6年ぶりにウェンディを演じる神田沙也加にインタビュー! ~ ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』

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神田沙也加

神田沙也加


1981年以来毎年上演され、世代を超えて愛されてきたブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。37年目を迎える今年の本作に、6年ぶりにウェンディ役として出演するのが神田沙也加。役に対する思いなど、話を聞くことができた。


−−まずはご結婚おめでとうございます。ミュージカル『キューティ・ブロンド』での好演からお忙しい日々ですね。

ありがとうございます。『キューティ・ブロンド』の後は結婚式もあったので、予めお休みをもらっていました。お仕事が始まってきたところでの今回の『ピーターパン』なので、今リフレッシュしていて、とてもいい状態です。ワンクッションを挟めたのが良かったです。

−−神田さんのブログを拝読したのですが、ドレスがとても可愛いらしくて。幸せオーラが全開でした。

嬉しい!(笑) そうなんですよ、もっと、俗に言うプリンセスみたいなドレスにするかと思いきや、そこは違うんだなって。自分で決めたんですけどね(笑)。カタログを見た時から絶対にこれがいいと思っていたんです。

−−今回の『ピーターパン』出演は2009~2011年に高畑充希さん(ピーターパン役)と共演して以来ですね。

そうですね。6年ぶりです。    

−−神田さんにとってウェンディとはどんな役なのでしょうか。

3年連続で、同じ季節に同じ役をやらせて頂けるっていうのは役者として贅沢だと思っていました。なぜなら、翌年の公演までの1年間に、その役について考える猶予を与えられるからです。当時は毎年、ウェンディのことを理解していったり、シンクロしていけたり、そういう感覚があったんですよね。卒業式とかでもあまり泣くタイプではないんですけど、最後の3年目が終わる時はすごく泣いちゃって。『ピーターパン』の世界とも、ネバーランドとも、ウェンディとも別れるのがすごく寂しかった記憶があります。今回のようにウェンディ役にカムバックできるとは全然思っていませんでしたから。年齢的にも子供じゃなくなっていくばかりなので(笑)、今回カムバックできたことは、ちょっとびっくりしていますね。

−−すると、年を経てからこその部分も出てくるのでしょうか。

うん、そこを生かさないと6年経った意味がないかなと思います。ネバーランドに行ってからの心境の変化だったり、ピーターパンとの関係の距離とか、そういったものをより繊細に表現したいですね。前回は「大好きなことと別れるのが寂しい!」という気持ちが占めていましたが(笑)、今回はもう少し作品の背景に迫れるといいかなと思っています。

−−ウェンディは最終的には「母」になるわけですが、プライベートでの変化も影響しそうですか。

ん~そうですね……1年目の時に、ウェンディが母になるのがすごく難しかったんですよ。声色をウェンディとして可愛らしく作っていたこともあって、(母になってからは)少し落ち着いた声色にしてみようとか、あるいは間とか喋り方も少し落ち着かせてみようとか、そういうことしか思い浮かびませんでした。自分に年輪がなかったので、とても手こずった記憶があります。けれど今は、母親になったウェンディが私の実年齢に近いというか、今の私よりも若いと思うので、きっとこのままやればいいのかなって。もともと少女ウェンディがピーターパンと冒険していくところに関しては、私、自信があったんです。ウェンディというキャラクターになりきれていたと思うんです。そして今回、母になったウェンディもやりやすくなったとすれば、これはもう全体的に余裕を持って楽しみながら演じられるのかなと思っています。……時間って恐ろしいですね(笑)。

−−今回のお相手役10代目ピーターパンは吉柳咲良(きりゅう・さくら)さんですが、もう会われましたか。

はい、『キューティ・ブロンド』を一度観に来てくれました。彼女は13歳ですよ! 私、倍以上……(笑)。やはりピーターパンをやる子には「ピーターパンだなっ」て思わせるものがすごく出ていました。わかります?(笑) 体型もそうだし、中性的な感じを醸し出しているなと。私、(高畑)充希と3年間やっていた中で、(元ピーターパンの)笹本玲奈も入ってきた時があって。笹本玲奈とは当時女子として仲が良かったんですが、やっぱりピーターパンをやる人にはあるんですよね(笑)。性別の間を生きている感じというか、マニッシュというか。そういう魅力を感じていました。

