1/19開幕、自身の波乱の半生を綴ったソロ・ミュージカル『大器“超”晩成』を本格的に再演~トシ・カプチーノにインタビュー

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2017.11.27
トシ・カプチーノ

トシ・カプチーノ


ブロードウェイ・ミュージカル愛好者の間で、“彼”を知らなければもぐりだと言われかねないほどの男、その名はトシ・カプチーノ。ある時はプロデューサー、またある時は舞台評論家、しかして、その実体は……? そんな“彼”が何者であるかを自ら明かしてゆくソロ・ミュージカル「“SUPER” Late Bloomer ~トシ・カプチーノ自伝ソロ・ミュージカル『大器“超”晩成』~」が2018年1月にTOKYO FM HALL(東京)で上演される。2016年にニューヨーク、東京、福岡の三都市で上演し、大好評を博した自伝的作品を、今回は新たに演出家の岡本寛子を迎えて再演することとなった。

博多に生まれ、思春期にゲイであることを自覚したトシ・カプチーノ。高校2年でオーディション番組「スター誕生」決戦大会に出場。卒業後、上京してプロの道を志すも成功への道のりは遠く、自身の性癖に葛藤しながら紆余曲折を経てニューヨークへ。 自分がゲイであることも母親にカミングアウトするが……。今だから笑える中学時代の初恋、 西麻布のゴージャスなヒモ生活からの転落、ニューヨークでのパートナーとの出会い等々が、包み隠さず描かれる。

彼は、ニューヨーク在住の舞台芸術評論家として執筆を行いながら、同地における演劇やコンサート等の興行企画、制作、委託プロデュースを行っている。ドラマデスク賞の日本人審査員でもある。2005年よりパフォーマーとしての活動を開始、定期的にキャバレーショーをNYや日本各地で開催してきた。今回の作品では、本場ブロードウェイ仕込みのセンスとパワーを結集して、自身の波瀾と涙と笑いにに満ちた半生を描き、「LGBTミュージカルの決定版」を標榜する。このほど一時帰国した彼から詳しい話を聞くことができた。

■キャバレー・ショーから生まれたミュージカル

--トシ・カプチーノさんといえば、日本の演劇ファンには「ニューヨーク在住の舞台評論家」としてよく知られていますが、実はいろんな顔をお持ちなんですよね。

ベースとしてはプロデューサーです。主に日本のパフォーミングアーツのニューヨーク公演を製作する仕事です。その傍ら、ニューヨークで発行されている日本語新聞などに演劇評論を書くようになったのですが、そうするうちに、ただ観るだけではなく、自分自身でクリエイトしたいっていう欲求が大きくなってきたんです。それで、ここ2、3年は自分でキャバレー・ショーを作るということが、活動の7割8割を占めるようになってきました。

--そのキャバレー・ショーというのは、ご自身で作って演じて歌って、というものですか。

そうです。ニューヨークのキャバレーで。

--ちなみに、ニューヨークにおけるキャバレーとは、どのようなところなのですか。

ブロードウェイの公演に連日出演されている俳優さんたちが唯一オフが取れるのが、月曜日とかなんです。そういう方々が自身の人生を語ったり、ブロードウェイ論を語ったり、自分の好きな歌を歌ったりする場所、ですね。彼らが……俳優さんだけでなく、素人みたいな方もいますが……、もちろん月曜日に限らず毎晩、キャバレーで人生を語り歌を披露するといったことが、ニューヨークではポピュラーな大人のエンターテイメントとして定着しているんです。僕もそれにすごく影響を受け「自分もキャバレーでやってみよう」と思って始めたんです。

--そこで始めたパフォーマンスは、今回日本で上演するソロミュージカル『大器“超"晩成』とは別のものですか。

そう。そうなんですが、今回のソロミュージカルの上演に至ったのは、やはりそのキャバレーショーがきっかけになっているんですよ。

キャバレーで歌ったり踊ったりするうちに、一つのショーが終わると毎回必ず新しい課題が生まれてきて、「じゃあ次はこうしよう」なんて考えるんですね。観てくれた方も色んなアドヴァイスをしてくださるんです。

