TAK∴(坂口拓)×下村勇二監督『RE:BORN リボーン』インタビュー【後編】 アクション映画を変える一歩、“戦劇者”と“忍者”の戦い

2017.8.25
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左から、TAK∴(坂口拓)、下村勇二監督

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『HiGH&LOW THE RED RAIN』で雨宮兄弟(TAKAHIRO、登坂広臣)が使用し、一躍その存在を知られえることになった戦闘術・ゼロレンジコンバット。素手で銃を絡めとり、ひとりで複数の敵を戦闘不能の状態に追い込むこの技術は、米軍など各国特殊部隊の格闘技教官も務める稲川義貴氏が創り上げたもの。そのゼロレンジコンバットを全編にわたって使用した映画『RE:BORN リボーン』が現在公開中だ。

過去に特殊傭兵部隊に属し、現在はコンビニ店員として慎ましく暮らす主人公・敏郎を演じるのは、TAK∴こと坂口拓。そして、坂口とともに、同作の中核をなす存在が監督の下村勇二氏である。20年来の盟友である二人は、2001年製作の北村龍平監督作『VERSUS』に参加。低予算ながら、ゾンビ、ガンアクション、カンフー、ブレードバトルをひとつの枠に収めた同作は、海外映画祭を中心に世界のアクション映画ファンに衝撃を与えた。その後、坂口は海外で「スピードマスター」と呼ばれ人気を博し、下村監督は、『GANTZ』『アイアムアヒーロー』などのアクション監督としてそれぞれの道を歩むことになる。しかし、坂口は2013年に突如として俳優を引退。約2年ぶりに『RE:BORN リボーン』で主演としてスクリーンにカムバックしている。本作のタイトルには、坂口の復活など、さまざまな意味が込められているという。SPICEは、坂口と下村監督の過去から現在までの道程、坂口の俳優引退の理由や、同作が目指したもの、そして、二人の今後までロングインタビューで紐解いていく。インタビュー前編に続き、後編となる本記事では、『RE:BORN リボーン』撮影秘話や、坂口と下村監督の今後までを語ってもらった。

『RE:BORN リボーン』斎藤工らとの絆

左から、斎藤工、TAK∴(坂口拓)、いしだ壱成 (C)「リボーン」製作実行委員会

――自主映画体制ではありますが、キャスト・スタッフには斎藤工さんをはじめ、すごい方々が集まっています。どうやってキャスティングされたんでしょう?

坂口:工とは、『ビーバップ・ハイスクール』の頃から仲良くさせてもらってるんです。よく一緒に仕事もしていたので、「こういうのやるから、出てくれないか?」みたいな話をしたら、「拓さんが復活する作品なら、やりたいです」と言ってくれて。

――斎藤さんも稲川先生からゼロレンジコンバットを学ばれたんでしょうか。

坂口:(斎藤は)ウェイブを学ぶというより、気持ちを受け取った部分のほうが大きいです。ゼロレンジコンバットの技術よりも、兵士の気持ちです。

下村:役作りに関しては、ぼくはほとんど演出していないんです。撮影前に、(斎藤は)実は稲川先生と会っているんですよ。そこで、稲川先生が体験してきたもの、見てきたものを全部聞いて、疑似体験して役作りをしてきてくれたんです。

坂口:たぶん、彼にとって、ウェイブをやるのは俺の仕事だから、自分は兵士の気持ちを代弁しよう、と思ってくれたんですね。だから、工のあのシーンで泣く兵士の方は多いです。みんな、「戦って死にたい」とおっしゃっていて。体に大きな障害が残った方たちも、やはり、「戦って死にたい。それが本当の戦闘者の生き方だから」と。

下村:彼は、撮影の3日前くらいから絶食をしてきたんです。とても忙しい人なんですけど、「ただ現場に入るような役づくりは、この映画に対して失礼だ」と言ってくれて。自分にプレッシャーをかけるために絶食をして、辛い状況を作ってから撮影に挑んでくれたんです。

坂口:演じているときも怖かったですから。話しかけても、「はい……」っていう感じで。あれはウェイブを使われるより怖かったですよ。気持ちの入り方がすごかったんで。

(C)「リボーン」製作実行委員会


――斎藤さん以外の方も、基本的に直接お願いして参加してもらったんでしょうか?

