楽という心の動きをリアルに舞台の上で感じなければいけない。それって言葉で言うと簡単だけど、意外と最高に難しい技術だし、僕はそれが本来のパントマイムの技術だと思っている。舞台上で今回のようなパフォーマンスの時も、初めて起こった出来事を初めてのように感じられるかどうか。怒ったりとか困ったりとか感情の動きを、段取りではなく、きちんと表現できているかどうか。そういうのはやっぱり大事にしなきゃいけないなと思います。それができたときに初めて笑いにつながっていき、お客さんと一緒に喜べる時間が創れるんだろうなと思っています。

––では当然、パフォーマンスもそのつど変わっていくわけですね。ネタはどのように作るんですか?

HIRO-PON 毎回毎回お客さんが違うので、同じ喜びでも喜びのニュアンスが違ったりします。毎回違いますよ。

ケッチ! 今回のショー『That's が〜まるちょばSHOW!』に限って言うと、結成以来17年ぐらい、ずっとやっているショーなんです。何かアドリブが出来た時、それが面白かったら次からこれは定番にしよう!みたいないう形で作っていますね。あんまり膝を突き合わせて話し合うっていうことはないですね。『ロッケンロールペンギン』も今の形になったのは2007年かな。今回はリニューアルするんですが、リニューアルするにあたって10年前のビデオ見たり、NY公演のビデオ見たりして反省して改良しました。

––反省ですか。

ケッチ! 反省です。ここ間が悪いねとか、ここ分かりにくいんじゃないとか、このお客さんにはこういう順番に変えた方がいいんじゃないかとか、構成の問題ですね。より進化しているとは思います。

が〜まるちょば

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年齢・国籍・人種・言語・宗教・性別を飛び越えて

––言葉を使わないパフォーマンスの難しさと魅力とは何だと思いますか?

HIRO-PON 言葉って限定しちゃうと思うんですね。だけど、その言葉を使わないことによって100人いたら100通りの見え方ができる。今回は4歳未満の方は観られないですけど、それ以上の方、死ぬ間際の人まで(笑)今ここに生きている人が観て楽しめるっていうのは、やっぱり言葉がないからできているんだろうなぁとは思っていますね。映像で楽しむのではなく、その場に来て一緒に楽しむ。空気感は、舞台上の僕らだけでなくてお客さんと一緒になって創るもの。やっぱり言葉がないからできているんだろうなとは思っていますけどね。年齢、国籍、人種、言語を飛び越える。

ケッチ! 宗教もそうですね。

HIRO-PON 性別もそうかもな。

––1999年に結成されて18年目。変わってきたなということは何かありますか?

ケッチ! 最近HIRO-PONが見つけてきたんですが、2000年の時の映像がネットにアップされてて、それを見ると、まぁとにかく無駄が多い。今の方が全然洗練されていますね。ネタは一緒なんですけど、プレゼンの仕方に無駄が多かったり、いろんなところに無駄があって。まぁ逆にいうとすごく元気なんですけど(笑)。

HIRO-PON そういった意味では老いていますよ。ははは。老いているけれども、その分経験は増えているし、多分、ケッチ!くんが見た時に無駄が多いって言ったのは、肉体に頼っている部分が多々あったからだと思うんです。必要なのは肉体だけではないことを長年やっているとやはり悟ってくるので、肉体以外の部分も大事にするようにはなってきているんだろうなと。

––パフォーマーとしてずっと一線で活躍されていますが、日常生活からいつも「パフォーマー」なのでしょうか?

HIRO-PON 意外とこうやってインタビュー受けていると真面目なんですねって言われます(笑)。舞台上の僕らとずいぶん違うんだろうなと思います。だから普段からパフォーマンスをしているのかっていうと、どうなんだろう?パフォーマンスなのかな......。

ケッチ! 「パフォーマンス」はもちろんしちゃう時もありますけど、そうだな、何でも観察しちゃうのはちょっと職業病でありますよね。例えば、同じところで転んでも、恥ずかしく思う人と怒る人がいるし、ごまかしたりする人もいる。そういうのってキャラクターの違いですよね。同じ状況なのにそれをどう捉えるかっていうのに違いがあって。面白いですよね。

HIRO-PON 確かに寝ている時以外、アンテナは常に張っていると思いますね。

––それをお互い報告しあうわけですか?

ケッチ! そうですね~。

HIRO-PON でもプライベートは一緒にいないですね。いつも一緒にいるからこそ。それぞれの引き出しに閉まっている部分はあると思います。

––お話を伺っていると、とても真面目な印象を受けます。舞台に出る時の「スイッチ」はあるんですか?

