太陽だけでできました!晴天の中での「中津川ソーラーフェス」今年も大団円
「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」の様子。(撮影:平野大輔)
野外ロックフェス「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」が9月26日と27日に岐阜・中津川公園内特設ステージで開催された。
「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」は会場にずらりと並べられたソーラーパネルと太陽電池が生み出す電力のみを使って電力をまかなう音楽フェス。中津川公園での開催は今年で3回目を数え、例年通り、さまざまな世代、ジャンルのアーティストが一堂に会した。
1日目:9月26日
好天に恵まれた「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」初日、メインステージ・REVOLUTIONのトップバッターを飾ったのは、渋さ知らズオーケストラ。彼らのステージは、フェスの発起人・佐藤タイジ(シアターブルック)をゲストギタリストに迎え、シアターブルックの「もう一度世界を変えるのさ」のカバーで幕を開ける。以降、ダンドリスト・不破大輔のタクトのもと楽器隊がテクニカルなプレイを魅せ、ボーカリスト・玉井夕海が圧倒的な歌声を響かせれば、ピンクとグリーンのドレス姿の2人の女性と白塗りの男性からなるダンサー陣は客席エリアの熱狂を扇動。そしてロシア民謡「一週間」のカバーでは、法被に赤ふんどし姿のパフォーマー・玄界灘渡部こと渡部真一の「適当でいいから一緒に歌ってくれ!」との煽りのもと、ステージと客席エリアが大合唱。ピースフルな空間を作り上げた。また同時刻にサードステージ・RESPECTでは子供バンドが「自由」「STOP THE ROCK'N ROLL!!(Never)」といった最新楽曲の数々や、奥田民生がプロデュースした2011年の「マンモスの唄」など、デビュー25年のバンドの“今”を示す熱いライブを展開した。
セカンドステージ・REDEMPTIONのトップバッター、東京カランコロンはInterFMの番組で佐藤タイジとセッションしたという「恋のマシンガン」や最新シングル曲「スパイス」などヒットチューン中心のセットリストを構成。かわいらしくも、どこかクセのあるプレイで客席エリアを盛り上げると、「J-POPって素敵ね」ではその観客たちとタイトルのシンガロングを繰り広げた。一方、REVOLUTION2番手のEGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXXは、中納良恵(Vo)がこの日天気がよかったのは吉川晃司が出演するから、とCOMPLEX「BE MY BABY」を歌い出すファニーなひとコマを見せつつも、圧巻のステージを披露する。「Neon Sign Stomp」では森雅樹(G)とTHE GOSSIP OF JAXXの的確なプレイに乗せて、トランジスタメガホンを手にした中納がオーディエンスを挑発。またジャイブナンバー「サイコアナルシス」では無手勝手なステップを踏んでみせ、さらに「くちばしにチェリー」では「こっちにおいでよ!」と客席エリア外のオーディエンスをも踊らせてみせた。
REDEMPTIONステージでのNothing's Carved In StoneのライブはEGO-WRAPPIN'とは別種ながらもダンサブルな展開に。アニメ「絶園のテンペスト」のオープニングテーマ「Spirit Inspiration」でスタートしたそのステージで彼らは「踊れるか!」と煽ったのち、村松拓(Vo, G)がリズムカルに言葉を繰り出す「Brotherhood」や、シンセサイザーのような派手なエフェクトをかけた日向秀和(B)のベースラインが印象的な「Gravity」などを連発した。原昌和(B)が「スマホをいじっている時間が一番幸せ」「電気大好き!」と笑う中「higher」や「禁断の宮殿」を軽快にプレイする、RESPECTステージでのthe band apartのライブの裏、REVOLUTIONステージには斉藤和義が登場。「ずっと好きだった」「攻めていこーぜ!」などをプレイしたのち、サポートバンドのドラマーが小田原豊(REBECCA)であることに触れ、その小田原と隅倉弘至(B / 初恋の嵐)、堀江博久(Key)、フジイケンジ(G / The Birthday)とともにREBECCA「フレンズ」をセッションして、どこかのんびりとしたムードを現出させると「やさしくなりたい」「歩いて帰ろう」などを披露した。