下村:そうですね。この作品の本撮は2015年の4月に2週間で撮る予定だったんです。それで、一回撮り終わったんですけど、アクションシーンに納得がいかなかったので、撮りなおしました。山中の戦いのシーンから、稲川先生と拓ちゃんのシーンまで、半年かけてほぼ全部撮り直し。そんな経緯があったので、ここまできたなら、音楽は川井憲次さんにお願いしよう、とか……ただの自主映画で終わらせたくなかったので、みなさんに頭を下げてお願いしました。予算はないんですけど、魂のこもった作品を創りたい、という思いだけで動いていました。

――キャストのみなさんも、そうなんですか。

下村篠田麻里子さんもそうですね。彼(坂口)が『リアル鬼ごっこ』のアクション監督をやっていた頃に知り合ったんです。その後もプライベートでアクションを教えていたんですよ。

坂口:ウェイブも教えたりしましたよ。

――篠田さんもウェイブを使えるんですか?

坂口:使えないです(笑)。

――(笑)まあ、簡単には使えないですよね。

篠田麻里子 (C)「リボーン」製作実行委員会


坂口:いずれ『RE:BORN リボーン』のチルドレンが出てきて、その子たちが使うようになるかもしれないですよ。俺以上にウェイブを使えるようになって、現れるかもしれない。でも、今の俺はウェイブの上をいっていますから。というのも、ウェイブに特化しすぎて独自のウェイブに進化してしまった。先生も含め、スペシャルフォースの人も、実際にウェイブそのものだけを使っている人はいないんです。ウェイブ自体が、それぞれでカスタマイズするものなので。先生も、もちろんウェイブを使うんですけど、それは最小限に肩甲骨を使った実践的ものなんです。だから、実は俺のウェイブは、アクション用に改良された特殊なウェイブなんです。

――坂口さん独自のウェイブのものなんですね。

坂口:だからといって、アクションに特化したものがニセモノというわけではなくて。アクションに特化してさらに強く、実戦でも使えて、プロがみんなが真似するような、ウェイブの上のものを作りたいな、という意味で、開眼してからはそういうものにしようと思ってたんです。

――『HiGH&LOW THE RED RAIN』で、先にウェイブが世間に出ることになりましたね。苦労して習得されたのに、意外に軽く許可を出されるんですね。

坂口:HIROさんの前で見せなきゃいけかったですから。HIROさんは顔を輝かせて、「ほんとにすごい!見たことない!」って言って下さって。大人数にナイフで突かせて、それを全部捌いたり、銃も全部ディザーム(※編注:武装解除のこと)していって……それをフルスピードでやって見せたんです。HIROさんは「マジでコレ教えてくれるの!?最高じゃん!こんなの見たことない!」って。嬉しいですよね。

――公に出たことのないものですからね。

(C)「リボーン」製作実行委員会


坂口:『HiGH&LOW THE RED RAIN』で先に出ちゃいましたけど……でも、『RE:BORN リボーン』は自主映画に近いので、大手の映画みたいに広告をうったりもできないですし、宣伝は口コミを狙うわけしかないじゃないですか。だから、雄大さんもそれをわかってくれて、「結果的に『RE:BORN リボーン』を観てもらもらえればいいんじゃない?」と言ってくれて。「それならみんなWIN WINだね。だったら俺も、TAKAHIROさんや登坂(広臣)さんに教えるよ」と。

――もっと躊躇されたと思っていました。

坂口:そりゃあ、相手が雄大さんですからね(笑)。勇ちゃんと同じくらいガッツリな関係なので。

 

映画を成立させた”恐怖”のキャスティング

稲川義貴氏 (C)「リボーン」製作実行委員会

――稲川先生はどういう経緯で出演されることになったんでしょうか?

