まるで原作の世界から飛び出してきたよう! 圧巻の演奏にブラボーの嵐~物語が“音”で広がる「『ピアノの森』ピアノコンサート2026 NiuNiu」が開幕
今年も恒例の「イープラスpresents『ピアノの森』ピアノコンサート2026」がスタートした。昨年に引き続き、注目のピアニスト ニュウニュウが登場。東京の初日公演では、一色まこと氏による原作漫画の登場人物の一人である絶対王者パン・ウェイを彷彿とさせる、いやそれをも超える完璧無比のダイナミックな演奏と原画の世界から飛び出てきたかのような見目麗しいステージ姿で客席を大いに沸かせた。
原作のストーリーに惹きこまれる魅力的なステージ
7月25日(土)、ツアー初日の演奏会は東京・浜離宮朝日ホールで開催された。原作の漫画で描きだされた、ショパン・コンクールを夢見る若きピアニストたちが繰り広げる多感なストーリーを、気鋭のピアニスト ニュウニュウが作品を追うごとに深めてゆく見事なプログラムが組まれており、ツアー前から原作ファン、そしてニュウニュウ ファン両者の期待を一身に集めていた。当日、気温は36度近い中、幅広い年齢層のファンで埋め尽くされた会場には、今年も一色まこと氏が「『ピアノの森』ピアノコンサートツアー」のために描き下ろした特別ビジュアルの原画が展示されており、ひと際、輝きを放っていたのも印象的だ。
ニュウニュウはNHKによる『ピアノの森』のアニメ放映当時、パン・ウェイの演奏を担当していたが、今回のツアーではパン・ウェイのみならず一ノ瀬海や雨宮修平など主たる登場人物になりきって様々な作品を聴かせる趣向だ。
ニュウニュウ
そして、そのプログラムの中身も、「これぞニュウニュウ!」とラベリングしたくなるほど華麗なる香りに満ちている。ショパン「ノクターン 第13番」から始まり、モーツァルト「ピアノ・ソナタ 第2番」を挟んで、ショパン「舟歌」、そして リスト「ラ・カンパネラ」と続く前半。そして後半はショパンの小作品を演奏したのち、バラード「第4番」を経て「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」という、ニュウニュウの真価とショパン円熟期の作品の醍醐味を存分に楽しめるラインナップだ。さらに演奏者本人による日本語を駆使しての作品にまつわるトークも魅力的で、どの角度から見ても充実感あふれるステージなのだ。
演奏者本人談としては、「昨年より少しは日本語も上達したと思いますが……」と謙遜していたが、『ピアノの森』のストーリーをオーバーラップさせての作品解説は、押さえるべき点をしっかりと押さえながらも、愛あふれるあたたかな語り口が心地よく、聴いている側もおのずとその世界に引き込まれてゆく感じだ。
ブラボーの嵐も巻き起こった前半プログラム
ここで初日の演奏の模様を少しだけお伝えしよう。
冒頭に演奏されたのは、ショパン「夜想曲(ノクターン)第13番」。深い哀しみに打ちひしがれた心情が極限までに情熱的にロマンティックに昇華されたショパンらしさの塊のような曲だが、ニュウニュウはほの暗い響きの中にも艶やかなエメラルドのような輝きを感じさせる重厚感ある音色で ‟シゲル・カワイ(当日使用のピアノ)” の一鍵一鍵をかみしめるように弾き紡いでいた。比較的速度もゆったり目に取り、テンポも大きく揺らすことなく自らの音と旋律にストイックに対峙するかのような真摯な演奏ぶりが印象的だった。その分、この作品が持つ深い哀しみや内から湧き上がる熱情が痛い程、ストレートに伝わってきて、そのエモーショナルな振れ幅の大きさに、冒頭からボディブローを浴びせられた感じだ。
同じくショパン作品の「舟歌」では、波がたゆたう様子を思わせる幽玄な曲想を、その空気の色や香りまでも感じさせる臨場感で表現し、夢見心地なひとときを客席に届けた。
浜離宮朝日ホール公演では、照明の演出も見どころの一つ
続いて、プログラム前半を締めくくったのはリスト「ラ・カンパネラ」。ニュウニュウは演奏前に「14歳の時にステージで初めて演奏し、様々な想い出がある作品」と語っていたが、右手によって繰り出されるデモーニッシュ(悪魔的な)ともいえる驚異の技巧はまさにこのピアニストならではのものだ。象徴的な高音部のトリルの連続(鐘の音を表現)も今なお耳から離れない程の強烈な印象を放っていた。終盤では強弱の振れ幅のダイナミックさもあいまって、客席からはブラボーの嵐が沸き起こり、前半プログラムを熱狂とともに終えた。
若きピアニストの実力とエネルギーに驚愕
