大衆演劇の入り口から[其之四]・前編 ただいま立川公演中!橘小竜丸劇団のガールズ・パワー

レポート
2015.9.12
橘鈴丸座長(2015/9/5)筆者撮影

橘鈴丸座長(2015/9/5)筆者撮影

頑張る女の子は、光だ。勇敢な女の子は、戦士だ。笑顔咲く女の子は、花だ。こぼれる笑みの奥で歯を食いしばり、高い壁に挑み続ける女の子は、革命の旗手だ。

花咲く女優さんたちのステージ

大衆演劇は男の社会。ほとんどの劇団は男座長で、男優さん中心に構成されている。けれどこの9月、東京・立川けやき座で観られるのは、まぶしいガールズ・パワー!

左からたちばな朱音さん・たちばな佑季さん・たちばな百花さん・たちばな千夏さん(2015/9/5)筆者撮影

左からたちばな朱音さん・たちばな佑季さん・たちばな百花さん・たちばな千夏さん(2015/9/5)筆者撮影

 

大衆演劇といえば、やくざの縞合羽に三度笠で渋い男優さんが登場する…そんなイメージをお持ちの方は、上のお写真にビックリしてくれたのじゃないだろうか? 9/5(土)夜の部の舞踊ショー。幕が開くと、女優さん4人のエキゾチックな衣装に、オオ…とどよめきが起きた。アラビア風の曲に合わせてキビキビと揃った動き、しなやかな腕、とろける笑顔の艶。舞台に、文字通り“花が咲く”ショーだった。

看板に連なった名前は、12名中8名が女優さん。大衆演劇の劇団ではかなり珍しい構成だ。そんな橘小竜丸劇団を率いるのは、若干26歳の女座長・橘鈴丸さん!

橘鈴丸座長(2015/9/5)筆者撮影

橘鈴丸座長(2015/9/5)筆者撮影

まるでアニメから抜け出てきたような姿だ。くっきりしたお顔立ちとハイセンスな衣装。この踊りは吉原の花魁がモチーフだった。豪華なかんざしの玉を揺らめかせ、粋にキセルをかまえて美しく笑む。

「キャー!鈴ちゃーん!!」

と客席から悲鳴が上がるのは、鈴丸座長の立ち(男役)舞踊。

橘鈴丸座長 この姿を現わした途端、会場に黄色い悲鳴が響く(2015/9/5)筆者撮影

橘鈴丸座長 この姿を現わした途端、会場に黄色い悲鳴が響く(2015/9/5)筆者撮影

カ、カッコいい…!とシャッターを切りながら酔いしれてしまう。切れ長の目が客席を見据えると、女性客の声援が飛ぶ。洋楽、ロック、ポップス、演歌、どんな曲でも独自のスタイルに取りこんで踊りこなす。その華やかな舞台絵図は、なんだか漫画やアニメの画面を思わせる…。鈴丸座長に聞いたところ、子どもの頃は漫画家になりたかったほどの漫画好きだそうだ。

「少年漫画誌で漫画を描きたかったんです。影響を受けた漫画は『ONE PIECE』とか、『るろうに剣心』とか、『HUNTER×HUNTER』とか。あと影響が強かったのがCLAMP作品」

また、パンクやロックやメタル、ビジュアル系などの音楽も好むそう。舞台にきらめく銀髪の鬘、花と蝶のピアス、ビジュアル系バンドみたいな黒のコート――“好き”に支えられた自由な感性は、大衆演劇の旧来の枠を飛び越える。わあ!と声をあげたくなる二次元さながらのカッコよさ!

悩んだ末に生まれたカラー

オリジナルのスタイルを貫く鈴丸座長も、以前は従来の和物で踊ることが多かったそう。しかし大衆演劇の観客の大半は女性。女優が立ち役をやっても、女形をやっても、なかなかお客さんが沸かない。やっぱり男優のほうが喜ばれる…。化粧前に座って悩む日々が続いたそうだ。

ある日、踏み切った。着物ではなく、自分の趣味を取り入れたブルーのロングドレスをまとって舞台に出た。送り出しでお客さんから口々に言われた。

「あのドレス、素敵だった!」

“鈴丸カラー”の始まりだった。(このエピソードは後編のインタビューで詳述)

今年の5月、それまで座長を務めていた弟・橘龍丸さんが、修行のため劇団を休団。5/16(土)に座長襲名公演が行われ、鈴丸さんが座長となった。

父・橘小竜丸太夫元座長

鈴丸座長をガッチリ支えるのが、父である太夫元座長・橘小竜丸さん。愛情あふれるまなざしが温かい。

橘小竜丸太夫元座長(2015/9/5)筆者撮影

橘小竜丸太夫元座長(2015/9/5)筆者撮影

人情物の芝居がお好きだという小竜丸座長。9/5(土)夜の部の芝居『伝八時雨傘』は、“慈しみ”の量がたっぷり。主人公・伝八(鈴丸座長)は顔に大けがを負い、醜い傷跡が残る。絶望する伝八をかばうのが、小竜丸座長演じる兄貴分だ。伝八に「こんなのは二、三日で治るケガだ」と嘘をつく。伝八の許嫁が裏切って他の男と祝言を挙げると聞けば、「絶対に伝八の耳には入れるなよ」と険しい顔で言う。決して大仰でなく、カラリとさりげなく、弟分を守ろうと立ち回る。その姿に深い慈愛がにじむ。

芝居『伝八時雨傘』ラスト。何もかも失った伝八にそれでも傘を差しかける腕の温かさ。(2015/9/5)筆者撮影

芝居『伝八時雨傘』ラスト。何もかも失った伝八にそれでも傘を差しかける腕の温かさ。(2015/9/5)筆者撮影

鈴丸座長が目指す“女優ならでは”の舞台とは?小竜丸座長はどんな思いで娘の躍進を見守っているのだろうか?

⇒後編は、いよいよ橘小竜丸座長&鈴丸座長へのロングインタビュー!

公演情報
橘小竜丸劇団9月公演 立川けやき座
会場:立川けやき座 http://t-keyakiza.com/​
期間:9/1(火)~9/29(火)昼の部
公演時間:
昼の部12:30~15:30
夜の部17:30~20:30
9/29(火)昼の部まで連日昼夜公演
※9/17(木)は休演日
料金:大人1600円 小人900円
座席を予約する場合の予約料:桟敷席400円 椅子席・たまり席300円
問い合わせ先:042-512-5057
〒190-0012 東京都立川市曙町1-36-1 1F
JR立川駅北口より徒歩約8分・モノレール立川北駅より徒歩約5分
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