下村:もともとは、稲川先生には戦術戦技スーパーバイザーだけをやっていただく予定だったんです。最初は、アビスウォーカー役を岩永ジョーイさんにやってもらうつもりで。彼はアクションも出来るし、ダンス経験もあって身体が柔らかいので、ウェイブに近いことも出来るだろう、と。それでオファーしたんですけど、ちょうど舞台をやっていて。本人はやりたいと言ってくれたんですけど、スケジュール上無理だったんです。

――意外な人の名前が出ましたね。

下村:で、改めて代わりの方を探したんですが、彼(坂口)の相手が務まる俳優は誰もいなかった。誰かいないかな、と二人で話してたときに、「稲川先生に出てもらったら、すごくない?」となって。『ザ・レイド』のマッドドッグを演じたヤヤン・ルヒアンみたいな感じですね。それで訊いてみたら、稲川先生は、「いいですよ」と簡単に答えてくれたんです。「やった!」と思ったんですけど、そこからが大変でした。

坂口:勇ちゃんにとっては地獄のはじまりだよね(笑)。でも、今から思うと、本当はジョーイでも無理だったんです。

下村:それは映画的に(リアルな戦いとの)差が見えちゃうんです。

――もはや、「アクションが出来るかどうか」が問題ではなくなってしまったわけですね。

坂口:俺がウェイブを出来るようになればなるほど、その差が見えちゃう。『VERSUS』のときもそうだったんですが、相手役の榊さんはダンスもやっていたんで、アクションは上手い。上手いからこそ、基本的にはぼくがあわせないといけないんです。要は、全力で俺がアクションをやれる人間が、もはやこの世の中にいないんですよ。少なくとも日本にはもういない。だから、「どうしようかな……」ということを、勇ちゃんこそが思っていたはずなんです。

下村:結構苦労をしながら作ってきた作品ですし。ここで例えば、三元(雅芸。第4回ジャパンアクションアワードベストアクション男優賞を受賞)みたいなアクションの出来る俳優を最後の敵役として入れたとしても、それでも差がありすぎて、『RE:BORN リボーン』として成立しないんじゃないか、と思ったんです。

三元雅芸 (C)「リボーン」製作実行委員会


――フィクションとしてのアクションになってしまう、と。

下村:そうですね。彼(坂口)が恐怖を感じるくらいの敵じゃないと、映画として成立しないんじゃないかと思いました。そんなときに、稲川先生にお願いしたら、OKだったんですけど……まあ、大変ですよね。

――具体的にはどういう大変さがあったんでしょう?

下村:稲川先生はもちろん役者じゃないですし、“アクション”というものをやったこともないわけです。彼(坂口)と稲川先生が戦っているシーンでは、一つひとつの動きは、実は超実践的戦闘技術なので。それとやりあわなきゃいけないので、大変です。

――ちょっと、あのシーンは異様ですよね。

坂口:映ってないところもありますから。1秒24フレームですが、映っていないフレームがあります。動きが速すぎて手を出しているのに映ってないんですよね。

――でも、映画という形態をとっている以上、見せないといけないわけですよね?

下村:そうなんです。稲川先生は役者じゃないので、最初は暗殺者のひとりとして出てもらおうと思っていたんです。でも、だんだん役が大きくなって、それにつれて、稲川先生も自分の過去をリサーチするんです。これは役作りではないんですが……稲川先生は、海外で活動されていたときに、突然、沢山の資料を渡されて、「明日から別人になれ」というような任務もあったそうです。それを全部暗記して、その人間になりきらないと、生死に関わることもあった。そういうところは、役作りと似ているんですよね。だから、役が決まったころに、稲川先生が「自分(アビスウォーカー)はいつから、どこの戦場に出ていて、どういうチームにいて、ミッションをいくつクリアして、どのような戦い方を得意としていたんですか?」と、訊いてこられて。

――ヤバいですね。

下村:ぼくも、「ヤバい。これはちゃんと考えないと」と思いました。そうこうしているうちに、彼(坂口)とバディ(相棒)になるという案が出たり。そこから、敏郎とアビスの関係性がどんどん膨らんでいったんです。そこから本撮ですよね。彼と稲川先生のアクションシーンを撮影したんですけど、最初はあまりにもリアルすぎて、映画として面白くなかったんです。先生も初めて慣れない映画の現場に関わるので、やり辛さや緊張感、ストレスもあったと思います。あまりにも動きが速すぎてわからなかったので、「もう一度やってください」と言ったら、「こっちは本気で殺し合いをやってんだ!二度と出来るか!」って怒鳴られて。「ああ、これで終わったな」と思いました(笑)。

