小林唯・spi・有澤樟太郎・飯田洋輔ならではの新しい「ザ・フォー・シーズンズ」が誕生~ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』Team YELLOWゲネプロレポート

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レポート
舞台

Team YELLOW(左から)飯田洋輔、有澤樟太郎、小林唯、spi

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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』が3年ぶりに上演されている。SPICEでは劇団四季で活躍し、今回フランキー・ヴァリに抜てきされた小林唯、spi、有澤樟太郎、飯田洋輔が登場する「Team YELLOW」が2025年8月に東京・日比谷シアタークリエで行った通し稽古の様子をレポートする。上演は9月30日(火)まで、同所で。

同作は1960年代に実在したアメリカの4人組ポップグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の栄光と挫折を描いた物語。米ニュージャージー州にある貧しい地区で生まれ育った青年たちは、天性の歌声と才能を武器にスターダムを駆け上がっていく。スポットライトを浴び華やかな日々を送っていたが、その裏では多額の借金やメンバー同士の確執、家庭不和など様々な問題を抱えていた。

トニー賞最優秀ミュージカル賞、グラミー賞を受賞するなど長く親しまれている名作。日本では2016年に初演され大きな話題に。今年は初演からリード・ボーカルのフランキーを務める中川晃教らが登場する「Team BLACK」、小林がフランキーを務める「Team YELLOW」、フランキー役は2022年以来となる花村想太らの「Team GREEN」、初演からアンサンブルを務めていた大音智海がフランキーとして舞台に立つ「New Generation Team」の4チームが、日替わりで出演する。

舞台はグループの軌跡を「春・夏・秋・冬」の季節に分け、「ザ・フォー・シーズンズ」の4人が語り手となって展開していく。まだ何者でもない時代は「春」。胸板が厚い屈強な男、トミー・デヴィート役のspiは「この話は、俺から始まった。みんな聞きたいよね」と客席を覗き込みながら語り始めた。「ニュージャージーの田舎町から抜け出す方法は3つ。軍隊に入るか、マフィアに入るか、スターになるか」。野心家のトミーは、ギターをかき鳴らしながらチャンスを探していた。そんなトミーの前に観客席側の通路から現れたのは、小林が演じるまだ16歳の少年・フランキー。天使の歌声にノックアウトされたトミーは「この坊やが俺を成功に導いてくれる!」と直感。世間知らずの子供に音楽、女の子へのアプローチの仕方などを教えるのは俺の使命と奮起。運命の女性と恋に落ちたフランキーは「シナトラよりも有名になる!」と約束し、メアリー(ダンドイ舞莉花)と結婚した。メアリーと結婚し、人生の「春」を迎えたフランキー。うだつが上がらなかったグループにも春が訪れようとしていた。それは地元の友人が紹介してくれた「第4の男」の存在だった。

季節は「夏」。現れた知的な男は、有澤演じるシンガー・ソングライターのボブ・ゴーディオ。3階建てに組まれた2階部分で黄色のジャケットを身にまとい足踏みオルガンを演奏しながらヒット曲「Short Shorts」を歌うボブはすでに成功者だった。

しかし澄み切った青空のようなフランキーの歌声を耳にして開眼。「この声のために曲を書かなければ!!!」と興奮したボブは3人の前に現れる。半信半疑のトミーをよそに、足踏みオルガンを演奏しながら『Cry for Me』を歌い始めると、その伸びやかな歌と美しいメロディーに、フランキーは喜びの表情。「♪行かないで~」と歌う声に合わせて、声を重ねていく。ボブの横でリズムを取っていたニック・マッシ役の飯田洋輔はベースを奏で、様子を見ていたトミーは「俺も」という感じでギターを合わせていく。初めてのセッションで心も通わせ合った最強のグループが生まれた瞬間だった。

「シェリー」などリリースした楽曲が軒並みヒット。各地でコンサートを開催するようになり、家を留守にする時間も増えていった。名声を得た一方で、家族とは疎遠に。フランキーは愛し合ったメアリーと別れることを決意する。

勢いがあった時代がウソだったかのように。全てがうまく回らなくなっていく。季節は「秋」。飯田が演じるニックは「ずっと問題を抱えていた」と言い、トミーのだらしなさが目に余ると批判。そのだらしなさは、グループに大きな危機を招いたのだった。

ツアーで宿泊したホテルの料金未払いで逮捕・留置された4人。窃盗などで刑務所を出たり入ったりしていたトミーと、ニックは動じないが、初めての経験にボブはカンカンに。そんなボブをトミーが芸人のコウメ太夫のような節回しで「♪新曲が書けるんじゃないか」とからかい始めた。シリアスな中に笑いを交えるYELLOWチームのスタイルに客席からは大きな拍手が起こっていた。

グループを立ち上げ、誰よりもグループ思いだったトミー。レコーディングで金が不足していれば借金をし、各所に頭を下げて回るなど裏方も務めていた。そのストレスからか、ギャンブルにのめり込んだトミーは無自覚なまま借金が倍増。おまけに税金の未納も発覚し、その額は天文学的な数字になっていた。驚くボブとニックらをよそに「借金と税金はグループが全部引き受ける」とまさかの提案をしたフランキー。「トミーは僕を道ばたから救い出してくれた」と受けた恩を返そうと発起する。その提案を聞いたニックは「俺は辞める」とグループを去って行く。

