池田純矢、鈴木勝吾、松尾貴史にインタビュー エン*ゲキ#03『ザ・池田屋!』の内容に迫る!
(左から)松尾貴史、鈴木勝吾、池田純矢
俳優の池田純矢が作・演出を手がけるエン*ゲキ シリーズ第3作となる『ザ・池田屋!』の上演が決定した。あの池田屋事件を、新選組側ではなく襲撃された側から描く新解釈のハイテンション・コメディ。ひと味違う時代モノを創る楽しさを分かち合うべく集った池田純矢、鈴木勝吾、松尾貴史の3人に、作品に寄せる思いを語り合ってもらった。
――みなさんは2015年の『ベイビーさん〜あるいは笑う曲馬団について~』で共演されていますね。松尾さんはおふたりとはそれが初でした。
松尾:演出家さんってその方によって重んじるところがそれぞれ違うと思うんですけど、あのときは「G2さん、達者な若い人たちを集められたな」って感じがしましたね。G2さんも僕も、あの作品はある意味で原作者(中島らも氏)への思い入れも強かったので、その大切な世界観をどう保持しながら新鮮にしてくださるのかなって思ってたら……あの……思った以上にスゴかった(笑)。「ああ、僕の知らないところでこんなスゴい若者たちがいるんだな」っていうのが、そのときの印象でした。
池田:ありがとうございます。僕らにとってはキッチュさんはホンットにもう、砂漠に咲く一輪の薔薇のようで。ね?
鈴木:そう。
池田:あの……飲まず食わずで3日間くらい歩き続けているようなかんじなんですよ、稽古場が。
松尾・鈴木:(笑)。
松尾貴史
――追いつめられていた?
池田:やっぱりかなりちゃんと芯がないと出来ない作品でしたし、G2さんも思うところがたくさんあったでしょうし……僕らももちろんありました。だからみんなしんどい思いをして創ってたんですけど、その中でキッチュさん、プワァッと華やかな存在で、観ているだけで嬉しいんですよ。あとね、飲みに行ったときの印象がやっぱり強いですね。とにかくおいしいご飯屋さんをたくさん知っている!
松尾:安いところだけね(笑)。
池田:で、G2さんも飲みの場になるとめっちゃくちゃ優しいんですよ! ホント、早く飲みに行きたいなって思いながら毎日稽古してました(笑)。
鈴木:僕は……キッチュさんは稽古半分をカレー留学している方なんだなって思いました。
池田:(爆笑)。
松尾:(笑)。あー、そうだ。稽古期間中、僕、インドに行ってた期間があったんですよ。ホンマすいませんでした。
池田純矢
――松尾さんはカレー屋さんのご主人という顔もお持ちですからね。
鈴木:僕、カレー大好きなので、帰って来られるのすごく楽しみにしてたんですよ。今もしょっちゅうキッチュさんのお店に行ってますし。
松尾:彼、ヘビーユーザーなんですよ。店内に似てる人がいるなぁって思って、でもそんな頻繁にこないだろうなって素通りしたらあとで「本人ですよ」って。
鈴木:週5ペースのときもあります(笑)。稽古場では一緒に一輪車の練習もした仲ですが。
松尾:そうだった。昔らもさんが演じた役を僕がやって、当時はらもさんが「一輪車を習得するには年齢×50時間や!」って胸張って教えてくれたんですけどね。そうなると全然時間が足りないんです(笑)。しかもインドに行ってる間に鈴木くんがどんどん上達しちゃうから、劇中では僕が教える役なのに稽古場では教えてもらうほうになっちゃって。
池田:でもびっくりしましたよ〜。練習中もずっと「乗れない。乗れない」っておっしゃっててどうなるのかなぁと思っていたら、初めての通し稽古でぴゅーって乗っちゃって、「ま、こんなもんや」と(笑)。すげーっ!って。
松尾:いや、まぐれまぐれ。
鈴木:(笑)。お芝居のことで言うと、特に冒頭のシーンとか「なんて“そのまま”にお芝居される方なんだろ」「なるほどなぁ……」って思いましたねぇ。やっぱり僕たち若手って「やらなきゃいけない」がすごく先行するというか……。今でもそうですし、当時はよりそうだったんですけど、そういうんじゃないあのキッチュさんの佇まい、今でも別の作品の現場なんかで思い出すことも多くて。的確な「適当さ」というか、「自分タイム」がしっかりあるお芝居というのが観ていてとても魅力的だった。「ああいうの、すごくいいよなぁ。歳を重ねたら自分もあんな風になれるかな」って(笑)。でももっと自覚的に、一歳でも早くそういう風情になりたいよなとも思うので……指針、というか、そういう出会いでしたね。キッチュさんにはとても有益で魅力的な時間をいただきました。
松尾:わ、有り難い。
鈴木勝吾
――そして今回は、池田さんご自身が作・演出を務めるオリジナル舞台〔エン*ゲキシリーズ〕での再集結。シリーズ一作目の『君との距離は100億光年』はもともと池田さんが書かれていた小説がベースに、二作目の『スター☆ピープルズ!』は一作目での“思い残し”も含めて書き下ろされた物語でしたが、今回はどんな道筋で#03『ザ・池田屋!』にたどり着いたんでしょう?