−−吉柳咲良さんに初めて会った時もピーターパンらしさを感じたのですね。

はい、とても感じました。あれはどういう感覚なんだろう。年齢が倍以上も下のピーターパンに初恋する感じが無理なく作れそうなユニセックスな感じがありました。そのフレッシュさに惹かれていけば無理なく演じていけるのかなと思いますね。

−−演出は『ジャージー・ボーイズ』の演出などで注目を集める俊英の藤田俊太郎さんです。藤田さんの印象はどうですか。

藤田さんも『キューティ・ブロンド』を観に来てくださいました。ご自身が本当に華がある方なので、その藤田さんが創られる世界もきっと、こういうファンタジーではより華々しくなるだろうと思いますし、でもリアルなところはリアルに演出をつけてくださる気もしています。芝居心をとてもよく分かっていらっしゃる方とお見受けしますので、その点でも安心です。実際、すでに世の中から高く評価されていて、そういう旬の演出家の方から学ばせて頂けるのはすごく嬉しいことです。

−−藤田さんは『キューティ・ブロンド』をご覧になって何か仰っていましたか。

「素晴らしいです、ご一緒できて光栄です」と、大変もったいない御言葉を頂きました。「いえ、それはこちらのセリフです」という感じでした(笑)。腰がとても低い方でした。心から褒めていただいているというのが伝わったので、藤田さんに言っていただけるなんて本当に嬉しいなあと思いました。

−−『キューティ・ブロンド』で演じた主人公エルと、『ピーターパン』のウェンディ。神田さんの中で共通点はございますか。

強いて言うなら、自分が信じたものに対して疑いを持たないところかなぁ。でも、あとはあまり似ていないかもしれないですね。ただ……前回『ピーターパン』に参加させていただいた時は、ネバーランドに行ってからお母さんと呼ばれる存在になるので、優しさを前面に出したウェンディにしていたんです。でも今回は自分が大人になったというのもあって、オシャマな部分を打ち出していきたいなと思っています。女の子の方が男の子よりも精神年齢が高いと言われたりしますしね。そこで『キューティ・ブロンド』のエルの経験を活かせるかもしれません。『ピーターパン』て、基本的にはガールミーツボーイの話だと思うんです。けれどその逆も、ボーイミーツガールの話としても成立するようにしたいですね。ウェンディは、ピーターパンからただ忘れられていく存在ではなく、何かちゃんと爪痕を残せる女子でありたいかなって思います。

−−ウェンディへの思い入れはかなりお強いようですね。

はい、とても強いですね。公演が終わった時に涙できる役って2種類あるんです。自分と非常に近しくなってしまった役柄と、とても大変だった役柄っていうのがあると思うんです。ウェンディの場合、純粋に前者のパターンです。夏だけ会えるとても仲良しのパートナーという感じでした。とても大切な役です。自分の女優業の中で、プロフィール上、最も自信のある、とても自分に近い役、看板と言っても過言ではありません。初めて観たミュージカルも『ピーターパン』だったんです。7歳ぐらいの時に観たのです。そういう意味では本当に付き合いが長いですよね。

−−初めて『ピーターパン』を観た時からウェンディはやりたかったのですか。

いえ、その時は全然思っていなかったですね。ただただ、本当に飛ぶことにびっくりして。何が起きたか分からないんですよね。目の前で飛び上がられると。何も言えないというか。後年に私自身がウェンディとして飛んだ時、客席の中に見えた子供たちの顔を、私もしていたんだろうなってと(笑)。口をポカーンと開けて(笑)。

−−フライングをしている時はどんな気持ちなのですか。やはり気持ちいいものなのですか。

そうですね。フライングも割と自信あります(笑)。ウェンディのフライング。ピーターパンと吊り方が違って、ちゃんと体幹をとっていないとクルクル自転しちゃうんです。ただ吊られて振られるのではなくて、体幹がしっかりないと飛べない。6年間のブランクを経て経験値がゼロに戻ってはいないと思いますが(笑)。以前やらせていただいている間に、ここはこういう風にするとシルエットが綺麗だとか、こうすると兄弟と繋がっている時もテンションのかけ方が安全に出来るなとか、色々と研究ができました。フライング経験があるっていうのは誰にでもあることではないので、他の現場で「フライングをやったことがあります」というと、驚かれますね。

