『悪女/AKUJO』キム・オクビンインタビュー「スタントの方がいらっしゃらなかったら、映画界は回りません」危険な撮影の裏側を語る
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『悪女/AKUJO』は、藤原竜也主演・入江悠監督によるリメイクでヒットを記録した『22年目の告白 -私が殺人犯です-』の原作『殺人の告白』で脚光を浴びたチョン・ビョンギル監督の最新作。犯罪組織の殺し屋として育てられ、最愛の人を殺された一人の女性が、国家直属の暗殺者として第2の人生を歩み、愛と裏切りに翻弄されながら最強の“悪女”と化していく姿を描いたアクションノワールだ。多数の敵に囲まれて戦うようすを一人称視点でとらえたアイデアあふれるアクションや、CG処理を最小限に抑えた激しい戦闘シーンが大きな魅力となっている。
主演のキム・オクビンはテコンドーでは黒帯を持つ女優ながら、同作の激しいアクションに挑むためにソウルアクションスクールで長期間のトレーニングに励んだという。メールインタビューでキム・オクビン自身に同作の役作りやトレーニング、アクションチームとの絆や作品への想いなどを訊いた。
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――脚本を読んだ時の印象を聞かせてください。
体がもつだろうかと思いました。それほど激しいアクションだったからです。アクション映画で有名なチョン・ビョンギル監督ですし、脚本でもハードなアクションシーンが読み取れました。
――スクヒは、参考にされたという『LUCY/ルーシー』や『ハンナ』、あるいは本作にオマージュとして登場している『ニキータ』とも異なる独特のキャラクターだと思います。どんなヒロイン像をイメージされたのでしょうか?
スクヒは非常に独特な人物です。幼い頃に父親を殺され、ジュンサン(シン・ハギュン)に出会ったことで殺し屋として育てられましたが、自分の愛する人のために行動します。ジュンサンのため、子どものためにです。その部分以外では受動的で従順な人です。
――ひとりの女性として共感するポイントはありましたか?
半分は共感できるところもありましたし、残りの半分は理解しようと努力しました。私は自分自身をもっと大切に思っています。そこはスクヒとは違うところです。
――スクヒの人物像は、脚本どおりなのでしょうか? あるいは、オクビンさんのご意見なども入っているのでしょうか?
残念ながらそれはできませんでした。私が脚本を書く段階から参加していれば、違うキャラクターになっていたかもしれません。
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――アクション映画が非常に盛んな韓国で、女性が主人公のアクション作品があまり作られてこなかったのは意外です。ただ、最近では、『悪女/AKUJO』を筆頭に、『コインロッカーの女』や『暗殺』といった“強い女性”の映画も登場しています。徐々に受け入れられるようになってきているのでしょうか?
私も意外でした。映画の準備のために女性のアクションシーンやアクション映画などを調べましたが、韓国には資料がほとんどありませんでした。時代の変化とともに女性の役割が広がり、世界の映画でも女性キャラクターが多様化しています。その流れでメディアが描き出す女性キャラクターも変化し、韓国でもそのような動きがあるようです。
――テコンドーの黒帯をお持ちだそうですね。始めるきっかけは何だったのですか? また、武道の経験は映画でのアクションに役立ちましたか?
子どもの頃に合気道とテコンドーを体力づくりと精神修行の目的で始めました。素質があったみたいです。アクションをするときには、運動が好きなことがとても役立ちました。そのおかげでケガもほとんどしなかったんだと思います。
――アクションシーンの撮影に向けて、具体的にどのような準備を、どのくらいの期間をかけて行われたのでしょう?
ソウルアクションスクールで4カ月間、毎日一日中トレーニングしました。吐いた日もあります。毎日くたくたになって帰宅しました。また、中国朝鮮族の方言も習ったりして忙しく過ごしていました。
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――監督からの指導などはありましたか?
ソウルアクションスクールで徹底的に息を合わせて練習していたので、現場では体調管理をすることに努めました。監督からはワイルドな雰囲気を出して、すべての武器を使えるようにと言われました。
――よく名前を聞くソウルアクションスクールは、韓国映画界にとってどんな存在なのでしょうか? また、女優さんがソウルアクションスクールでトレーニングを積まれるのは、一般的なことなのですか?