池田:まず、「次やるなら絶対新作をやりたい」とは思っていて。何本かストックもあるんですが、やっぱり今思う一番面白いモノを……以前の自分に頼るのではなく、新しく書き下ろしたかった。そうするとして、じゃあ自分が得意なモノは?って考えたら、時代モノかなと。
それでどの国のどの時代にするかっていうのも含めていろいろ思いを巡らせ、あれこれ調べたりもする中で吉田捻麿(としまろ)という人物に行き当たって。なんとなく存在は知っていたんですけど、調べれば調べるほどとんでもない逸話がたくさん残っていて驚きました。「彼がもし死ななかったら明治維新は起こらなかっただろう」とか「生きて明治維新を迎えたなら総理大臣になっただろう」とか。ほかにもいろいろ出て来るんですけどね、出自に関しても死に際に関してもやったことに関してもすべて「諸説あり」で、確定事項がひとつもないんですよ。こんなにもフィクションに扱いやすい人がいたのか。じゃあ彼を全体の接着剤にしてあの時代の物語を書こうと思ったのが、この『ザ・池田屋!』です。
――松下塾門下生の吉田捻麿を主人公に、歴史の裏を絶妙についた新解釈の池田屋事件。キャスティングについては?
池田:僕はいつも台本が上がってから役者さんを考えるようにしているんです。人にあてて書いちゃうとなんとなくいろんなことが狭まっちゃう気がするので、まずは書いて、この役は誰に合うかなぁって考え、役が決まり、そこから役者さんを見て書き直していくのがいいなと思ってます。
――池田さんは外国かぶれな高杉晋作。そして松尾さんは肥後藩の武士・宮部鼎蔵。尊王攘夷を掲げる過激派の頭領を演じます。
池田:僕が今回書いた宮部がまた難しい人物というか、いろんな要素が必要なキャラクターなんですよね。大人で、セクシーで、そしてダンディズムは絶対欲しい。また、悪者なんだけどどこか小物感があり……今一つ抜けない感じ、というのかな。そういうところでのコミカルさもあってとなると、本当に「これは難しい役だな。誰だ?? やっぱりキッチュさんだな」と思いまして。
池田純矢
――演出家が迷わず“難しい”という役をいただくプレッシャーは……。
松尾:ないんですよぉ。
鈴木・池田:(爆笑)。
松尾:相手が「難しい」と思う役が僕にとってはやりやすく、「これくらいできるだろう」という役のほうが難しかったりもするのでね。そこは案外比例しないもんですよ。
池田:良かった(笑)。役者さんのタイプによってはいわゆる憑依される方、まさにその役にしか見えない方もいらっしゃるんですけど、キッチュさんはなぜかどの役もご自身の中に入っちゃうイメージが僕にはあって。キッチュさんが演じると役がキッチュさんの中に収束されていく“あの感じなら”、きっとなにをやっても問題ないはず、宮部になるはず、です。
――演出家としての池田さんへの期待はいかがでしょう。
松尾:以前から「またなんかやりたいですね」とは話していたので、幸いスケジュールも大丈夫でしたし、僕はこのお祭りに参加させてもらえて嬉しいです。なにより、純粋に自分が創りたいモノを創っているってことは、それでもう心配ないってことでしょう。すべて自身の内側から出たモノだから正解はここにあるわけだし、僕は彼に委ねるのみ。創りたいモノをカタチにするお手伝いも出来て自分も楽しめるなら、言うことなしです。
松尾貴史
――鈴木さんは池田さんとは11作目の共演! エン*ゲキも3作品連続の出演となります。今回演じる主人公・吉田捻麿については?