The Beach Boys「Wouldn't it be nice」をSEにREDEMPTIONステージへと歩を進めたOKAMOTO'SはTHE ROOSTERS「恋をしようよ」のカバーから「SEXY BODY」「HEADHUNT」とキラーチューンを連射。以降も「オレたちと熱くなってくれるかい?」とのオカモトショウ(Vo)の言葉の通り彼らが「Beek」「ラブソング」「Let's Go! Hurry Up!」など10曲をパフォーマンスしてオーディエンスを熱く盛り上げると、直後のREVOLUTIONステージでのACIDMANのライブも大木伸夫(Vo, G)の「最高の一瞬をみんなで作ろう」とのMC通りの展開に。「FREE STAR」では佐藤雅俊(B, Cho)にならって客席エリアの誰もがハンドクラップを打ち鳴らし、「ある証明」では大木の「一緒に叫ぶぞ」の声に「イエーイ!」と返す。それでいてラストナンバー「世界が終わる夜」では一転。その流麗なメロディに誰もが万雷の拍手を贈っていた。
夕闇迫る中、REDEMPTIONに登場したのはNAMBA69だ。自らサウンドチェックを行い、客席エリアに向かって「じゃあよろしくっス!」と、のんびり笑っていたNAMBA(Vo, B)だったが、本番、ステージに登場するや、K5(G, Cho)、SAMBU(Dr, Cho)とともに一気呵成に「FIGHT IT OUT」「LET IT ROCK」「STRAY DOG」などを連射。さらに「このフェスは『No』を言わない約束だって聞いてるけど、やっぱ言うわ」と「NMFN」(No More Fuckin' Nukes)を叩き込むと、大量のクラウドサーフが巻き起こり、REDEMPTIONの客席エリアはこの日最高潮の盛り上がりを見せていた。
「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」初日REVOLUTIONステージのセミファイナルを飾ったのは、藤井フミヤ with シアターブルック。フミヤがステージに現れるや、オーディエンスの1人が感激のあまり倒れ込むハプニングが起きるも、面々は1曲目「TRUE LOVE」で客席の驚きの声を巻き起こすと、続く「love & drive」ではこの日パーカッションのワークショップを開いていたというスティーヴ エトウとサプライズセッション。さらに奥田民生が提供した「嵐の海」や、チェッカーズ「夜明けのブレス」をプレイするサービス精神にあふれたステージを作り上げ、フミヤが中学時代に初めて組んだバンドでカバーした楽曲だというクールスの「シンデレラ」をカバーして、またも客席をどよめかせた。
初日RESPECTステージのトリを務めた麗蘭は、仲井戸麗市(Vo, G)のボトルネック奏法と土屋公平(G, Vo)のギターソロが交錯する「ミッドナイト・ブギ」をプレイするや「じゃあさようなら」と客席エリアを笑わせる。またセットリストを間違えたCHABOが「公平に歌ってもらってもいいかい?」と1曲早く客席を煽りだし、蘭丸が慌ててツッコミを入れるコミカルなシーンを挟みつつ、昨年逝去したジョニー・ウィンター「Go Johnny Go」や、狭い新宿生まれのチャボが憧れの地だと語る広大なアメリカ南部を歌った「あこがれの Southern Man」、その蘭丸のボーカルによる「クレイジー・ホース」などをパフォーマンスして、オーディエンスを笑顔で踊らせていた。
「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」初日の大トリとなったREVOLUTIONステージに登場したのはChar with シアターブルック。佐藤タイジの「オレらの酋長を派手に呼び込むぞ!」の声に招き入れられた“酋長”Charは、シアターブルックの面々とともに「悪魔との契約満了」をドロップ。華麗なギタープレイを魅せると、Leyonaがゲストボーカルとして参加した「One Fine Morning」では佐藤とギターバトルを繰り広げ、「からまわり」ではその佐藤とツインリードを披露する。そして「Smoky」をプレイしたところで終了かと思いきや、直後に巻き起こったアンコールに応えてCharとシアターブルック、チャボ、藤井フミヤ、斉藤和義、Leyonaがステージに再登場。Sam & Dave「Hold On I'm Coming」をセッションしてフェス初日を締めくくった。
2日目:9月27日
2日目のREVOLUTIONステージにまず登場したのは、初日ヘッドライナーCharの実子・JESSE(G, Vo)を擁するRIZE。彼らは「PARTY HOUSE」「NOTORIOUS」を叩き込むと、JESSEの「こんな朝早い時間にロック聴きてえヤツがこんなにいるんだ。見せつけてやれよ」、KenKen(B)の「早朝モッシュピット最高じゃないですか。目が覚めるわ」との言葉の通り、およそ朝一番のステージとは思えぬテンションで「Get The Mic」「日本刀」「カミナリ」などを連射した。