坂口:勇ちゃんは、何度「殺すぞ」と言われたかわからないよね。

稲川義貴氏 (C)「リボーン」製作実行委員会


下村:先生は、今でこそ民間人にも優しく話しかけてますけど……当時は、先生が歩いたら、みんなが「敬礼!」と言う、そういう世界で生きてきた方なので。ぼくと彼は、先生の世界にお邪魔して訓練を受けたり、リサーチしていんたんですけど、今度は先生が民間人の世界に下りてくるわけです。『RE:BORN リボーン』の現場は、仕事でやっている方もいらっしゃるわけですが、先生にとっては、「てめえら、『RE:BORN リボーン』のために命かけて撮影やってんのか?」という……そういう緊張感のある現場だったんです。

坂口:先生は、「映画を戦場と考えるならば、スタッフそれぞれが命を懸けてるのか?」と秤にかけて見られるんです。スタッフもいっぱいいるので、みんながみんな命を懸けているわけじゃない。それが映画じゃないですか。でも、『RE:BORN リボーン』はそういう訳にはいかないですから。

下村:稲川先生にとっては、“ミッション”なんです。そうすると、ぼくは先生にとって、“指揮官”になる。指揮官として認められるまでに時間がかかったんです。もう、撮影中、何回も「殺すぞ!」と言われ続けました。

坂口:追撮の前は、俺も先生に追いついてなかったんです。ゼロコンマ何秒か、自分の身体が反応していない瞬間があって、本当に落ち込みましたよ。「マジか……」と。それまでは、「俺以上に速い人間がこの世にいるわけない」と思っていたので。

――『VERSUS』の頃から、海外では「スピードマスター」なんて呼ばれてましたからね。

坂口:三元や屋敷(紘子)に相談したら、「やっとぼくたちの気持ちがわかってくれましたね。いつも拓さんと絡んでる人は、みんなそんな気持ちでしたよ」と言われて。ということで、先生との最後の闘いまでに、もう一段階スピードを上げなきゃいけないと思って……

下村:追撮に半年間かけたんです。

坂口:その半年でさらに訓練して、自分のウェイブを開発したんです。自分のウェイブであれば、もっと速く動けると思ったので。

屋敷紘子 (C)「リボーン」製作実行委員会


下村:本撮のときは、(坂口と稲川氏は)弟子と師匠の関係で、ちょっと距離があったんです。その半年間で訓練を積み重ねて、徐々に先生に近づいていって、やっと敏郎とアビスウォーカーの関係になりました。

――普通の映画の作り方なら出来ないことですね。

坂口:そうですね。その半年間から、俺はアクションの人間でもなく、民間人でもなく、“本物”になってしまった。戦闘者が見たら、「戦闘者だ」と思う人間になっちゃったんです。どうしたら俺は戻れるんだろうか、と思いますよ。

下村:目指すのが稲川先生で、そこに向かって訓練するわけですから。それは役者としての訓練ではないですよね。

坂口:『VERSUS』のときは、海外の映画祭に行くと、映画ファンが「最高だね!」と言ってくれました。でも、『RE:BORN リボーン』のときは、海外の特殊部隊の連中が、こっそりと観に来ているんです。そういう人たちが、俺に会ったときに、「どこの部隊だ?俳優じゃないのはわかってるんだ」「〇〇万ドル払うから、うちの部隊に来ないか?」って言うわけです。今や、そんなのばっかりですよ。

下村:役者だと思われてなかったよね。『RE:BORN リボーン』の彼のアクションは、もはやアクションではないんです。段取りじゃなくて、どんな攻撃でも身体が反応して相手を倒してしまうので。

 

‟戦劇者”と"忍者” 日本映画を変える一歩

左から、TAK∴(坂口拓)、下村勇二監督

――下村監督としては、この映画でどういうことを成し遂げようとしてらっしゃるんでしょうか?

