7月11日より紀伊國屋ホールにて開幕!劇団スタジオライフ『アドルフに告ぐ』日本篇、ドイツ篇、特別篇の3作品を上演!
戦後70年のこの夏、手塚治虫が週刊文春に連載した大人向けの漫画『アドルフに告ぐ』を8年ぶりに上演する劇団スタジオライフ。この作品は、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミルというアドルフ・ヒットラーと3人の同じ名前を持つ2人の少年の運命を描いた長編歴史ストーリー。
今回の公演では、8年前に舞台化した作品を再構築した「特別篇」と、新たに「日本篇」「ドイツ篇」の3つの作品を同時期・同劇場にて上演する。
去る6月、少年時代に戦争を体験し、手塚治虫とも親交のあった映画監督山本晋也と脚本・演出を手がける倉田淳の特別対談と製作発表が行われた。そこで表明された上演する意気込み、メッセージとは。
~特別対談より~
【山本晋也監督のエール】
原作を読んでいておれはわかった! このアドルフのうちの一人、アドルフ・カミルが言うセリフ、「おれの人生は一体なんだったんだろう。あちこちの国で正義というやつにつきあって。そして何もかも失った……肉親も……友情も……おれ自身まで……おれはおろかな人間なんだ。だが、おろかな人間がゴマンといるから、国が正義を振りかざせるんだろうな」というフレーズを作者は一番言いたかったんだろうなと。
このセリフからぼくは「国家という怪物が、正義という呪文を唱えるから気をつけろよ」というメッセージを受け取った。作者にとってアドルフ・ヒトラーなんてどうでもいいんだ。大事なのは誰に何を「告ぐ」のか。その主題を自分で探して作品を作っていって欲しい。必ず観に行きます。
山本晋也氏
~製作発表からのコメント~
【倉田淳(脚本・演出)】
今回、初の試みで長い原作を3つのパターンで作品にさせていただきます。
ドイツ篇では、ドイツの状況を、日本篇では日本の状況を多く紡ぎます。特別篇は、(アドルフ・)カウフマンと(アドルフ・)カミルを話の中心にもってくるため、少しずつ状況を変え創作しています。
今、日に日に、遠くから軍靴の音が聞こえてくるような社会の中で、この作品を上演することの意味を噛みしめながら取り組んでいきたいと思っています。アドルフの最後のセリフ「オレの人生は一体なんだったんだろう」という思いを誰にもさせたくないですし、そのために、作者が作品に込めた思いを私たち自身も「告がれ」たいし、後世に「告い」でいかないといけないと考えています。
【松本慎也(アドルフ・カウフマン役)】
戦後70年の今年、この作品でこの魅力的な役を演じられることを幸せに思います。
僕は戦争を実際には経験をしていませんが、実際に戦争を経験された手塚先生のたくさんの思いが詰め込まれた作品を、みんなと力を合わせて、魂を込めて演じることで、先生の思いを少しでも未来に繋げていける機会になればと思っています。
もちろん、エンターテインメント性に富んだ、みなさまに楽しんでいただける作品になりますので、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。
【緒方和也(アドルフ・カミル役)】
2007年の『アドルフに告ぐ』初演時には、入団一年目でした。今回、戦後70年の今年にまたこの作品を上演すること、またこの作品にこの役で出演できることに、大変身の引き締まる思いです。たくさんの方に観に来ていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
【仲原裕之(アドルフ・カウフマン役)】
特別篇は昨年、高校の演劇鑑賞会で上演させていただきました。演劇鑑賞会のため、なかなか演劇に興味の無い生徒さんもいるのですが、演じていて物語が進むにつれて、どんどんどんどん前のめりになって観てくれているなということをすごく感じ、手塚先生の力と芝居の力を感じることができました。その力を信じてとにかく、役者一人一人の熱量を本当に出して作品を作っていきたいと思っています。
【山本芳樹(アドルフ・カウフマン役)】
8年ぶりの再演ですが、初演に引き続き、アドルフ・カウフマン役を演じます。8年間の経験を踏まえ、8年前の自分より先輩の俳優として得てきたことなどを反映できたらいいなと思っています。
またこの作品が描く、歴史の大きな流れの中にただ存在するのではなく、いかに本当に生きられるか。ライブ感を出すように心がけたいと思います。
【奥田努(アドルフ・カミル役)】
舞台にとって、生で、お客様の前で演じることが大事なことだと思っています。
ぼくらはぼくらにしかできないやり方で、戦争やその状況に対する想いなどを、お客様に生で伝えられるように頑張りたいと思います。
【曽世海司(峠草平役)】
特別対談で山本監督のお話を伺い、我々が8年前に作り、今取り組んでいるこの作品に対するテーマ性に関しては、おそらく間違いはないだろうと確信を得ました。初演時に、驚くほどの好評をいただいた記憶があります。そこに今回、日本篇、ドイツ篇というもう2つルートを作り、3つの違う視点からこの作品に挑むことはすごく意義のあることだと考え、今、一丸となって取り組んでいます。
初演と引き続き演じる峠草平という役は、語り部、狂言回しという役割を担っていますが、彼自身がとても魅力的な人物です。自分がこの8年で培ったものを投影し、より魅力的な人物になるよう精進して参りますので、楽しみにして劇場に来ていただけたらと思います。
曽世海司・緒方和也・松本慎也・山本芳樹・奥田努・仲原裕之
創立30周年の記念公演第3弾。昨年他界した劇団の前代表・河内喜一郎が、決めていった最後のプログラム。6年前から「戦後70年」の2015年を見据え、奔走した彼の思いを胸に舞台に立つ劇団員たち。この戦争から節目の夏、紀伊國屋ホール、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ足を運んではいかがだろうか。
取材・文◇矢崎亜希子
劇団創立30周年記念公演第3弾『アドルフに告ぐ』
7月11日(土)~8月2日(日)於:紀伊國屋ホール
2015年8月22日(土)~23日(日)於:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
原作◇手塚治虫
脚本・演出◇倉田淳
出演◇山本芳樹 松本慎也 仲原裕之 奥田努 緒方和也 曽世海司 他
〈料金〉前売・当日共5800円、ウイークデイ・サンキュー(前売)3900円、学生券(前売・当日共)2900円
〈お問合せ〉03-5929-7039(平日12時~18時)
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