パノラマパナマタウンが表も裏も語る、会心のデビュー作『PANORAMADDICTION』ができるまで
パノラマパナマタウン 撮影=風間大洋
1月17日、ミニアルバム『PANORAMADDICTION』をリリースし、メジャーデビューを果たすパノラマパナマタウン。年齢やキャリアだけに目を向ければ、順風満帆にも映るバンドだが、特に『MASH FIGHT!』のグランプリ獲得後、表舞台に立つようになったここ2年は、周囲からの期待や自らの思い描く姿とのギャップに、焦りや迷いを感じることもあったという。そんな中でもじっくりと地力をつけることを選び、牙を研ぎ澄まし、ついに完成させた本作は、サウンドもメッセージも飛躍的に洗練されると同時にまぎれもなく彼ら4人の音として鳴っている。その誕生に至るまでの道のりや心境面も含め、じっくりと話を訊いた。
自他ともに認める過去最高傑作を携え、いよいよパノラマパナマタウンが時代を突き刺しにかかる。
岩渕想太(Vo/Gt):もう最高傑作ですね。自分らが――
――ちょっと待ってください、まだレコーダー回ってないので……。
一同:はははは!(笑)
――……はい、いま回りましたので、まずはその開口一番に「最高傑作だ」という手応えの所以から聞いていきましょうか。
岩渕:あ、はい。
――……。
岩渕:……。
田村夢希(Dr):いや、さっきめっちゃ言おうとしてたやん(笑)。
岩渕:あ、そうそう(笑)。まず、今の自分らの武器を余すところなく出せたアルバムだし、出し惜しみが一個もないんです。このギターフレーズを入れたいとか、このラップをしたい、メロディが歌いたい、そういうものを全部注ぎ込めたというか。何をやっても俺らっぽいっていう自信もあったので。
――制作に入る時点からそういう意識で? それとも作っていく中で自然とそうなっていったんでしょうか。
岩渕:メジャーの一発目なので、自分らのことを全然知らない人の耳にも届くものを作りたい――例えばYouTubeで一聴しただけの人とか、ライブで後ろを通りがかっただけの人にも刺さるものを作りたいということと、これが俺たちですって胸を張れるものを作りたいっていう意識は当初からありました。
田村:まさにメジャー一発目の名刺代わりになるアルバムを作ろうっていう意識でした。
浪越康平(Gt):特にリード曲の「フカンショウ」に関してはみんな貪欲に作っていて、自分たちの魅力を全部詰め込んで、これ一曲で判断されても嫌じゃない、この一曲で納得させられるものにしようと作りましたね。
田村:うん。チャンスは6曲しかないなって。ミニアルバムなのでせいぜい5~6曲、もっというとチャンスは1曲だなとも思って。
――TVやラジオで流れる曲はある程度決まってきますからね。
田村:そうですね。やっぱりリード曲が一番最初の入り口だし、そこから広がったとしても6曲なので、だったらその少ない曲数の中でどれだけ出すかっていうことは、やっぱり意識しました。だから「フカンショウ」は看板にするために要素もすごく詰め込んで勝負したし、他の曲に関しても自分たちのやりたいことを最大限出せるように。僕らの曲って結構(曲ごとに)方向が違うじゃないですか。その振り幅をどれだけ出せるかっていうことも意識しました。
田野明彦(Ba):曲の強度をもっと上げたいっていう、その曲における意志のないセクションであったり妥協した部分を徹底的に消していかないとっていう意識もすごくあって。要らないところをどんどん排除して、さらに面白いことを付けていくというか、どのセクションにもちゃんと意志が通っている、すごい曲ができたなって思います。
――「フカンショウ」の曲展開は変則的でもあるし、歌っている内容も挑発的な曲で、それはこれまでもパノラマパナマタウンを形作ってきた要素ですけど、この曲がリード曲になったということは、やっぱりバンドとして伝えたかったのはこういう言葉であり、こういうサウンドだったっていうことですよね。
岩渕:そうですね。自分の言いたいことを全部言い切れるように、今まで言ってきたことの総集編みたいな。自分の表現ってなんだろう?っていう根本とも向き合いながら、言葉ひとつひとつを選んでいきました。自分の言いたいことを一言で表したら何だろう?とか、一瞬だけ聴いた人にも刺さる言葉って何だろう?っていうことを、すごく考えて書いた歌詞です。
――今回これだけズバッと核心をつけたっていうのは、やはり前作『Hello Chaos!!!!』やその後のツアーが大きく作用したと思うんですよ。
岩渕:はい。
――やるべきことがより明確化されたというか、ずっと思ってきたことを最適な形にできるようになった。そこに至るまでには、“Chaos=混沌”と表現したようなモヤモヤを抱えている時期もあったわけじゃないですか。
岩渕:言いたいことは変わっていないしずっと同じことを言っていて、4人がかっこいいと思えるものも最初からブレてなくて。でも、『PROPOSE』(前々作)出したくらいから、自分らの「かっこいい」を磨いてそれを突きつけるだけだと、なんか届かないなって実感があって……それを打開したくて、届けるものを作ろう、自分らの思う「かっこいい」をちゃんとわかってもうために、外へ開こうとしたアルバムが『Hello Chaos!!!!』で。
――そうでしたね。
岩渕:『Hello Chaos!!!!』を出したことで、たとえば「リバティーリバティー」を聴いて「先生や親はこう言うけど、わたしは自分の行きたい方向に進もうと思いました」とか、そういう言葉を実際にもらうこともあったから、こうやって届けようとすれば届くんだっていう実感もあったんですけど、同時にやっぱり届かないっていう……。
――届けきれてないと?
