石丸幹二「今この時代だからこそ観て考えて頂きたい」~日本初演ミュージカル『パレード』初日観劇レポート

レポート
舞台
2017.5.20
 (撮影:宮川舞子)

(撮影:宮川舞子)


1998年ブロードウェイ初演でトニー賞最優秀作詞作曲賞、同最優秀脚本賞を受賞したブロードウェイ・ミュージカル『パレード』が、5月18日、東京芸術劇場で日本初演の幕を開けた。本作は20世紀初頭にアメリカ南部で起きた冤罪事件を題材とする社会派作品。第21回読売演劇大賞の大賞と最優秀演出家賞をW受賞するなど大注目の演出家・森新太郎のもと、主人公のレオ・フランク役を石丸幹二、妻のルシール役を堀内敬子が演じる。初日の観劇レポートをお伝えする。

物語の舞台は、1913年アメリカ南部の中心、ジョージア州アトランタ。13歳の白人少女の強姦殺人事件で、容疑者として逮捕されたのが、少女が働いていた鉛筆工場長のレオ・フランク(石丸幹二)だった。彼はユダヤ人だった。第1幕(およそ80分)では、事件の早期解決を図りたい州検事ヒュー・ドーシー(石川禅)が、レオを犯人へと仕立てあげていく様子から、裁判で判決が下されるまでの場面を描く。15分の休憩を挟んで、第2幕はおよそ65分。有罪判決を受けたレオの潔白を示すために妻のルシールが行動を起こす。二人の絆が深まっていくのだが、結末は重い。観劇後はどう受け止めるべきなのか、様々な思いが交錯するだろう。

(撮影:宮川舞子)

(撮影:宮川舞子)

当時のアメリカ社会や人間心理に深く切り込んだドラマではあるが、多彩な楽曲が盛り込まれ、芝居もテンポよく進む上、視覚的にとてもよく計算された舞台なので、無理なく物語に入り込むことができるだろう。例えば、プロローグの「The Old Red Hills of Home(プロローグ:ふるさとの赤い丘)」。眩しいほどの深紅のホリゾントを背景に、舞台には大きな樹木がそびえ立つ。構図としてこれ以上ないほど格好よく、グッと心を鷲掴みにされた。また、「The Dream of Atlanta(アトランタの夢)」で降るカラフルな紙吹雪(第2幕はこの紙吹雪がよりいっそう引き立って見えた)、右に左に回転する舞台、場面を切り取る直線的な照明、森山開次のシンプルだが印象強い振付などなど、演劇的に面白い要素が多く、見惚れた。

(撮影:宮川舞子)

(撮影:宮川舞子)

演出の森自身、「ここ数年、気がつけば『ジュリアス・シーザー』や『人民の敵』など、民衆の存在が重要な作品を続けて演出してきた。さらに遡ってみると、どうも自分はその手の作品を好んで選ぶ傾向があることに気づく」(『パレード』公式パンフレットより)と語っているように、民衆の魅せ方が非常に巧みだった。石丸と堀内以外は全員が複数役を演じており、民衆が放つ怒りや熱狂、「事実」が歪められていく過程がリアルに見て取れた。

石丸と堀内が劇団四季以来17年ぶりに舞台共演をするのも今回の『パレード』の魅力の一つ。俳優としての信頼と絆が自然と表現に滲み出て、レオとルシールという苦境の中を生き抜く夫婦の姿と重なる。抜群の歌唱力で、2人のデュオ「This Is Not Over Yet(まだ終わりじゃない)」や「All the Wasted Time(無駄にした時間)」などは聞き応え十分だ。

(撮影:宮川舞子)

(撮影:宮川舞子)

初日の舞台挨拶には、『パレード』の作者であるアルフレッド・ウーリー氏が登壇。ウーリー氏は「『パレード』の日本初演を観ることができて嬉しい。この作品は、(日本から見て)地球の反対側にある私の生まれ故郷で実際に起こったことで、それを具現化してくださって、深く感動している。心から感謝する」と述べた。

レオを演じた石丸は「かなりヘビーな内容でいろいろ思いが巡っているかと思いますが、千秋楽に向けて発展・進化を必ずお見せします。今この時代だからこそ観て考えて頂きたい作品です。明日からもこの熱を忘れないよう精進してまいります」と締めくくった。

※関連記事はこちら「ミュージカル『パレード』稽古場レポート〜演出家と俳優の緻密な対話が重ねられる白熱の稽古場

取材・文・撮影=五月女菜穂

(撮影 HIRO KIMURA)

(撮影 HIRO KIMURA)

公演情報
ミュージカル『パレード』

■作:アルフレッド・ウーリー
■作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
■共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
■演出:森新太郎
■キャスト:
石丸幹二、堀内敬子、武田真治、新納慎也/
安崎求、未来優希、小野田龍之介/
宮川浩、秋園美緒、飯野めぐみ、莉奈/
坂元健児、藤木孝、石川禅、岡本健一

■日程・会場
<東京公演>
2017年5月18日(木)~6月4日(日)
東京芸術劇場プレイハウス(豊島区西池袋1-8-1)
:S席 13,000円/サイドシート 8,500円(全席指定・消費税込)
問合せ:ホリプロセンター Tel.03-3490-4949(平日10時~18時、土曜10時~13時)
共催:東京芸術劇場(公益財産法人東京都歴史文化財団)
主催:ホリプロ
http://hpot.jp/stage/parade
 
<大阪公演>
2017年6月8日(木)~6月10日(土)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪市北区茶屋町19-1)
:全席 12,500円 (全席指定・税込)
一般発売:2017年3月11日(土)
問合せ:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ Tel.06-6377-3888
主催:梅田芸術劇場 朝日放送
http://www.umegei.com/schedule/620/
 
<名古屋公演>
2017年6月15日(木)
愛知県芸術劇場 大ホール
:S席 13,000円 A席 10,000円 B席 7,000円(税込)
一般発売:2017年3月4日(土) 
問合せ:キョードー東海 Tel.052-972-7466 月~土10:00~19:00(日・祝休)
主催:テレビ愛知 キョードー東海
http://www.kyodotokai.co.jp/events/detail/1317
 
■企画制作:ホリプロ
■公式HP:http://hpot.jp/stage/parade
■公式ツイッター:https://twitter.com/parade_musical

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