Aimerが歌う劇場版『Fate』主題歌「花の唄」の歌詞は次作のネタバレ? Aimer×梶浦由記が語る隠されたヒロインの想い
劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』(以下、『HF』)が公開後1週間で、興行収入4億円、来場者数24万人を突破した記念に、本作の主題歌である「花の唄」を歌うAimerと、音楽担当の梶浦由記が『HF』の見どころや、音楽の聴きどころなどについて対談をおこなった。
対談では、ネタバレともいえる主題歌に隠されたヒロインの思いや、これまでの『Fate』にはない音楽性などが話題となり、現在のアニメ技術を最高まで生かした映像面についてAimerが「どれだけの血と涙が流されたんだろう……」と制作陣を心配する一幕もあった。
『Fate』シリーズで初映像化となる通称“桜ルート”の『HF』は、シリーズでも特に異質といわれる物語。主人公・衛宮士郎とヒロイン・間桐桜の日常の裏で侵食される世界を描いた本作について、梶浦とAimerが音楽面から迫る。
劇場版『Fate/stay night [Heaven‘s Feel]』は不安感がハンパない
――本作品をご覧になっていかがでしたか?
梶浦:私は絵合わせの段階から何度も見ているんですが、完成したものがここまですごい映像になると思いませんでした。雪のきれいさや表情の細かさ……何より大量の虫ですね。
Aimer:ああ〜(笑)。
梶浦:なぜこんなに丁寧に描いちゃったんだ!みたいな(笑)。後は街の美しさです。街に流れる静かで穏やかな空気。前半の平穏な美しい街と、後半の冷え込んでいく街の対比がよく出ていたと思います。
Aimer:私はとにかく戦うシーンに感動して、「どういうことなんだ!?」って思うくらい迫力を感じました。それにキャラのセリフが少ない分、効果音も印象的でしたね。最初に士郎が弓を引く音などもリアルで、まるで実写映画のようでした。
劇中のバトルシーン ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
――ほかに映像面で印象に残ったところは?
梶浦:バーサーカーとの戦いがとにかく怖いんですよね。映画館で見ると、ものすごく大きくて「サーヴァントの戦いってこんなに恐ろしいものなんだ」って改めて思いました。大きくてスピードも速くて、「こんなの勝てないよ」って。大画面だから伝わってくるものもあるので、一度劇場で見ておくと、サーヴァントがむちゃくちゃ怖くなりますよ。
大迫力のバーサーカー ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
Aimer:絶望感がありますよね(笑)。私は、士郎がよくわからない世界に巻き込まれていく姿に感情移入しました。どうなっちゃうの? 本当に死んじゃうんじゃないの?っていう恐怖が常にありましたね。本作の士郎には「絶対負けない」っていう雰囲気がないので。
梶浦:ないですよね。
Aimer:この映画では、現実感のある風景の中で、多くの人に気付かれないまま戦いが進んでいくじゃないですか。私も夜に散歩をするのでとてもイメージできて、真夜中の街ってすごく静かで「ここで何か起きてもわからないんじゃないか」って頭に浮かぶことがあります。そうした場所で私たちの知らない戦いがあり得るかも、と考えさせられるリアリティーもすごいです。
梶浦:士郎逃げて!って本気で思ってしまう。不安感が半端じゃないですよね。
真夜中の街を歩くヒロインの桜 ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
主題歌「花の唄」の歌詞は次作のネタバレ?
――音楽について監督から指示はありましたか?
梶浦:本当は、前半に音楽を1曲も入れたくなかったみたいですね。その意図に沿って、できる限り音楽を抑えたぶん、後半とのメリハリが生まれたと思います。
――梶浦さんは以前の『Fate』シリーズでも音楽に関わっていますが本作の特徴は?
