石原プロ初プロデュースの舞台で女優デビュー!『希望のホシ』 緒月遠麻インタビュー

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2015.10.12

『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』のヤン・ウェンリー、『翼ある人びと』のロベルト・シューマン、『ベルサイユのばら』のアンドレ・グランディエとアラン・ド・ソワソンなど、数々の印象深い役どころを演じ、本年2月惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した元男役スター緒月遠麻が、女優として本格的な再始動を果たすことになった。

その舞台は、『西部警察』『大都会』など多くの名作刑事ドラマを残してきた石原プロモーションが、舞台作品を初プロデュースすることで大きな話題を集めている『希望のホシ』(10月10日~18日  北とぴあつつじホール)。金児憲史、池田努、宮下裕治ら石原プロの若手俳優たちに緒月が加わり、凶悪犯を追う刑事たちの熱いドラマが、コメディ要素をたっぷりと含み、ハートフルに展開されていく。

そんな作品に挑む緒月に、舞台への意気込み、退団後の時間の過ごし方、宝塚への思い、また女優としてのビジョンなどを語ってもらった。
 


石原軍団の中で自然な関係性を築けて
 
──朗読劇などを経て、本格的な女優デビューにこの作品をと思われた決め手は?

男の中の男という石原軍団さんの舞台ということで「是非!」と思いました。これまで女性ばかりの世界にいて、今度は男性ばかりの世界で、極端ですけれど、だからこそとても幸せなことだと。お話を伺った初めから即決でした。

──作品の内容について、今お話いただける範囲で教えていただけますか?

刑事もので、ホテルに現れる逃亡犯を見張っているところに、色々な事件が起きていきます。様々な人が現れて、それに警察が振り回される中で、冷静を保とうしつつ翻弄される刑事たちの姿が描かれていきます。

──緒月さんが演じる役どころについては?

私は警視庁の主任役です。厳しい女性で、宝塚を退団された女優さんがよく刑事もののドラマに出演されていると思うのですが、あれの濃いバージョンだと思って頂ければ(笑)。キャラクターが濃くて、強い、怒鳴り散らしたりもする女主任です。でももちろん愛情もありつつ、個性の違う刑事さんが3人いるので、その1人1人に対する接し方の違いや、所轄と警視庁の違いも描かれていて、本当に面白い舞台になっていると思います。特に前半はほぼ出ずっぱりで、ずっと喋りまくっている役柄で、さぞや緊張するだろうと思ったのですが、通してみると意外にもずっと出ているというのは、役としてずっと生きていることでもあるので、良い意味で緊張しないということを知りました。宝塚でもずっと出ている時はあったのですが、その経験以上に更に出続けているので、袖に入ってリセットする時間がない分、逆に役としていられるのだというのは新たな発見でした。宝塚に15年いたのですけれど、ここでまた新しい発見に出会えるというのが新鮮ですね。

──男性とのお芝居ですが、石原軍団さんの中に入られていかがですか?

最早、馴染んでしまっていて(笑)、女性としてというより、男同士みたいな(笑)極自然で普通です。お兄さんのような感じで、何も意識せず話しかけてくれますし、私も話しかけますし、役のことも普通に話し合っています。とても自然な関係性を築かせてもらっているので、芝居もやりやすいですし、ありがたいですね。ただ、私が演じる主任役が、刑事たちの中である意味一番「男」かも知れないと日に日に感じていて、演出の大浜(直樹)さんからのダメ出しも「強すぎる」なんです(笑)。そこのコントロールが難しくて。役に入りこんでしまうとどうしても熱くなってしまうので、強くなり過ぎず、でも主任らしく、というのを今意識しながらやっています。

──では、これまで男役を演じてこられた経験からも、移行しやすい?

