久保田悠来が4年半ぶりに舞台へ「もう1回ゼロからスタートを切る」 舞台『GANTZ:L』の裏に見た久保田の本音
-
ポスト -
シェア - 送る
和泉紫音役:久保田悠来
アニメ化・映画化も果たした奥浩哉のヒットコミック『GANTZ』がいよいよ舞台化される。1月26日(金)より開幕の 舞台『GANTZ:L』-ACT&ACTION STAGE- は、死んだはずの人間たちと謎の星人との壮絶なバトルを描くSFアクションだ。
その中でキーとなる和泉紫音役を演じるのが、俳優の久保田悠来。07年に初舞台。その後、ミュージカル『テニスの王子様』の跡部景吾役で脚光を浴び、舞台『戦国BASARA』の伊達政宗役で人気を確立した久保田だが、ここ数年は活躍の場を映像に移し、本格的な舞台出演は実に4年半ぶりとなる。加熱する稽古の合間に、久々の舞台へ臨むその胸中を聞いてみた。
舞台では、人間の善と悪、狂気と歓喜を表現したい
ーーここ数年、活動の軸足は映像だったと思うのですが、また舞台をやりたいという気持ちはずっとあったのでしょうか?
やりたいなという気持ちはありました。ただ一方で、映像でやっていくという気持ちも自分の中で強かったので、少し舞台から遠ざかっていたんですね。それが初舞台から10周年という区切りを迎えて、気持ちの折り合いをつけられるタイミングが来たというか。もう1回ゼロからスタートを切るという意味でも、今かなという感覚があって。そんなときに、ちょうどこのお話をいただいたんです。
ーー久しぶりの舞台ですが、今の感触は?
こうやって毎日のように稽古に通うということを久しくやっていなかったので、そこに対する懐かしさはすごく感じますね。以前はこんなふうにお芝居に向き合いながら日々いろいろやってたんだなってことを思い出せたというか。そういう意味でも、今このタイミングで自分の原点に立ち返れて良かったなと思っています。
ーー『GANTZ』という作品自体は以前からご存じで?
もともと奥浩哉先生の『変[HEN]』がすごく好きだったんですよ。それに比べると『GANTZ』はちょっと話が複雑な印象があって。もちろん作品は知っていたけれど、最後まで読み切ったことはなかったんですね。それで、今回、お話をいただいて改めて読んでみたら難しいっていうことは全然なくて、全巻一気に読んでしまいました。
ーー原作のどんなところに魅力を感じましたか?
まず絵柄が青年期の男心をくすぐりますよね。それでいて、男女間の微妙な距離感が上手く描かれているし、『週刊ヤングジャンプ』らしい成長物語や仲間との熱い友情もある。いろんな魅力が総合的に組み合わさった作品だなと感じました。
ーー舞台化の一報を聞いたとき、『GANTZ』のあの世界観をどう表すのかが気になりました。
そこが今回の一番のチャレンジだと思います。どうしたって身体が飛び散ったり大きくなったりできる役者はいないですからね(笑)。お客様の想像力を刺激しながらどう表現するか、ぜひ注目してほしいポイントです。
ただ、そういったグロステスクな表現はもちろん『GANTZ』の特徴ではあるんですけど、今回の舞台化においては、それ以上に人間心理に特化していくんじゃないかな、と。あの独特の世界に閉じ込められた人たちが、どうあがき、どう変わっていくのか。中には狂っていく人もいます。そういった人間の善と悪、狂気と歓喜を表現していこうって、演出のスズカツ(鈴木勝秀)さんもおっしゃっていて。今は僕たちもその方向に向けて作品を掘り下げているところです。
ーースズカツさんとは初めてだと思いますが、印象はいかがですか?
すごく役者想いの演出家さんですね。まずは役者に任せてくれますし、何か指導をするときも、単にこの作品のことだけじゃなくて、その役者の今後を考えた上でアドバイスやヒントを与えてくださる。作品の成長はもちろん、役者の成長も促してくれる現場です。
僕らのつくり出す熱を感じてほしい
ーーご自身の演じる和泉紫音という役についてもスズカツさんといろいろ話をされましたか?