実はキャバレーショーで、美輪明宏さんをモデルにした伝記的なミュージカル『シシーボーイ』を作ったことがあるんです。そうしたら観てくれた方から「他人の人生よりも自分自身の人生で作ってみたら」って言われたんです。「そっちの方が説得力あるんじゃないか」と。それで自分のことを綴った『キリギリスがアリに勝つ日』という自伝的な一人芝居を作りました。すると今度は、お客さんが「これでミュージカルを作ったらいい」と言ってくださった。「ならば」と出来たのが、今回のソロミュージカルなんです。ですから、これは元々一人芝居、それも英語で演じた一人芝居から来ているんです。

--『キリギリスがアリに勝つ日』という一人芝居は、題名から察するにイソップ童話にご自身を重ね合わせたものですか。

ええ、そうです。元々僕がニューヨークに行ったのは、「一旗あげてやろう」とか、そういうのでは全然なくて、とにかく自分の欲望の赴くままに「男を食いたい」という理由だったんです(笑)。とにかく男。全世界から来るいい男を食ってやろうと思って。だから、自分の欲望の赴くままに行動する自分はキリギリス。気が付いたらキリギリスのように野垂れ死にするかもしれないんですけど、とにかく自分のやりたいことは全てやってきたし、これからもやり続けるだろう、と。そういう、一時間半の芝居を英語でやらせていただきました。

--それが、今回のソロミュージカル『大器“超"晩成』に発展していったわけですね。2016年の初演では脚本・作詞・作曲・演出をすべてご自身で手掛けられた?

はい。

--元々そういう才能や素質があったんですね。

いえ、全然ないと思います。たとえば作曲に関しては、ミュージシャンと一緒にスタジオに入り、ミュージシャンが「トシさん、これどういう風に歌いたいですか。ちょっと歌ってみてください」と言うので、僕がちょっと歌うと、その方が「どういう感じがいいですか? こういう感じもありますよ」みたいな感じで、曲が成立していくんです。

--でも、日頃色々な素晴らしいミュージカルに接しているトシさんだからこそ、というのはありますよね。

だと思います。とにかく引き出しは山のようにありますからね。やはり色んなショーを見ている中で「これいいよね、あれいいよね」って思ったものを……パクリ、という言葉は良くないですけど(笑)、自分のフィルターを通してガンガン、出していけるんです。ただ今回は、オリジナル曲ばかりではなくて、ジュークボックス・ミュージカルでもあるんです。

--と、いいますと?

ブロードウェイ・ミュージカルの曲を色々入れています。しかも、ちょっとマイナーなものだったり。さらにアリシア・キーズやシンディ・ローパーなどのポップス・ナンバーも。歌詞は全部僕が日本語で書き直しました。でも、フランク・シナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」は英語のままで。一方、日本の歌だと、美輪明宏さんの曲とか。それから僕が高校二年生の時に、オーディション番組の「スター誕生」に出て歌った「青春PART1」。これは豊田清さんという方が歌った、作詞・阿久悠さん、作曲・三木たかしさんの名曲です。

■「僕にはすごい大舞台」

--2016年の『大器“超"晩成』初演は、ニューヨークと日本でおこなわれたんですね。

ニューヨークのThe Duplex、東京の新宿ゴールデン街劇場、福岡・甘棠館Show劇場の三ヵ所で上演しました。

--ニューヨークのThe Duplexというのは、キャバレーなんですか。

そうです。ダウンタウンにある場末の小さなキャバレーなんですけど、バーブラ・ストライサンドもここで歌ってますし、ウッディ・アレンも出演してる、かなり有名な場所なんです。三島由紀夫が、ブロードウェイの舞台を観た後に、奥さんと一緒にお忍びで飲みに来ていたそうです。それは、彼の「外遊日記」という著作の中にも出てきます。

