ミレーの《落穂拾い》やゴッホの《星月夜》などオルセー美術館所蔵の作品約110点が来日 『オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』記者発表会レポート

レポート
アート
2026.7.28
『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』記者発表会の様子

『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』記者発表会の様子

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2026年11月14日土)から2027年3月28日日)まで、東京・上野の東京都美術館にて、『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』が開催される。

東京都美術館開館100周年となる2026年は、オルセー美術館も開館40周年を迎える年。絶妙のタイミングで開催される本展は、オルセー美術館の珠玉のコレクションから「いまを生きる歓び」をテーマとする絵画や彫刻、工芸や写真など約110点を紹介する。なお東京都美術館の独自企画で国内・海外共に巡回することはなく、展示予定の約110点のうち7割弱が日本初公開という非常に貴重な機会だ。

7月1日水)には記者発表会が開催され、華やかな会場には東京都美術館館長の高橋明也氏や同館学芸員の大橋菜都子氏が登壇。トークセッションでも本展の見どころや開催に向けての熱い思いが語られた。

『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』記者発表会の様子

『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』記者発表会の様子

東京都美術館開館100周年とオルセー美術館開館40周年が重なるアニバーサリーイヤー

記者発表会では、文部省在外研究員として1984年に渡仏し、1986年までオルセー美術館開館準備室の客員研究員を務めた高橋明也氏が展覧会を紹介。東京都美術館は昔からオルセー美術館との関わりが深く、オルセー美術館をテーマとする展覧会を1996年、1999年、2006年に開催していると述べた。また高橋氏は、東京都美術館開館100周年とオルセー美術館開館40周年の重なりに「縁を感じずにはいられない」と語り、両館の歴史の重みと強い結びつきを強調した。

東京都美術館館長 高橋明也氏

東京都美術館館長 高橋明也氏

祝祭感に満ち、オルセー美術館の作品を生かした内容

続いてオルセー美術館 彫刻部門上席学芸員 エドゥワール・パペ氏のビデオメッセージの後、同館学芸員の大橋菜都子氏が展覧会の構成や見どころを説明。企画にあたっては2つの美術館の節目が重なる祝祭感、潤沢なコレクションを持つオルセー美術館の作品を生かすこと、気負わずに鑑賞できて楽しい気持ちになれることの3点を大切にしたと述べ、「『いいものを見たな』と感じていただける展覧会を目指しました」と語った。

東京都美術館学芸員 大橋菜都子氏

東京都美術館学芸員 大橋菜都子氏

展覧会は「プロローグ ダンス 世界をことほぐ」「第1章 自然の美を見出す」「第2章 よく食べ、よく働き、よく眠る」「第3章 日々を重ねる」「第4章 老いも若きも、貧富も問わず」「第5章 幸せの手ざわり」「エピローグ それでも世界は美しい」という構成である。

まずプロローグでは、「いまを生きる歓び」をテーマとする本展にふさわしい、心弾む作品がずらりと並ぶ。このテーマは、東京都美術館のロビー階講堂前に飾られているジョゼフ=アントワーヌ・ベルナールの《舞踏》のオリジナルとなる作品がオルセー美術館にあることも由来しているそうだ。

第1章は、19世紀に都市で生活するアーティストたちが自然を画題とし、アール・ヌーヴォーが開花、植物や生物の曲線などにインスピレーションを得た装飾美術が生活を彩るようになったことに着目。四季を描いた連作の一部であるジャン=フランソワ・ミレーの《春》や、エミール・ガレ《フラコン形の花瓶》などが紹介される。

ジャン=フランソワ・ミレー《春》1868-73年の間に制作 オルセー美術館  (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

ジャン=フランソワ・ミレー《春》1868-73年の間に制作 オルセー美術館 (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

19世紀は農業から工業へと社会が切り替わる時代でもあった。第2章では都市や農村を描いた作品を広く展覧、ジャン=フランソワ・ミレーの《落穂拾い》なども鑑賞できる。日本でも広く愛されてきた本作品は、農地を持てない農民たちが落穂を拾うことを許可されたという風習や、厳しい時代を生き抜くたくましさ、遠くに見える収穫を終えた実り豊かな農作物などを示す。

ジャン=フランソワ・ミレー《落穂拾い》1857年 オルセー美術館  (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

ジャン=フランソワ・ミレー《落穂拾い》1857年 オルセー美術館 (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

第3章は、普仏戦争やパリ・コミューンといった激動の時代の後に取り戻した日常や、近代化した街の姿を捉えた作品を紹介。クロード・モネの《パリ、モントルグイユ通り、1878年6月30日の祝祭》は普仏戦争から復興した街の賑わいを示す。混乱の後に取り戻した日常とゆったりとした時間を描くピエール=オーギュスト・ルノワールの《読書する人》は、大衆も小説を読むようになった世相などを物語る。

