写真と水槽で体感する、大自然の美しさ 『天野尚 NATURE AQUARIUM展』レポート
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『天野尚 NATURE AQUARIUM展』会場入口ポスター
自然界の生態系をそのままに再現するネイチャーアクアリウム(水草水槽)。その創始者であり、“水槽クリエイター世界のアマノ”として世界中から愛された天野尚の大規模な展覧会が、東京ドームシティGallery AaMoにて2017年11月8日から開催されている。会場では、この展示のための特別水槽「巨大ネイチャー水草ウォール」をはじめとする11の水槽作品や、写真家としても高く評価されたG8北海道洞爺湖サミット会場を飾った大型写真などを堪能できる。
天野尚氏の紹介パネルより
超大型フィルムで鮮明に映し出される大自然
会場に入りまず目にするのは、天野が実際に使用していた大型カメラだ。通常の35mmサイズの100倍以上のサイズの超大判フィルムは、視力6.0に相当する圧倒的な表現力を持つ。
天野氏が実際に使用していた大型カメラ
超大判フィルムの再現性を、実際の天野氏撮影フィルムで確認できる。
それを駆使して同氏が映し出したのは、アマゾン、東南アジア、西アフリカの世界三大熱帯雨林や、屋久島、佐渡島、故郷の新潟の生態風景写真だ。アマゾン・ネグロ川をジャッカミ山山頂から見下ろす壮大な水平線、侘び寂びを思わせる原始的な苔むした石など、天野が全身で感じ取った自然への感動が、大判写真から鮮明に浮かび上がってくる。
天野尚「遥かな地平線」1999年12月下旬 アマゾン ネグロ川 ジャッカミ山
アマゾン・ネグロ川の写真
天野尚「山境の田んぼ」2011年8月上旬 中国 湘南省張家界
2008年G8北海道洞爺湖サミット会場にも展示された佐渡原始杉・金剛杉の写真作品は、全長8メートルの大迫力で展示されている。荘厳なその姿は、当時の福田康夫首相により「日本を代表する自然」と紹介された。
天野尚「金剛杉屹立」 2007年5月中旬 新潟県 佐渡市
天野尚「山紫水明の里」2011年5月中旬 新潟県 三条市
自然の生態系を再現した「ネイチャーアクアリウム」を創造
会場を進むと待っているのは、美しい水辺の世界だ。生態風景写真が国内外で高く評価された天野が次に取り組んだのが、ヨーロッパ発祥の水草レイアウトだった。新潟県新潟市(旧巻町)に生まれ、鎧潟の水辺で遊んだ幼少期の記憶をもとに、その原風景を水槽の中に創り出すことに情熱を燃やした。当時、ヨーロッパでは花壇のような水草レイアウトが主流だったが、同氏は流木や川石を用いて、自然の生態系を再現した野趣あふれるネイチャーアクアリウムの世界を生み出し、世界から注目されることとなる。
ネイチャーアクアリウムを撮影した臨場感ある写真作品の数々
天野尚「光彩の水辺」1994年11月 ベルビア
さらに同氏は、ネイチャーアクアリウムを趣味から芸術に高めるには、写真で鮮明に記録し発表することが必要だと考え、写真集の出版や写真展への出品など、幅広く精力的に活動する。
天野尚「大自然の縮図」2007年10月 ベルビア
魚たちや水草の森が織りなす、美しい世界
いよいよ実物の水槽作品が並ぶ空間へ。自然から学んだ豊富な知識と、独自の世界観が融合した奥行きある天野作品の数々。悠々と泳ぐ生き生きとした魚たちや、鮮やかな水草の森に思わず魅入ってしまう。
奇岩を思わせる石による奥行きあるレイアウト
アフリカ産のコンゴ・テトラも元気に泳いでいる
放射状の流木が広がりある空間を作っている
さらに進むと、同氏が立ち上げたアクアデザインアマノ(ADA)の最新技術を駆使して制作された特別水槽「巨大ネイチャー水草ウォール」が現れる。水槽から拡張された水草の壁が、水辺の風景を再現する新しいネイチャーアクアリウムの表現だ。水辺を「陸上と水中が交わる貴重なエコトーン」とした同氏の着想の鋭さがうかがえる。
特別水槽「巨大ネイチャー水草ウォール」株式会社アクアデザインアマノ制作
水中と陸上の交わる水辺を再現
熱帯雨林の中にいるような臨場感
世界最大の淡水水槽の臨場感を味わう
天野氏の最大の挑戦となったのは、2013年にリスボン海洋水族館からのオファーで制作した全長40メートルにも及ぶ世界最大の淡水水槽「水中の森」の制作だった。そして、これが代表作となり、また遺作となった。依頼時に病におかされていた同氏は周囲の励ましの中、2015年にチームを編成し制作に奮起。制作期間中、奇跡的に体調は良好だったという。完成を見届け、同年夏に永眠した。その制作の様子を記録した写真や映像作品も見ることができるので必見だ。
製作中の風景を記録した写真
本展のためにリスボンにて撮影を敢行し特別制作された同作品の映像を、巨大スクリーンで臨場感たっぷりに味わうことができる。川のような巨大水槽の中に、上流から下流へと流れる水辺の風景を再現したこの巨大水槽により、同館は2015年トリップアドバイザーの「世界一行ってみたい水族館」で一位に輝いた。
リスボン海洋水族館「水中の森」映像作品
「自然と人とのつながりを作ること」
「自然から学び、自然を創る。自然を創ることで、そこに誰かの小さな自然が始まる」と語った天野氏。同氏の意志を継いだ株式会社アクアデザインアマノ・大岩剛専務取締役は、本展開催にあたりこう話す。「ようやくここまで来たかという思いですが、天野はさらにここから先を目指していました。それは、自然と人とのつながりを作ること。天野尚からのこのメッセージを、本展でお伝えしたつもりです」
会場外には植物に親しむグッズが満載のショップも。本展開催中にはワークショップやトークショーも実施され、より深くネイチャーアクアリウムを通して自然を考え学ぶ機会となりそうだ。
ショップにはバラエティー豊かな商品が並ぶ
写真と水槽で独自の自然観を人々に伝える天野ワールド。ぜひ間近で体感して、私たちと自然との結びつきについて、あらためて想いを馳せてみては。
展覧会入口の様子
日程:2017年11月8日(水)~2018年1月14日(日)【68日間】
開館時間:平日12:00~17:00 土日祝10:00~17:00
※最終入館は閉館時間の30分前まで。
※年末年始の営業時間については下記の通りとなります。
12月30日(土)12:00~17:00
12月31日(日)12:00~17:00
1月1日(祝) 12:00~17:00
1月2日(火) 10:00~17:00
1月3日(水) 10:00~17:00
※開催期間中無休
会場:Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)東京都文京区後楽1-3-61
料金:当日:一般 1,300円/大学・高校生 1,100円/中学生以下 800円
※未就学児無料
【公式サイト】https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/exhibition/amanotakashi/