“フェチの祭典”でファッションとサブカルの最前線に迫る 『フェチフェス10』をレポート
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2017年4月30日、『フェチフェス10』が東京・日本橋の綿商会館にて開催された。フェチフェスは、“ジャパニーズフェチ”をテーマに、あらゆるジャンルのアーティストが集う即売会・パフォーマンスイベントだ。本レポートでは、10回目を迎える“フェチの祭典”の模様を、ファッションやサブカルの視点から紹介したい。
フェティッシュなファッションアイテム
魔界ノ風鷹
巡
フェチフェスでは、キツネの顔のアクセサリーや縄をモチーフにした和風小物など、一般の洋品店にはないフェティッシュなファッションアイテムが充実していた。女性の脚を飾るガーターも、アーティストの拘りが滲み出るハンドメイド作品ばかりだ。
fuzzy moco
「私自身がガーターフェチなんです」というfuzzy mocoは、自分が欲しいと思うデザインのガーターを作り続ける。彼女の思いに共感する若い女性たちがこれらを購入していくのだ。一方、candynoirの帽子職人・映水は、ウェディングガーターやハーネスガーターなど、日本では入手しにくいガーターを制作する。これらはニーソックスやジーンズなどとも合わせやすく、カジュアルファッションとして購入する女性が多いそうだ。
ファッションとしての首輪
銀龍堂
人首輪製作販売CrimsonCrow
近年、“首輪女子”が静かなブームとなっている。首輪をファッションとして取り入れた女性たちが、SNSに首輪姿の写真を投稿したり、各種イベントを開催したりしているのだ。こうした流行を背景に、フェチフェスでも、カラフルでお洒落な首輪から革製の本格的な首輪までが揃っていた。
Love Slave
可愛らしい首輪を制作販売するのはLove Slave。主宰の月夜野うさこは、「私が作る首輪は、パーカーに合わせるのがお勧めです。首輪がチラッと見えるのが可愛いんです」と語る。Love Slaveの首輪はサブカル系の店で販売されていて、購入者の中心も若いサブカル女子だという。首輪のイメージを塗り替えるLove Slaveが、“首輪女子”ブームの一端を担っているのだ。
ラバーやサイバーを直接購入できる
LIAIZON(中央がオーナーのよっしー)
フェチフェスは、本格的なフェティッシュファッションを直接購入できる場でもある。たとえば、ラバー専門店のLIAIZONのブースでは、ラバー衣装を試着する来場者が後を絶たなかった。オーナーを務めるよっしーが「ラバードレスやラバースカートなど、カジュアルなラバー衣装が人気です」と話す通り、普段使いできるラバーファッションは、女性を中心として、幅広い年齢層の人たちに受け入れられている。
D/3(売り子のgyava(左)とデザイナーのkossy(右))
D/3(アーティストとコラボしたタイツ)
D/3は、新たなサイバースタイルを模索するファッションブランドだ。最近は、首輪や手枷、パワー系の小物などを新たに制作する一方で、タイツやニーハイといった定番アイテムの充実も図っている。デザイナーのkossyは、「サイバーが好きな人以外にもサイバーを知ってもらいたい」という信念の下、さまざまなジャンルのアーティストとのコラボを展開。サイバーとはベクトルの異なるアート表現を積極的に取り入れているのだ。
フェチとサブカルが交錯する
Kitanya Design Factory
アーニトル
フェチとサブカルは親和性が高い。特定の嗜好や感性がサブカルチャーの原動力となるからだ。サブカルファッションにみられる明るく、キュートで、フェティッシュな世界観は、一般の人たちからも歓迎されやすい。『フェチフェス10』でも、さまざまなものを可愛く縛ったストラップや、ネコやカニをモチーフにしたフィギュアが好評だった。
前衛派珈琲処マッチングモヲル
一方で、サブカルと呼ばれる領域の中にはアングラな世界も広がっている。『フェチフェス10』のメインビジュアルは丸尾末広の『少女椿』だが、これはアングラ漫画界の伝説的作品である。また、会場入り口で来場者を出迎えていた前衛派珈琲処マッチングモヲルは、東京・高円寺で喫茶店を運営し、サブカル好きのアーティストとファンとの交流を支援する。今回のフェチフェスでは、オリジナルのニーハイやタイツを中心に出展。アングラを好むサブカル女子たちで賑わっていた。
サブカルをリードする口枷屋モイラ
口枷屋モイラ
サブカル界隈のファッションリーダーである口枷屋モイラはフェチフェスの常連出展者だ。『フェチフェス10』では記念トークショーに登壇。「口枷を作るようになったのは、小学校のときに歯医者さんの息子さんに恋をしたのがきっかけ」と、自らの“口腔フェチ”について語った。
“衣装フェチ”でもあるモイラは、オリジナルブランドを展開し、自らデザインした水着や衣装などを制作販売する。主な購買層は20代の女性で、撮影会やイベントで衣装を使うモデルやコスプレイヤーに加えて、ファッションやアートに興味のある美大生や芸大生にもファンが多い。新作「チャイナスク水」は、流行の最先端を行くモイラの斬新な発想から生まれた。
「最近はチャイナがブームですが、チャイナドレス以外の衣装はほとんどありません。そこで、自分のブランドで何か出せないかなと思って、スク水とチャイナを合わせてみました」と語るモイラ。特に赤黒のチャイナスク水は需要が高く、フェチ衣装の新たなマストになりつつあるという。
School Fiction 2017SS"チャイナスク水"
「7月の海の日には、下着と水着とフェチ衣装の即売会を企画しています。女性専用のフォトブースと試着室を設けて、衣装で写真が撮影できたりします。会場は可愛いスタジオなので、女の子はぜひ遊びに来てください」。精力的にイベントを企画するモイラは、これからもフェチフェスを、そしてサブカルチャーを盛り上げていくのだろう。
フェチフェスと日本のカルチャーシーン
TOKYO ZENTAI CLUB
フェチフェスは、拘りのフェチを追求する場であると同時に、交流を通して新たなフェチに目覚める場でもある。人と人、人とフェチ、フェチとフェチが出会い、今までにないアート表現が生まれる。ファッションやサブカルもその影響を受けて進歩するのだ。“フェチ”が多くの人たちに受け入れられつつある昨今、日本のカルチャーシーンにおいて、フェチフェスはますます大きな役割を果たすことになるだろう。今後の展開に期待したい。