岩渕:はい。まだまだ全然自分たちのことに気づいてもらえてないなって感じたんですよ。そのことを上京してからすごく感じていて。その届いてないっていう感覚が一番“混沌”でした。
東京ってめっちゃいろんな人がいるけど、自分らのことを誰も知らないし、自分らはまだ東京で何も成し遂げてない。でも東京は目まぐるしく動いているし、流行りも移り変わっていく。自分たちもそこでなんとか売れたいし目立ちたいっていう気持ちに、なかなか現状に追いつかない葛藤が、上京して『Hello Chaos!!!!』の頃にぶつかった壁ですね。
――それは焦りや迷いにもつながりました?
岩渕:焦りは……あったかもなぁ。
田村:焦りもありましたし、迷いも生まれて、だから出来上がるまで結構紆余曲折がありました。……『Hello Chaos!!!!』の何がいけなかったのか?みたいな話し合いもあるわけですよ。これが本当にあっているのか、じゃあそれを今度はどうしていこう、みたいな。だからこそ、もっともっと自分たちの根本的なこと――何を「かっこいい」とするかのセンスや、やりたいことが大事なんだなって再認識できました。今はより強固に思えます。自分たちのことをもっと大切にしたほうがいい、俺たちはこうだし誰かに言われてやっているようじゃダメだって。
――『PROPOSE』『Hello Chaos!!!!』の結果を受けて、逆に「これじゃやり方が違うのかもしれない」って方向転換することもできたわけじゃないですか。でもそうはしなかった。
岩渕:はい。すごい悩んでたんですけど、その悩みっていうのは全部、自分たちの思う「かっこいい」をどうやったら届けられるかの悩みで、そもそもやり方が間違っているんじゃないかとか、やることを変えようっていう、芯についてではなかったですね。でも、その伝え方をひたむきに悩み続けたから「フカンショウ」みたいな曲ができたし、ほかにもちゃんと「これが俺たちです」って言える曲ができた。悩み抜いたからこそこのアルバムができたとは思います。
――なるほど。
岩渕:でもメジャーに行くっていう話をいただいて、そうなると関わる人も増えるし、巻き込む人も多くなるからこそ、自分らは自分らであることを地に足つけて言わないとなっていう責任もすごく生まれてきて。だから自分らが右見たり左見たりしてたらしょうがないし、やってることに胸を張らないとなっていうことも、すごく感じていて。
パノラマパナマタウン 撮影=風間大洋
――周りの状況や反応は、その迷いには作用しなかったですか?