下村:今回の映画は、一見ミリタリーアクションに見えて、実は侍映画を目指して、武士道精神を描いているんです。昨今、そういう作品がないじゃないですか。お客さんに媚びていたり、漫画原作ものだったり、が多いわけです。そうじゃなくて、オリジナルで、日本映画として海外に通用する“武士道精神”を、先生と拓ちゃんと一緒に撮りたい、という思いがあったんです。

坂口:媚びてないですよね、誰にも。わからなきゃ、わからないでいいし。

下村:そういう一本があってもいいのかな、と。

坂口:媚びてない証拠に、この映画には前売り券なんかないんですよ。「観なくてもいいんだ。観たくなったら来いよ」と。前もって買う必要なんかない。観に来ないなら、来なくても結構!というスタンスなんです。商業じゃない、生き様を観たければ来ればいい。

下村:観たい人は、(観たら)何回も観たくなるはずです。

坂口:唯一、本物の戦闘者たちが認めた映画なんです。今までも、色んなスペシャルフォースが技術指導した映画はありましたけど、彼らが映画のスタッフに教えるのは、何年か前の技なんです。だからこそ、『RE:BORN リボーン』は、本物の戦闘者たちが観て「こりゃ、参ったな」と言う。本当のスペシャルフォースは、ハリウッド映画なんて認めてない。もちろん、全てではありませんよ。

下村:ハリウッドの技術や予算には勝てません。でも、『RE:BORN リボーン』は、演じてる人間が訓練を重ねて本物になってしまった映画。そういう人たちが観ても、「民間人じゃない。役者じゃない」という異常な認め方をしているんですよね(笑)。

――特殊な経緯と作られ方をしていますが、『燃えよドラゴン』公開当時のブルース・リーの動きのように、ウェイブは真似したくなりますよね。そういう衝撃を与えられるような作品でもあるんじゃないでしょうか。

下村:それは狙っています。観終わったあとに、みんなに肩甲骨を回してもらいたいですね。

(C)「リボーン」製作実行委員会


坂口:ただ、これを観ると俺が俳優として復活したと思うかもしれないけど、そうじゃないんです。俺は卒業したままだし、「アクション俳優」とも言われないと思います。ただのスペシャリスト=戦闘者ですよね。これからは、アクション俳優じゃなくて、“戦劇者”です。戦う者を演じる戦劇者になったんです。

――“戦劇者”として、今後はどういう活動をされていくんでしょうか?

坂口:スカウトはされているので、戦場に征くというのも手だとは思います(笑)。この技術で、世界中のスペシャリストと戦うのも、ひとつの楽しみではあるんです。でも、本当のスペシャリストたちに「お前は何人殺したんだ?」と訊かれたときに、「俺は今年、映画で300人殺した」と、そう言うほうがカッコいいなって、今は思っています。それを彼らも、カッコいいと思ってくれるんです。

――映画に積極的に出よう、というのではないんですね。

坂口:ウェイブを使って、俳優としてバンバン売れたいとか、スターになりたい、とか、そんな考えはないです。これからも、何かに出るつもりもなくて、アクション監督でメシを食っていこうと思っています。俺の肩甲骨に生えている、この翼が「やろうかな」と疼いたら、やればいい。

――その時は、“戦劇者”として表に出る、と。

坂口:そうですね。もう、俳優ではなくなってしまったので。本当に“触れる”ものだけに出る。『RE:BORN リボーン』が終ったら、刀をやろうと思ってるんです。刀でも、もちろんウェイブは使えるので。

――それは楽しみです。

坂口:たぶん、ウェイブを使った刀であれば、日本映画として、初めて「侍はこれだけ強い」という、本当の剣の強さや美しさを表現できる。それが出来るのは、俺しかいなくなると思います。何年かかるかわからないですけど、全ての剣技を学び、それを進化させる。そうしたら、「勇ちゃん。俺、本物の侍なんだけど、やる?」「じゃあ、撮ろうか」ということになるかもしれないです。

――下村監督は、この『RE:BORN リボーン』だけではなく、『リボーンコンバットシステム』のワークショップで、一般の方や俳優さん、スタントパーソンにゼロレンジコンバットを教えてらっしゃいますね。どういう意図があるんでしょう?

