『オットー・ネーベル展』で、好きなものには素直に影響を受けたいと思った午後

2017.10.16
レポート
アート

画像を全て表示(11件)

東京の片隅で、お金をかけなくても想像力とユーモアで楽しく生活していくことを目指す、森田シナモンによる連載企画『東京の片隅で、普通に、楽しく生きていく』。毎回、さまざまな「午後」を探しながら、東京カルチャーの現在を切り取っていきます。第9回となる今回は、10月7日よりBunkamura ザ・ミュージアムにて開催されている『オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代』へ。

日本初の回顧展となるオットー・ネーベル。彼の年譜をたどりながら、本展の見どころをご紹介します。

ネーベルの肖像写真 1937年 (オットー・ネーベル財団提供)

戦争捕虜となっても変わらぬ創作活動への姿勢

オットー・ネーベル 《避難民》1935年、グアッシュ、インク・紙、オットー・ネーベル財団

1892年ベルリン生まれ。肖像写真を見ると、とてもハンサムですよね。彼は初め、建築や演劇の勉強をしていました。しかし、兵役の休暇中にフランツ・マルクの回顧展に魅せられ、そこからは画家としての活動を始めます。その後イギリスで戦争捕虜となりますが、創作活動への真摯な姿勢は変わりませんでした。そしてこの頃の彼に、フランツ・マルクと同じくらい影響を与えたのが、マルク・シャガール。展示作品の中でも、一目でシャガールへの憧れが読み取れる作品がありますよ。ぜひ探してみて下さい。

バウハウスで過ごした若き日々

ネーベルは、30代前半で、バウハウスの音楽教育家ゲルトルート・グルノウのアシスタントだったヒルデガルト・ハイトマイヤーと結婚。当時バウハウスのあったワイマールに滞在することに。そしてそこで、カンディンスキーやクレーと出会い、創作への影響を受けながら、生涯にわたる友情を育みます。本展のプロローグでは、当時のバウハウスの様子も紹介されています。若き日の彼がここでどんな時を過ごしたのかを想像してみるのも、楽しいかもしれませんね。

イタリアの景観を色や形で表現

オットー・ネーベル 《ナポリ》『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より、1931年、インク、グアッシュ・紙、 オットー・ネーベル財団


オットー・ネーベル 《ポンペイ》『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』より、1931年、インク、グアッシュ・紙、 オットー・ネーベル財団

1931年に3か月間、ネーベルはイタリアに滞在します。その時に、イタリアの景観を自身の視覚感覚によって色や形で表現した色彩の実験帳が『イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)』です。この時に彼が日記にした文章がとても印象的です。

「ある国の光の世界をこうして調べ、記すことは、他のどんな方法よりもずっと意味深く、創造的・未来的であるということはすでに明らかだ」

彼がいかにイタリアに魅了されたかがよく伝わってきます。

オーケストラの指揮者のように

オットー・ネーベル 《ドッピオ・モヴィメント(二倍の速さで)》1936年、ラッカー塗料・紙、オットー・ネーベル財団

1933年にスイスに移住した彼は、敬愛するカンディスキーのように抽象画に取り組みます。音楽用語を使用し、作者である自らをオーケストラの指揮者になぞらえて創作をしたそうです。役者の経験や、妻の師であったゲルトルート・グルノウの「感性調和論」の教えに傾倒していた、ネーベルらしい作品がたくさん楽しめます。目に見えない音楽も、ネーベルにはこのように可視化されていたのかもしれませんね。

ネーベルは1973年にスイスのベルンで亡くなります。生涯において意欲的に創作を続けた彼の遺産はオットー・ネーベル財団として法人化され、現在はベルンにその本拠地が置かれています。

ネーベルの持つ、最も素晴らしい才能は

あふれる才能と温かい友情に恵まれたネーベルも、捕虜になったり、売れない時代を過ごしたり、すべてが順風満帆ではなかったはず。ですが、彼の作品からは前向き、明るさ、躍動感や希望が感じられる気がしませんか? 

画家のほかにも、役者、版画家、さらには詩人であったりと、とにかく多才といわれるネーベル。そのなかでも、彼の持つ最も素晴らしい才能は、出会う作品、人、場所など、あらゆるものから豊かなインスピレーションを受け、それを自身の作品にできる、その瑞々しい感性とピュアな目線だったのかもしれません。彼が初めてシャガールを見たとき、初めてイタリアを訪れたときのように、好きになったものには素直に影響を受けたいものだと思った午後でした。

オットー・ネーベル 《叙情的な答え》1940年、テンペラ・紙、オットー・ネーベル財団

イベント情報
オットー・ネーベル展
シャガール、カンディンスキー、クレーの時代

 
会期:2017年10月7日〜12月17日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)
開館時間:10:00〜18:00(金、土〜21:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:10月17日、11月14日
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学・小学生 700円
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/

巡回展:京都文化博物館 2018年4月28日(土)~6月24日(日)