最注目のSSW日食なつこの新作「鸚鵡」に迫るインタビュー 正に今が収穫時の彼女が語る現代社会への怒りとは

2017.9.26
インタビュー
音楽

日食なつこ

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前作「逆鱗マニア」から9ヶ月ぶりハイペースで作り上げた5枚目のミニアルバム「鸚鵡」がいよいよリリースとなる。現代社会だからこそ生まれる集団心理の不和や、顔の見えないネット社会に鳴らす警鐘がふんだんに織り込まれた歌詞とアグレッシブなサウンドは健在ながらも、少しづつ変化しているメッセージがパッケージされている。それぞれの楽曲に内包された思いを、一聴して感じる印象との答えあわせともいえるインタビューを敢行した。

日食なつこ

――昨年末、アルバム『逆鱗マニア』についてお話を伺った時、曲は書ける時期と書けない時期があって、その時は書ける時期で、どんどん量産していきたいと言っていましたが、それがまだ続いている感じですか?

そうですね、お陰様で続いていて、早いペースで今回の『鸚鵡』を出せたと思っています。書き溜めていた曲達ではなく、『逆鱗マニア』のツアーの後に半年間集中して、ガッと作りました。

――ライヴ後という事もあって、前向きな精神状態の中で書き上げていった作品が、『鸚鵡』には詰まっているのでしょうか?

ツアーの規模がすごく大きくて、ありがたい事に全会場満員になって、ポジティブな感じで終える事ができました。その流れでわりと前向きに新曲には取り組めたと思いますが、むしろちょっと焦っていました。このまま失速しないで、早く次のものを出さなければという気持ちで作っていました。とにかく『逆鱗マニア』で作った速度を、そのまま落とさずに行こうという気持ちがずっとありました。ここ1~2年が、一番攻めなければいけない時期だという自覚がすごくあって、お客さんもそれをたぶん求めていると思うし、それにどれだけ応える速度で走り続けられるかという事を、自分で試しながら作っていました。

――期待が重圧に変る事もあった?

重圧までは感じていなくて、むしろ窮地に立たされれば立たされるほど燃えるタイプなので、逆境をもっと下さいという感じなんです(笑)。でも『逆鱗マニア』で評価された時に、嬉しいって思ってしまって、満足で終わってしまわないか、むしろ自分の内面的な部分の方が怖くなって。「『逆鱗~』は良かったけど、次のアルバムは何か優しくなったね」と言われるものは作りたくなかったし、やりたくなくて、そこが自分の中ですごく怖くて、そういう意味での重圧はありました。

――確かに『逆鱗マニア』が強烈でした。

強すぎましたね、あれは本当に。

――強く、美しいアルバムでした。今回も1曲1曲にそのキーワードはやっぱり感じました。まず「ギャングギャング」は、お怒りになっている感じですか?(笑)

お怒りになっている感じですね(笑)。もうこれは歌詞そのままの感じなので、わかりやすい曲だと思います。

――イントロから怒りを感じます(笑)。

言いたいことをそのまま言っている曲で、このタイトルは、私すごく動物が好きで、動物のタイトルの曲を書きたいと思って。アカサカオウムというすごくカッコイイ鳥がオーストラリアの方にいるらしくて、そのアカサカオウムの学(英)名が「Gang-gang Cockatoo」ギャング(ガン)ギャング(ガン)コカトゥーというカッコイイ名前で。

――アルバムタイトルも曲名もここからきているんですね。

そうです。この鳥をモチーフにして「ギャングギャング」という曲を書いたのですが、鸚鵡というワードからイメージするものって、オウム返しとか、声真似とか、マネをする二番煎じのようなイメージが色々出てきて。自分が憧れるカッコイイ人のマネをしている人に対して、マネをするのは全然いいし、それが自分の力にもなるのだろうし、でもあなたの中身は伴っていますか?という明確なディスりの曲です(笑)。

日食なつこ

――人に乗っかってネットで批判するやつ、多いですよね。

ネットの集団の怖さというのは、この曲にこもっていると思います。誰も「あ、私もやっちゃうかもしれないから気をつけよう」と思っている子がいないんですよ。みんなが、自分ではない誰かだと思っている怖さというか、そういう事も曲には込めました。

――改めて日食さんの使う言葉がリズムを生み出していて、メロディに影響を与えていると感じました。この「ギャングギャング」にしても、歌詞はいつも推敲に推敲を重ねるのでしょうか?それともわりと最初の第一稿が採用されるのでしょうか?

