“火の玉ボーイ”五味隆典、UFC集大成の一戦へ 格闘技原点の地で闘志に再点火
五味隆典
「UFCファイトナイト・ジャパン」(9月23日、さいたまスーパーアリーナ)開催まで1ヵ月を切った8月25日、大会に出場しキム・ドンヒョン(韓国)と対戦する五味隆典が、自身が新たにスタートした東林間ラスカルジムで合同取材に応じた。
かつてPRIDE時代には10連勝を記録しライト級王者として強さを見せた五味だが、現在は14年9月・日本大会でのTKO負け(vsマイルズ・ジュリー戦)から4連敗。これまでは東京・久我山にあったジムを神奈川の東林間へ移転し心機一転、3年ぶりとなる日本での試合に臨む。
「ホームでできるのは素直に嬉しい。いろんなところで挑戦させてもらって、最後はホームでやりたいなっていうのがありました」
“最後”と気になる言葉が出たが、「大きな試合や海外、いいマッチメイクがあれば挑戦しますし、いろんな可能性がある。全部終わりじゃないんで。ジムも新しくなったんで、しっかりやっていかないと」と続け、これがラストマッチではないものの、UFCでの試合は日本大会が最後になると語った。
新たなジムを置く相模原市は五味にとって格闘技を始めたゆかりのある場所。今回そうした地へ戻ることで原点回帰を図る意味合いもあるようだ。
「(ジムは)9月頭に全部完成するんですけど、(練習場所であるボクシングの)相模原ヨネクラジムも近くにありますし、1ヵ所でできるようになったので体的にもラクになります。元の久我山のジムと(練習場所であった)八景ジムさんのマットといろんなものをもらって、2つのジムがいいエネルギーになればと思います」
環境を改めただけでなく練習内容に関しても見直しを行い、「最近は技術練習やスパーリングに頼っていたところがあったので、基礎体力を戻そうと昔から知り合いのトレーナーに来てもらってここで毎晩、そこの窓から何度も逃げ出すぐらいキツいウェイトトレーニングをやってます(苦笑)。今までは技術とロードワークだけでそこまで厳しくやっていなかったので、やっぱりいくら技術をつけても体力がないと活かせない」と話し、持ち味である爆発的ファイトの復活に期待を抱かせた。
今回対戦するキム・ドンヒョンは“マエストロ”の異名を持つ身長180㎝、28歳の選手。日本にも来日経験があり、韓国の団体TOP FC王者を経てUFCに参戦し、ここまでの戦績は1勝2敗。「元PRIDEライト級王者である五味選手と戦うことになり、とても光栄です。試合にはベストコンディションで臨み、素晴らしいパフォーマンスを見せられるように頑張ります」とレジェンド五味との対戦に意気込みを示す。
そんなドンヒョンを五味は「パンチとヒザで前に出てくる粗削りだけどアグレッシブな選手」と評し、「面白い試合になると思います。全部出し切る、しっかり汗のかける、お客さんに熱気が伝わる試合をしたい。試合でやり残したことも悔いもないから失うものはないし、全力でやるだけです」とUFCでの集大成となる一戦への思いを口にした。
98年に20歳でデビューし、修斗、PRIDE、戦極、UFCと駆け抜けてきた五味も大会前日の9月22日で39歳となる。
「自分で祝えるよう、いい結果を出そうと思います。結局ファイターは勝った時しかいいことがないもんね。勝たないと何をやっても面白くない。元に戻った、自信にあふれた試合を見せたいです」
会見の冒頭で今回がラストファイトではなくUFCでの試合が最後となることを語った五味だが、40代を間近にキャリアの締めくくりは当然頭にあり、「阿部(大治)選手は強いらしいし、(佐々木)憂流迦も前回いい勝ち方をした。後を任せられる選手がいっぱいるので、俺はもう最後のわがままと思ってファンの人にはつき合ってもらう。期待を裏切らない試合ができたらいいと思います」とバトンタッチを意識しつつも自身の試合へ闘志を見せる。
「判定? ダメだよ、KOじゃなきゃ」の名言でも知られる五味は、最後にノックアウト・オブ・ザ・ナイトの賞金を獲得した場合どう使うのか問われると、「もう物欲がないというか、ジムの移転で金が掛かったんでね。試合が終わったらここを子どもたちの声が響く道場にしたい。そのためにもいい試合にしたいです。ジムの会員募集中って書いておいてください(笑)」と答え、茶目っ気と笑顔を見せ会見を締めくくった。