『マンハント』はジョン・ウー版『トリプルX』になるはずだった?“伝説”のアイデアを具現化したアクション振付・園村健介氏インタビュー

ニュース
動画
映画
2018.2.6
『マンハント』アクション振付・園村健介氏

『マンハント』アクション振付・園村健介氏

画像を全て表示(14件)

高倉健主演の『君よ憤怒の河を渉れ』(きみよふんどのかわをわたれ)の原作小説を、約40年ぶりに再映画化した『マンハント』が2月9日(金)から公開される。中国から『戦場のレクイエム』のチャン・ハンユー、日本から福山雅治を迎えたW主演作でメガホンをとるのは、『男たちの挽歌』シリーズや『レッドクリフ』などで知られるジョン・ウー監督。香港フィルムノワールの伝説的存在であるウー監督は、原作や日本映画へのリスペクトを払いつつ、二丁拳銃でのケレン味あふれるガンアクションや、男同士の熱い友情物語など、かつての“ジョン・ウー流”の演出を多用し、原点に回帰しているという。

そんな『マンハント』の核となる、“ジョン・ウー流”アクションで大きな役割を担ったのが、アクション振付を担当した園村健介氏(ユーデンフレームワークス所属)である。『コードネームミラージュ』や『バイオハザード: ヴェンデッタ』などのアクション監督として、タクティカル(戦術的)なガンアクションを開拓してきた園村氏は、アクション映画の“レジェンド”ジョン・ウーのイメージをどのように具現化したのか。監督とのやりとりから、失われた初期設定まで、インタビューで事細かに語ってもらった。

 

『マンハント』はジョン・ウー版『トリプルX』になるはずだった?

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――そもそも、なぜ園村さんがアクションを担当されることになったんでしょう?

実は、最初は谷垣健治さん(『るろうに剣心』ほかアクション監督)、それから下村勇二さん(『アイアムアヒーロー』ほかアクション監督)にお話が来ていたんですけど、お二人ともスケジュールがあわなかったので……それでぼくが行くことになりました(笑)。

――今回は「アクション振付」で参加されてらっしゃいますが、実際はどの程度の範囲までカバーされていたんでしょうか?

アクションコーディネーター(編注:振付や細かなアクション演出から、安全面の確保、スタントマンなどのキャスティングまで包括的に行う役割)として普段やっていることとそんなに変わらないんですけど、だいたいVコンテ(編注:撮影時に俳優や監督に状況を説明するためのテスト映像)をこちらで作ってプレゼンして、流れが決まったら監督が現場でアングルを決めていく、という感じです。

――ほぼアクションコーディネーターの仕事ですね。ウー監督と実際に仕事をご一緒された印象はいかがでしたか?

想像していたのと近い部分はあるんですが、ちょっとイメージと違ったところもありました。最初は緻密な人なのかな、と思っていたんですが、実際にはどちらかというとエモーションを大事にする人だった、というところですね。整合性なんかを気にするより、勢いのある画を繋いでいく。今あらためて作品を観返すと、そんな印象はないんですけど。

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――先日監督にインタビューしたところ、園村さんについて「アイデアを沢山出してこられる」と褒めてらっしゃいましたよ。

それは、監督が“何かを見てから思いつく”タイプだからだと思います。無から何かを思いつくんじゃなくて、何かを見て「だったらこうしよう」とアイデアを生む方なので。ぼくらがVコンをいくつも作ってそれを提出すると、監督は「このVコンのここがよかったからここを活かそう」と新しいオーダーを出してくるんです。

――だから園村さんもたくさんアイデアを出すことになったんですね(笑)。アクション全体のコンセプトについては、監督からリクエストはあったのでしょうか?

監督からは、「(キャラクターの)心情がわかる動きをつけて欲しい」ということはリクエストされました。例えば、中盤の牧場での銃撃戦では、福山雅治さんとチャン・ハンユーさんが“手錠をつける”ということは最初から決まっていたんですけど、二人は最初は反目しあっていて息が合わなくて、手錠をつけていることが不便で足かせになる。そこからだんだん信頼しあっていく流れがあるので、どちらかをピンチにして、どちらかが命を投げうってそれを守る、という形にしていく。アクションの動きや型についてはそんなに注文はなかったんですが、エモーションに準じた動きをつけてくれ、ということは結構言われました。

――なるほど。振付自体は結構自由にやらせてもらえたんですね。

そうですね。ただ、現場で監督が「やっぱりこうしたい」と思いつくと、そこで作り直しになるのはなかなか大変でした。特に大きなくくりでの画になるアクション、トレーラー向きの派手なアクションを、思いついたらその場で入れてくることも多かったので。
 

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――そういう現場は、日本でもよくあるんですか?

いいえ、ないです(笑)。だいたいの監督は(アクション全体を)任せてくれるんですけど、ウー監督は自分の手である程度作りたいんだと思います。“ジョン・ウー印”をどこかに入れていきたいというところがあるので、ぼくらとしてもそれに応えられるように考える。そこで「できません」とは言えないですから。

――今回は、ジョン・ウー監督自身が、かつての『男たちの挽歌』のようなアクションを作る、という意思で撮られているそうです。「ジョン・ウー流にしてくれ」みたいなリクエストはあったんでしょうか?