第一稿ですね。直感で出てきたものを、とにかく勢いで繋いでいく事が、その勢いをキープする事ができます。推敲すると、どうしてもリズム感が失われたり、どんどん理屈っぽくなっていって。読んでみるといい歌詞なんですけど、リズム感がなくてあまりおもしろくないという。

――考えすぎると、言葉が持つリズムや勢い、良さがどんどん削がれていってしまう。

そうですね。もちろんそこは意識して作っていて、すごくいい歌詞、優しい歌詞も世の中にはたくさんありますが、それは別に歌じゃなくてもよくない?って思う事がすごく多くて。音楽をやっているのであれば、歌詞はリズム感があってなんぼだと思うので、そこは大切にしたいと思います。

――「レーテンシー」という曲に込めた想いを教えて下さい。

タイムラグとか時差という意味がありますが、さっきもちょっと出ましたが、自分が今まさに攻め時という時に、どうしてもパッと動けない自分も存在して。でもそれは私が自分を統率できていない責任もあると思うので、前作もたくさんの方に聴いていただけて、でも調子に乗るなよという自戒の意味を込めて書きました。

――セルフライナーノーツに「収穫時を間違えないでください」と書いています。

今のままで行くと、ちょっと気を抜いても大丈夫かなと思いそうなので、でもそうしたらあっという間に腐って終わってしまいそうで、だから実ったらすぐ採る、で、すぐ出荷するというのを、常に自分でやっていきたいなって思って。これから関わってくる人も増えてくると思いますし、他人の意見に振り回されずに、ちゃんと自分で定めた最高速度でいかないと、この先どんどん辛くなるだろうという想いが、この曲を書くきっかけになりました。

――「座礁人形」というタイトルもすごい言葉だなと思います。高校時代に感じた“第三者目線”の歌です。

高校時代って、友達の恋が叶うまでを、みんなで後ろからワイワイしながら、後押しする感じってあったと思います。自分の事ではなく第三者の目線で、その過程の部分を描いた曲で、そういう過程の方が人って多分面白いと感じるのではないでしょうか。おせっかいだったり、ちょっと複雑な気持ちだったり、そういう何かざわざわした感じがすごいいいなと思って。

――「2099年」というタイトルの数字はどういう意味があるのでしょうか?

これは完全に語呂遊びですね。未来の話を歌にしたいなと思って、何年にしようか色々口に出して言ってみたのですが、2099年というワードが一番強そうだなと思って。そんなに意味のある数字ではないんです。

――歌詞の中には2099年の説明はないですよね。

そうですね(笑)、全然この単語について触れてないですよね。単純に未来にあり得そうな話だというだけで。両親が定年退職をして、二人ともフリーな時間がすごく増えて、これからどうして暮らしていくんだろうって思った事がヒントになっています。

日食なつこ

――地球に嫁いできた異星人の嫁と、定年後の地球人の旦那さんという設定ですね。

例えば文化も方言も違う土地に嫁いで行く事って、知らない星に飛び込んで行くのと同じだと思うんです。そこで何十年も過ごして、子供も巣立って二人だけになった時に、その異世界で頑張った奥さんが報われるストーリーが存在して欲しいなあという気持ちがあって。

