黒川麻衣、熱帯カジュアル第一弾は「空間から作る」

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2015.9.9

劇場の外に、ドライ&クールな魅力を発揮する場を探す

 熱帯の黒川麻衣がおよそ1年半ぶりに演劇公演を行う。前作では二葉亭四迷を題材にした劇団初の人物伝をやったり、その前には野口かおるとのユニットで驚きのつかこうへい(『売春捜査官』)に挑んだり、これから小劇場を担う俳優たちと共に3カ月ほどのワークショップを経て研究発表する熱帯ラボ〈LABO×EXPO〉を企画したりと、演劇のさまざまな方法を試して楽しんでいるように見える。演劇って、どうしても、お客さんが「この劇団のこういう作風」に期待するというか、あるいは安心を感じるところがあるから、縛られないと思っても、知らず知らずのうちに縛られてしまうところがあるのではないかと思う。たとえば黒川麻衣について言えば、熱帯の前身であるオッホ時代からの「浮遊した現代の闇を乾いた視点」といったものかもしれないけれど、ここ最近にいろいろ楽しんだからこそ、改めてその縛りに縛られていようがいまいが自由でいられることを発見しようとしている。

 黒川はここしばらく、落語の仕事をしていたそうだ。落語家と新作を共同製作したり、落語会の実行委員会を務めてみたり。そんな中で「座布団と手拭いと扇子があればできる落語を見ていたからこそ、劇場を出てみようと思った」という。そうやって選んだのは、“柔らかな光が窓から射し込み、東京の街を一望できる開放的な空間です。夜はライトアップされた東京タワーがきらめき、刻々と移り変わるときの記憶を刻む”が売り文句の目黒区・学芸大学駅のギャラリーだ。
 
目黒のあるマンション、レジデンスQ8階。窓には《Mt.Fuji92.2km》の文字。
スケルトン賃貸物件の内見に訪れた二組の不動産業者とその顧客。
日本の象徴から100km圏内で巻き起こる、とりとめのない1時間の物語。
 
 「たとえば喫茶店で数組の客がいて、従業員がいて、同じ空間を共有しているけど、それぞれの場所で思いのままにしゃべっている。今度の作品は、まさにそんな感じの演劇になっています。会場の構造上、選択した同時多発の一幕物だったのですが立体的に演劇を描けるこのスタイルに、可能性も感じていたりします」と黒川。

 見づらい、聞き取れない、と言われようが、ばらばらに配置された客席に座ったお客さんには、その席でしか感じられないドラマが体感できる。きっと昼と夜でもだいぶ印象が変わって見えるのではないだろうか。

 「感情を爆発させる演劇に対し“これぞ演劇”と評されることが多い気がします。『売春捜査官』を通して、もちろんつかさんはやはり凄いなと思いましたし、観客が興奮して喜んでくださることは、私ももちろんうれしかった。ですが同時に、私のやりたい演劇は別の方向にあることも気づかせてくれました。思いの丈を叫ぶ情熱的な演劇より、ドライにクールに現実を映し出したい。私は私の演劇を探求していけばいいやと開き直れたんです」

 ひと回りか、ふた回りかわからないけど、いろいろ試して感じた、自分らしい肌触りがより一層際立つ方法を探すために黒川は「また不自由を買って出るような冒険」をするのだという。

 カジュアルは、金額も上演時間も「カジュアル」になっている。
 
イベント情報
熱帯◎カジュアル『Mt.Fuji 92.2km
日時:2015年9月22日(火・祝) 〜27日(日)
会場:The 8th Gallery(CLASKA 8F)
作・演出:黒川麻衣
出演:芳賀晶 三土幸敏 相樂孝仁[殿様ランチ] 西本泰輔 あきやまみみこ  福住紗斗里 北之内直人[(裸)ミチコイスタンブール] 秋山想[TBプラネット]
公式サイト:http://www.nettai.jp
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