大和悠河がオペラ・デビュー!~東京二期会 2018/2019シーズンラインアップ 記者会見レポート
(左から)山口 毅、中山 欽吾、大和 悠河、小原 啓楼
7月26日に、東京二期会の2018/2019シーズンラインアップが発表された。記者会見には、中山 欽吾理事長、山口 毅事務局長兼企画制作部長、元宝塚歌劇団宙組トップスター 大和悠河(やまと ゆうが)、テノール歌手 小原啓楼(おはら けいろう)の4名が登壇した。
来年5月、シーズン幕開けを飾るのは、ヘンデル『アルチーナ』。「二期会ニューウェーブ・オペラ劇場」と銘打った、若手歌手が中心にキャスティングされるシリーズの一貫だ。ヘンデル作品の専門家として知られているフローリス・ビッサーが演出を担当し、指揮には、『ジュリオ・チェザレ』(2015)でタクトを振った鈴木秀美を迎える。
7月には、ハンブルク州立歌劇場との提携公演として、ウェーバー《魔弾の射手》を上演する。演出を務めるペーター・コンヴィチュニーは、『皇帝ティトの慈悲』(2006)、『エフゲニー・オネーギン』(2008)、『サロメ』(2011)、『マクベス』(2013)に続き、5年ぶりの登場となる。指揮には、近年、ザルツブルク音楽祭等での活躍が著しいアレホ・ペレスが初登場。コンヴィチュニーとペレスはヨーロッパの歌劇場でしばしばコンビを組んできた。今回、悪魔ザミエル役を演じるのは、オペラ・デビューとなる大和悠河。
主人公マックスに「魔弾」を与える物語の鍵を握る役だが、通常であれば男性が演じる。「男性と女性の両面を見せることのできる女優」を起用したいという演出家の希望から、宝塚歌劇団で男役を演じてきた大和の起用が実現した。大和は、海外のオペラ・ハウスを度々訪れ、オペラ関連の著作をだすほどのオペラ通。今回の出演に関して、「小さい頃からの夢が、宝塚の舞台に立ち男役をやることでした。念願叶って、トップスターを務めることができた。夢が叶った今、第二の夢がふつふつと沸いてきた。いつかオペラの舞台に立てたらいいなあと思っていたので、今回の出演はとても嬉しい。宝塚で培った男役の技と美学と、宝塚卒業後にミュージカルなど身につけた女としての部分。男も女も、私の全てを見てほしい」と熱い想いを語った。
大和 悠河
9月には、プッチーニ≪三部作≫(『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』)を上演。作品が、メトロポリタン歌劇場で初演されてから100周年を迎えることを記念したプログラムだ。アン・デア・ウィーン劇場、デンマーク王立歌劇場、ローマ歌劇場で上演されたプロダクションが本邦でも見られる。タクトを握るベルトラン・ド・ビリーは東京二期会の公演に初登場となる。演出は、2014年モーツァルト『イドメネオ』で好評を博したダミアーノ・ミキエレット。
11月は、モーツァルト『後宮からの逃走』。指揮には下野竜也、演出にはギー・ヨーステンを迎える。ヨーステンは、メトロポリタン歌劇場やハンブルク歌劇場等で演出を手掛ける一方で、ハンブルク・タリア劇場の演劇監督を務めるなど、演劇とオペラ両方に精通している。日本で演出を手掛けるのは今回が初となる。
2019年2月には、宮本亜門の演出による黛 敏郎の『金閣寺』。指揮を務めるのは、オペラのみならず、現代音楽にも造詣の深いマキシム・パスカル。パリ・オペラ座、ベルリン州立歌劇場、ミラノ・スカラ座でのデビューを控えている彼の音楽も楽しみである。本プロダクションは、日本に先駆けて2018年春にフランスでプレミエを迎えることになっており、ソプラノ歌手 嘉目真木子とバス・バリトン歌手 志村文彦の出演が決まっている。
小原 啓楼
今シーズンの後半にも、楽しみな演目が残されている。11月のヨハン・シュトラウス『こうもり』と来年2月のワーグナー『ローエングリン』。3月には映像を使用したセミ・ステージ形式での『ノルマ』も控えており見逃せない。
『ローエングリン』は、指揮に準メルクル、演出に深作健太を迎える。2015年の『ダナエの愛』で好評を博したコンビの再登場である。東京二期会は65年にわたる歴史をもつが、『ローエングリン』を取り上げるのは、実は1979年の初公演に続く、二回目。タイトルロールを務める小原啓楼は、「先輩方が築いてきた公演の歴史と意義を、引き継がなくてはならない。重責を感じながら、現在、勉強を進めている。最近、レパートリーがアメリカの歌手ジェームズ・キングと重なってきた。彼を目標にして、ローエングリンに臨みたい」と意気込みを語った。
キャスト等の詳細な公演情報は、随時、ホームページ等で発表される予定だ。
(左から)大和 悠河、小原 啓楼
取材・文・撮影=大野 はな恵