すごく入りやすいですね。皆さんが女刑事を演じられていた理由がわかった気がしました。舞台とテレビの違いはあるでしょうけれど、でも「なるほど!」と。観てくださる方にどう映るかはわかりませんが、自分としては本当にすんなりと入れているので、とても充実していて楽しいです。
 


楽しかった思い出しかない宝塚時代

──宝塚を退団されて、時間の過ごし方などは変わりましたか?

ゆっくりランチがとれたりすることが、変わったなと。例えば11時公演でしたら9時には楽屋入りしないといけませんでしたし、そこから夜公演までずっと楽屋にいるという生活でしたから、ゆったりとお昼の時間を過ごせることがとても幸せです。退団した同期などとも会って食事しますし、宝塚時代も私は本当に幸せに過ごさせて頂きましたが、また新たな幸せに出会えています。

──その宝塚時代ですが、今改めて振り返ってみると?

よく皆さん「あっという間だった」とおっしゃいますが、私もあっという間の15年間でした。充実していましたし、下級生の頃からずっと、楽しかった思い出しかないんです。

──それはすごいことですね。

本当にひたすら楽しかったです。先日NHKで小林一三先生のドラマをやっていて、この方がいらっしやらなかったら宝塚もなかったんだと思ったら、涙が出てくるくらいでした。

──宝塚歌劇が創られたことにも感謝されている?

宝塚の存在と、私を宝塚に入れてくださった試験官の先生、どなたなのかはわかりませんが「この子を入れてあげよう」と言ってくださった先生にも感謝でいっぱいです。

──その中で多彩な役柄を演じてこられて、特に印象に残っている役などは?

良い役ばかりだったので、うーん、たくさんあるのですが、『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』のヤンも好きですし、『翼ある人びと』のシューマンも。あ、もちろん『風と共に去りぬ』のベル・ワトリングも好きです。『ニジンスキー』のディアギレフも、『ベルサイユのばら』のアランも、アンドレも、皆好きですね。

──本当に個性的で印象的な役ばかりですね。

確かに個性的ではありましたね(笑)。逆に嫌な役はなかったと思うくらい、皆大好きです。

──その大好きな宝塚を、退団して客席からご覧になっていかがですか?

もう母心ですね。一生懸命やっている皆を観ると胸が熱くなります。現役の頃にも、退団を決めてから他の組のロケットをやっている初々しい子たちを見ては、「あぁ、この子たちがこれからの宝塚を背負っていくんだ」と思って涙していたんですけれど、今もどの組を観ても心洗われますね。すごく下級生だと思っていた子が、あぁこんな位置で踊っているんだと感激しますし、宝塚を観るのが本当に大好きです。知っている子もたくさんいるので、観に行くと「どうでした?」と訊いてきてくれるのですが、もちろんよほど気になったことがあれば言いますけれど、基本はダメ出しなどの意識はせずに全体を観て感動しています。観終わって本当に心が晴れるので、宝塚は素晴らしいですね。
 


色々なことをスポンジのように吸収したい

──そうして、男役を極めてこられて、今また新たに女優として演じる上で違いはありますか?

基本は何も変わらないですね。もちろん稽古場ひとつを取っても宝塚とは違うのですが、その変化を楽しめて対応できているので、宝塚時代を引きずることもないですし、違和感もないです。もちろん男役の癖を取る為のリハビリ中という意味では重傷患者なので(笑)、敢えてタイトスカートをはいて立ち居振る舞いを意識したりはしています。というのも、今の役柄がある意味男役より強いんじゃないか、と思うくらいなんです。退団してディナーショーなどもさせて頂き、ようやく少し女性っぽくなってきたかな?と思ってきた時にこの役を頂いたら、またすっかり男みたいに戻ってしまって(笑)。家でパッと鏡を見た時に、現役時代の男役の顔に、しかも切羽詰まっている時の男役の顔に戻っていたんです。せっかく少し女性らしくなったのに「これは事件だ!」と、「スカート履かなきゃ!」と(笑)。いつも「ダメ、女なんだから!」と意識してはいるんですが、普通の人と人のドラマの中で、ついキリッとしてしまうのは、自分自身の問題として「事件」ですね(笑)。

──でも、女優の緒月さんを初めて観ることになるファンの方にとっては、そのくらいのほうが入りやすいのでは?