男優でも女優でも、出演する映画にアクションがあるなら、アクションスクールでトレーニングをすることはよくあります。『悪女/AKUJO』と同じ頃に『無頼漢 渇いた罪』と『代立軍(原題)』も撮影入りしていましたが、女性でトレーニングしていたのは私だけでした。
――監督のすすめでソウルアクションスクールでトレーニングをされたのでしょうか?
ソウルアクションスクールのクォン・ギドクさんが『悪女/AKUJO』のアクション監督でした。ちゃんとしたアクションを披露したかったので、監督が来るなと言ったとしてもトレーニングには行ったと思います。
――最も苦労されたアクションシーンはどこですか?
バスのアクションシーンです。狭い空間でカメラ、監督、ジュンサン、スクヒ、組織の人間たちが動き回るために、ぶつかってとても苦労しました。苦労したかいがあって、いいシーンを撮っていただけたので特に記憶に残っています。
――非常に危険なシーンもご自分で挑戦されていらっしゃいますね。なぜそこまでこだわられたのでしょうか?
撮影しているうちに自然にそうなりました。無理に自分がやりたい、とこだわったわけでもありません。私がやるべきことをやり遂げただけです。
――スタントダブル、あるいはスタントマンの方もかなり危険なアクションをされています。あなたにとって、スタントマンとはどういう存在ですか?
スタントの方がいらっしゃらなかったら、映画界は回りません。俳優同士でアクションシーンを撮るとよくケガをするのをご存じですか? 専門的に訓練していないからです。現場ではスタントの方に絶大な信頼を置いています。ずっと一緒に練習をして、どんなに危険なシーンもカッコよくきめてくれます。スタントマンなしには1シーンも安全には撮影できません。
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――チョン・ビョンギル監督はスタントマンを目指していた、という珍しい経歴をお持ちの監督です。ご一緒された印象を聞かせてください。
監督はアクションを本当に愛している人です。デビューもアクションに関連したドキュメンタリー映画でしたし、アクションスクールに通っていたほどアクションが好きな人です。きっとアクションが好きで映画監督になったのだろうと思います。アクションへの愛に一途で、今後の活躍がとても楽しみな監督です。韓国のアクション映画はチョン・ビョンギル監督が率いていくと思います。
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――韓国、日本など、製作国を問わずアクション映画で特に影響を受けた作品、あるいは好きな作品はありますか?
『グリーン・デスティニー』や『るろうに剣心』のようなジャンルにも挑戦してみたいです。残念ながら韓国には、アニメやファンタジーを加味した歴史物があまりなくて、(出演の)機会がありません。
――『悪女/AKUJO』続編や前日譚の可能性はあると思いますか? もしご出演されるなら、どんな物語がいいでしょう?
そうですね。続編が製作されるなら本作のエンディングの微笑みからつながる、世界に類を見ない無慈悲な悪女を演じたいと思います。自分が愛するすべてのものを奪われ利用された女性、そのためにあらゆる感情を失ってしまった本当の悪女です。
映画『悪女/AKUJO』は2018年2月10日(土)、角川シネマ新宿ほかロードショー。
監督:チョン・ビョンギル『殺人の告白』
出演:キム・オクビン、シン・ハギュン、ソンジュン、キム・ソヒョン
原題:THE VILLAINESS/悪女
2017/韓国/カラー/R15+
提供:カルチュア・パブリッシャーズ
配給:KADOKAWA
【ストーリー】
犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親ジュンサン(シン・ハギュン)にいつしか恋心を抱き、結婚する。甘い新婚生活に胸躍らせていた矢先、ジュンサンは敵対組織に無残に殺害されてしまい、逆上したスクヒは復讐を実行。しかしその後、スクヒは国家組織に拘束されてしまい、ミッションを10年間つとめたのち自由の身になるという条件のもと、国家直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて新たに運命の男性に出会い幸せを誓うが、結婚式の日に新たなミッションが降りかかる。
公式サイト:http://akujo-movie.jp/
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