ケッチ! 言ったら仕事なんでしょうね(笑)。

HIRO-PON そんなに意識はしていないですね。

ケッチ! 世の中のサラリーマンも別に会社に行く瞬間、「よし!今日もやったるぜ」って思っていないと思うんですよ。まぁ確かに「やったるで!」っていう瞬間がある時もありますけど。例えばすごく寒い会場で、前のコメディアンが失敗している時に「よし」って思ったりしますけど(笑)、自分たちのショーだったらそんなにはないかな。スイッチみたいなもの。

が〜まるちょば

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もっと活動を広く深く

––3月に、事務所がよしもとクリエイティブ・エージェンシーへ変わりました。何か変化は?

ケッチ! 今のところそんなに感じていないですが、先日までマレーシアのクアラルンプールに行った時、よしもとが派遣している「住みます芸人」の方が観に来てくれたりだとか、その関係の取材を入れてくださったりとか、普段の僕たちだったら来ないような人が観に来てくれたっていうのはあります。

 まぁ変化はこれからだと思います。たくさんいろんなことが変わるだろうなとは思います。日本最大級のエンターテイメントの会社なので、お金も持っているでしょうから(笑)、お互いやりたいこととかでも投資をしていただけたらとは思います。よしもとはアジアに進出していて、「住みます芸人」が色んなところにいる。そういうところにもアンテナ張っている人たちなので、僕らの海外での経験を生かせるでしょうし、逆に僕らはそんなに長い公演をアジアだと韓国ぐらいでしかやったことがないので、そういうこともできるかもしれないし、あとよしもとはヨーロッパには弱いので、僕らがそっちで協力できることもあるかもしれない。こんな感じで僕らの活動範囲が広く深くなっていけたら、と思います。ひいては日本の人たち面白いねと多くの人が観に来てくれて、現地の人が「俺たちもパントマイムやってみようぜ」みたいなのも嬉しい。

HIRO-PON 純粋に自分たちの活躍の場を増やしてもらいたいなとは思っていますね。それプラス僕らがやれることっていうのは、多岐にわたっていて。今までも映像とか、音楽とかそういったところに足を踏み入れてチャレンジをしてきたんで、それをもうちょっと具体的に、もっともっとエンターテイメントとして昇華できるようにしていきたい。よしもとに移ったことで、そういったことを考えられる人間との出会いっていうのもあると思うんです。何か協力してもらえたらいいなという風に思っています。活動を広く、深くですね。本末転倒にならないように。早くしないと死んじゃうんで(笑)。

––12月までのロング公演ですが、公演の合間は何をされているんですか?

ケッチ! それこそ、こないだマレーシアに行ったように海外に行ったり、いわゆる営業みたいなこともありますし。このステージが51公演でしょ、他にやっているとして、年間どれぐらいだろう。ステージ数で言ったら100ぐらいかな。3日に1回のペースぐらいですね。

HIRO-PON 多分、来年も新作を持ってツアーを巡ったりしなければならいといけないと思うので、合間合間にそれを思案しなくてはいけないと思っていますけどね。

––走り続ける活力源は何なのでしょうか?

ケッチ! 好きだからだと思うんですけどね、基本的には。苦だったらちょっとお休みくださいとかになりますし、僕の場合は(笑)。

HIRO-PON 僕の場合は(笑)。

ケッチ! でも全然苦じゃないので。あとはやっぱり各地に行った時、お客さんが喜んでくださるので、もちろん嬉しいですし。マレーシアでも喫茶店に並んでいた時に写真撮らせてくださいって来てくれのも嬉しかったですね。あぁマレーシアでもこんな知ってくれているんだって。10年間、僕らをYoutubeでしか見たことがなくて、やっと本物が見れたっていう方もいますし。あとは、僕らのパフォーマンスを見てパントマイムを始めた方もいらっしゃいます。2年前くらいにとある先輩にばったり会って、「ケッチ!ありがとうね。が〜まるちょばのおかげでパントマイムやる人増えてるよ」って言われて。「あ〜そうなんですね」って言って。僕らのところには届いてこないけど、確かに僕らが舞台公演するときに「チラシを折り込ませてください」って来て、それらを見ると結構パントマイムやっている人がいるんですよ。僕らを見て、少なからずパントマイムの世界に入った人がいるっていうことですよ。あぁやっててよかったなぁと思いますね。

HIRO-PON 面白くなかったら辞めてるだろうなって。やっぱり面白いんだろうなって。どうなったらやめるんだろうなって考えたときに、うーん.....やっぱり面白くなくなったら辞めちゃうんじゃないかなぁっていう風に思いますね。だからいろんなところでチャレンジしますねって言われるけれど、だけどそれがなくなっちゃったら面白くなくなるだろうなって思って。

