“絵画の黄金時代”を再現する展覧会 『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』記者発表会レポート
『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』記者発表会より
世界屈指の美の殿堂として名高い、スペインが世界に誇るプラド美術館。日本では7年振りとなる大規模なプラド美術館所蔵作品展『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』が、2018年2月から東京・国立西洋美術館にて、2018年6月からは兵庫県立美術館にて開催される。本展は17世紀スペイン絵画の巨匠、ベラスケスの傑作7点を軸に、ティツィアーノ、ルーベンス、ムリーリョなどの17世紀絵画の名作61点が公開される。スペイン大使館で行われた記者発表会から、ベラスケス、そしてプラド美術館のコレクションの魅力を堪能できる本展の見どころをレポートしよう。
歴代スペイン王が収集した美術作品を基礎とする、プラド美術館コレクション
スペイン・マドリードにあるプラド美術館は、1819年に王立美術館として開設された。歴代スペイン王室のコレクションから始まった7千点を超える絵画コレクションは、ベラスケス、エル・グレコ、ゴヤなどのスペイン絵画のほか、ティツィアーノ、ルーベンス、ラファエロなどのイタリアやフランドル絵画の傑作が集まった第一級のコレクションだ。
プラド美術館・ベラスケスの銅像が立つベラスケス門 © Museo Nacional del Prado
そんなプラド美術館のコレクションの中でも特別な存在といえる画家が、スペイン王室の宮廷画家として活躍したディエゴ・ベラスケス(1599〜1660)だ。ベラスケスは絵画の黄金時代といわれる17世紀スペインを代表する画家であり、印象派の画家マネに「画家の中の画家」と称されるなど、西洋美術史上最も重要な画家のひとりである。プラド美術館は現存するベラスケス作品約120点のうち真筆46点を所蔵し、世界屈指のベラスケスコレクションを誇る。
傑作揃いのベラスケス作品7点を一挙公開!
本展ではプラド美術館所蔵のベラスケス作品の中から、日本で開催された展覧会では史上最多となる7点が出品される。重要作ばかりのベラスケスの作品を軸に、17世紀のイタリア、フランドル絵画の名作を加えて展示。「芸術」「神話」「宮廷」などの7つの章構成で、絵画が頂点を極めた17世紀西洋絵画に焦点を当てる。
記者発表会では、駐日スペイン大使のゴンサロ・デ・ベニト氏も登壇し、「来年2018年には日本、スペイン両国の外交関係樹立150周年を迎えます。150周年記念事業の開幕が、偉大なベラスケスの展覧会となったことは、我々大使館としましては大変光栄なことです」と述べ、本展開催の喜びを語った。
スペイン大使館 駐日スペイン大使 ゴンサロ・デ・ベニト氏
秘めた人間性も描かれた肖像画
本展の大きな見どころは、やはり7点に及ぶベラスケス作品だ。中でも注目なのが、歴史的にも貴重な作品である国王やその家族を描いた肖像画である。王太子を描いた《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》と、ベラスケスの主君である、国王フェリペ4世を描いた《狩猟服姿のフェリペ4世》の2点が出品される。
《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》では、5~6歳の王太子が指揮棒をかかげ、馬に跨る凛々しい姿で描かれている。王位後継者であった王太子とスペイン王国の明るい未来を思わせる作品だが、実際には王太子は16歳で亡くなってしまう。また本作は、マドリード郊外のグアダラマ山脈を描いた、背景のリアルな風景表現が素晴らしく、本作はスペイン風景画史においても傑出した作品といわれている。
ディエゴ・ベラスケス《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》1635年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
スペイン国王・フェリペ4世を描いた《狩猟服姿のフェリペ4世》では、華美な装飾や狩りの獲物などを描かず、モデルが国王であることを示す一切の道具も排除して描かれている。一人の男としての人間性を描き出しながらも、威厳を漂わせる人物として表現している。
ディエゴ・ベラスケス《狩猟服姿のフェリペ4世》1632-34年 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
ベラスケスは国王一家だけでなく、宮廷に関わる様々な人々の肖像画も残している。ベラスケスは相手がどのような社会的身分の人であっても、一人の人間として向き合い、どんな人間なのか、内面に秘められた人間性を捉えて描き出している。本展で公開される《バリェーカスの少年》などの肖像画からも、そのベラスケスのまなざしを感じ取ることができるだろう。
ディエゴ・ベラスケス《バリェーカスの少年》1635-45年 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
ディエゴ·ベラスケス《フアン·マルティネス·モンタニェースの肖像》1635年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
ベラスケス本人や家族をモデルとした宗教画も公開
肖像画以外にも本展では、ベラスケスが宮廷画家になる前の時代に描いた宗教画、《東方三博士の礼拝》も登場する。聖母マリアと幼子イエスは、ベラスケスの妻と長女、画面手前でひざまずく三博士のひとり、メルキオールはベラスケス本人をモデルとして描かれたと言われている。
ディエゴ・ベラスケス《東方三博士の礼拝》1619年 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
ベラスケスにも多大な影響を与えた17世紀の巨匠達
ベラスケスが仕えていたフェリペ4世は、稀代の絵画コレクターであり、3千点を優に超える絵画を収集していた。ヨーロッパ各地からスペイン王室のもとに集められた、時代を代表する画家達の作品にベラスケスも触れることにより、大きな影響を受けたと言われている。本展ではベラスケスに多大な影響を与えた同時代画家、ペーテル・パウル・ルーベンスや、ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの作品なども紹介される。
ティツィアーノ《音楽にくつろぐヴィーナス》1550年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
ペーテル・パウル・ルーベンス《聖アンナのいる聖家族》1630年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《小鳥のいる聖家族》1650年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado
ベラスケス作品を中心に、17世紀スペインの国際的なアートシーンを再現する本展覧会。スペイン絵画の黄金時代を具現した存在ともいえるベラスケスや、その時代に活躍したヨーロッパ絵画の巨匠達の作品に触れ、絵画芸術で華やぐ当時のスペイン王国の宮廷に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
会期:2018年2月24日(土)~5月27日(日)
会場:国立西洋美術館
開館時間:9:30~17:30
※金曜、土曜は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※3月26日と4月30日は開館
観覧料:一般1,600円(1,400円)、大学生1,200円(1,000円)、高校生800円(600円)
※( )内は前売/20名以上の団体料金
【神戸会場】
会期:2018年6月 13日(水)~10月14日(日)
会場:兵庫県立美術館
開館時間:10:00~18:00
※金曜、土曜は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし祝日の場合は開館、翌火曜日休館
観覧料:一般1,600円(1,400円)、大学生1,200円(1,000円)、70歳以上800円(700円)
※( )内は前売/20名以上の団体料金、前売は一般、大学生のみ