今村ねずみロングインタビュー「どこかゴールに向かっている」 THE CONVOY SHOW『asiapan』再演への想い

インタビュー
舞台
2017.11.14
今村ねずみ

今村ねずみ

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「走り出したらとまらない」を合言葉に、 結成から30年以上走り続けているTHE CONVOY SHOW(ザ・コンボイショウ)。 全員50代を超えたメンバーに、オーディションで選ばれた20代キャストが加わって、コンボイショウのさらなる可能性を追求した『asiapan(アジァパン)』(2017年2、3月上演)が早くも今年12月に再演されることになった。作・構成・演出を手掛けながら、自らも出演している今村ねずみにコンボイショウに対する考えや作品の魅力をインタビューした。

<『asiapan』ストーリー>
アジアの空が新しい世界に誘ってくれた。
太陽はいつだって笑っている。それも眩しいくらいに笑ってる。
この「おもい」はどんなに迷っても「asiapan」の空へ向かっているはずだ。
 
遺跡群に囲まれた街のゲストハウス「sweet home SAKURA」。
スコールが今にも降り出しそうな夕暮れ時、日本からやってきた男たちが偶然居合わせる。
幼なじみの二人組。友達からの一枚のハガキを手にした男。
早期退職を期にバックパッカーだと名乗る男。旅行雑誌のライター。
そして、フロントにはこの地に住み着いた日本人のオーナーと共に生きている現地の若者達がいた。。。
「WHAT IS YOUR MOTTO?」 (あなたが生きていくモットーは?)
それは日本を思い、生きてきた日々を見つめ、新たな自分へのきっかけを探している中年の男たちに、密林の中に忽然と姿を現した遺跡群の中から聞こえてきた言葉だった。



『お前のDNAを伝えたほうがいい』と言われた

――早くも再演です。初演からの変更点はありますか?

今のところはないですね。今年やったばかりで、まさか年内中に再演という形に持ってこれるとは思っていなかった。気持ちは初演のままという感じです。変えたとしても、テンポを上げるとか、その程度です。『asiapan』に若者が出演したことで、今までの固定メンバーでやっていたコンボイショウとは一味違った。今までが古臭かったわけではないですが(笑)、新しい風が吹いたというかね。

――20代の若手メンバーを入れたというのは驚きでした。

コンボイショウをやるというのは何ら変わりがない。去年のオーディションは、本当は『asiapan』ではなくて、今秋にやった『星屑バンプ』のオーディションだったんです。今までやってきたコンボイショウのメンバーの中に彼らを入れて、コンボイショウを少しでも感じてもらえればいいんじゃないかと思って。『asiapan』という作品も実はオーディションの時にまだ実体がない作品でした。ちょうどその頃に何を書こうかなと思いながら旅をしていた。旅の中で生まれた作品なんです。

彼らにはいろんな役がある、作品を動かす役として『asiapan』に出てもらった。やっぱり今までとはちょっと違ったコンボイショウになったように見えるけど、根幹は変わらないつもり。オーディションに受かった彼らでさえも、コンボイショウを実際に見たことある人は1人しかいないですからね(笑)。

正式に言うと、彼らはメンバーではないんですよ? この歳になると、グループに新しいメンバーを入れようというエネルギーはまずない。グループを維持するエネルギーと作品を作るエネルギーは別なんです。

――なるほど、20代キャストはメンバーではない、と。

はい。『asiapan』という作品に出るだけです。コンボイショウは全員が主役で脇役。あらゆることをやりたいこと、その中に踊りや歌が付いているわけで、そこの中でメンバーでどう生きていくかというショウなんです。既存の主役がいて脇役がいてアンサンブルがいて、というのじゃないので。彼らをアンサンブルとして呼んだんじゃない。そういうスタイルだということが30年間やってきても、うまく伝わっていない。ミュージカルですか?と聞かれる。“コンボイショウ”というジャンルなんですけど、悲しいかな僕らは劇場発信なんで、どう説明してもね……。

もちろん、彼らにとっては、ものづくりのメンバー意識が出るのは当たり前なんですよ。なぜならば向き合うから。相手として今まで向き合って作るんで、作品も関係も濃くなっていくんですって。彼ら発信で、僕らはコンボイショウのメンバーです、というならそれは構わないですよ。プライドとして。それは嬉しいこと。

――あくまで対等ですよね。

ピラミッド型ではなくて文鎮型。30年やっていようが今回入ろうが、スタートラインは同じだから。コンボイショウを知っているだけのキャリアとか知識は別にいい。結果を出さないと意味ない。……かといって50代vs20代と簡単に表現されたら、それは間違いじゃないんだけど、それが全てではないと言いたい。関係ないんだ。例えば、女の子だろうが、おじいさんだろうが関係ない。しかも、彼らに媚びてやる気はない。だって、セッションだから。たまたま今回の構図がわかりやすいんですよ。それが全てだと思われたらしょうがないんだけど。

――『1960』(2016)の時は、6年ぶりのコンボイショウでしたが、どんどん加速しているようですね。

スタッフの方の口説き文句が『お前のDNAを誰かに伝えたほうがいいよ』と言われてね(笑)。僕は拒んでいたわけではないんですよ? ただ丸投げに、「呼んできたからよろしくね」っていうパターンは、ちょっと待てよと思っている。人を育てるって大変なことだから。それに、コンボイショウを理解してもらうのに、こんなに時間がかかった。自分の作りかたをより明確にするために付き合ってもらっていたら、固定メンバーになっちゃったっていうのもある。

歳なんですよ。僕がそこまで付き合いきれない。彼らは20代で、僕らの世代と20年後の話ができない。だから今は……はっきり言いますよ、どこかゴールに向かっていますよね。いい意味でね。そんなに遠い話じゃない。もっと早くやっておけばという人もいるかもしれないけれど、その時はやっぱり自分にも周りにも余裕がなかったと思います。

旅先で紡がれたストーリー

――旅をされて『asiapan』を思いついたと仰っていましたが、どちらに行かれたのですか?