梶浦:今回は、これまで描かれていた『Fate』の物語が、士郎と桜による日常の裏側にあります。ですから裏の話が進んでいくときは、今まで通りのたくましい音楽で。反対に士郎たちのパートでは、ラブストーリーを盛り上げる音楽になっています。こちらは以前の『Fate』にはない音ですね。
Aimer:士郎たちの狭い世界の背景に壮大な戦いがあるという対比になっているんですね。ちなみに、士郎と桜が蔵の中でお話するシーンで「花の唄」のアレンジをしていただいた楽曲が流れ、そこで私は思いっきり泣きました(笑)。
梶浦:気づかない方も多いと思いますけど、実は「花の唄」のメロディーは本編の音楽に何度も使われていて。オープニングテーマにも歌のサビが仕込まれているんです。
Aimer:え! そうなんですか!? もう1回じっくり見てみます。
ヒロインの桜 ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
――話題に出た主題歌「花の唄」は梶浦さんが作詞・作曲・編曲を担当していますが、歌詞はヒロイン・間桐桜の心情を表しているのでしょうか?
梶浦:はい。完全に桜目線の歌がいいと思いまして。今作の第1章では、桜はあまり自身の感情を表に出しませんよね。エンドロールで桜の思いを素直に言葉にすることで、彼女への理解を深めてもらおうとの狙いがあります。ただ歌詞は少しネタバレですけど(笑)。その旨を制作側に伝えたら「いいんじゃないですか」って。
――Aimerさんが「花の唄」を初めて聞いたときの印象は?
Aimer:サビのメロディーが印象に残りました。「え? ここでこの音になるの?」って。行っちゃいけない音にあえて行っているというか。歌詞も1番では「貴方のこと傷つけるもの全て私はきっと許すことができない」と来て、2番では「私を傷つけるものを貴方は許さないでくれた」とか。歌詞を追うにつれて、どんどん殴られている感じすらしました。
――なるほど……
Aimer:これほど女性的な歌詞を、これまでで初めて歌いました。桜の物静かなたたずまいがあるからこそ、歌詞のすごみが出てきますよね。でも自分も女性だから、とてもシンパシーを感じます。汚れのないものって、振り切ってしまえばどす黒くなる場合もある。歌っていて、自然と感情的になりました。
ヒロインの桜 ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
劇中の見どころ「制作でどれほどの血と涙が流されたんだろう……」
――本作で好きなキャラクターは誰ですか?
梶浦:やっぱり桜ですね。「桜を好きになろうよ」って作品ですよ、これは。ひとりの少女が不穏な世界に巻き込まれていくなか、士郎たちがどうやって困難に立ち向かっていくのかを見守ってほしいです。
Aimer:私も桜です。これまでの作品だと「料理を作っている子」というイメージでしたが、彼女の内面を知ることができて好きになれる映画です。
――最後に改めて劇場版『Fate/stay night [Heaven‘s Feel]』の“見どころ・聴きどころ”を教えてください。
梶浦:音にたずさわった者として、士郎と桜の2人の世界と、バトルシーンの音楽の落差に注目していただければ。中盤には、サーヴァントであるランサーと“あるお方”との長い戦闘があって、作画監督も私も力を入れているので、ぜひしっかり見てほしいですね。余談ですけど『Unlimited Blade Works』(2014年のテレビ版)の1話と2話を見ておくと、より物語がわかりやすいかと。
Aimer:日本アニメのクオリティーってここまできたんだ、っていうのが本作でよくわかります。戦闘シーンの制作では、どれだけの血と涙が流されたんだろう……という。心配になってしまうくらいでした。
ハイクオリティーな戦闘シーン ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
梶浦:ふふふ。
Aimer:それに主題歌ですが、自分で歌ったのにエンドロールで感動して泣いてしまいました(笑)。梶浦さんが桜の気持ちを表現してくださったのでエンドロールで席を立たずに最後まで「花の唄」を聞いていただけたらうれしいです!
『劇場版「Fate/stay night [Heaven‘s Feel]」I.presage flower』 ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
http://www.fate-sn.com/
https://twitter.com/Fate_SN_Anime?lang=ja