ローカル色あふれるご当地イベント『よこて冒険王 お城山クエスト×よこてBBQ』
近年、各地で人気となっているのが、人気マンガや小説を基としたリアルタイプの脱出や推理ゲーム。しかし、前述したとおり、こういったイベントは元ネタがあったり首都圏で人気があったものを地方でも開催するというものが一般的。しかし、シルバーウィーク初日の今月(2015年9月)19日、秋田県横手市で独自企画の脱出イベントが盛り込まれた『よこて冒険王 お城山クエスト×よこてBBQ』が開催されると聞き、さっそく取材へと向かった。
こちらは2014年から開催されているイベントで、横手城がある横手公園(通称“お城山”)を舞台に行なわれる“お城山クエスト”と地元横手の『横手牛』や『シルクポーク』と地場産野菜が食べ放題の“よこてBBQ”(ただし、参加は別々の申し込み)を楽しむことができる。ちなみに、2014年の“お城山クエスト”は2日間で500人以上が参加したほどの人気だったというが、あまりにも難易度が高すぎて両日で2組しか正解者がでなかったのだそう。
今年は、それを踏まえ19日(土)が超初心者向けの「7人のとむらくんを探せ!!」、20日(日)が初心者向けの「とむらくんからの指令」と日によって難易度を調整しての開催となっていた。が、こういった体験型のイベントの楽しさは体感してみなければ皆さんへお伝えすることは出来ない。ということで、実際に筆者も参加してみることに。
探すは“7人の影武者の持つ宝物庫のカギ”
エントリーした参加者それぞれに配布されたのは、ミッションが納められている封筒とイベント趣旨と参加の諸注意が書かれた用紙。ミッションが収められた封筒はイベント開始の10時30分まで開くことは出来ないということで、周囲では、大人から子どもまで様々な参加者がスタート時刻を今か今かと待つ様子が見受けられた。中には、クエスト開始を待つのに飽きてきた子どもへ「開始までおとなしく待つこと!」という指令として出して、待つこと自体を楽しむという家族連れも。
そして、運命の時は来た。イベント運営スタッフの開始の合図とともに一斉に封筒を開けると、中には“7人の影武者の持つ宝物庫のカギ”を見つけるためのヒントポイントを示した紙が。
いざゆかん!宝物庫のカギを探しに!!
制限時間は最長90分。勝利の決め手は土地勘
と、意気込んだはいいものの、紙には“お城山”に隠されたヒントポイントが写真で示されている。つまり、クエストを有利にすすめるためには“お城山”を把握している必要があるということだ。そういえばこちらのイベントが生まれたきっかけの1つは、「地元の人に改めて“お城山”を知ってもらおう」ということだったという。これは市外から来た筆者はスタートからかなり不利と見た。とりあえず、「他の人の流れについていってみてください」というスタッフのアドバイスを受け、流れに乗ってみることに。
最大の難関は起伏の激しい“お城山”
流れに乗って歩いて行くと、家族やチームで参加している人たちは「○○は任せて!」と手分けしてヒント探しへ旅立つ様子が多く見られた。また、普段から遠足などで馴染みが深いという子どもたちは、段々と疲れてくる大人を尻目に「次はあっち!」「ここを行くと○○だよ!」と元気いっぱい。
そんな元気な子どもたちの声とともに流れに乗っていくと、筆者の目の前にとてつもない長さの階段が立ちはだかった。「散策の森」にあるこちらの階段は、どう見ても「散策」を楽しめそうにないほど高く長い。だが、ヒントの1つはこの階段の先にあるということらしいので、意を決して登っていく……。
半分ほど登ったところで改めて日頃の運動不足を実感したものの、気合だけで残り半分を登り切る。登り切ったところにベンチが置いてあったのはなんとも嬉しい気遣いだ。
暫くの間ベンチで休憩してから歩を進めると、程なくしてヒントを発見。しかし、再び同じ階段を下るだけというのももったいないので、散策を楽しみつつそのまま進んでみることに。もしかしたら「散策の森」の本質はこういうことだったのだろうか。
勝者は小学生4人組。ラスト2分が勝敗を分けた
さて、筆者が「散策の森」の階段を登って後悔している間に、なんとスタッフの予想を上回る速さで1位が決定していた。当初、1位でヒントを持ち帰ってきたのは大人のチームだったそうなのだが、最後の問題を解いている時に小学生4人組のチーム「クライミー ツー」が到着。悩む大人を尻目に、最後の問題をたったの2分でクリアし見事1位となっていた。1位のクリアタイムは32分ほどとのこと。
この日の1位の商品は、何かと話題になっているドローン(X5C EXPLORERS 2.4G)。1位と知った時には、小学生たちは涙を流して喜んだというが、その頃の筆者はというと「散策の森」の階段を登り切りベンチで長い休憩をとっていた。
参加者はリピーター多し。昨年のリベンジを狙うも……
スタートから1時間が経過した頃には、スタート地点には多くの参加者がヒントを持ち帰ってきていた。
今回、平鹿町醍醐から参加したという方は「2014年はもう少しで1位だったので、今回こそはと参加した」という。もともと実家が“お城山”近くにあるそうで、子供の頃を思い出しながら楽しめたとニコニコしていた。メンバーは友人家族も含めた8人での参加だったそうだが、残念ながら今年も1位獲得はならずだったという。しかし、もし来年も開催されたら参加しますか?という筆者の問いに「もちろん!」と笑顔で話していた。こちらの参加者の方によると、子どもたちのほうが頭が柔らかく、全てのヒントが集まらなくても予想で回答を導き出し、ヒントを探して右往左往する大人よりも先にクリアしてしまったのだとか。
大人も子どもも楽しめるが、かなりの体力勝負
19日の“お城山クエスト”で用意されていたヒントは全部で7つ。だが、結局筆者が見つけたヒントはそのうちの4つだけだった。土地勘が無かったことが確かに大きな敗因の1つではあったが、それでもこれだけ起伏の激しい土地では、土地勘があったとしても体力面で間違いなく無理だったと思われる。今後、“お城山クエスト”にチャレンジしようと考えている人は、“お城山”の全貌を把握しておくことと体力を養っておくことに加え、チームでの参加を考えておいたほうがいいだろう。
ちなみに、この日の最後にクエストをクリアしたのは、秋田市から参加したという秋田大学の学生4人組。サイトを見て楽しそうだったので参加することにしたという。2016年の開催は今のところ未定だというが、参加後の声を耳にした限りでは多くの人が次回のリベンジへと闘志を燃やしている様子。ぜひ、来年も実施して欲しいものだ。
クエストでお腹が減ったらBBQもね!
