木を面白がり、地域を面白がる『奥河内音絵巻』 大阪・河内長野から世界へ、新たなワールド音楽・お祭りを発信! 

インタビュー
2017.9.4
奥河内の山を鳴らす、木を面白がる。さまざまな自然素材のマテリアルで深遠な世界を描くプロジェクトだ

奥河内の山を鳴らす、木を面白がる。さまざまな自然素材のマテリアルで深遠な世界を描くプロジェクトだ


「山を鳴らそう、木を奏でよう!」

大阪府の南東部にある河内長野市で、地元の自然を生かした音楽をプロとアマが一体となって世界へ発信する『奥河内音絵巻』が、9月10日(日)に市内ラブリーホールで開催される。

3年目を迎えるこのプロジェクトは、面積の70%を森林が占める同市の「おおさか河内材」で作った楽器や衣装を用いて、奥河内の自然、歴史、人々の営み、未来などをオリジナル音楽でパフォーマンスし、新たな祭りへ昇華させようという有意義で壮大な取り組み。

1994年からホールのシンボル事業として、世界の音楽を紹介し続けてきた「かわちながの世界民族音楽祭」が創作発信スタイルに方針転換したもので、同市在住のノコギリ演奏家で作曲家のサキタハヂメが芸術監督を務めている。

2015年の『静寂と木の祈り』、翌年の『幻の祭り』に続いて、今年は7楽章からなる『山を鳴らす~木と奏でる人々の歌』を作曲したサキタ監督。
「この土地のアイデンティティーを地域の人たちと伝える、オフブロードウェー作品みたいになればいいなあと、取り組んでいます。地元の木材で作った弦楽器、管楽器、打楽器などによる『木と奏でる人』の音楽で、歌もあるけど言葉に頼らない、言葉のない音物語のような作品で奥河内を表現しています」

芸術監督のサキタハヂメ。音楽ノコギリ世界大会で2度優勝、Eテレ『シャキーン!』、日本テレビ・映画『妖怪人間ベム』、NHK木曜時代劇『銀二貫』などの作曲も手がける

芸術監督のサキタハヂメ。音楽ノコギリ世界大会で2度優勝、Eテレ『シャキーン!』、日本テレビ・映画『妖怪人間ベム』、NHK木曜時代劇『銀二貫』などの作曲も手がける

「おおさか河内材」製のオリジナル楽器は、三弦の「オッカサン(奥河内三弦)」、フィンランドのカンテレのような「オカンテレ(奥河内五弦)」、丸太マリンバ、かんなくずで作った笛「オカンナ(奥河内のオカリナ)」など、実にさまざまで、改良を重ねながら進化中。市民奏者は、ワークショップで楽器を作り、奏法も習い、サークル練習したりしながら腕を磨く。ちなみに「おおさか河内材」は、地元のヒノキやスギの良質ブランドで、切り口が丸く、年輪が緻密で、木目が真っ直ぐな材に認定証が与えられている。

三弦のオッカサン愛奏家チーム。シールドにつないで音量調整できるが、大きな生音を出すために手作りカホンに孔を開けて響かせる新奏法も誕生。名づけて「オッカホン」!

三弦のオッカサン愛奏家チーム。シールドにつないで音量調整できるが、大きな生音を出すために手作りカホンに孔を開けて響かせる新奏法も誕生。名づけて「オッカホン」!

これは、五弦のオカンテレ

これは、五弦のオカンテレ

優しい音色のオカンナ。膨らませた風船にかんなくずをのりで貼り、乾燥したら風船を破裂させ、指孔を開けて作る

優しい音色のオカンナ。膨らませた風船にかんなくずをのりで貼り、乾燥したら風船を破裂させ、指孔を開けて作る

「ありがたいことに、一緒に面白がって取り組んでくれるアーチストや楽器製作者が近くにいるおかげで、楽器がいろいろ生まれて、地域の人に弾き方を教えてくれたりして、愛奏家サークルの人たちが町のイベントでも演奏するようになって、年間を通じてプロジェクトの輪がどんどん広がっています。ギタリストのえぐちひろしさんは、このプロジェクトで河内長野が気に入って、引っ越してきたほど。オッカサン教室で教えてくれています」とサキタ監督。