 あとは、諦めたら終わりだなって。これでもういいだろうって思ったら、多分終わりなんだろうなって。「どうやったらプロフェッショナルになれますか」と聞かれたことがあったんですが、「結局は諦めないことなんじゃないかな」と、僕が行き着いた答えはそれです。諦めなければ、終わらないじゃないですか。諦めずに死んでいけば、何かになれなかったとしても、その一生を終えた悔いはなくなるんだと思うので。

––諦めないからこその17年、上を目指しつづけての17年なんですね。

HIRO-PON そうですね。まぁ老いは感じていますけど(笑)。老いっていうか、肉体とメンタルは比例するなって。だからどっちもバランスが取れているんでしょうね。だからもっともっと気力を高めなければならないっていう時は、もっともっと肉体も高めなければいけないんだろうなってすごく思ったりする今日この頃です(笑)。

––肉体的にトレーニングされているんですか?

HIRO-PON しなきゃいけないなと思っている、今日この頃です(笑)。

が〜まるちょば

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お互いにお互いを補い合うから

––結成秘話についてお尋ねしたいのですが、もともとはそれぞれがパフォーマーをされていて、出会われて、結成された。

HIRO-PON そう、それぞれ師匠も、パントマイムを習った場所も違うんですよ。フェスティバルがあってそこで出会った。

ケッチ! お互いに無いところを持っていたのが良かった。よく言うんですけど、HIRO-PONは石橋があったら叩いて叩いて叩きこわしちゃって渡れないタイプで、僕は石橋が壊れていても気がつかないで渡っちゃう。慎重派と全然慎重じゃない2人。

HIRO-PON 意見や解釈の違いはあるんです(笑)。でもお互いがお互いを補う部分があるので2人でやって来れている。お互いにそれを魅力に感じている部分はあるんだと思いますけどね。出会った時は意識はしてなかったですが、これまでやってきて、後々分かってきたことではありますよね。だからそれこそ2人でやる意味なんて最初の頃はわからなかった。お互いがお互いのお客さんを呼べば、純粋にお客が倍になるし、2人で会場を借りればお金は2分の1だし、くらいしか一緒にやることの利点を感じていなかったんです。でも、作品を一緒に創っていくとお互いがお互いを補い合って作品も2倍3倍、2乗3乗になっていくんだなと感じました。だからこそ2人でやって来れたし、2人でやっている意味もあるんだろうなと言う風に思っています。

––最後にお客様に一言ずつお願いします。

ケッチ! すごく分かりやすいショーなので、ファミリーでも観られますし、留学生でも観られます。特にが〜まるちょば未体験の人はぜひ観に来てください。

HIRO-PON テレビやインターネットで見るだけでは伝わらないものが、ライブではちゃんと伝わるので、世界規模の世界標準の舞台を観に、ぜひ足を運んで観に来て下さい。今回は皆さんのお近くまで伺いますので!

が〜まるちょば

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取材・文・撮影:五月女菜穂

公演情報
「That's が〜まるちょばSHOW!+ロッケンロールペンギン」
 
■日時・会場
2017年 5月27日(土)14:00 船橋市民文化ホール
2017年 5月28日(日)14:00 草加市文化会館ホール
2017年 6月 3日(土)15:00 水戸芸術館ACM劇場
2017年 6月11日(日)14:00 よみうりホール
2017年 6月30日(金)19:00 府中の森芸術劇場ふるさとホール
2017年 7月 1日(土)14:00 相模女子大学グリーンホール
2017年 7月 2日(日)14:30 駒ヶ根市文化会館
2017年 7月 7日(金)18:30 長岡リリックホール・コンサートホール
2017年 7月15日(土)15:00 桶川市民ホール
2017年 8月 5日(土)14:00 品川区きゅりあん大ホール
2017年 8月 6日(日)14:00 練馬文化センター大ホール
2017年 8月12日(土)14:00 富田林すばるホール2Fホール
2017年 8月20日(日) 14:00 八王子市芸術文化会館いちょうホール
2017年 8月27日(日)14:00 青葉の森公園芸術文化ホール(千葉市)
2017年 9月 2日(土)14:00 板橋区立文化会館大ホール
2017年 9月 3日(日)14:00 所沢ミューズマーキーホール
2017年 9月 9日(土)14:00 逗子文化プラザホール
2017年 9月16日(土)15:00 かくだ田園ホール
2017年 9月17日(日)15:00 石巻市河北総合センター ビッグバン 文化交流ホール
2017年 9月18日(月・祝)15:00 電力ホール
2017年10月15日(日)18:30 タワーホール船堀 5階大ホール
2017年10月28日(土)15:00 みかぼみらい館 大ホール
2017年11月12日(日)14:00 浦安市文化会館
2017年11月23日(木・祝)14:00 町田市民ホール
2017年11月26日(日)14:00 よみうりホール

■公式サイト:http://www.gamarjobat.com/

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