往年の人気ロックミュージカル『春のめざめ』がブロードウェイに帰るか
デフ・ウェスト・シアターの公式サイトより
思春期の性の悩みが引き起こす悲劇を描いた問題作
思春期の性の悩みが引き起こす悲劇を描いた人気ロック・ミュージカルがブロードウェイに戻ろうとしている。アメリカの諸演劇サイトが報じているところによれば、『春のめざめ(Spring Awakening)』が、今秋ブロードウェイでリヴァイヴァル上演される方向で調整中とのこと。
『春のめざめ』の初演オリジナル版はオフ・ブロードウェイを経て2006年にブロードウェイに進出、翌年トニー賞ミュージカル部門で最優秀作品賞など8部門を獲得した。フランク・ヴェデキントが19世紀に書いた同名戯曲を原作に、スティーヴン・セイターが台本・歌詞を作り、ダンカン・シークが音楽をつけた。名匠マイケル・メイヤーが斬新でスタイリッシュな演出を施し、コンテンポラリーダンスのビル・T・ジョーンズが奇天烈な振付をおこなった。鮮烈な性表現を含む完成度の高い舞台が評判を呼び、観客たちから熱狂的支持を受けた。(余談だが、筆者はユージン・オニール劇場で10回以上リピート観劇。)
『glee』などアメリカのTVドラマや映画で活躍する、レア・ミッシェル、ジョナサン・グロフ、ジョン・ギャラガーJR、スカイラー・アスティンといった今をときめく人気俳優達は、この舞台のオリジナル・キャストだった。日本では2009年に劇団四季が日本語上演、主役のメルヒオールを柿澤勇人が演じた。(余談だが、筆者は四季自由劇場で10回以上リピート観劇。)
ときに、今回発表されたリヴァイヴァル版のプロダクションは、ロスアンゼルスを本拠地として活動をおこなうデフ・ウェスト・シアターだ。ブロードウェイ俳優のマイケル・アーデンが演出する。聴覚障がい者達によって構成される劇団なので、手話を交えたミュージカルとなる(手話と聞けば、今年日本で公開された映画『ザ・トライブ』のことを思い出す人もいるかもしれない)。このように初演版とはいろいろ趣が異なるものの、既にロスで上演された同舞台(アンディ・ミータスやクリスタ・ロドリゲスなども出演)は概ね高い評価を得ている。(余談だが、マイケル・アーデンとアンディ・ミータスは婚約!中とのことだ。)
デフ・ウェスト・シアターといえば過去『ミュージカル ビッグ・リバー』が評判をとり、2009年にホリプロがこれを招聘した。初演プロダクションの国内上演権はおそらく劇団四季が今も独占しているものと思われるが、ひょっとするとデフシアター版のほうは将来そのままの形で招聘が可能かもしれない。ぜひ、そうあって欲しい。
いずれにせよ、世界中の熱狂的ファンが引き寄せられる強い磁力を持つ作品のリヴァイヴァルだけに、今秋のブロードウェイでの盛り上がりは期待できそうだ。個人的にも手話付の「The Bitch Of Living」や「Totally Fucked」を早く観てみたいし、もちろん聴覚障がい者の人々にもぜひ楽しんで欲しい。