後半プログラムでもショパンの「子犬のワルツ」や「華麗なる大円舞曲」などの親しみやすい小品を経て、ショパン「バラード 第4番」が演奏された。一ノ瀬海がショパン・コンクール第一次予選で審査員を魅了したそのステージで演奏された作品だ。ショパン円熟期の作品の中でも最も霊感に満ちた難解な作品とされるこの一曲を、ニュウニュウは等身大の若さと情熱でダイナミックに弾き切った。しかし、骨太さの中にも円熟期の作品が持つ立体感ある陰翳の美しさを随所に際立たせ、幽玄ともいえる世界を色濃く描きだしていた。コーダ(終結部)での瀑布のように流れ落ちる怒涛のパッセージのダイナミズムに多くの聴衆が圧倒されたことだろう。ピアノの森のストーリーの中に自らのスタイルと世界観を見事に描きだしたこの若きピアニストの実力とエネルギーにはただただ驚愕させられるばかりだ。
そして、後半プログラム最後は「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。プログラムの最後を飾るにふさわしい大作品は若き日のショパンの情感と今のニュウニュウの若々しさと情熱が見事に一致したピアニストの等身大の姿を堪能できる最高の作品だろう。ポロネーズの独特なリズム感が醸しだす高貴な香りとため息が漏れそうな程に愛らしく優美なカンタービレを耳にしたら、絶対に「来てよかった!」と思えることだろう。
充実したラインナップで魅了した後のアンコールでもニュウニュウのヴィルトゥオジティ(技巧性)とダイナミズムをいかんなく発揮していたが、作品については当日のお楽しみ。そして、さらにその後にもう一つの大きなサプライズも繰り出されるに違いない。
ツアーは8月23日(日)の最終公演まで、神奈川(7月29日(水)と8月12日(水)の2回)、熊本、福岡、栃木、群馬の各都市で順次開催される(東京も再び8月22日(土)に浜離宮朝日ホールで開催)。
もう一つの華麗なる『ピアノの森』ツアー
最後にもう一つ、今年の『ピアノの森 ピアノコンサート2026』はニュウニュウ演奏によるツアーの他にも、元祖『ピアノの森』アーティストの髙木竜馬演奏によるツアーも同時に開催される豪華版となっている。8月12日(水)の千葉県市川市での公演を皮切りに、9月22日(火)まで大阪、山形、東京、愛知とロングランツアーが予定されているが、内容もまた髙木が今まで毎年あたためてきたベートーヴェン「エリーゼのために」や ショパンのワルツ数曲、ポロネーズ「英雄」などの親しみやすい作品に加えて、後半はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」を実妹の髙木薫子とともに二台ピアノで全曲演奏するというファン垂涎のラインナップになっている。
こちらのツアープログラムも、最後のラフマニノフのピアノコンチェルトに至るまで、『ピアノの森』の原作ストーリーの世界観をしっかりと貫く構成となっており、元祖『ピアノの森』ツアーアーティストの髙木にとっては一つの集大成的なツアーとなるに違いない。
ぜひとも両者による二つの異なる趣向の演奏会に立ち会い、暑い夏を『ピアノの森 ピアノコンサート2026』でエキサイティングに完走してみてはいかがだろうか。
取材・文=朝岡久美子 撮影=福岡諒祠
公演情報
『ピアノの森』ピアノコンサート2026 NiuNiu
ツアースケジュール:
7/29(水) ほねごり杜のホールはしもと【神奈川】
8/8(土) 益城町文化会館【熊本】
8/9(日) FFGホール【福岡】
8/11(火・祝) 栃木県総合文化センター サブホール【栃木】
8/12(水) 横浜市青葉区民文化センター フィリアホール【神奈川】
8/23(日) 高崎芸術劇場 音楽ホール【群馬】
公演情報
『ピアノの森』ピアノコンサート2026 髙木竜馬
出演:髙木竜馬 髙木薫子
8/15(土) 住友生命いずみホール【大阪】
9/6(日) 山形テルサ テルサホール【山形】
9/19(土) 浜離宮朝日ホール【東京】
ショパン:前奏曲 変ニ長調 Op.28-15「雨だれ」
ショパン:ワルツ 第6番 変二長調 Op.64-1「小犬のワルツ」
ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 Op.53 「英雄ポロネーズ」
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
《2台ピアノ:1st 髙木竜馬、2nd 髙木薫子》
※本公演は映像等の演出はございません。予めご了承ください。
全席指定:一般 5,000円 / 小学生 2,500円
※未就学児のご入場はご遠慮願います。