最初の本読みのとき、僕は漫画のイメージそのままのクールな感じでやってみたんですね。そしたらスズカツさんが、「それができるのはもう見えている。だからもっと違うアプローチの和泉紫音が見たい」とおっしゃって。そう言われて、自分が原作ものの舞台をやっていたときのことを思い出したんですよ。確かに僕も2次元のキャラクターを具現化するとき、人間味を持たせることに重きを置いていた。もちろんキャラクターはあるんですけど、あくまで演じるのは人間。だからちゃんと生身の人間として舞台上に存在しようということを考えていたなって。
ーーそれは、それこそ跡部をやっていた頃から?
そうですね。クールなキャラでも怒るときは怒るし、泣くときは泣くし、笑うときは笑う。そういうことを根底に置いて演じたいと考えていたし、だからこそ思い切りやれました。今回も改めてそこに立ち返るというか。和泉紫音もひとりの人間。表面的なイメージにとらわれるのではなく、ちゃんとその喜怒哀楽を大事に演じたいなと考えています。
ーーぜひそのあたりもう少し詳しく聞かせてください。
和泉紫音の特徴は、彼がすでに一度100点を獲得してクリアしていること。それゆえに日常に退屈を感じて、飽き飽きしている。お金持ちの人がすべてを手にれて退屈しているのと同じですよね。そんな人間が、もっと興奮を得ようとしたら、さらなる刺激を求めていくしかない。そういう意味でも和泉紫音はすごく人間の欲の部分が出たキャラクターだと思うんですよ。
常に彼は命の危険にさらされることを願っている。普通の大学生の感覚じゃないですよね。何と言っても一度戦場を経験しているわけだから。そんな正常な感覚が麻痺した自分を彼は日常に溶け込ませてやってきた。そういった背景も上手く演じたいですね。
ーー百名ヒロキさん演じる玄野計との関係性も注目したいところです。今回初めての共演だと思いますが、百名さんの印象はどうでしょう?
飄々としている中にも度胸があって、そのへんが玄野らしいな、と。そういう彼の持ち前の人間性みたいなものが上手くつながりはじめて、ちょうど今、彼なりの玄野計ができつつあるところなのかなと感じています。稽古開始が始まってもうすぐ3週間。ここからどんどんお互い発したものがつながって熱ができてくると思う。お互い足りないところはまだまだいっぱいあるので、一緒に高め合いながら、クライマックスは、極端な話、仮にお話がわからなかったとしても「なんかすごかった!」って言ってもらえるような、そういう空間をつくれたらなと思います。
ーー原作とも映画とも違う、舞台ならではの『GANTZ:L』-ACT&ACTION STAGE-の魅力を語るとしたら?
話が進むにつれて、どんどん熱が帯びていく。その熱をダイレクトに体感できるところが面白いんじゃないでしょうか。やっぱり舞台はエネルギーが大事。命を燃やすような熱がなければ、この世界観には入り込めない。ライブでしか感じられない熱が、一番の魅力だと思います。
あとはやっぱりガンツスーツかな。これを生身の人間が着ているのを直接見られるのは、結構テンション上がるんじゃないかな、と。特にヒロインのガンツスーツがすごくいい(笑)。ぜひガンツスーツを着た僕たちを目の当たりにしてもらえたら。
インタビュー・文・撮影=横川良明
日程:2018年1月26日(金)~2月4日(日)
会場:天王洲 銀河劇場
原作:奥浩哉「GANTZ」(集英社刊)
演出・脚本:鈴木勝秀
アクション:清水順二
<キャスト>
玄野計:百名ヒロキ
加藤勝:高橋健介
西丈一郎:佐藤永典
岸本恵:浅川梨奈
小池修:影山達也
高橋浩一:大原海輝
オフィシャルサイト:http://gantz-l-stage.jp/