そうですね。ちょっと(ジョン・ウー流に)寄せています。ウー監督は自分の好みがはっきりしている方なので、合わないものは採用しない、というのがVコンを何回か提出していく中でわかったんです。だから、今回はあまりタクティカルなものではなく、いわゆるジョン・ウー的な、“銃を構えている姿がカッコいい”みたいな方向に寄せていかないとダメだと思いました。

――園村さんもタクティカルなガンアクションを作られていらっしゃるので、こだわりはお持ちだと思います。お二方の間でせめぎ合いみたいなものはあったのでしょうか?

まあ、監督の力は強いですから(笑)。監督が「こうして欲しい」と言えば、それをやるのがぼくたちの役割なので。ただ、そんな中でも言葉はわからないなりに、自分のやりたいことを出していく、という気持ちはありました。監督から指示はないけど、「自分の好みとしてはこっちかな」というところでは、ちょっと振付を変えてみる、とか。
 

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――福山さんとチャン・ハンユーさんが鳩小屋で戦うシーンは、監督らしさと園村さんらしさ両方が出ていて興味深かったです。鳩が二人の戦いに物理的に絡んできたのでびっくりしました。

あの鳩は、ウー監督が最初から出していたアイデアなんです。二人が反目しあって戦うシーンなんですが、その争いを“平和の象徴”としての鳩が仲裁する、という意味があります。

――そんな意味があったんですね。鳩小屋のシーンだけでなく、福山さんのアクションは非常に多いですね。出来る限りご自身でアクションを実践されたそうですが、印象はいかがでしたか?

他の人が真似しても出来ない、独特の雰囲気のある方ですね。おそらく、自分がどう見られるかということに、すごく気を遣われている方なんだと思います。そのぶん、首の角度とか、独特のクセがあったりするので、スタントダブルの方はだいぶ研究していました。上手くやってくださったんですけど。

――すごく画になっていましたよね。福山さん演じる矢村警部とチャン・ハンユーさん演じる弁護士ドゥ・チウ、それぞれにキャラクターごとのアクションのコンセプトがあったのでしょうか?

最初に監督に言われていたのは、チャン・ハンユーさんは弁護士役なので、頭を使ったスマートなアクションにしてほしいということです。最終的に無くなってしまったんですけど、エクストリームスポーツ愛好家という設定もありました。

――え!?『トリプルX』みたいですね(笑)。

そうなんです。「スカイダイビングとかをやっているから身体能力が高い」みたいなキャラクターだったんですが、その部分は全然なくなっちゃいました(笑)。「格闘技は出来ないけど、頭のよさと身体能力でなんとかピンチを切り抜ける」のがテーマなんです。それから、福山さんは直感的でもあるけど、どちらかというとスマートなイメージ。だから、そこから作りなおして、最終的にはドゥ・チウは「野性的で、生存本能で切り抜けていく」、矢村警部は「スマートなアクション」になりました。

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――矢村警部は、逮捕術のような動きを見せますよね。福山さんからアクションシーンについての提案もあったんでしょうか?

そうですね。矢村警部の戦い方については、監督に「柔道を使ってみたらいかがですか?」と提案したら、「柔道アクションはあまり見たことがない」とOKをいただけたので。それと、福山さんからは「剣術をやってみたい」と提案いただいたので、竹で剣術をやってもらったり、ラス立ちで棒を使って戦うシーンを入れています。全体的に、警察で習うような戦い方を意識したアクションにしています。

 

オーダーに対応できた日本の俳優とアクションチーム

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――特別出演されている倉田保昭さんの、アクションの見せ場が大きくてびっくりしました。当初から決まっていたことなんでしょうか?

いや、倉田先生のアクションは、当初は予定してなかったです。牧場のアクションシーンを終盤のほうで撮っていたんですけど、その途中で決まりました。これは、誰から出たアイデアかよくわからなくて。ゴードン・チャン(プロデューサー)から出たのか、監督から出たのか。最初はぼくも、なぜ倉田先生がキャスティングされてるのかわからなかったんです。「アクションもなくて、ホームレスの役をなぜ倉田先生にやらせるんだろう?」と思っていました(笑)。

――倉田先生が大暴れするシーンのアクションのコンセプトは何だったのでしょう?

あれは、黒澤明監督の『赤ひげ』で三船敏郎さんが暴れるシーンをイメージしています。柔術・古武術を使うちょっと乱暴な達人、みたいなイメージで。

――そういうところにも日本映画へのオマージュが入っているんですね。

そうみたいです。監督の中に「これは日本映画のこのシーン」というイメージがあって、「こういうロケ場所を探してほしい」とリクエストされたりもしました。

――もう一人、意外な活躍に驚かされたのが、監督の娘さんのアンジェルス・ウーさん演じる殺し屋・ドーンです。相棒のハ・ジウォンさんより活躍しているのではないかと思いました(笑)。なぜあんなにアクション満載になったんですか?