REDEMPTIONステージの2日目トップバッター、ROTTENGRAFFTYのライブは変幻自在の展開に。「RIZEがぶちアゲたあと、俺らがさらにぶちアゲてやるからよ!」とのNOBUYA(Vo)のシャウト前後には「切り札」「銀色スターリー」でオーディエンスの拳を突き上げさせるも、音頭をほうふつさせるリズムに乗せて地元・京都の風景を歌う「響く都」や「今夜はブギーバック」のカバーでは彼らを踊らせまくり、終盤「踊ったあとは暴れるしかないよな!」と、またも「This world」「金色グラフティー」とパンクチューンを2連発。先のNOBUYAの言葉を証明するかのように、客席エリアのそこここでサークルモッシュとクラウドサーフを巻き起こした。
REVOLUTIONステージ2番手はBRAHMAN。大観衆が見守る中、ゆっくりとステージに歩を進めた4人は、目まぐるしく楽曲が展開し続ける「FOR ONE'S LIFE」でライブをスタートさせるや、10曲目「警醒」までノーMCのまま一気に畳みかける。さらにその「警醒」ではTOSHI-LOWが客席エリアにダイブ。そしてその客席エリアに、当日MONOEYESとして出演予定の細美武士が姿を見せると、TOSHI-LOWは細美と「PLACEBO」で声を重ねたのち、1人、ステージに復帰。「こんな大変な時代にバトンを受け継いでしまった。でもオレたちには歌の力、いい歌を受け止めて次の時代につなげていく力がある」とバンドとともに「鼎の問」を高らかに歌い上げた。
「最近(ダンスステップ)ランニングマンを練習している」からと、ダンスの覚えのある観客をステージに引っ張り上げ、ともに「GAME」を踊るフレンドリーなライブを作り上げたbirdに続く、RESPECTステージに登場したのは木村充揮(Vo, G)と内田勘太郎(G, Vo)による憂歌兄弟だ。スツールに腰掛けるや缶ビールを煽るリラックスムードのまま、木村が1曲目「YOU BELONG TO ME」を歌い出すも、直後のエディ・コクラン「Summertime Blues」の日本語カバーでは木村、内田が緊張感あふれるギタープレイとボーカルワークを披露する。またスペシャルゲスト、MONSTER大陸・千賀太郎のハープと内田のスライドギターが絡み合うブルージーな「地獄谷クロスロード」や、どこかユーモラスな「村で一番」「おそうじオバチャン」、センチメンタルなバラード「胸が痛い」とカラフルな楽曲群を立て続けに披露した。
菊地英昭(G / ex. THE YELLOW MONKEY)、ウエノコウジ(B / The Birthday)、吉田佳史(Dr / TRICERATOPS)、エマーソン北村(Key)からなるスペシャルバンド・中津川JAMを引き連れ、REVOLUTIONステージに現れた吉川晃司は、COMPLEX「BE MY BABY」をセルフカバーしてオーディエンスの度肝を抜いてみせる。その後も「はい、ごきげんよう」「暑いね」とノンキなMCを織り交ぜながら、中津川JAMのプレイをバックに「せつなさを殺せない」「BOY'S LIFE」、COMPLEX「恋をとめないで」とキラーチューンを連射。最後にはDISCO K2 TWINSの「Juicy Jungle」で軽快なステップを披露し、また吉田のドラムセットの直上に掲げられたクラッシュシンバルを蹴り上げて大歓声を集めてみせた。
2日間を通して、REDEMPTIONステージ最高の集客を誇ったのはMONOEYESのライブ。戸高賢史(G)、スコット・マーフィー(B, Cho)、一瀬正和(Dr)と「When I Was A King」「Run Run」とラウドながらも軽快な2曲を繰り出すと、細美武士(Vo, G)は「今日、メッチャ晴れたね!」「日本中どこを探しても夏は終わったと思ってたけど、中津川にあったね」と笑顔で語り出す。そして腕っこき集団ならではのアンサンブルで魅せる「Like We've Never Lost」、細美が「イントロがアジカンのパクリ」と笑う「What I Left Today」など、1stシングル「My Instant Song E.P.」と1stアルバム「A Mirage In The Sun」の収録曲のほぼすべてを惜しげもなくパフォーマンスした。
REVOLUTIONステージのThe Birthdayのステージは、チバユウスケ(Vo, G)の「オーライ」のひと言で幕を開ける。この声を合図にロックンロールナンバー「カレンダーガール」を投下した4人は、フジイケンジ(G)のサイケデリックなギターとクハラカズユキ(Dr)のラテンフレイバーを漂わせたリズムが絡み合う「FULLBODYのBLOOD」、オーディエンスたちが思い思いのステップを踏む「ダンス・ナンバー」などを連投。また固唾を呑んでバンドの挙動を待ち構えるオーディエンスにチバが「えらい静かだな」と笑いかけ、直後に「今、どこ? 今、中津川だ!」と叫ぶや、バンドは「涙がこぼれそう」「なぜか今日は」「くそったれの世界」を一気に叩き付けた。
