ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』異色の組み合わせ!?ペヤンヌマキ×福本雄樹(唐組)にインタビュー
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福本雄樹・ペヤンヌマキ (撮影=安藤光夫)
AVの撮影現場、清掃会社の休憩室、温泉旅館の一室などを舞台に、女たちのドロドロした関係を生々しく描き、醜くも可笑しい女の実態をあぶり出す作風で話題の「ブス会*」。主宰で全作品の作・演出を手掛けるペヤンヌマキは、ペヤングマキ名義でAV監督として活動するほか、『メンズ温泉』『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』などテレビ番組の演出、NHKラジオ第1『劇ラヂ!ライブ』の作・演出、書籍やコラムの執筆と、多方面で活躍している。40歳を機に同い年の安藤玉恵と共に『ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕○周年記念ブス会*』を始動。その第一弾『男女逆転版・痴人の愛』が、7月のリーディング公演を経て12月にこまばアゴラ劇場で上演される。40歳独身女性の〝私″(安藤玉恵)が美少年ナオミ(福本雄樹)と出会い、翻弄され身を滅ぼしていく……というストーリーだ。ナオミを演じる福本雄樹は、劇団唐組で頭角を現している若手俳優。ペヤンヌマキと福本雄樹に、本作について語ってもらった。
福本雄樹
やっと「ナオミ」を見つけた『男女逆転版・痴人の愛』
──今回の公演は『ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*』と銘打たれていますが、どんな企画なんですか?
ペヤンヌ 同い年の安藤玉恵さんと、40歳、50歳、60歳……と節目の年に一緒に舞台をやるという企画です。何歳までできるかわかりませんが(笑)。ちょうど10年前の30歳のときに安藤さんと一緒に『女のみち』という舞台を作り、それがきっかけでブス会*を立ち上げることができたので、40歳を記念してなにかやりたいねと一年ほど前から企画を温めていました。
──その公演の題材に谷崎潤一郎の『痴人の愛』を選ばれた理由は?
ペヤンヌ もともと大好きな小説なんですが、40歳になって改めて読み返したら、ナオミではなく譲治さんのほうに感情移入して読んでしまって。新たな視点で共感できたんです。『痴人の愛』はオジサンである譲治が若いナオミに翻弄される話ですが、その男女逆転版を舞台でやったら面白いんじゃないかと思いました。
──今回福本さんにオファーされたのは、舞台をご覧になってですか?
ペヤンヌ はい。去年の頭に、唐組の役者さんが出演された泉鏡花のリーディング公演をたまたま観に行って。そのとき福本くんは言葉がしゃべれない少年の役だったんですよね。
福本 そうですね。『高野聖』という作品で、言葉はしゃべれないけど歌を歌わせるとすごくうまい少年の役をやらせていただきました。
ペヤンヌ 強烈な印象でした。台詞をほとんどしゃべっていないのにずっと見続けてしまうくらい福本くんの存在感がすごくて。それで去年の夏、ワークショップに来ていただいたんです。ブス会*でいつもやっているような会話劇はどんな感じでやられるのかなと、ワークショップで台詞劇をやっていただきました。
福本 男女の会話劇をやらせていただいたんですが、結構生々しかったです。唐さんは絶対そういうふうには書かないので。でも新鮮で楽しかったですね。
ペヤンヌ ご本人と話してみると、なんだか世話をしたくなるような気分にさせるキャラクターで。福本くんがナオミ役をやったらすごくハマると感じ、今回の企画が具体的に立ち上がりました。
ペヤンヌマキ (撮影=安藤光夫)
──それでは、今回の公演は福本さんありきなんですね。
ペヤンヌ はい。私は当て書きで脚本を書くことが多いので、キャストが決まらないと台詞が浮かばないんです。
──福本さんのなかにナオミ的な部分があるということでしょうか?
福本 うーん……。意識せずに人を振り回しているところはあるかもしれないです(笑)。
ペヤンヌ 一番タチ悪いですね(笑)。
福本 あと、人としてダメだなと思うんですが、僕、謝ったり「ありがとうございます」と言ったりすることがすごく苦手なんです。
ペヤンヌ 唐組ってそういうの厳しいんじゃないんですか?
福本 表面上は謝っていても心のなかでは全然そんなこと思ってなかったりとか。
ペヤンヌ (笑)。
福本 ナオミも、心のなかで思っていることと口に出していることがまったく逆だったりする。そういう部分は自分もあるなと。
福本雄樹
抒情的な舞台にしたい
──福本さんは大学在学中の2014年に唐組に入団され、『桃太郎の母』『鯨リチャード』『ビンローの封印』で主役に抜擢されました。世代交代が進んでいる唐組で実力を発揮されていますが、唐組に入られたきっかけは?