--日本における前回公演の客層は、どういう感じだったんですか。

僕のお客さんて、女性が多いんですよ。平均年齢で言うと40代ぐらいの女性の方が8割ぐらいかもしれないですね。とにかく女性は僕のショーがすごく好きなんですよ。

--それはやはりミュージカルを通じてトシさんを知っているという方々なんですか。

そうですね。そういう方が多い。口コミとかでも伝わって。

--前回の日本での小屋のキャパシティ(収容人数)は50~100程度だったと思いますが、今回はちょっと大きくなるんですよね。

ちょっとどころじゃない(笑)。今度のTOKYO FMホールは200ちょっと位なので、新宿ゴールデン劇場の4倍のキャパですよ。しかも5回公演なので……。

--1000人以上のお客さんを集めないと……。

そうなんです。僕的にはすごい大舞台ですね。大変なことだと思ってます。

--どうしてそんな野望が湧いてきたんですか。

いや、それは僕じゃなくて、新井勝久さんという、ブルーマンを日本に招聘したプロデュ―サーの方が、新宿ゴールデン街劇場での僕の公演に来てくださり「これおもしろいんじゃないの」と興味をもってくださったことがそもそもの始まりなんです。それで公演会場に関しても新井さんがいろいろ考えてくださって。だから、新井さんとの出会いがなければ、実現しなかった話です。

--今回の再演では構成・演出を、岡本寛子さんという方が務められるんですね。

はい。前回は、この作品に関して、自分で作って演出もして、チケットの手配から宣伝まで全部自分でやっていたんですよ。それだと、やはり限度がある……ということで、新井さんが色々取り計らってくださって、今回は演出や照明などスタッフさんを色々入れて、みんなで作り上げていきましょうということになりました。だから自分としては夢みたいな話です。

演出の岡本さんとの打ち合わせは、スカイプを使って3、4時間くらいのミーティングをニューヨークと東京でやっていて、台本作りもお互いにキャッチボールをしながら進めています。

--今度の公演で、初演と変わるところは?

自分一人でやってるとなかなか気が付かない部分ってあるじゃないですか。でも岡本さんが客観的に見てくれて、辻褄合わせをやってくださり、流れをきちんと作ってくれるんです。それによって非常に見やすくなると思います。それから「曲が足りない」ということで、曲を増やすことになりました。

--踊りは?

ハイ、入れます。​というのも、今回トシ・カプチーノ with Tっていうイケメンが2人つくので。

--それは、ブルゾンちえみのwith Bみたいな?(笑)

そうです。黒子であり、出演者でもあり、という存在です。このショーの舞台が楽屋という設定になっているので、着替えたり、メイクをしたりする部分で手伝ってくれたり、さらには一緒に踊ることになっているんです。

■「母親に孝行したい」

--『大器“超”晩成』というタイトルに込めた思いを教えていただけますか?

「とにかく自分らしく生きる」っていうことと、「とにかく諦めない」っていうことですよね。だって僕、50過ぎて未だにこういうことをやっていてね、何の保証もないわけですよ。普通の方だったら会社勤めをしていてね……もっとも、今は何が起こるかわからない時代だから、何が安心かとはいえないけれど。いずれにしても、そういう中でショー活動を続けるのは結構な覚悟がいるんです。その意味でも「こんな男がいるんだよ」ってことを作​品を通して皆さんに伝えたい。それと「何かを始めたら必ず継続して最後までやめないよ」っていうことを伝えたいんです。

なぜこんなに頑張っているかというと、実は母のためというのもあるんです。うちの母はずっと僕のことを愛してくれて、期待をしてくれているんですけど、いつまでたってもまだ結果を出せていないなと思うんです。だから、こういったことをやって母を喜ばせたいという気持ちもすごく強いんです。実は、僕の目標は紅白歌合戦にも出ることなんです。すごく野暮ったいって、みなさんからバカにされるかもしれないんですけど、紅白に出ることで母を喜ばせたいんですよ。

今は、こうやってコンスタントにやってきて、少しずつですけどショーも軌道に乗ってきました。今年の1月に福岡でショーをやらせていただいた時には、たまたま福岡ソフトバンクホークスの本部長が観に来られまして、その場で国歌独唱のオファーをいただいたんです。それで5月にソフトバンクホークスVSオリックス戦の初戦で歌わせていただきました。そして、今度はこの『大器“超”晩成』公演でしょう? こうして、少しずつステップを進めながら、いつか紅白出演につなげていけたらいいなぁと考えています。

2017年5月9日、福岡ソフトバンクホークスVSオリックス初戦にて国歌を独唱す


 