岩渕:いや、正直ありましたよ。焦りもあったし。後輩のほうが売れてきてんじゃねえか?とか、みんなが夏フェスに出てる日に家にいて何もない日があったり、1年前に『RIJF』出てた日に一人で部屋にいて冷房に当たってたりとか。そういうとき「やんなきゃ」「作んなきゃ」「前に進まなきゃ」っていう焦りはすごくありました。いろんなものが目に付いちゃうし、いろんなことを言われたりもしたんですけど、それって結局は自分が弱くて、他人の反応とか気にしちゃうし考えちゃうからだと思うんですよ。
だから、「ほっといてくれ」っていうのは……自分に言い聞かせる意味も強かったです。いろんな他人の意見を聞いちゃうし、ネットでも調べちゃうんですよ、パノラマパナマタウンは。で、そこに書いてある意見を全部鵜呑みにしたり、自分が揺らぎそうにもなるんですけど、自分の軸って自分の中にしかないし、それを自分に言い聞かせるためにも「フカンショウ」を作っていて。
――「貫けよ」「流されるな」と歌いつつも、気にしてしまう自分もいると。
岩渕:ですね。というか、自分だから歌えると思うんですよ。ステージでは「誰の意見も聞かねえよ」って胸張って言えるし、やりたい放題やれるけど、ステージを降りた自分ってすごく弱い。他人の話ばっか聞いちゃうし、誰がどう思ってるのかを常に意識しながら生きてきたし……だからこそ、そんな自分に歌えることを探してて。いままでは他人に対して何を伝えられるかなんて考えたことなくて、疑問や怒りを歌うだけだったんですけど、こうやってバンドとして開けて自分たちの音楽を伝えようとしたときに、自分の歌いたいメッセージをもう一回考えたんですよ。
周りの顔色を伺っちゃうし、自分を見失いそうになるからこそ、同じように他人の言うことを聞いちゃったり右見たり左見たりしちゃう人、悩んでる人の気持ちがすごくがわかる。そういう人たちって心の奥底では「ほっといてくれ」「知らねえよ」って思っているはずで。そういう普段は感情として出てこないようにすごく押し殺していることを、ステージの上でロックサウンドに乗せてなら言えるし、ギターを持ってるときは叫べるので、そういうことを歌いたいなって思ったんですよね。
田村:……軸がブレてないっていう話があったけど、一度はブレたっていうことじゃない? 軸が揺さぶられたからこそ「フカンショウ」ができたんじゃないかって、俺は側からみててそう思ったんだけど。
岩渕:ああー、確かにそうかもなぁ。
田村:揺さぶられたからこそ自分の芯を強く意識できたというか。だから「ほっといてくれ」って叫べるのかなって。
――一度軸が揺らいで、でも別の軸を立てることはせずに「俺はこれでいくぞ」って思えたことで、芯が一回り強くなったというか。
岩渕:たしかに。代わりに別の音楽をやろうと思ったこともなかったし、そういうことを4人で話したりはしなかったけど、自分が揺さぶられてる感覚はあったのかもしれないですね。
――岩渕くんがそういう自分の内面と向き合って書いた歌詞、まわりから見て変化を感じることはありましたか?
浪越:前作とかよりもストレートなんだけど、心に響くというか。ただただ悪口を言っているだけじゃなくて、自分の弱い部分や、それこそ自分がそうだから言っているっていうことがすごく分かるので、薄っぺらい言葉ですけど、共感しやすいなって思います。
田野:「フカンショウ」は共感できますね。岩渕が書いてる歌詞だなってわかる内容になっていると思うし。
岩渕:「ほっといてくれ」っていうマインドに関しては完全に4人とも共通してます。
――こういう楽曲が生まれた背景がだんだんわかってきました。で、葛藤しながらもメジャーデビューに向けての話は動いていたわけですよね?