リボーンコンバットシステムのようす


下村:目的はいくつかあります。『RE:BORN リボーン』を観てもらって、ウェイブというものを口で説明しても、なかなか理解はできないじゃないですか。だから、まずは体験してもらって、そこから映画を観てもらうと感覚が違うと思うんです。「体験しているときは、(肩甲骨が)全然動かなかったのに、映画の中ではすごいことになってる」と、ウェイブを応用しているのがわかると思うんです。

――なるほど。

下村:もうひとつは、日本のアクション映画界を変えたいです。稲川先生の技術がトップレベルなのは、実は銃だけじゃないんです。身体操作の技術がもともと古武道だったり、剣術だったり、日本人がもともと知っていなきゃいけない技術だったりするので。日本人である自分たちが理解した“本物”の技術を映画で使えるようになったら、面白くなるんじゃないかな、と。それと、日本は銃社会じゃないので、銃を使ったアクションをやるとなっても、身近なものじゃないので難しいじゃないですか。その点でも、稲川先生の技術や知識を学べると、役者にとっても、スタントマンにとってもいいし、日本映画がもっと世界に通用するものになるんじゃないか、と。そういう思いはあります。だから、3年後には、みんながウェイブをしていると思いますよ(笑)。

坂口:ハリウッドの連中もこれをやりたがっているんですが、ウェイブの肩甲骨の動きは古武道から来ているので、日本人でないと難しいんですよね。

下村:欧米の人って、鍛えて筋肉をつけちゃいますからね。

坂口:あと、映画でウェイブを使おうと思うと、相手側もウェイブを知っていないと難しいです。『THE RED RAIN』でも、TAKAHIROさんや登坂さんが動いたときに、スタントマンが自分から受けてるように見えちゃうとダメですよね。それだと嘘っぽくなるから、スタントマンに「実際に受けるとこうなるから」とやって見せて、「これと同じように反応して」と説明しているんです。

――TAKAHIROさんや登坂さんだけがウェイブを知ってるわけじゃないんですね。

坂口:アクションマンで、今ウェイブを知らないヤツはいないよね?

下村:存在は知っていると思います。スタントマンは結構うちに学びに来ているので。

(C)「リボーン」製作実行委員会


――最後にひとつだけ聞かせてください。坂口さんは、「本職は忍者」とおっしゃっていますが、それはなぜなんでしょうか?

坂口:これからは、忍者もウェイブの身体操作で、狭いところで、忍び刀を使って戦っていく。ダークネス・ウェイブ、闇のウェイブです。クナイも、カランビットと同じですよね。忍者というのは、基本的に闇の戦闘者なんですよね。つまり一番、ウェイブを使ってきたのは、忍者なんです。みんな、形を追いかけすぎて、本当の忍者というものを知らなすぎる。例えば「忍者ショー」といえば、ただのアクションだと思っていますよね。そうじゃなくて、本物の忍者を作っていきたいと思ったので、忍者になったんです。

――いつ、忍者になろうと思われたんです?

坂口:『虎影』を撮っていた頃ですかね。稲川先生に名付けていただいた、「雷風」と言う名前から、「雷風刃」という忍者集団を作ったのが最初です。もちろん、ダークネス・ウェイブは自分しか出来ないんですけど。でも、今は山梨の『忍野しのびの里』で、チームで日々練習してやっています。『RE:BORN リボーン』の公開が落ち着いて、夏休みに間に合ったら、忍びの里で俺の技を披露しますよ。ということもあって、今は忍術に特化しています。俺の忍術は、吹き矢から何から、全部ウェイブを使っていますから。

――色んなものを手裏剣替わりにして、板に突き刺してましたよね。
 

坂口:現代の忍者は、国に入るときに、武器も銃も持っていけないわけですから、ダイソーとかで手裏剣(になるもの)を手に入れないといけない。

――100円で済むわけですね。

坂口:箸が一本あれば、頸動脈も突き刺せますし、何でもできます。普通、手裏剣は縦に投げますが、ウェイブは横投げなんです。投げる瞬間は、俺の手が消えてるように見えます。

――“忍者”という選択は、武術を学んでいくうちに出てきたものなんですか?

