小池栄子が念願の三谷幸喜作品に初参加! キャスト全員が10歳の子供を演じる舞台『子供の事情』インタビュー
小池栄子『子供の事情』
2017年夏、最も豪華な座組!と言ってしまっても決して過言ではない、大注目の舞台がシス・カンパニー公演『子供の事情』。天海祐希、大泉洋、吉田羊、小池栄子、林遣都、春海四方、小手伸也、青木さやか、浅野和之、伊藤蘭といった、年齢も活動するフィールドも様々な人気者たちが全員、なんと“10歳の小学生”となって大暴れする、というのだから興味津々だ。脚本、演出を手がけるのは、昨年の大河ドラマ『真田丸』も大好評だった三谷幸喜。その三谷作品に、意外にも今回が記念すべき初参加となるのが小池栄子だ。作品ごとに進化し続ける“舞台女優”としても大いに注目を集めている小池に、三谷の最新作にしてある意味実験作にもなりそうな、この『子供の事情』への想いを語ってもらった。
――三谷幸喜さんの作品への出演は、これが初めてなんですね。
そうなんですよ。何年も前からずっと出たいと思っていたので、それが今回ようやく叶ってとてもうれしいです。
――これまで作品をご覧になってきて、観る側としては三谷作品のどういうところがお好きですか。
キャラクターが、みんなハッキリしているところでしょうか。私は『王様のレストラン』が今でもすごく好きで。テレビで見ていた当時は衝撃的でしたね。まだ舞台をそれほど観たことがない年齢でしたけど、なんだかやっぱり舞台のようで、ドラマってこんなに面白いんだ、この役をやっているこの人をもっと知りたいって思っていました。そのくらい、どの役のどの人も生き生きしていて、誰が次の回の主役になっても楽しみに思えるほど、役が役としてちゃんとそこに存在していた。とても魅力的な脚本を書かれる方なんだな、私もこの世界に入ってみたいなって思いましたね。
――作品が面白いと、こういうドラマを書く脚本家って一体どういう人なんだろうと気になりますよね。
はい。そうしたらその後、ちょこちょこ三谷さんがメディアに出てしゃべっているのを見て、こんなに面白い人なんだ!ってビックリしました。プッと笑っちゃうような、人間のちょっと間抜けなところを愛らしく描かれる方ですよね。
小池栄子『子供の事情』
――ここ最近は演劇のお仕事が次から次へと、しかも面白くて上質な作品ばかりが続いています。演劇のお仕事ならではの醍醐味とは。
やはり、お客様の前でやれるということでしょうか。誰に向けて、何をしたいかというのがとても明確ですし。お客様と一緒にその空間を作っていく感じが、とても好きなんです。特にコメディだと、日々の変動が激しいのも面白いし。
――やっぱり、コメディだと違いますか?
ええ、違いますね。お客様に引っ張られてはいけないとも思うけれど、でもお客様とうまい具合に呼吸が合った瞬間にこそ笑いが生まれるんだということは、うまい先輩がやってみせてくれるので。経験とかテクニックに長けている方だと、昨日と同じことをやっても今日のお客様の空気ではウケないと察知する能力がすごいんですよ。
――それに合わせて、芝居や呼吸を。
変えてきますね。間をちょっと詰めたり、空けたり。その先輩のおかげで見事にまた客席がアツくなる、という。ある意味、コメディは残酷だなとも思います。そういう才能の違いみたいなものが、ハッキリと出てしまうので。だから芸人さんの漫才とかも、ホントすごいなあって尊敬します。私には、とてもじゃないけど怖くてできないです。
――それにしても今回、夢のように豪華な顔合わせが実現しますね。
そうなんですよ。私も「これはとるのが難しそうね」って、いろいろな方から言われています(笑)。本当に、あこがれの大先輩ばかりです。でも今回、座組みの中では妹分になると思うので、その点はすごくラクというか。がっつり、先輩たちに甘えられて、気張らずにいけそうなのもうれしいです。舞台の時っていつもそうなんですよ、つい自分の立ち位置を考えちゃって。
小池栄子『子供の事情』
――そういうものですか?
なんとなく自分の居場所を、人は見つけたがるじゃないですか。バラエティでもそうなんですけど、自分の役割とか居場所を早く確保できると気苦労がなくなるというか(笑)。でも、まさに10歳の時の私も、そんな感じで生きていたように思います。
――10歳の時から?
仲間内でのポジションどりというのは、常に考えていました。このクラスの中だったら引っ張っていくほうが居やすいとか、このグループだったら「テヘ」って甘えたほうが居やすいとか。そういうところは今と、変わらないかもしれません。
――それもある程度、演じているんですかね?
演じているといえば演じているんでしょうねえ。だって家族の中でだって、家族4人でいる時と、そこにおじいちゃんやおばあちゃんが加わった時では、自分の立ち位置とかアピールの仕方が微妙に変わるじゃないですか。
――そうかもしれないです。
子供の時、そういう意識は異常に強かったです。
――それは10歳くらいの時に?
いえ、幼稚園くらいからそうでしたね。たぶん、実家が商売をしていて大人に囲まれる場面が多かったので、自分の見え方とか、大人の顔色を窺うのが、癖になっていたのかもしれません。
――現時点で三谷さんに注文したいことはありますか。
もう、ビシバシやってもらいたいです。もし同じクラスで同級生にいたら、私みたいなタイプ苦手なんじゃないかなって気もするんですけどね(笑)。でも私にとっては本当に、ずっとご一緒したかったあこがれの演出家の方なので。なんなりと、厳しく指導していただきたいです。稽古場では1日たりとも無駄にしたくない。そこで感じたこと、見たものを、油断することなくたっぷり楽しみたいです。
小池栄子『子供の事情』
――読者の方へ向けて、小池さんからお客様に向けてメッセージを。
をとるのが厳しそうと、諦めないでもらいたいです。きっとこの座組みでやるのは最初で最後の可能性が高いわけですから。どうにかして観に来ていただきたいです、絶対に後悔はさせませんから!
――演劇にそれほど馴染みのないお客様にもオススメできる舞台になりそうですよね。
「芸能人祭りだー」って思って観に来てくれてもいいので(笑)。これを導入に、ナマの芝居の魅力にハマるきっかけになったらもっとうれしいですし。ぜひともみなさん、この機会に劇場にお越しください!
取材・文=田中里津子 撮影=平田貴章