岩渕:はい。このアルバムが形になったあと9月あたりに年明け(メジャーデビュー)という話になりました。
――ということは、『Goodbye Chaos Tour』の頃にはもう形ができていたと。僕はあの時期にライブがメキメキ良くなったのを観て、てっきりそのモードでアルバムを作ったのかとも思いましたけど、逆にアルバムができたことでパフォーマンスに良い影響が出ていたんですね。
岩渕:ずっと心の中のモヤモヤがあった中で、「これ!」っていう自分たちの名刺代わりの曲がやっとできた。胸を張って「これがメジャーデビューアルバムです」「これがリード曲です」って言えるっていう、その開放感や自信は大きかったと思いますね。それがライブにも出るようになったし、LOFTのファイナルのときは本当にできたばっかりのタイミングやったんで、すげえ気持ちよかったですね。
パノラマパナマタウン 撮影=風間大洋
――そのくらい自分たちにとっても影響の大きかったアルバムのタイトルが『PANORAMADDICTION』。“ADDICTION”は病み付きとか中毒っていう言葉ですけど、これについては。
岩渕:これはもう文字通りパノラマパナマタウンの中毒になってほしいっていう意味はあるんですけど、もう一個、すごく皮肉な意味合いで――パノラマって俯瞰したり遠くから見るっていうことじゃないですか。そうやってなんでも俯瞰して語れる時代だなと思っていて。音楽でもちょっと聴きで判断して評論したり、僕も映画とかをちょっと1本観ただけで「こうすれば良かったのに」とか軽々しく発信できる、全てのやりとりがパノラマな視点になっちゃう時代だなと思って。そうやって触れてくる人たちにちゃんと刺さるもの――一聴しただけで、つまみ食いしただけで“パノラマパナマタウンってヤバいバンドなんだ”っていうことが分かるようなアルバムっていう意味も込めて、名付けました。
――“俯瞰中毒者”へのカウンターでもあると。その中身は6曲入りですけど、ライブでは以前からやっている曲も入っていて。
岩渕:「パノラマパナマタウンのテーマ」と「ロールプレイング」は一番最初くらいからあって、どちらも然るべき時が来るまで温めていた曲です。「ロールプレイング」はバンド組んで初めてできた曲なので、本当にここぞというタイミングで出したいと思ってました。
――それをアルバムのラストに据えて、1曲めが挨拶代わりの「パノラマパナマタウンのテーマ」、そこから「フカンショウ」。「フカンショウ」に続く「マジカルケミカル」がまた面白い曲ですよね。いろいろな音が聞こえてきたり。
浪越:こういう曲がすごく好きなんです。僕らの好きなジャンルというか、ファンクだったりギターロック、ガレージロック、ディスコみたいなものでライブで楽しい曲を作りたいっていう話をしていて、その時に岩渕がすごく添加物を気にする生活をしていたので――
岩渕:(笑)。
浪越:そこから「マジカルケミカル」っていうテーマができて。
岩渕:……今も、添加物が怖くて食品添加物をすごく抑えた生活をしてるんですけど、その気になっている添加物のことと、浪越の中毒性のあるリフを引っ掛けて曲を作れないかな?と思って。
浪越:それに引っ張られて、サウンドもよりマジカルでケミカルな感じになっていく、みたいな。
――歌詞にある<秘密のスパイス>って食品添加物のことだったんですね(笑)。
岩渕:そうです(笑)。調べ始めたら本当にキリがなくて、自分で作る料理も化学調味料は使わずに、無添加の醤油と酒とみりんとかでちゃんと作ろうと。
田野:それでいつも煮物とか作ってますね。
岩渕:作り置いて、タッパーに入れて出かけたりとか。
――……全然ロックじゃないですねぇ(一同笑)。
岩渕:まぁ、フガジみたいな感じです(笑)。
――続く「ラプチャー」はアニメ『十二大戦』の書き下ろしですけど、ある意味この曲の置きどころは難しくなかったですか?
岩渕:はい、でも曲を作る時に一番考えたのが、アニメのためだけの曲にしたくないなっていうことだったし、この曲がTVで流れて自分らが一番広まるタイミングで、このメロディや雰囲気の中でどれだけ自分たちのやりたいことを詰め込めるか?みたいなことを深く考えて作りました。アニメきっかけだったから、例えば歌詞の言葉遣いだったりとか、普段開けないような扉を開けるきっかけはもらえましたけど。
――旧来のパノラマパナマタウンの曲のイメージで聴くと最初は「お!」っとなる曲じゃないですか。メロディアスだし。でも、この曲の反響が大きいとか。
岩渕:大きいですねぇ。