さて『よこて冒険王』は“お城山クエスト”だけではない。クエストでたっぷりお腹を空かせたら、ここからはご当地食材でお腹を満たす時間なのである。ということで、場所を横手公園スキー場に移して“よこてBBQ”会場へ。
2,500円で時間無制限食べ放題というこちらの会場では、“お城山クエスト”を終えた参加者が引き続き楽しむという流れもあったようすで、子どもたちの中にはクリア報酬の缶バッチをつけている子も。
ちなみに、この日振る舞われた食材はこちら。牛も豚も野菜も横手の地場産モノ。食べるだけじゃない!アウトドア体験やイベントもあり
食べ放題のBBQといえば、ただ食べるだけ、というイメージの人も多いのではないだろうか。
だが、“よこてBBQ”は参加者(特に子ども)に嬉しいイベントが盛りだくさんなのだ。子ども限定のお菓子がもらえる「宝探し」や、空き缶飯ごうやダンボール燻製を学べる大人も子どもも参加可能な「アウトドア体験」に、会場の傾斜を利用した「とむらくんはころばない(坂道だるまさんがころんだ)」などなどだ。
「アウトドア体験」に参加していた親子連れに話を聞いてみた。大仙市からBBQへ参加するために足を運んだというこちらの親子連れは、普段はこういうイベントへは参加しないそうだが今回初めて参加してみたのだとか。
初めてといいつつも中々手際よく作業を進めており、一緒につくった燻製や空き缶飯ごうご飯を「美味しい!」と言いながら楽しそうに食べているようすが印象的だった。
横手牛は「しつこくなくていくらでも食べられる」味
他にも、入場時にもらえる抽選券で行なわれる抽選会では、この日の食材でもある横手牛のサーロインステーキやシルクポークの詰め合わせがゲット出来るなど、とにかくおいしくて楽しいこちらのイベント。
ということは、横手市の皆さんは普段からこういった美味しい肉を堪能しているのだろうか?この日、地元の会社のメンバーで会場に来ているというグループにお話を伺ってみると、どうやら地元の人でも普段はあまり横手牛を食べるわけではないようだ。味について伺ったところ、「柔らかくてしつこくないからいくらでも食べられる」とのこと。人によっては横手牛よりもシルクポークのほうが美味しいという人もいた。
結論:ローカルイベントと侮るなかれ。満足度は高し
さて、そんなこんなで盛りだくさんの一日となった『よこて冒険王 お城山クエスト×よこてBBQ』だが、おそらくこの日1番の驚きは天候だろう。
実は、この日の予報は曇のち雨。しかし、空に灰色の雲は立ち込めているものの、午前中のクエストでは時折太陽が降り注ぎ暑いほどの天候になる時もあったのだ(終了時に多少通り雨はあったが)。午後も同様で、基本は灰色の雲が空を覆っていたものの、BBQ会場の上だけ青空が見えることもあった。とにかく、どちらのイベント時も一瞬通り雨が降ることはあったが、総じて予報を無視した恵まれた天候となっていたのである。これはもう、イベントを主催している横手青年会議所メンバーの熱い想いが天に通じたと言う他ない。
そんな、スタッフの熱い想いが感じられる『よこて冒険王 お城山クエスト×よこてBBQ』は、遊びと食が楽しめるかなりお得なイベントといえるのではないだろうか。ぜひ、来年、今の時季に東北地方へ旅行を計画しているという人は、こちらをチェックしておくことをオススメしたい。
◆取材協力◆ 一般社団法人 横手青年会議所
よこて冒険王 お城山クエスト×よこてBBQ(2015)/終了
開催日:2015年9月19日(土)・20日(日)
開催時間:お城山クエスト/10:30~12:00(受付開始10:00)
よこてBBQ/12:00~19:00(ラストオーダー18:30)
料金:お城山クエスト/前売り500円・当日600円
よこてBBQ/前売り 大人2,000円 小学生1,000円・当日 大人2,500円 小学生1,250円
会場:お城山クエスト/横手公園武者溜前(噴水前)
よこてBBQ/横手公園スキー場