いっぱい行きましたよ。『asiapan』を思いついたのはカンボジアのアンコールワット。でもアンコールワットという言葉は作中に出していないです。最近はバンコク行ったり、台北行ったり。旅は好きです。最近、行き先がアジアになりました。もうニューヨークもロンドンもやめた。追っかけてもしょうがない。かなわない。あれだけのリハーサル期間があって、あれだけの才能ある脚本家がいて演出家がいて、あれだけの層の厚い役者がいて。日本とはぜんぜん違う。分かっているから文句は言わない。そういうものづくりです。

――それを悟った上でやるのはすごいですね。受け継ぐべきDNAというのはまさにそういうことな気がします。

……この歳になって、30年間コンボイショウをやっていても、本当のことをいうと、コンボイショウが何か分からない。ただ自分がどこに行きたいかという行き先、なんとなくゴールは探しています。勝手に自分が八百屋のオヤジをやろうが、2.5次元をやろうが、役者人生が終わったわけじゃない。ただコンボイショウに関しては、自分が決着をつけないといけないのかなと思う。自分が向き合ってできたものだから。

いつかは自分が出ない作品も作ると思うし……まぁ今まで見続けてくれた人には言う。『これが最後だから』って。ちゃんと卒業式はやりますよ。

――初演を終えて率直にどうでしたか。やり足りない感じがしたのでしょうか。

『asiapan』はまだまだできると思います。メンバーも思っていると思う。本番になってから、よくあるんだけど、「あぁ、こういう作品だったんだ」というのをお客さんが教えてくれる時がある。お客さんの見る角度っていうのはいっぱいあるから。かぶりついてみる人もいれば、俯瞰してみる人もいる。お客さんは鏡だというけど、本当にそうですよね。自分で書いてやって演出をしているのに最後はお客さんが教えてくれる。

――初演の反響を入れ込むのですね。

そうやらないと再演は意味ないでしょ。再演は初演より良くないと意味ないでしょ。ダメでしょう。それが若者と一緒にやった最初のコンボイショウなので。これが新しいコンボイショウとしての顔、作品の顔。今までのものを否定するつもりもない。メンバーと向き合ったからここまでやってこれたと思うし、メンバーのことはリスペクトしているし。ただ、終わったことだからね。そこに浸ってる気は毛頭ない。終わったことに対して全然興味がない。パンフレットが家にあるけど、見るつもりも全くない。まぁ老後の楽しみにでも取っておこうかな(笑)。

“asiapan”という名の旅を

――稽古場はどんな雰囲気なのですか? 和気藹々?

“和気藹々”という言葉は合っていないですね。戦いの場です。11時からアップ始めて14時まで踊り続けていますから。言葉なんてもう要らない。俺ら才能でやっていると思います? 才能ないですよ。すこぶる才能がある人がいるわけじゃないですよ。やる気があればできますよ。

――ジェネレーションギャップは感じますか……?

作る時はないですけど、休憩時間とかアップとかにはあるかな(笑)。スマホを片手にアップとかありえない。稽古終わってすぐスマホとか、俺の中にはない。「慇懃無礼じゃないか」と言うと、“慇懃無礼”をスマホで調べますもんね(笑)。あと、そこそこみんないい子です。本音が分からない時がある。……まぁ俺たちの時もあったかも知れないけど。

とにかく、暇な時はずっとスマホを見ている。もっと、人のこと見て、人のこと考えたほうがいいんじゃないかと思うけどね。なんというか、彼らは形で動いている。心が動いての芝居じゃないんだよね。僕は否定はしなかったし、他の現場ではあるんだろうけど、ここでは違うとは伝えた。

――彼らにとっては宝物ですね。財産です。

これも言いました。いろんな演出家を知っているほうがいいから。俺だけが正解じゃないからって。俺のものづくりが正解じゃなくて、こういうものづくりもありますよと。役者は演出家がやりたいことをまずやる。演出家の行きたい世界に行くべきだ。力関係だと、作家がいて、演出家がいて、役者だから。

――最後に一言お願いします。

コンボイショウを30年近くやっていますが、まだ見ていない方は本当に騙されたと思って来てください。今回は若い方からお年寄りまで、年代問わず楽しめる作品になっています。『asiapan』という旅、エンターテインメントで綴られた旅を舞台上で見てほしいですよね。『asiapan』を旅してくれたらいいなと思います。

インタビュー・文・撮影=五月女菜穂

公演情報
THE CONVOY SHOW vol.34「asiapan(アジァパン)」

会場:TBS 赤坂ACTシアター
日程:2017年12月13日(水)~12月17日(日)【全7回】

作・構成・演出:今村ねずみ
<出演> 
瀬下尚人 石坂 勇 舘形比呂一 黒須洋壬 トクナガクニハル /
荒田至法 後藤健流 佐久間雄生 本田礼生 /
今村ねずみ


主催:TBS / 博報堂DYメディアパートナーズ / ディスクガレージ
協賛:イースタン・リアル・エステイト / 島半
制作:コンボイハウス / S-SIZE

一般発売:10月28日(土)10:00~ 
代:全席指定9800円(税込)*未就学児入場不可
オフィシャルHP: http://www.theconvoyshow.com/


 

 

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