――それって意外でもあったんですよ。もっと軽快にラップが入ったりするような曲が好きなリスナーが多いのかと思っていたので。
岩渕:俺も思っていたより反響が大きかったですね、正直。これだけ受け入れられて評価されるのはめっちゃ嬉しいです。
田村:曲としてはたしかに挑戦的な部分もあったんですけど、そこまで(過去曲と)違うことをやっている感覚もあんまりなくて。どちらかというと『PROPOSE』に入っていた曲に近いのかな?っていうくらいの感触ですけど、メロディアスな感じとかは成長したなっていう部分です。新しい武器を手に入れたというか。
――以前はやろうとしてやれなかったことが――
田村:そうっすね! ちゃんと形にできたなっていう。
岩渕:こういう僕らのダークな部分や裏面みたいな曲を、B面のリード曲にしたいなと思って作ったんですけど、『PROPOSE』の延長線上に置けるし、あの頃より精度が高くかっこいいことができたなって。最初はマイブラみたいな、渦の中で鳴っているような曲だったんですけど、これはもう本当に歌の曲なので、歌と歌詞を届けるためにそこからギターやベースのフレーズを削ぎ落としていって。歌詞をより聞き取りやすいように変えていく引き算、そういうアレンジは新しい扉を開けた感覚はありますね。僕らは基本的に足し算で、ちょっとオーバーくらいに作って最後にちょっと引くか?くらいの作り方が多かったので(笑)。
――この曲をB面の頭とすると、僕はこのアルバムのキモってこの4~5曲めだなって思うんですけど、この「街のあかり」の、ちょっと物悲しいコード感なのにテンポが早くて跳ねている感じ、あんまり日本のバンドでこういうアプローチって聴かない気がして、好きなんですよ。
岩渕:嬉しいです。この曲は、最初に仮歌とギターのデモを作って持っていったら、浪越に「もっとこの曲で何を伝えたいのか教えてほしい」「歌詞と弾き語りで完結したものを聴かせてほしい」って言われて。弾き語りで、自分の中で一回は完結するものって今までやったことなかったんですけど、この曲がどういうイメージなのかまで全部詰めました。シャッター街で、そこに射す光があって、夕暮れで――みたいなことを全部共有してからアレンジしたんです。
――浪越くんは何故そういうオーダーをしたんですか。
浪越:今までの僕らの曲には弾き語りから作った曲が一個もなくて、「ラプチャー」にしても歌ものですけど、結局はドラムとベースとギターがあって初めて成立する曲だなと思うし。でも「街のあかり」のデモを聴いて、おそらくマイナーコードの切ない曲調で岩渕のパーソナルな部分が歌われるんだろうなと思った時に、バンドとしてギターのリフとかで脚色しちゃって広げていくよりも、もっと岩渕のパーソナルを掘り進めて、5分の曲をギターと歌のメロディだけでその哀愁を出せるのか、出せないのかっていうところを、他の楽器に頼らず歌自体だけで表現してくれっていうことをお願いしました。実際、それで出来てきたものからすごく“街のあかり”の情景が想像できた。そういう歌が強度をもつような作曲の仕方をしてみたかったんです。
岩渕:言ってくれてすごいよかったなと思っていて。言われたことでより伝えようと思ったし、どういう情景を描きたいのかも自分の中でイメージしてすごく整理できました。
――こういう作り方をしてみて、リズム隊の2人は何か違いを感じましたか?
田野:リズムをシャッフルにしたことによってそこまで暗い曲にならなくて。リズムが跳ねている上でこの歌詞の内容があってマイナーコードがくるっていうバランスでよかったなと思います。
田村:寂れた感じや、懐かしい感じ、何か昔は楽しかったんだろうなっていう情景も含まれて、曲の雰囲気にはすごく合ったなって思います。最近はあまりシャッフルの曲ってないなって思うんですけど、シャッフルって絶対悲しくならなくて、どうしても明るくなるので。そこが良いように作用したと思いますね。
――ギターのリフに関しても、このコードじゃなかったらノスタルジックには聞こえないフレーズじゃないですか?
浪越:そうですね。リフは元気ですよね。これを弾き語りだけでやったらもっと物悲しい感じの曲になると思います。
岩渕:そういう天の邪鬼な表現はバンドとして好きなんだなと思います。明るい曲に暗い要素をつけたりとか。今思い返せば前のアルバムの「エンターテイネント」でもすごく明るい曲調に悪口ばっかり書いたし(笑)。
パノラマパナマタウン 撮影=風間大洋
――ちょっと話は変わりますが、メジャーデビューするということ自体に対してはどう感じています?