――ピアノとストリングスのシンプルな編成ですが、すごくスケール感を感じる曲ですよね。

狙いました、この曲は絶対弦楽にしたいと思って、例えば自然ドキュメント番組のオープニングみたいな感じ。

――わかります(笑)。

なのでストリングスも思い切り厚くして、かつ疾走感のある感じも出したかったんです。

――「座礁人形」が、最初と最後がアカペラで、続く「2099年」はピアノとストリングスの音が飛び込んでくるという感じの、その流れもすごく良かったです。

ありがとうございます。今回は色々挑戦しているので、今まで聴いて下さっている方には新しいなと感じていただけると思います。「座礁人魚」のように、ピアノ弾きなのに、ピアノを弾かずに始まったり。最初はピアノのイントロが入っていましたが、レコーディングの時バンドメンバーが、アカペラでやった方がグッとくるかも、というのでやってみると歌詞がストーンと入ってきて。余分なものがないから、空白部分で、最後どうなったのかという聴き手の想像力を掻き立てる事ができそうだなあと思って。

――「廊下を走るな」はホーンが力強くてでももの悲しさも感じます。

実は直前までホーンは入れたくなかったんです(笑)。今回のアルバムは、ピアノソロの曲が一曲もないので、この曲をそうしたかったんです。プロデュースに関わってくださっている方がいて、基本的にどの作品に関してもすごく柔軟に対応してくれて、私の案も大体通してくれるのですが、この曲に関してはその方がホーンを入れた方がいいって言ってくれて。私が「いやそれちょっとイメージが違う」と言っても絶対譲らなかったんです。

――それで前作も参加しているBlack Bottom Blass Band(以下BBBB)が、吹いているんですね。

そうです。前回もすごくカッコよかったのでBBBBの皆さんにお願いをして、当日スタジオで、音を流して合わせてもらった瞬間に、あ、こういうことか!って言葉にはならないのですが、音で納得させられました。ホーンが出す哀愁というか、それが私は全くイメージができていませんでした。

――歌詞は今の歪んだ社会、世界に向けて発信していて、考えさせられます。

大人になると先生がいなくなるじゃないですか。この判断はどう下したら正解なんだろうという事を教えてくれる先生がいないから、自分で考えなければいけないじゃないですか。

――<目次すら見当たらない教科書を今日も開く><こじらせたエゴのそもそもの始まりがどっか教えてよ>というところが印象的です。

曲を書いていても、誰かに教えて欲しいなと思う事ばっかりで、でもそれを全部自分で答えを出していかなければいけないし。

――“チャカチャカチャッチャー♪”という、誰もが中国、中華料理を想像してしまうフレーズで始まる「LAO」ですが…(笑)。

この曲は言ってしまうと、あのフレーズがサビみたいなものです(笑)。これを使いたいがために、残りを書いたようなものです(笑)。

日食なつこ

――そういう曲って自分の中では珍しいですか?

いえ、わりとあります。このアウトロの3小節を聴かせたいがために、その前があるみたいなやつとか。この曲のこのブレスを聴かせたいがために、その前後がある、という感じのものもあります。そういう曲は、歌詞もしっかり考えて作ってはいますが、歌詞の意味は聴き手の想像に任せたりしています。「LAO」に関してはとにかくこの“チャカチャカチャッチャ♪”というフレーズで、中国の世界が意識の中にドンと出てくると思うので、後はそのの世界で楽しんでくださいという曲です。もちろん著作権も調べました(笑)。

――それで「LAO」というタイトルなんですね。

中華の曲なので、中国語のタイトルにしようと思って勢いが良さそうな単語を探して、「LAO」という単語に辿り着いて。意味は後から調べました。そうしたら、にんべん+老の漢字で、「あいつ」「ヤツ」という俗語だとわかって、じゃあこの曲は誰か自分の思う「あいつ」とか「あの野郎」とかに対する嫉妬、嫉妬に押しつぶされそうにならないように頑張ってください、という曲にしようって決めて。そうやって後から理由付けをどんどんやっていった曲です。

――途中でちょっとジャジーなアレンジの部分がありますが、あれは曲を作る時に一緒に出てきたアレンジですか?