鈴木:役柄でいうと非常にフラットな人物なので、自分の中でそんなにこねくり回すこともないなぁと。そこは純矢くんとも一致してます。僕にとって一番大きいのは、このエン*ゲキという……キッチュさんも「お祭り」っておっしゃってましたけど、彼のこの企画に対するピュアな気持ち。25歳にして紀伊國屋でっていうのはすごいことだと思うし、でもなんかいつも「これがオモロイと思うんだよね〜」って口を大きく開けながら言っている(笑)。
そんな彼がやる楽しいことに呼んでもらえるのならぜひ力添えを……というのが#01の頃から変わらない思いです。主演で呼んでもらえたのはとても嬉しいけれど、芯は変わらずに。友だちとしても役者としても、面白いことを一緒にやっていけたらいいなぁってところですね。もちろん、俺も一緒に関わらせて頂きたいところはありますが、そうでなくてもこのエン*ゲキが成功し、続いていくことはとても重要だなって思ってます。
鈴木勝吾
――“知己の仲”。
池田:ショウちゃんはね、僕、すごい好きな役者なんです。そして、一番扱いにくい役者(笑)。タイプが僕と全然違うので。なんというか……行き着くところは同じなんだけど、全然ベクトルが違う。例えば「新宿に行く」ってなったら、僕はちゃんと道筋を書いて「山手線で行くよ」とかしたいのに、ショウちゃんは山手線でも埼京線でもなくパッてその瞬間、その場所に急に現れ出ることが出来る人、気持ちだけでグンってそこまで飛べちゃうような人なんです。すごく羨ましいんだけど、そこに僕がもし地図を示すことが出来たならこれ以上頼もしいことはないんじゃないかなって。むしろ、僕が渡した地図をさらに面白い読み方をしてルート取りしてくれるのがショウちゃんの素晴らしいところだよなって思うんです。ま、そこに行くまではホント、面倒くさいんですけどね(笑)。
――どんなテーマを取り扱おうと、エン*ゲキのモットーは“王道のエンターテインメント”。今回も命の話を絡めつつ、現代的なテンポのコメディになりそうですね。
松尾:すごくポップだよね。僕は今までにじみ出る……というよりも染み出すような感じの笑いをやることが多かったので、そういう意味ではこのポップなコミカルさにふさわしいユーモラスな芝居をやることについては、新鮮に楽しませてもらえるかなぁと期待してます……足引っ張らないでやれれば(笑)。
若い人たちがお仕着せじゃなく彼ら側から出てくるモノを創る。そこに加えてもらえるのはとても新鮮ですし、なかなかない貴重な体験じゃないかなぁと思いますよ。今までの自分のテリトリーとは違う、予測がつかない場所。なんか、旅行のようで楽しみだな。新鮮に観光を楽しむ気持ちでこのアクティビティを味わいたいですね。
鈴木:僕はそもそも「笑かしに行く」というのは苦手で、今まであまりそこは触れてなかったことでもあったので……エン*ゲキでは毎回勉強させてもらってます。純矢くんの書く台詞って、読むとね、面白さはホントにわかる。でもいざ自分が立ってそれをやろうとすると、間、テンポ、掛け合い、台詞を持つ時間……もう「クッソ!」って思うことばかりだから、そこがいつも怖いです。今回もきっと大変だけど、面白くしたいなぁ。
――公演は4月。待ちかねているお客様へメッセージをお願いします。
松尾:もうね、僕は明治維新はなかったほうがよかったんじゃないかなって思う人間なので(笑)、江戸時代の手消費の暮らし、長屋で気楽な会話をして花火見て「たまや〜」なんて、いいじゃあないですか。でも明治憲法みたいなモノが出来て、外国と戦争しちゃうようになっちゃって……。だから今回はそういう精神的スタンスで臨むと、また歴史に対しても新鮮な感触が生まれるかなぁと。
――“違う池田屋”。
松尾:うん。ポップな語り口なので、きっとそんな気持ちでも物語が成立するんじゃないかな。そこらへんの大きい“実験”に参加させてもらうつもりです。
鈴木:純矢くんの「コメディ」。衣裳もセットも派手になりそうだし外郭はもうすごく信頼しているので、僕らはそこに裏付けされたモノをちゃんと乗せていければ。初めましての方も含めて役者さんも素敵な方ばかり。みんなでここに描かれているお笑いを具現化きるよう、楽しんでやれれば良いかなって思ってます。
池田:作品のPRのためにはいろいろ言ったほうがいいんでしょうけど……僕はどこまでいっても「面白いモノを自分が見たいから自分で創る」なんです。そしてできればそれをみんなで、たくさんの人で共有したいんです。「ね、コレ面白いでしょ!」って。そうなっていく中でスタッフさん各々と、ビジュアルにしてもなにかひとつひとつカタチにしていくにつれて、どんどんどんどん、いろんな人の夢が乗っかって来てるんですよね。自分ひとりで漕ぎ出したモノなのに、ちょっと振り返ったらなんかいっぱいの人がいる! でもそれも全然プレッシャーじゃなくて、「これは“面白いモノ見たい”だけじゃなくて、面白いモノを届けなきゃ!」って楽しい気持ちにさせてくれる。
だから出来ればお客さんもいっしょにそこに乗っかって欲しいんですよ。どこまでいってもエンタメはエンタメだし、娯楽は娯楽。ホントに軽い気持ちで遊びに来てくださいって感じです。その結果、みんなが楽しめるお祭りになったらとても幸福だし、そうなる舞台を創ります。どうぞ楽しみにしていてください。
(左から)松尾貴史、鈴木勝吾、池田純矢
ヘアメイク=古橋香奈子 成谷充未
インタビュー・文=横澤由香 撮影=荒川潤
鈴木勝吾/松島庄汰 中島早貴 米原幸佑 河原田巧也/
透水さらさ オラキオ 池田純矢/松尾貴史 ほか
【東京公演】
PG先行 2018年1月14日(日)~21日(日)
一般発売 2018年1月27日(土)10:00AM~
PG先行 2018年1月14日(日)~21日(日)
料金(全席指定・税込) S席:7,000円