これら独自の楽器だけでなく、「おおさか河内材」のかんなくずを生かした舞台衣装も必見。「地元の製材所さんとかから、かんなくずをいただくのですが、かんな削りの技術を追求する『削ろう会』の方々のご協力もあって、とても芸術的で……」と監督。

「削ろう会」は、大工や木工職人、工具鍛冶らが中心となり、かんな削りの伝統の技を競い合い、技術交流する団体。全国大会には1000分の1ミリ単位の微調整をこなせる匠が集う。河内長野にもそんなスゴ腕がいて、力になってくれているそうだ。

この「芸術的かんなくず」でコスチュームを作るデザイナーのイシイナオミは「かんなくずの風合いを生かして、出演者それぞれに合った衣装をデザインするのは難しいですが、やりがいがあります」

かんなくずでつくったコスチュームは大人気。コサージュはクラフト作家の手による

かんなくずでつくったコスチュームは大人気。コサージュはクラフト作家の手による

昨年の、公演前夜に町を練り歩いてのパフォーマンス。幻想的でインパクト大!

昨年の、公演前夜に町を練り歩いてのパフォーマンス。幻想的でインパクト大!

今年の出演者はプロ・アマ含め150人超の大所帯。マイム俳優のいわむろまさきのパントマイムにホールのミュージカルスクール生が絡み、コミカルで切なく心にしみる物語が展開する。これを盛り上げるのが、オリジナル楽器を中心にフィドルやノコギリ、パーカッション、和太鼓などが加わった大楽団の音楽演奏。自然のさまざまな音や映像なども駆使した独創的な舞台作品になりそうだ。

南大阪を中心に活動している阿波おどり「にしき連」も参加して、新しいお祭りを盛り上げる

南大阪を中心に活動している阿波おどり「にしき連」も参加して、新しいお祭りを盛り上げる

サキタ監督は、府下堺市や東京都内での暮らしを経て、緑豊かな河内長野に拠点を据えて以来、自然からインスピレーションを感じて創作することが増えたという。
「宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読んだら、読者が花巻を知らなくてもそこを想像できるように、お客さんに奥河内のイメージを膨らませてもらえる作品にしたいです。東京とか遠くからもさまざまな方々が見に来てくださるようで、とにかく木を面白がって、おおさか河内材から生まれた楽器の音色を楽しんで、奥河内を感じてもらえたら……。今回は舞台に『笑い』を入れたくて、言葉に頼らずに、お客さんが笑顔になれるように工夫しました。当日、たくさんの笑顔が見られたらうれしいです」

プロ・アマ一致団結して、リハーサルから和気あいあい。

プロ・アマ一致団結して、リハーサルから和気あいあい。

取材・文:原納暢子

公演情報
かわちながの世界民族音楽祭2017 
奥河内音絵巻 山を鳴らす~木と奏でる人々の歌

 
■日時:2017年9月10日(日) 開演 15:15 ※15:00よりプレトークあり
■会場:ラブリーホール 大ホール (大阪府河内長野市)

 
■芸術監督・作曲:サキタハヂメ
■振付:いいむろなおき
■出演:いいむろなおき、菊川晴菜(ラブリーホール・ミュージカルスクール) 他
■演奏:
山鳴らすAll Stars
サキタハヂメ、大森ヒデノリ、田島隆、松阪健、中西秀樹、えぐちひろし、池田安友子、山下憲治、上沼健二、Colloid、前塚銀河
木と戯れる人たち
チームオッカサン、チームオカンテレ、チームオカンナ、チームのこぎり、和太鼓 響、ラブリーホール・フィドル&伝統音楽教室、ラブリーホール・ミュージカルスクール(歌&踊り)、阿波踊りにしき連(踊り)、
井谷尚樹(歌)、大嶋奈央子(歌)、小山航平、塚本裕也、岩根啓樹
■演出・照明デザイン:大塚雅史
■舞台美術デザイン:柴田隆弘
■原案・歌詞:宮地泰史
■公式サイト:http://lovelyhall.com/event/2017/170910_world/170910_index.html
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