The Birthdayのライブと前後してRESPECTステージではBRAHMANのライブでも共演した細美武士とTOSHI-LOWによるthe LOW-ATUSのライブが行われた。2人は東日本大震災以降の自身の体験をときにシリアスに、ときにコミカルに語りながら、高田渡「自衛隊に入ろう」、ザ・フォーク・クルセダーズ「イムジン河」、ベトナム戦争時、米軍が投下したゲル化油脂焼夷弾を“Rain”になぞらえたという話もあるというCreedence Clearwater Reviva「Have You Ever Seen the Rain」など、メッセージ性の高い楽曲群をアコースティックギターを手に優しく歌い上げていた。
すっかり陽も落ちたREVOLUTIONステージのDragon Ashのライブは「AMBITIOUS」からスタート。その後、バンドは、KenKenが怒濤のスラップベースを繰り出す「The Live」や、kjの「誰も流れ弾に当たって死にたかねえよな」「だったら闘って自由に生きて、そして死ね」と煽る「Life goes on」、途中kjが「オメーらがダイブするためだけに作った曲だ!」「ぶっ込め、バカ野郎!」とシャウトする「For divers area」で、客席エリアのボルテージをどこまでも上げ続ける。そしてスタッフに照明を消灯させ、オーディエンスに携帯電話やライターの明かりを灯させたkjが「スゲーだろ? 光ってこんなに美しいんだよ」「誰も傷つかないでソーラー(発電)だけで笑っていけるなら」と、太陽光発電推進を掲げたフェスの趣旨に賛同の意を示すと、メンバーはドラマチックな「百合の咲く場所で」、ステージに躍り出たROTTENGRAFFTY・N∀OKI(Vo)をも踊らせた「Fantasista」をプレイ。その後「Lily」をジェントルにプレイして、わずか1時間足らずのうちに大熱狂と大きな幸福感を演出してみせた。
「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」2日目、REDEMPTIONステージのトリを務めたのはTRICERATOPSだ。和田唱(Vo, G)の「スゲー集まってくれてんじゃん」の笑顔とともに「Raspberry」を投下したバンドは、吉田佳史(Dr)の四つ打ちと、林幸治(B)のシンセベースのようなサウンドがグルーヴを牽引する「FUTURE FOLDER」、和田の超長尺のギターインプロビゼーションで魅せる「MIRROR」などを小気味よく繰り出していく。そして彼らがロマンチックな「Jewel」と、タイトなロックチューン「トランスフォーマー」をパフォーマンスしたところで、バンドと今年のREDEMPTIONステージでの全演目は終了した。
2日間に渡って行われた「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」のメインステージ・REVOLUTIONのヘッドライナーは、シアターブルック。彼らのステージは大団円にふさわしい色合いに彩られた。バンドとDJ吉沢dynamaite.jp、yasuhiroyonishiという2人のサポートDJは、佐藤タイジ(Vo, G)の「楽しみましょ」「これを最高と言わなかったら何が最高?」とのMCを交えつつ「夜明けのオケヒット」「始まりの朝」などを連投すると、the LOW-ATUSがステージに。「曲の最初と途中にギターソロが入るのはわかるけど、最後にまでいる?」とツッコむ細美とTOSHI-LOWに、佐藤が「ギターソロを弾きたくてバンドをやってるんじゃ!」と開き直り、オーディエンスの笑いを誘うと、彼らは、佐藤曰く「ぶっつけ本番」の楽曲、忌野清志郎による「Love Me Tender」の日本語カバーバージョンでセッション。そしてくだんの佐藤のアウトロのギターソロの途中でTOSHI-LOWと細美がステージをあとにすると、今度はkjとともにシアターブルック「LOVE CHANGES THE WORLD」をパフォーマンスした。
そしてバンドが「ありったけの愛」をプレイしたところで今年の「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」は最終盤に。「最後の曲をやらせてくれ!」と叫んだ佐藤が、the LOW-ATUS、kj、高野哲、和田唱、bird、Leyona、うじきつよしらを再びステージに呼び込むと、彼らは初日、渋さ知らズオーケストラの1曲目でもあったシアターブルック「もう一度世界を変えるのさ」をプレイ。佐藤が「太陽だけで(フェスが)できました!」「来年も太陽だけでやってまおうぜ」と2016年のフェス開催を予告したところで、大きな歓声の中、今年の中津川 THE SOLAR BUDOKAN」は幕を閉じた。