岩渕:メジャーっていうのはずっと夢ではあって。不特定多数のめちゃくちゃ大人数に向かって発信できる場所だと思うし、自分たちの音楽をもっともっと広められる場所だから、絶対行きたいなって思ってました。それがゴールではないですけど、もっともっと圧倒的に分かられてなくて、自分ら4人だけが楽しいし、4人だけがかっこいいと思ってやってるんじゃないか?っていうところから、でも「こんなにかっこいいんだからもっといろんな人にわかってほしい」っていう承認欲求みたいな気持ちがあって、コンテストとか応募したりライブにも出たりしてたから。
だからメジャーデビューできるのはすごく嬉しいし、嬉しいけど、責任もあるなと思って。4人でスタジオでやってるだけだったら楽だし、簡単なんですけど、それを人に分かってもらおうとしたら、こんなに大変なのかってことは、この2年で実感したし壁にも当たりました。けど、ここにいる全員が自分たちを知る可能性があるのかと思ったら、それって無限だなと思うんですね。だから伝えることに真摯にならなきゃなって責任も感じるし、より多くの人に知ってもらえるっていう喜びも期待もあります。
――そうやってまだ出会っていない人たちと出会っていく中で、あらためてパノラマパナマタウンは何で勝負していくバンドだと思っていますか。
岩渕:僕はやっぱり言葉を刺したいって思いますね。知らない人にも、パノラマ中毒になっている人にも刺したい。で、「リバティーリバティー」を出した時の「背中を押してもらいました」みたいな人がいっぱい増えてほしいと思うんですよ。いろいろ言われることでがんじがらめな人って多いと思うけど、そういう人の声を代弁できる、自分らの言葉がもっと時代に刺さったり人に刺さる音楽をしたいなと思います。
田野:僕は音と、あとは自分らの存在ですね。言葉に関しては岩渕の書く歌詞にすごくメッセージ性があると思うんですけど、そういう言葉が伝わらない人、日本語がわからない海外の人でも、音なら一発で共有できるし、ライブを観て4人がかっこいい演奏や立ち振る舞いをしていたらそれだけで心が動く、夢中にさせれるんで。やっぱり、音と、自分らの内面から出るかっこよさを磨いて、これからどんどん武器にしていきたいです。
田村:やっぱりロックバンドでありたいなと思います。田野が言ったようにロックバンドのかっこよさって生き様みたいな部分がすごく大きいと思うし、ここからメジャーでやっていく上で、自分らがどれだけ楽しめるかだなとも思います。だからこの舞台で楽しみながら多くの人を巻き込んで、好きなように音楽をやっていきたいです。
浪越:自分たちの好きなものをひたすらに作って、かっこいいと思うものを出していって……オアシスやニルヴァーナみたいなロックバンドとしてのかっこよさで勝負していきたいなって。
田村:憧れを追いかけたいっていうのはあるね、自分たちの。
岩渕:うん。それで納得させたいですね。自分たちの音楽をこのまま貫いて、全員納得させるまでやりたいです。
取材・文・撮影=風間大洋
2018.1.17. Release
『PANORAMADDICTION』
1. パノラマパナマタウンのテーマ
2. フカンショウ
3. マジカルケミカル
4. ラプチャー
5. 街のあかり
6. ロールプレイング
タワーレコード:B3オリジナルポスターカレンダー
Amazon・アニメイト・ゲーマーズ:TVアニメ「十二大戦」描き下ろしB3ポスター
※特典数量に限りがありますので、無くなり次第終了となります。
※一部のオンラインサイトやCDショップで特典が付かない場合があります。 事前にご予約されるオンラインサイト/CDショップにてご確認下さい。
2018年 6月 9日(土) 代官山UNIT
2018年 6月 17日(日) 神戸 VARIT
2018年1月17日(水)12:00〜 オフィシャル先行スタート
『HEAT ADDICTION TOUR』
w ) ハンブレッターズ / YAJICO GIRL
2018年2月12日(月・祝) 広島 BACK BEAT
w ) mol-74 / ゆるふわリムーブ
2018年2月14日(水) 福岡 LIVE HOUSE Queblick
w ) Bentham / ユアネス
2018年2月15日(木) 香川 高松DIME
w ) Bentham / ELFiN PLANET
2018年3月10日(土) 千葉LOOK
w ) PELICAN FANCLUB / teto / 突然少年
2018年3月21日(水・祝) 石川 vanvanV4
w ) LILI LIMIT / PELICAN FANCLUB
2018年3月24日(土) 新潟 CLUB RIVERST
w ) LILI LIMIT / PELICAN FANCLUB
2018年3月30日(金) 仙台enn3rd(※)
w ) マカロニえんぴつ / アンテナ
2018年4月 1日(日) 札幌SOUND CRUE(※)
w ) マカロニえんぴつ / アンテナ
2018年4月21日(土) 大阪 梅田Shangri – La
w )後日発表
2018年4月22日(日) 名古屋 ell.FITS ALL
w )後日発表
2018年4月26日(木) 東京 渋谷WWW
w )後日発表
※宮城・北海道公演は、マカロニえんぴつ「マカロックツアーvol.5 ~朝食抜いたら超SHOCK篇~」との共同開催となります。