坂口:そうです。忍者というのは、唯一の自由な存在なんです。例えば、侍の剣術には「〇〇流〇〇」とか、流派がありますよね。忍者には、本当は流派はないんです。なぜなら、アサシンなので。師を持たないからこそ、自由である。それぞれのいいものを学んでひとつにする。自分が今持っているものは、稲川先生から学んだものですけど、忍びであるならば、自由こそが師匠なんです。そして、今は自分なりの忍者の形を追い求めているところです。

――強さを求めるうちに、必然的に忍者にたどりついてわけですね。

坂口:『忍野しのびの里』にいるので、会いに来ていただければ。ただ、たまにしかいないですけどね。俺があんまり出ちゃうと、子どもが怖がって泣いちゃうので。

――(笑)

下村:弟子の(坂口)茉琴も忍者なんですが、彼女がアクロバティックなことをすると、子どもたちはすごく喜ぶんです。でも、彼は闇から出てきて、壊して、また闇に戻っていく。みんな口を開けて、愕然としてました(笑)。

坂口:俺が舞台に上がるだけで、親御さんたちも肌でわかるんですね。「あれ?なんかヤバい人がきたぞ」と。でも、みんなには、「これが本当の忍者なんだぜ。忍者って、本当はヤバいんだぜ」と言いたいですね。もし、俺の忍術を観たければ、たまに出演する忍びの里のショーか、Twitterを見てください。俺の吹き矢は、人体を貫通しますから。皿も割るし、骨も砕くし、脳髄も破裂します。

下村:ミリタリーも、言ってみれば忍術ですからね。

坂口:そうそう。忍び足はスカウトの技でもあるし。

――本物の忍者にインタビューすることになるとは、思ってもみませんでした……ありがとうございました。


映画『RE:BORN リボーン』は新宿武蔵野館ほか全国順次上映中。

作品情報
映画『RE:BORN リボーン』
 
新宿武蔵野間ほか全国順次公開中。

【出演】
TAK∴(坂口拓)、近藤結良 斎藤工 長谷部瞳 篠田麻里子 加藤雅也 いしだ壱成 / 大塚明夫
稲川義貴 望月オーソン 賢太 坂口茉琴 屋敷紘子 三元雅芸 武田梨奈(声の出演)
【スタッフ】
監督 : 下村勇二
戦術・戦技スーパーバイザー : 稲川義貴 
アクション監修 : TRIPLE CROWN
脚本 : 佐伯紅緒 
撮影監督 : 工藤哲也 
音響効果 : 柴崎憲治 
音楽 : 川井憲次
加賀市アソシエイトプロデューサー : 石丸雅人 坂井宏行 
プロデューサー : 藤田真一 井上緑
企画・製作 : 有限会社ユーデンフレームワークス 株式会社アーティット
 製作協力 : 株式会社ワーサル 
配給 : アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://udenflameworks.com/reborn/
(C)「リボーン」製作実行委員会

 

イベント情報
第七回リボーンコンバットシステム

日時:2017年8月25日(金)13時〜18時
受講資格:16歳以上の男女。演技、アクション経験等は問わない
定員:20名(定員になり次第、締切りとさせていただきます。結果はメールにて通知します)
受講料:10,000円 ※当日、会場にてお支払い。
会 場:有限会社ユーデンフレームワークス(丸ノ内線 新中野駅1番出口徒歩2分)
    東京都中野区本町六丁目13番地8号 新中野神谷ビルB1F[Google マップ]
申込方法:公式サイトの申込フォームより。

※定員になり次第、締切り。申し込みした方にメールにて連絡。
※お申込の際は、プライバシーポリシー・免責事項特定商取引法に基づく表記を確認のこと。
お問い合わせ:reborn_combat_2017@yahoo.co.jp
ユーデンフレームワークス公式サイト:http://udenflameworks.com

 

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