池田勇太が1億円突破で賞金王争いは激化 石川遼はプロ初勝利のマイナビABCで復活なるか
虎視眈々と2連覇と賞金王も視野にいれる片山晋呉。昨年同様の雄姿が見られるか
今季の男子ゴルフツアーもあと6戦。トップ選手は賞金王争い、下位の選手はシード権争いに照準を合わせ、1打1打に重みが増してくる。10月26日~29日に行われる『マイナビABCチャンピオンシップ』の賞金総額は1億5,000万円。優勝賞金も3,000万円と高額なだけあって、出場選手は予選通過はもちろんのこと、一つでも上位に食い込みたいと目の色を変えて臨んでくる。
このABCゴルフ倶楽部は鈴木正一、佐藤健設計の本格的トーナメントコースで、今までに日本女子プロ選手権も開催された名コースだ。比較的まっすぐなホールが多い中、池とバンカーが効果的に配置されており、特に最終ホールの18番はグリーン手前に大きな池が口を開けている名物ホールとなっている。
2014年の小田龍一の21アンダーを筆頭に、2012年のハン・リ―(米)の-17アンダー、2013年の池田勇太、2011年の河野晃一郎の15アンダーなど、ビッグスコアも出るコースになっている。一方で面白いことに予選通過最下位の選手のスコアも、毎年18オーバーや16オーバーなど大叩きするコースでもある。つまり、集中力が欠けると巧みに配置されたハザードの餌食になりやすく、それだけに毎ホールで集中力を途切らせず、きっちりと戦略を立てて攻めることが必要なコースと言える。
先週のブリヂストンオープンは台風21号の影響で2日間競技に短縮。2日目にビッグスコアを出した時松隆光が、それこそ天の運を味方につけ2勝目を挙げた。半分に減額されたものの優勝賞金1,500万円を上積みし、賞金ランクも10位(約4,496万円)に入ってきた。今季初シード選手の時松は、身長168㎝で平均飛距離が268ヤードと”飛ばない”プロに属する。しかもプロでは珍しいベースボールグリップという変わり種で、こういう選手が出てくると、ツアーもグッと面白くなる。これで最終戦のJTカップも出られるため、今季の賞金上乗せは確実だ。いずれにしても、今度はビッグトーナメントを4日間戦っての勝利が見たいものだ。
さて、賞金王争いは今季、すべての部門で安定した数字を残している小平智(1億777万円)、それを約500万円差で追う宮里優作(1億280万円)、そして秋の陣に“大まくり”をかけ、ブリヂストンオープンで1億円に乗せてきた昨年の賞金王の池田勇太(約1億10万円)の3人が軸となっている。昨年このマイナビABCを制した片山晋呉(7,347万円)は、2003年にも優勝しており(当時の名称はABCチャンピオンシップ)、2013年にも4位に入っている。コースとの相性は悪くなく、2連覇すれば今季の賞金額も1億円に到達するだけに、密かに闘志を燃やしていることだろう。あとは、2日間とは言えブリヂストンオープンで3位タイに入り、390万円を上乗せ、各トーナメントでも常に上位争いをしている今平周吾(8,236万円)も現在、賞金ランク5位につけている。
マイナビABCを含め、これからの6試合の合計賞金総額は10億8,000万円。1試合でも優勝すれば2,600~4,000万円が加算されるため、各選手ともコンディションと集中力を高めてくるはずだ。特に上位3人はほぼ横一線と言え、同大会での優勝ないし上位入賞で、ライバルたちに大きなアドバンテージとプレッシャーを与えたいところだ。
今、日本のゴルフ界で気になる選手の一人と言えば石川遼だろう。アメリカのツアー「ウェブ・ドットコム・ツアー」で31位となり、25位までのシード権獲得には至らなかった。2013年から本格参戦してきた石川だが、ここで一段落つくことになる。今後はウェブ・ドットコム・ツアーで再度シード権を獲るべく渡米しながら、日本ツアーにも参戦。両ツアーの掛け持ちプレーとなることだろう。
その石川はアメリカでの状況そのまま、直近の2戦で予選落ちを喫してしまった。石川の2週連続予選落ちは2012年のKBCオーガスタ、フジサンケイ以来で、2008年に優勝を果たしたこのマイナビABCで復活のきっかけを作りたいと思っているはず。先週のブリヂストンオープンでも、随所に良いショットを放っていたが、一旦崩れるとボギーが止まらなくなる悪循環が続いている。若くして才能を開花させた天才だけに、その復活を待ち焦がれているファンも少なくない。とにかく、技術面というよりもメンタル面の問題があるように思える。あのタイガー・ウッズでさえティーチングプロを代えるなど試行錯誤してきた。石川もそろそろショット、メンタルともに誰かに師事する機会なのかもしれない。
石川遼の弟、石川航も主催者推薦で出場する。弟の前で兄の復活劇を見せられるか。賞金王争い、シード権争いをあわせ、見どころの多い同大会。ABCゴルフ倶楽部を攻略するのは誰か、楽しみな一戦はもうすぐだ。