クロード・モネ《パリ、モントルグイユ通り、1878年6月30日の祝祭》1878年 オルセー美術館  (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

クロード・モネ《パリ、モントルグイユ通り、1878年6月30日の祝祭》1878年 オルセー美術館 (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

ピエール=オーギュスト・ルノワール《読書する人》1874-76年の間に制作 オルセー美術館  (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF

ピエール=オーギュスト・ルノワール《読書する人》1874-76年の間に制作 オルセー美術館 (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF

第4章の舞台は世紀末のパリで、人口が急速に増えた華やかな都市の賑わいが伝わってくる。ジェームズ・ティソの《夜会》は豪華なドレスを身にまとった女性と紳士を描いており、裾の鯉のような柄から女性の上昇志向や野心などを読み取ることもできるだろう。ルイ・アンクタン《アンリ・サマリー》は一世を風靡した人気俳優であるアンリ・サマリーを描いた作品で、奥行きがなく平面的な構成などから日本美術の影響が感じられる。

ジェームズ・ティソ《夜会》1878年 オルセー美術館  (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / René-Gabriel Ojeda / distributed by AMF

ジェームズ・ティソ《夜会》1878年 オルセー美術館 (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / René-Gabriel Ojeda / distributed by AMF

ルイ・アンクタン《アンリ・サマリー》1890年頃 オルセー美術館  (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

ルイ・アンクタン《アンリ・サマリー》1890年頃 オルセー美術館 (C)Musée d'Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF

19世紀以降のアーティストたちは、日常に着目しつつ私的な時間に目を向けた。第5章のピエール・ボナールの《室内》は、後にボナールの妻となるマルトと彼の犬が登場する温かい作品だ。犬はボナールの絵にしばしば登場し、人に寄り添う親密な存在として描かれている。

ピエール・ボナール《室内》1920年頃 オルセー美術館  (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール・ボナール《室内》1920年頃 オルセー美術館 (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

そしてエピローグでは、ポール・ゴーガンの《アレアレア》やフィンセント・ファン・ゴッホの《星月夜》といった傑作が目白押し。南仏アルルの南西の街並みと北北西の夜を組み合わせた《星月夜》は、ゴッホが喜びや希望の象徴と見なした星が描かれており、まさに「いまを生きる歓び」に満ちた作品として展覧会を締めくくる。

フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》1888年 オルセー美術館  (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》1888年 オルセー美術館 (C)GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

また本展は、オルセー美術館をはじめフランスで広く活躍するセノグラファー(展示デザイナー)のセシル・ドゥゴ氏が空間構成を担当、曲線を駆使した空間になっているのも特徴のひとつ。会場に足を踏み入れた瞬間から浮き立つような空気を実感し、また鑑賞が終わった後も展覧会の余韻を味わうことができるだろう。

「いまを生きる歓び」をキーワードに構成した展覧会

記者発表会に続いて東京都美術館館長の高橋明也氏によるトークイベントが開催された。高橋氏によれば、オルセー美術館は印象派の絵画を多く所持しているイメージだが、それ以外の絵画や工芸などの作品も数多くあるという。今回はそんなオルセー美術館の作品から「いまを生きる歓び」をキーワードに構成し、世界中で暗い話題が多い中で、明るい気持ちになれる展覧会を目指したとのことだ。

トークイベントの様子

トークイベントの様子

また、ジャン=フランソワ・ミレーの《落穂拾い》は落穂を拾う農婦の姿が注目されがちだが、実は後方が明るいことや、フィンセント・ファン・ゴッホの《星月夜》にも光と影が並存していることなどにも言及、作品をじっくり鑑賞することでコントラストを味わえると述べた。その上で本展のキャッチコピーである「それでも日々は愛おしい」を強調し、見る人が「生きる希望を抱くことができるような展覧会を目指しています」と語った。

『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』は、東京・上野の東京都美術館にて、2026年11月14日土)から2027年3月28日日)まで開催予定。


※画像写真の無断転載を禁じます。
文・写真(記者発表会の様子)=中野昭子、広報画像=オフィシャル提供

イベント情報

『東京都美術館開館100周年記念 オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び』
日程:2026年11月14日(土)~2027年3月28日(日)
時間:9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00
※入室は閉室の30分前まで
休館日:月曜日、11月24日(火)、12月22日(火)~2027年1月3日(日)、1月12日(火)、3月23日(火)
※ただし11月23日(月・祝)、1月4日(月)、1月11日(月・祝)、3月22日(月・祝)は開室
会場:東京都美術館 企画展示室(東京都台東区上野公園8-36)
入場料:一般2,400円(2,200円)/大学・専門学校生1,300円(1,100円)/65歳以上1,600円(1,400円)
※()は前売料金。前売券販売期間は9月28日~11月13日
※18歳以下、高校生以下は無料
※12月8日(火)~18日(金)の平日は、大学・専門学校生は無料
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、オルセー美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、BS
テレビ東京
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