そうかも知れないですね。「変わってないな」と思われるかも知れません(笑)。

──いきなり濃いラブシーンなどがあっても、戸惑ってしまうかも知れませんし。

そうですね、ナイス作品です(笑)。これがベストですね(笑)。皆様のおかげです。ありがとうございます。

──次々と出演作品も決まられていますが、女優としての今後のビジョンなどは?

自由にやっていきたいです。自分から発信すると、自分の好きなものにある意味偏ってしまう部分もあると思うので、与えて頂いたものにパッと飛び込んで、方向性を決め過ぎずにトライしていきたいです。「それは受け身なのでは?」と言われることもあるのですが、敢えて受け身でいて、色々なことをスポンジのように吸収したいんです。

──ディナーショーでもミュージカルナンバーをたくさん歌われていましたが、ミュージカルへの興味は?

今ストレートプレイのお芝居をさせて頂いていて、お芝居が大好きなのでとても幸せで楽しみなのですが、でもふっとどこかで「歌いたいな」「踊りたいな」という気持ちが動くことがあります。やはりミュージカルで育ってきた、その血がどこかにはあるのでしょうね。ですからいつかはまたやりたいなという思いはあります。ただ背が高いので限られてくることもあるかなと。

──長身のOGの方もたくさん活躍されていますから、大丈夫ですよ。

そういう意味でも今回は皆さん背が高いので、全く気にせずに背筋を伸ばして立っていられるので、これぞ「石原マジック」だなと。もう完璧ですね!本当にありがたいです。

──充実している様子が伝わりますが、では改めて舞台を楽しみにしている方々にメッセージを。

きっと楽しんで頂けるものをお送りできる自信があります。大阪でも公演してくださいというお声をたくさん頂くので、関西に行けないのが残念なのですが、まずは東京で女優として第一歩を踏む公演を1人でも多くの方に観に来て頂きたいです。現役中と何ら変わりなく、まるで石原軍団にずっといたかのような感覚の(笑)、この空間にいる私を楽しんで頂けると思います。笑いあり涙ありの心温まる舞台ですので、是非劇場にいらしてください。お待ちしています。


おづきとおま○愛知県出身。00年『源氏物語~あさきゆめみし/ザ・ビューティーズ』宝塚歌劇団で初舞台。雪組に配属後、温かな個性と、深い芝居心で頭角を現し、『ロミオとジュリエット』のティボルト、『ニジンスキー』のディアギレフなど、数々の印象的な役柄を好演。11年宙組に組替え後は、『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』のヤン役を皮切りに、組の中核メンバーとして活躍し、『風と共に去りぬ』のベル、『翼ある人々』のシューマン、役替わりで務めた『ベルサイユのばら』のアンドレとアランなど、多くの名舞台を残した。15年『白夜の誓い/PHOENIX宝塚!!』を最後に惜しまれつつ退団。朗読劇『約束』、ディナーショーを経て『希望のホシ』で女優として本格的なスタートを切り、今後の活躍が期待されている。


【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】
 
公演情報
石原プロモーション初プロデュース『希望のホシ』

■期間:10/10~18
■会場:北とぴあつつじホール
■作・演出:大浜直樹
■出演:金児憲史、池田努、宮下裕治、緒月遠麻 ほか
■料金:4900円 (全席指定)
※北区民割引・学生割引・シルバー割引 2900円 北とぴあ1階受付窓口のみ、枚数限定発売。
問合せ:オデッセー 03-5444-6966 (平日11時~18時) 
■その他問合せ:石原プロモーション 042-485-5181
■公式サイト:
http://nabiku-wareware.com

演劇キック - 宝塚ジャーナル
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