最初の台本ではそこまで活躍する予定ではなかったです。もっと早めに死んでしまう役だったんですが……監督の親心が出てきたのかな、と思います(笑)。ただ、本人が柔術だったり、格闘技を色々やっている方で、「アクションをやりたい」と本人にも言われていました。しかも、ガッツリ動けるんで、ぼくらも面白くなってきちゃって。「こんな感じで活躍させると面白そうだな」とか、アイデアが出てきたんです。

――出来るからどんどんやらせたわけですね(笑)。

はい(笑)。

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――クライマックスでは福山さん以外にも、三元雅芸さんや屋敷紘子さんといった、日本の動ける俳優さんが大活躍します。お二人は、どういう経緯で出演されることになったのでしょう?

三元さんは、『ゴッド・オブ・ウォー』に出演されていて、そのプロデューサーでもあったゴードン・チャン監督にすごく気に入られたんです。だから、今回も「アクションのある役でキャスティングしたい」ということで、ぼくらとは別で声を掛けられていたみたいです。屋敷さんは、“アクションの出来る信頼できる日本の役者さん”を求められたので、プロフィールを出して紹介しました。屋敷さんは女性で、ほかのアクションが出来る男性よりもちょっと目立つので、たぶん監督も「メインで戦わせよう」とピンときたんだと思います。もともとは、戦う設定がなかったキャラクターだったので。

――またもウー監督のエモーションで決まったんですね。

屋敷さんについては、「何か(アクションを)考えてくれ」と監督からオーダーを貰いました。三元さんは、「福山さんとチャン・ハンユーさんのふたりを相手にするなら、三元さんしかいないな」とぼくらも思っていたので、「ここで戦うのは三元さんがいいです」と名前を挙げたんです。

――全編日本で大規模なアクションを撮影されています。苦労した部分もあったのでは?

結構ありましたね。無くなったスカイダイビングもですが、車関係とか水上バイクのシーンとか、どうしても日本でのロケだと制限があるので。そもそもこんな作品のオーダー自体がないので、日本側の制作体制としても慣れていない部分もありました。そうすると、香港のスタッフは「日本のスタッフは意地悪しているんじゃないか?」みたいに感じちゃうと思うんです。そのギャップで、「これは出来る」「これは出来ない」ということがあるので、調整に苦労することは沢山ありました。
 

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――ロケハンも園村さんたちでやられたんですよね。

そうですね。毎回、毎場所ロケハンに行きました。最初に監督の意向を聞いて、ぼくらなりに考えて探す、というやり方です。

――ジョン・ウー監督は「日本映画を撮りたい」とおっしゃっていましたが、出来上がったものには日本映画にはないスケールがありますよね。

そうですね。あとは、(日本映画では)普段はやらせてもらえないようなことが出来たのもよかったです。

――川べりの銃撃戦とか、日本では観られない画ですよね。

あのシーンでは、ガラスをかなり沢山用意しました。日本だと、ちょっと納得いかなくても、「ワンテイクでいこうか」みたいな空気になっちゃいますけど、何回もやりなおしましたし。

――逆に言うと、やり直しが出来る現場だということですよね。時間的な余裕もあったんでしょうか?

ほかの邦画にくらべれば、全然余裕がありました。ただ、一つひとつのセッティングに時間も手間もかかるカットが多かったです。
 

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.

――アクションチームや俳優陣が監督のリクエストに対応できたのが素晴らしいです。最後に、園村さんが一番観てほしいアクションシーンを一つ挙げるとしたら、どこですか?

個人的にお気に入りを挙げるとすると、牧場の銃撃戦です。特に、福山さんが日本刀で戦うところでしょうか。銃と刀が戦うという、結構無茶なオーダーを受けたんですけど、刀で戦っていることに違和感がないようなアクションにできたんじゃないかな、と思います。

映画『マンハント』は2018年 2月9日(金) TOHOシネマズ新宿他 全国ロードショー。

作品情報
映画『マンハント』

主演:チャン・ハンユー、福山雅治、チー・ウェイ、ハ・ジウォン
友情出演:國村隼
特別出演:竹中直人、倉田保昭、斎藤工
共演:アンジェルス・ウー、桜庭ななみ、池内博之、TAO、トクナガクニハル、矢島健一、田中圭、ジョーナカムラ、吉沢悠
監督:ジョン・ウー
撮影監督:石坂拓郎『るろうに剣心』
美術監督:種田陽平『三度目の殺人』
音楽:岩代太郎『レッドクリフ』
アクション振付:園村健介『GANTZ』
衣装デザイン:小川久美子『キル・ビル』
原作:西村寿行『君よ憤怒の河を渉れ』/徳間書店刊 および 株式会社KADOKAWAの同名映画
公式サイト:http://gaga.ne.jp/manhunt/
(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved.
 
シェア / 保存先を選択