松居大悟×玉置玲央×前田敦子インタビュー 舞台『ポルノ』の歪みながらもまっすぐな正義と愛情

2026.3.16
インタビュー
舞台

左から 松居大悟、玉置玲央、前田敦子

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2002年に上演された、「阿佐ヶ谷スパイダース」の長塚圭史による伝説的な一作『ポルノ』。この剥き出しの人間ドラマに、劇団ゴジゲン主宰で映画監督としても活躍する松居大悟が演出で挑む。

長塚作『イヌの日』を演出した2016年から「いつか『ポルノ』をやりたい」と胸に秘め、機会を窺っていた松居。思い入れのある作品のキャストには、劇団「柿喰う客」の中心メンバーで近年は映像作品でも話題の玉置玲央と、舞台での活躍も目覚ましい前田敦子をはじめとした7名が集結。今、もっとも旬な才能たちが刺激的な戯曲にどう血を通わせるのか。開幕を控えた松居・玉置・前田の3名による合同取材会から、作品の魅力に迫る。

同じ作品を観た2人の高校生、運命的な再会

ーー松居さんと玉置さんはお二方とも偶然、2002年に上演された『ポルノ』を高校時代にそれぞれご覧になったという縁があります。そのことをお互いに知ったときの記憶についてお聞かせいただけますか。

松居:僕と玲央が2010年に事務所「ゴーチ・ブラザーズ」に同期として入った当時、事務所内のバーベキューでたまたま「『ポルノ』を観た」という話をしたときに、玲央が「俺も観てたんだよ」と話してくれました。そのときは公演の具体的な内容よりも、「衝撃的な作品だったよね」とか、劇中の象徴的な演出について、「あの演出すごかったよね」とか、観劇時の熱量を思い起こすような話をしましたね。

玉置:劇中でビラが落ちてくるんですよ、上空から。今回、僕は国旗耕二という役をやるのですが、その国旗耕二の顔がプリントされたビラがぶわっと降ってきて、終演後に客席の床に散らばっているんです。自分はそれを持って帰って大切に取っておいたのですが、大悟も同じことをしていたと聞いて、「この人と『ポルノ』をやれる日が来るかもしれない」と感じたのが思い出ですね。

松居:当時の僕らはまだ20代でしたし、『ポルノ』の舞台は坂の多い町ということもあって、中劇場や大劇場でやらなければいけない。まだ経験値が足りないなと思いつつ、僕は『イヌの日』をやっていた頃から、『ポルノ』が気になっている、といろいろな人に話していました。

長塚圭史の初期衝動がほとばしる『ポルノ』の魅力

ーー10代だった二人の気持ちを揺さぶった『ポルノ』の衝撃。観劇のきっかけや感想、今のご自身に与えた影響について聞かせてください。

松居:僕があまり家から出ないタイプだったので、演劇やミニシアターの映画を好きな母が誘ってくれたんですよ。そうして観に行った『ポルノ』は、テレビでも映画でも小説でも漫画でも表現しないような、言っちゃいけないことを言ったり、やっちゃいけないことをやったりしながら、それを暗闇の中でみんなで共有して笑っている。いけないことをしている感覚がすごく気持ちよくて、足元に落ちたビラを持って帰ってから、「これは何だったんだろう」という思いが僕の中で24年ぐらい続いている気がします。

玉置:僕も高校生のときに「面白いお芝居あるから観に行こう」と大人に連れられて観劇しました。それまでは王道的な芝居ばかり観ていたので、舞台ってこういうことやっちゃっていいんだ、こういう作品もあっていいんだ、と新しい価値観を打ち込まれる体験をしましたね。今でもそれが原体験となり、自分のお芝居の道標になっている作品です。

ーー『ポルノ』の脚本を書いた長塚圭史さんの作品自体には、どのような印象を持っていますか?

松居:すべてにおいて寂しさとか、そこに対して抗っている中での矛盾に満ちたものとか、人間が人間であることの叫びみたいなものを、芝居を通して納得させられる説得力のような部分が好きだなと思います。

玉置:若い頃に観ていた圭史さんの作品は、不謹慎さとか猥雑さとか、憚られるような表現が当たり前のようにバンバン出てくることが多かったんです。今の自分が言語化するならば、どこか歪んだ登場人物や世界観が必ずあって、歪んでいるけど、彼らが抱えている問題や感情は非常にまっすぐです。そして結局、全体が異質になってしまうのですが、そこが面白いところだなと思います。