福本 唐さんの一番下の息子である大鶴佐助と大学の同期で。彼に連れられて、唐さんが倒れる前の唐組の舞台を観に行って、衝撃を受けました。なんの予備知識もなかったので、最後にテントがバーッと開くところは鳥肌が立ったし、もっとよく知りたいと思って唐さんの本を読みました。2013年に佐助が『糸女郎』で主役をやったとき、僕も一緒に出させていただいたのが入団のきっかけです。
ペヤンヌ 唐組はみんなでテントを建てたり泊まり込みでテント番をしたり、すごいですよね。チラシの折り込みに行ったとき、福本くんと後輩の役者さんがテント番で雑魚寝してました(笑)。
福本 ほかを知らないからそれが当たり前だと思ってやってますね。やることはいっぱいあるけど、うちは芝居をやる集団だから全部そこに繋がってるんだと先輩たちは言っています。
福本雄樹 (撮影=安藤光夫)
──ブス会*では唐組とは全然違うものが求められると思いますが、どのように臨もうと?
福本 今の時点ではまだわからないですね。あまり一人で考えすぎてもよくないかなと。安藤さんという大先輩もいらっしゃいますから、反応を見つつ探っていきたいです。
ペヤンヌ ワークショップのときも、自分一人でキメキメでやるんじゃなく、相手の反応を見てお芝居をされてましたよね。今回は古典のアレンジになるので、これまでのブス会*の会話中心の芝居とは違った抒情的なものにしたいと思っています。福本くんはそういう空気を持っている方だと思うので、そこを出していただきたいですね。
リーディング公演で揉んでからさらに深める
──『痴人の愛』を現代に置き換え男女逆転にして描くということで、原作とはまったく違うものになりそうですね。
ペヤンヌ そうですね。たとえば山岸門人くんが演じる浜田は原作ではナオミの浮気相手の一人で、単純に男女置き換えると若い女性になるんですけど、あえて男性にしました。門人くんにもワークショップに来ていただいて、福本くんと二人で会話劇をやっていただいたんです。バーで女が隣りにいるのにそちらには興味を示さず門人くんに熱い眼差しを向ける福本くん、みたいな設定で(笑)。そのときの二人の雰囲気が、思わず身を乗り出してしまうほど良くて。門人くんとのシーンでは、ナオミの男女問わず人を振り回す人たらしな部分が表現できるといいなと思ってます。
──官能的なシーンもありそうですが、具体的なイメージはされていますか?
ペヤンヌ ある程度は。福本くんには女装してほしいですね。『鯨リチャード』で女装されたとうかがったので。安藤さんが、自分が着れなくなったドレスを福本くんに着せて「君のほうが似合うじゃない」と言ったり……。断片的なシーンの妄想をいろいろしていて、それをこれから繋げていくという感じです。
福本 なんでもやりますよ(笑)。
ペヤンヌ でもナオミだったら心のなかで「ケッ」と思ってそうですね。
福本 (笑)。
──7月に本公演に先駆けたリーディング公演が開催されますが、このような試みは初めてですよね。
ペヤンヌ はい。ワーク・イン・プログレス的に、一回リーディングで揉んでからさらに深めるということをやりたくて。今回のように一つの作品に半年以上かけてじっくり向き合える機会は貴重ですね。「ギャラリースペースしあん」は、一階にお庭が見渡せるギャラリースペースのある古民家で、とても雰囲気が良いんです。ここでリーディングと生演奏をやったら素敵だなと思って。美しくて官能的な舞台にしたいと思っていますので、どうぞご期待ください。
福本雄樹・ペヤンヌマキ (撮影=安藤光夫)
福本雄樹
取材・文=渡辺敏恵
ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*プレイベント
リーディング『男女逆転版・痴人の愛』
■脚本・演出 ペヤンヌマキ
■出演:安藤玉恵 福本雄樹(唐組) 山岸門人 / 浅井智佳子(チェロ演奏)
■日程:2017年7月15日(土)、16日(日) ※計5ステージ
■タイムテーブル:
7月15日(土)14:00 / 17:30
7月16日(日)11:00 / 14:00 / 17:00
■会場:ギャラリースペースしあん
東京都台東区東上野1-3-2 http://www.siang.jp/
■料金:前売2500円/当日2800円(整理番号付き自由席)
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■公式サイト:http://busukai.com
■問合せ: info@busukai.com
ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会
『男女逆転版・痴人の愛』
■日程:2017年12月8日(金)~19日(火)
■会場:こまばアゴラ劇場
■脚本・演出:ペヤンヌマキ
■出演予定:安藤玉恵 福本雄樹(唐組) 山岸門人
■公式サイト:http://busukai.com
■問合せ: info@busukai.com
■作:唐十郎
■演出:久保井研+唐十郎
■出演:久保井研、辻孝彦、藤井由紀、赤松由美、岡田悟一、南智章、清水航平、福本雄樹、河井裕一朗、福原由加里/全原徳和、大嶋丈仁、重村大介、熊野晋也
■料金(全公演共通):一般=前売3,500円、当日3,600円 学生=3,000円(前売・当日共)
■公式サイト:http://ameblo.jp/karagumi/