失意の中で訪れた「冬」。フランキーはアルバムをめくるように口を開いていく。2人の声を失い、新しいカルテットを結成しようと歌手を探しに奔走。しかし以前のようにうまくいかない。浮かない顔のフランキーに、ボブは「ソロで歌って」と提案。名声をつかんだその時に取り入れようと話していた華やかなホーンセクションを従え舞台で歌うと、以前のように観客が体を揺らし始めた。ミラーボールが輝く中で歌い上げたのは「Can't Take My Eyes Off You」や、「Working My Way Back to You」などの名曲。再起を知らせる歌声だった。

苦労の末借金を完済。やっと自由を手にしたフランキーに、愛娘との突然の別れを知らせる電話のベルが鳴り響いた。驚き、神父の胸に顔を埋めたフランキーは弱々しく、切ない物だった。

一度はバラバラになった4人だったが、再び集結、1990年にはロックンロールの殿堂入りを果たすなど、唯一無二の存在として愛されている。終盤には開演前から3階建てのステージの最上部に設置されたハンガーラックに静かに並べられた純白のジャケットを羽織り横一列に。共演者らとステップを踏みながら「シェリー」などを高らかに歌唱。コンサート会場のような盛り上がりを見せていた。

舞台は両側に13個ずつ積まれたモニターを使った仕掛けのほか、レコード盤のようにぐるぐるとステージを回転させるなどユニークな演出も見どころだ。

初役の小林は地声のほか、トワング、ファルセット、ミックスなどを駆使した歌声はもちろん、その伸びやかな声で心情も表現し、新境地を見せている。高音からの低音の切り返しなどは圧倒された。spiはグループにトラブルを持ち込むトミーを愛すべき人間として表現。パワフルな歌声は強い生命力を感じさせた。荒くれ者のトミーとは対極にいるのが、紳士的な有澤のボブだ。生まれ持った才能で生きているボブは常に動じず、自分で道を切り開こうとする。強い信念があるからこそ、変わらずにフランキーを支えることが出来る。グループにとっての良心と思える誠実な演技を見せていた。名脇役として存在する飯田のニックは良いスパイス。ないと物足りない。そんな輝きを放っていた。

初舞台に向けて小林は「限られた時間での稽古期間でしたが最高のチームに仕上がったと思います! YELLOWならではの新しい『ジャージー・ボーイズ』を楽しんでいただけたらうれしいです。僕個人としても本当に大きな挑戦になり、学びに溢れた稽古の日々でした。特に歌は今までやってきたジャンルとは全く違う楽曲なので新しい一面を見ていただけると思います! お楽しみに!」とコメントを寄せている。


そして、「Team GREEN」でフランキー・ヴァリを演じる花村想太の舞台写真とコメントも紹介する。

「Team GREEN」花村想太

なお、「Team GREEN」では、トミー・デヴィートをspi、ボブ・ゴーディオを有澤樟太郎、ニック・マッシを飯田洋輔が演じる。

花村想太 コメント

遂に開幕しました。
今回僕は特別公演ということで5公演に参加させていただきますが、この5回の一回一回そして1分1秒をフランキーとして大切に生きていきたいと思います。
カンパニーとお客様と作り上げる空間を最高のものにできますように。


取材・文・撮影(Team YELLOW舞台写真)=翡翠

公演情報

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』
■日程・会場:2025年年8月10日(日)~9月30日(火) 東京 日比谷シアタークリエ
■脚本 マーシャル・ブリックマン&リック・エリス ■音楽 ボブ・ゴーディオ ■詞 ボブ・クルー
■演出:藤田俊太郎
 
■キャスト 配役
 
「Team BLACK」
フランキー・ヴァリ 中川晃教
トミー・デヴィート 藤岡正明
ボブ・ゴーディオ 東 啓介
ニック・マッシ 大山真志
ボブ・クルー 加藤潤一
ジップ・デカルロ 阿部 裕
ノーマン・ワックスマン 戸井勝海
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク LEI’OH
ドニー 山野靖博
ストッシュ 杉浦奎介
ジョーイ 石川新太
 
「Team YELLOW」
フランキー・ヴァリ 小林 唯
トミー・デヴィート spi
ボブ・ゴーディオ 有澤樟太郎
ニック・マッシ 飯田洋輔
ボブ・クルー 原田優一
ジップ・デカルロ 川口竜也
ノーマン・ワックスマン 畠中 洋 
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク 大音智海
ドニー 山田 元
ストッシュ 伊藤広祥
ジョーイ 若松渓太
 
「Team GREEN」
フランキー・ヴァリ 花村想太
トミー・デヴィート spi
ボブ・ゴーディオ 有澤樟太郎
ニック・マッシ 飯田洋輔
ボブ・クルー 原田優一
ジップ・デカルロ 川口竜也
ノーマン・ワックスマン 畠中 洋
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク 大音智海
ドニー 山田 元
ストッシュ 伊藤広祥
ジョーイ 若松渓太
 
「New Generation Team」
フランキー・ヴァリ 大音智海
トミー・デヴィート 加藤潤一
ボブ・ゴーディオ 石川新太
ニック・マッシ 山野靖博
ボブ・クルー 原田優一
ジップ・デカルロ 川口竜也
ノーマン・ワックスマン 畠中 洋
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク LEI’OH
ドニー 山田 元
ストッシュ 伊藤広祥
ジョーイ 若松渓太

※「TeamBLACK」、「TeamYELLOW」に加え、TeamYELLOWの配役をベースにフランキー・ヴァリ役のみ花村想太が演じる「TeamGREEN」、さらには、フレッシュなキャストで贈る「New GenerationTeam」の公演を1公演予定。

■製作:東宝株式会社、WOWOW

■作品公式HP https://www.tohostage.com/jersey/
スケジュール、キャストスケジュールなど詳細は公式HPをご確認ください。