−−初めてフライングした時のことは覚えていらっしゃいますか。

覚えています。はっきりと覚えていますね。ウェンディが飛び上がる時に軽くスピンがかかり、それがまず自力では無理な動きと高さなんです。人と人同士で成り立っている動きなので、いい意味で毎日感覚が違うんですよ。安全面の確保は毎回一緒なんですけど、新鮮さが失われることはないので、飛び上がる感動は今回も楽しみですね。

−−『ピーターパン』の中で一番好きな場面はどの場面ですか。

最初にダーリング家で、(前回の演出だと)子供たちがお留守番になるので、ダーリング夫人(入絵加奈子)に寝かしつけてもらって歌を歌ってもらうところがあるんです。その歌がとても平和で、こういう家庭に憧れるよねっていう温かさの象徴みたいなもの。そこがしっかり出来ていないと、ウェンディが大人になった時に、ピーターパンとの出会いでネバーランドに行った時の世界観との対比が出せないと思うんです。そこの稽古を結構やりましたね。だから、その場面がすごく好きです。

あとは、ピーターパンが来て、最初、彼の言っていることが分からなくてずっと意思の疎通が図れないけれど、影を縫い付けて行ったり、一緒に歌ったり、ネバーランドへの思いを馳せているうちに分かり合っていって、一緒の世界を見出す。そうしてネバーランドが見えてくる瞬間がすごく好きです。

−−キャストも変わり、演出も変わります。神田さんとしては、どんな『ピーターパン』をお客様に見せたいですか。

以前参加させていただいた時も、1回演出が変わったり、振付が全部変わりました。『ピーターパン』は多面的に捉えられるお話であり、いろんな見方やいろんな魅せ方ができる作品だと思うんですね。だからキャストや演出、衣装などが変わるだけ、楽しみ方が増えるという解釈でいいと思うんです。だから真っさらな気持ちで、「そういう解釈もあるんだね」と新たな自分を発見するつもりで真っ白でいきます。お客さんと同じスピードで新たな『ピーターパン』を発見できたらと思います。

−−では、作品のファンの方にも、初めて観る方にもお勧めできる舞台となりそうですね。

そうですね。初めて観る方にお勧めというのは、「自分もそうだった」と、身をもって証明できることです。あとは、ファンタジーという部分ばかりを見ていると忘れがちですけれど、れっきとしたブロードウェイミュージカルなので、質の高い楽曲や本であること。そこは大人の『ピーターパン』ファンの方々に受け止めていただける要素ですよね。だから「毎年必ず観ています」と言ってくださる方も多いんです。これだけ広い世代の人に、一点の曇りもなく自信を持って「観に来てください」と言える作品って昨今なかなかありそうでないかなと。どんな年代の方々にも、どんな性別の方々にも強くお勧めできるプロダクションに関われているということに、強く誇りを感じています。

取材・文=五月女菜穂

公演情報
 
青山メインランドファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』
 
■原作:ジェームズ・M・バリ
■作詞:キャロリン・リー
■作曲:ムース・チャーラップ
■演出:藤田俊太郎
■出演:
吉柳咲良・・・ピーターパン
神田沙也加・・・ウェンディ
宮澤佐江・・・タイガー・リリー
入絵加奈子・・・ダーリング夫人
久保田磨希・・・ライザ
石井正則・・・スミー

鶴見辰吾・・・フック船長/ダーリング氏

 
萬谷法英 笠原竜司 章平 大音智海
高田亜矢子 天羽尚吾 鈴木亜里紗 滝川華子 鈴木麻祐理
大竹尚 小山圭太 笹岡征矢 白石健太
三浦莉奈 
福田徠冴 桑原愛佳(Wキャスト)山田樺音(Wキャスト)
 
【東京公演】
■日時:2017年7月24日(月)~8月3日(木)
■会場:東京国際フォーラムホールC
 
【静岡公演】
■日時:2017年8月5日(土/貸切)~8月6日(日)
■会場:静岡市清水文化会館マリナート大ホール
 
【大阪公演】
■日時:2017年8月12日(土)~8月13日(日)
■会場:梅田芸術劇場メインホール

 
■公式サイト:http://hpot.jp/stage/peterpan
 
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