--お母さまとの関係や出来事については、おそらく今度の作品の中で語られているんですよね。

ええ、書いてます。家のこととか、カミングアウトのこととか。「ピンクのポーチ」というオリジナル曲が入っています。なぜ「ピンクのポーチ」かというと、僕が母に贈ったピンクのポーチがあるんです。ある日のこと「あんたこれ、好いとろうが」って母が僕に返してくれたんです。そこからインスパイアされて詩を書いて、曲をピアニストと一緒につけた、非常に泣ける歌なんです(笑)。「孫の顔ひとつも見せられないで」っていう歌詞があるんですけど、もうそこに全部僕の気持ちが込められている。そこだけ言えば伝わるぐらい、その言葉って僕にとっては大きくて。僕がこうで子供いなくて、母親に孫の顔一つ見せられず、すごく親不孝だなって思うんですよ。そういう気持ちで書いた曲なので「ごめんね、ごめんね」って何回も言っているんですけど、うちの母は「あんた、ごめんねごめんねって言いすぎやろが」って言う(笑)。でも、それくらい、母親には申し訳ないなっていう気持ちでいっぱいなんですよ。

--ブロードウェイのナンバーを歌うこと以外に、ミュージカルのファンを喜ばせる趣向は何かありますか?

日本で初めて「レント」が上演されたのが1998年でした。山本耕史さんや宇都宮隆さんたちが出演しました。その時のコーディネイターが僕でした。1996年にアメリカで初演されて、そこから日本での上演権を得るまでに、色々あって結構長い時間がかかったんです。その時の裏話を披露します。

--それは興味津々ですね! ときにトシさんは日頃、舞台評論を書かれていますが、ご自身のショーについては、評論されることを意識したりはしていますか?

全然意識してないです。前提として、とにかくお客様に楽しんでいただこう、と。お客さんに楽しんでもらえさえすればそれでいいんですよ。そこしかないと思うんです。自分が気持ちよくなることなんて全然考えてないですから。自分が気持ちよくなるショーほどつまらないものはないじゃないですか。

--この公演が成功した暁には、次なる展開のヴィジョンは何かありますか?

全国ツアーを回りたいですね。それと、さっきも言った紅白歌合戦への出場ですね。最近の紅白ってヒット曲があるかどうかは関係なく、色んな形で話題になった人というのが出てくるじゃないですか。そういった意味で、この作品も世の中の話題となり、その中から僕のオリジナルを紅白で歌ってみたいですね(笑)。

--ニューヨークから生中継とかでもいいですね。

いいですねぇ!

--最後に読者の皆さまに向けて、メッセージを!

いま日本ではLGBT(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender)という言葉がメジャーになり、同性愛者や性同一性障害などの方々にスポットがあたるようになり、それによって世の中に広く知られてきてはいるんですけど、それでも、まだまだ自分のセクシュアリティについて葛藤している人はすごく多いと思うんですよ。それに対して、僕はカウンセラーじゃないから具体的なアドバイスはできないけれど、とにかく自分らしく生きるっていうことの素晴らしさを、この僕のショーから感じていただけるなら、すごく嬉しいですね。「ああ、こういう生き方もあるんだ」と。だから、LGBTを扱った内容の劇ではありますが、同性愛とかストレートとか関係なく、人間として、心をオープンにして自分らしく生きることで人生がより楽しくなるんだ、ということを感じて欲しいですね。もし皆さんにそう感じていただけるなら、この公演は大成功だと思います。

取材・文・撮影=安藤光夫

公演情報

“SUPER" Late Bloomer ~トシ・カプチーノ自伝ソロミュージカル『大器“超"晩成』~
■原作:トシ・カプチーノ
■構成・演出:岡本寛子
■出演:トシ・カプチーノ、小幡晃聖、重松直樹、富永有里乃(ピアニスト)

■公演期間:2018年1月19日(金)~21日(日)全5公演
2018年1月19日(金)19:00
2018年1月20日(土)13:00/17:00
2018年1月21日(日)12:00/16:00
■会場:TOKYO FM HALL(〒102-8080  東京都千代田区麹町1-7  2F TEL:03-3221-0080)
■チケット料金:全席指定6,000円(税込)
※当日券は開演30分前より全席指定6,000円にて販売
学生のお客様は3,000円にて販売(要・学生証提示)

■問い合わせ先:ぴあインフォメーション  0570-02-9111(10:00~18:00)
■主催:トシ・カプチーノ/ぴあ/トリックスターエンターテインメント
■後援:TOKYO FM
■オフィシャルブログ:https://ameblo.jp/toshicappuccino/
■オフィシャルツイッター   @s_latebloomer

 
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