そうです。曲を書いている時点でそういう風にしようと思っていました。あの部分までは視覚的なイメージは中華街で、でもジャズな感じになるところからニューヨークのビル街じゃないですけど、違う空気感がスッと入ってきて、また中華街に戻ってくるという感じです。

――なるほど。面白い構成ですよね。ラストの「ハッカシロップ」がラストの2行、<依存し合って生きることがこれほど怖くて幸福だとは><依存し合って見る夕日がこれほどまでに瑞々しいとは>という歌詞にやられました。

その二行に関しては、東京に出てきて3年、その3年間で一番学んだのが、一人では何もできないなということで。レコーディグに関わってくれるスタッフ、バンドがいなければ絶対にこのアルバムはできていないですし、そういう人達ともっと腹を割って話して、いい意味で依存し合ってやっていきたいという思いがすごく出てきました。ひと昔前だったら、絶対に人に依存しようなんて思わなかった。でも依存しないと表れてこない道があるという事に最近気づいて。

――その“気づき”というか、考え方の変化は大きいですよね。

大きいですね。いつでも人と離れられる様にというスタンスで、今まではやって来ました。でもそれだとやっぱりあっさりしたものしか作れないと思って。もうベッタリ依存して、離れられたら、あんたにいなくなられたら、もう私死ぬ、と思うくらい人を信頼してやらないとだめだなという、わりと腹を割って書いた曲です。

――一枚通して聴くと、ジャケットも含めて、世の中に対してのシニカルな部分が強調された、そしてより人間的で、7曲ですが濃厚な一枚です。

多分自分の思ってる3倍くらいの警鐘を鳴らさないと、人には聞こえないないと思っていて。ちょっとチクッと刺すだけでは、多分世間って痛くも痒くもないんですよ。「何かすげぇうるさい奴がいる」くらいになって、初めてみんな問題意識を持つと思っています。

――アルバムを作り終えたばかりですが、絶好調シリーズが続いてる今、曲がどんどん書けている状況ですか?

今すぐにでも新しいアルバム録音できます(笑)。

――すごい生産力(笑)

(笑)意識して今曲をいっぱい書いているので、もういつでも録れます。でも「あんまり君が突っ走っても、お客さんついて来れないんだから、ちょっと落ち着きなさい」ってスタッフに言われています(笑)。

――このアルバムをみんなに聴いてもらうツアーをやって、また色々お客さんの反応とか、実際にバンドで出した音で感じる事があって、また新しい発見に出会えるかもしれないですよね。

確かに!今それを聞いておいてよかったです(笑)。そうでなければ、自分の満足で終わっちゃいそうでした。そうだそうだ。ちょっと焦らないでやろうと思います。危なかった~(笑)。

 

​取材・文=田中久勝 撮影=三輪斉史

 

リリース情報
New Mini AL『鸚鵡』
 

「鸚鵡」/日食なつこ


2017年9月27日発売
価格:2000円(税抜)
品番:281-LDKCD
 
[収録曲]
1. ギャングギャング
2. レーテンシー
3. 座礁人魚
4. 2099年
5. 廊下を走るな
6. LAO
7. ハッカシロップ

 

イベント情報
日食なつこワンマンツアー「時差呆け矯正ツアー」

11/4(土):横浜BayHall
11/16(木):名古屋 ボトムライン
11/24(金):広島 Livejuke
11/26(日):高松 SPEAK LOW
12/2(土):札幌 サンピアザ劇場
12/7(木):仙台 Darwin
12/8(金):新潟 GIOIA MIA
12/17(日):福岡 Gate’7
2018/1/8(月/祝):東京 日本橋三井ホール
1/14(日):大阪 なんばハッチ
1/20(土):盛岡 CLUB CHANGE WAVE
 
<追加公演>
11/15(水):京都 磔磔
12/3(日):札幌 くう

 
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