松居:あと、不謹慎だけど品があるんですよ。

玉置:わかる。そうだね。

松居:やっちゃいけないことをただやってるんじゃなくて、どこかに品があると思います。

ーーその圭史さんの作品『ポルノ』に、前田さんが参加を決めた理由は何だったのでしょうか。

前田:圭史さんは役者さんとしても、演出家さんとしてもご一緒したことがある方です。『ポルノ』は圭史さんの飄々としている感じが作品から伝わってきて、面白いなと思いました。また、松居さんと玉置さんのお二人が10代の頃に観てずっと印象に残っていると聞いて、そういう作品に出会えるっていいなと思ったんです。そんな体験いいな、覗きたいなと思い、意欲をかき立てられたのが参加したいと思ったきっかけでもあります。

一癖も二癖もある7人の男女

ーー舞台『ポルノ』の魅力は、登場人物の濃いキャラクターともいえます。

前田:すごく癖のある人たちが沢山出てくるんですけど、みんな必死に生きてるんですよね。それがまっすぐだからつい笑ってしまうし、母性がくすぐられるというか。内面が見えてきたときに、その人間たちの深い部分に触れられるように思います。

松居:国旗耕二は、坂の多い町・坂上町の町会議員として立候補して、高齢者や障がいを持った方の味方になりたいと言っている人物です。妻の美和子は子どもが欲しいのにできないという悩みがあり、一見するとお互いに悩みを抱えながらもごく普通に暮らす夫婦に見えますが、劇が進むにつれ、早い段階から「ちょっとおかしいかもしれない」という空気が漂い始めます。まともな会話をしているはずなのに、夫婦ならではの空気感や、長年連れ添った二人の独特な雰囲気が、観客を自然と作品世界へ誘い込んでいくのが特徴的です。

前田:この夫婦をはじめ、みんなすごく自分に自信があるというか、軸がブレてないじゃないですか。それが見てて気持ちいいなって思うので、そういう部分は演じる上で自分の中でも持っていたいなと思いますね。

ーー今作で玉置が演じる国旗耕二と、前田が演じる美和子。2020年のNHK総合ドラマ『伝説のお母さん』に引き続き、エキセントリックな夫婦役というお二人の縁が興味深いところです。

玉置:初めて共演して以来、僕は前田さんを信頼しています。前田さんとはきっと面白い創作ができるだろうし、今回は二人のシーンが多いので、ガッツリぶつかって面白いやり取りやシーンを作れるんじゃないかな、と楽しみにしています。

前田:玉置さんのことは、演劇妖怪だと思っているので(笑)そういう意味ですごく安心しています。みんなそうだと思いますよ。稽古場の雰囲気も、玲央くんのおかげで出来上がってきています。

玉置:本当!よかった。でもまだ4日目だよ?

前田:いい座長をやってくれてます。すごいんですよ、「君はともだち」みたいな。『トイ・ストーリー』のウッディみたいだと思ってます。みんなに寄り添ってくれるから、寂しくならないだろうなと。そういう人の良さがある方だなと長年思っているので、全然心配はないですね。

玉置:「演劇界のウッディです」って、それもらっていい?

一同:(笑)

ーー今回で『ポルノ』は24年ぶりの上演。今の時代に上演する意義について触れながら、観客へのメッセージをお願いします。

松居:改めて脚本を読み直したときに、やっぱり人間の本質というか、普遍的なものを描いているので、古くないものだなという実感はまずありました。それから、いくつかの愛の形や、人物たちが心を曝け出す姿を見ていると、SNSの文字だけでコミュニケーションを取ったり、AIで台本を書けてしまったりする今の時代に、人間が集まって舞台上で作品を作って、それを人間が劇場で体験する芸術は、絶対に人間でしか作れないなと思えています。

玉置:内容としては、はっきり言うとこの令和の時代にはそぐわないものです。けれども、それぞれの正義と愛情がある登場人物を俳優として突き詰めて、生身の人間として世界を立ち上げることができれば、不謹慎かもしれないことが意味を持ってお客様に伝わるんじゃないかなと信じているし、頑張るべきだなと思って取り組んでいるところです。

前田:今はやれないことが増えてきている時代でもあるかなと思いますが、そんな中でかつての二人のように、「こういうこともしていいんだ」という創作意欲が若い人たちの中でかき立てられたら、本当に素敵なことだなと思います。今チャレンジする意味はすごくあるんじゃないのかなと感じますね。ぜひ観にきていただきたいです。

取材・文・写真=さつま瑠璃


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念願の阿佐スパ『ポルノ』24年ぶりに挑む松居大悟「良くないことをしているのに、いけいけ!と思う高揚感」で観客を巻き込む
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公演情報

『ポルノ』

<東京公演>2026年4月2日(木)~12日(日) 下北沢・本多劇場
<福岡公演>2026年4月15日(水)、16日(木) 西鉄ホール
<大阪公演>2026年4月25日(土)、26日(日) サンケイホールブリーゼ
【作】長塚圭史 【演出】松居大悟
【出演】玉置玲央、前田敦子、鳥越裕貴、藤谷理子、小野寺ずる、岩本晟夢、うぇるとん東
公式サイト:https://www.prn-stage.jp/

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