日本エレキテル連合はあなたのトラウマになりたい 結成10年記念 第5回単独公演『パルス』インタビュー

インタビュー
舞台
2018.4.25
日本エレキテル連合 左から橋本小雪、中野聡子。

日本エレキテル連合 左から橋本小雪、中野聡子。

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「ダメよ~、ダメダメ」で2014年に大ブレイクした日本エレキテル連合は、“未亡人・朱美ちゃんと細貝さん”としてお茶の間に広く知られ、同年日本流行語大賞受賞。その2人は結成10年を迎えた今も、“朱美ちゃんクラス”、またはそれ以上にエッヂの効いたキャラを作り続けている。渋谷・ユーロライブでの単独公演『パルス』(2018年6月14日~)を前に「観に来てくださるお客さんに刺激とトラウマを」と自信をのぞかせる2人に公演への意気込みと、結成10年への思いを聞いた。

相方はハートが強いんです

――結成10周年おめでとうございます。実は今まで「朱美ちゃんと細貝さん」のイメージが強かったのですが、単独公演を拝見すると、登場するキャラクターだけでなく舞台美術や映像にまで、攻めの姿勢とクリエイティビティがいきわたっていると感じました。

中野聡子(以下、中野)・橋本小雪(以下、橋本) ありがとうございます。

――2017年の単独公演「『地獄コンデンサ』岩下の新生姜と共に」には、成人向けにデフォルメされた巨大新生姜まで登場しましたが、クレームはありませんでしたか?

中野 岩下食品さんは食品会社にもかかわらず、かなりエキセントリックな展開をされているんです。共感する部分もあり、前回の公演では事前に岩下社長に許可をいただきました。舞台で使った大きな新生姜は公演終了後に岩下の新生姜ミュージアム」に寄贈しました。

橋本 好きなようにやっていいとのことでしたが、実際には驚かれたと思います(笑)。

――新生姜も含め大人向けのネタが多いお二人ですが、客層は男性が中心なのでしょうか?

中野 そう思っていたのですが、実際には同年代の女性の方が多いみたいです。YouTube(公式チャンネル「日本エレキテル連合の感電パラレル」)からのお客さんが多いのですが、テレビで朱美ちゃんが知られた影響で小さい子も間違って観にきてしまうことがあります。幕が開いて子どもがいると焦ります。でも私たちには作品として完成させたものを、ステージ上で子ども向けに変更する器用さがないので、基本的にはそのままやるしかない。少し抑え目にするくらいしかできません。

橋本 抑え目になんかする? したことないですよ。子どもがいるとか関係ないでしょ、親の判断で観に来られたのだから仕方ないよ。そのままやるしかない。

中野 私はしたけど。相方はハートが強いんですよ。

一同 (笑)

 

お花畑、ベトナムランタンから地球まで

――ネタの過激さや面白さと並び、舞台美術が印象的でした。

中野 毎公演、舞台美術もお客さんに観ていただく作品の一部だと思ってアイデアを出しています。でも私はわがままをいっているだけで何もしていません。「地球を背負ってコントをしたい」「舞台の床一面をお花畑にしてほしい」とイメージを伝えると、チームがそれを叶えてくれるんです。

――チームとは? 何人くらいですか?

中野 20人とか25人くらい? 事務所(タイタン)の社員さん、音響さん、照明さん、舞台美術さん等、関わってくださるすべての方々をチームと呼んでいます。

橋本 初めての単独公演からずっとお世話になっている方々です。私たちがしたいことをよく分ってくれていて、実現のためにリサーチしたり人脈をたどったりしてくれる。すごいんですよ。

中野 ベトナムのランタンを写真で見つけて「これをバックにやりたい」と言った時も、本当にやらせてくれたね。

橋本 富山県滑川市でやっていた「ベトナム・ランタンまつり」実行委員会に問い合わせて、ランタンを使わせてもらえるよう交渉もしてくれました。

中野 「こんなセットを背負ってお笑いをやれるんだ」と思うと最高でした。そこはやっぱり女子なので。

――幻想的ですね。そこに白塗りのお二方がいて、舞台写真が前衛的なパフォーミングアートにみえてきます(笑)。

中野 私たちはセットがないとボケを作れないんです。セットの他にも、白塗りや鼻毛のメイクで顔を作ったりしないとお客さんを笑わせられない。だから卑怯な手でも何でも、舞台上で使える手法は全部使うんです。

橋本 今の言い方は後ろ向きなようですが(笑)、コントなんだから「何をやってもいいじゃない」って思うんです。自分たちの中では舞台でやれることがまだまだあると思っていて、チームの方々に協力してもらうことで可能性が広がるんです。幕が上がった瞬間にお客さんが「おおぉ!」って驚いてくれるセットでやっていきたいと思っています。

中野 でも、今回はまだ分らないよ?

橋本 そうか。すみません。今回はまだ分かりません。

 

あなたのトラウマになれたら幸せ

――すべてのネタ作りや演出を手がける中野さんは、どういったものに影響を受けてこられたのでしょうか。

中野 お笑いで一番影響を受けたのは、カトチャンけんちゃんです。

――王道ですね、意外です!

中野 「ものまね王座決定戦」とか「昭和の事件史」とか古いテレビ番組も好きです。舞台美術に関しては私が美術系の学校でもともと好きだったことや、日本画を勉強していたことも影響しているかもしれません。面白いと思ったことは何でもとり入れます。歌舞伎を観れば、舞台に絢爛豪華な色を使ったり視覚的に楽しませるところを参考にしたり。

橋本 歌舞伎にはお客さんを驚かせる仕掛けもありますよね。前回はワイヤーを使って宙乗りみたいなことを試しました。何かひとつではなく色々なものが混ざり合っています。それでもやっぱり……。

中野・橋本 加トちゃんケンちゃん。

中野 ネタの中で自分とは別物のキャラクターになるというところとか。

橋本 キャラ1人1人の哀愁とか。

――たしかに、キャラクターはエキセントリックなだけでなく物悲しさがあります。中の下”とか“下の上”といった表現がありますが、中でも……。

中野 “下の下”です。そこに愛おしさを感じるので、“下の下”が主人公になるようなコントを書くことが多いです。

――コント作りにおけるポリシーやこだわりはありますか?

橋本 あなたのトラウマになれたら幸せ”じゃない?

中野 そうだね。

橋本 何年後とか大人になってからとか、よく覚えていないけれど「あれなんだっけ」って思い出させるようなコントで、その人のトラウマになりたい。そうなるようにコントを作っています。

中野 きれいなネタができることもありますが、それでは観た人に忘れられてしまうので必ずひとつ要素をのせます。たとえば“面白い+怖い”、“面白い+気持ち悪い”みたいに。

――そのポリシーを貫くなら、単独ライブはうってつけの場ですね。

中野 それが本当に楽しくて、今は舞台に夢中なんです。「今はテレビにあうネタは作れないから、舞台でやりたい」って相方に言って、相方も「じゃあ自分もこっちでやりたい」って。

橋本 私は中野さんが考える中野さんのやりたいことを一緒にやっていきたい。それが楽しいんです。

――橋本さんからの忠誠心にも近い信頼を、中野さんはどうやって勝ち得たのですか?

中野 相方に自分がない。何もないだけです。

橋本 はい。何にも考えていないんです。何もできないから中野さんの下に潜っておかないと。あれですね、コバンザメ。

中野 何の意見もないからいいんです。おかげでコントの時には、何にでも染まれる。相方に意見をもたれたら、日本エレキテル連合は終わると思っています(笑)

 

これまでの10年、これからの10年

――第5回単独公演『パルス』は6月14日より全5回公演の予定です。過去の公演と比べてシンプルなタイトルですね。

中野 パルスは、心電図の「ピコーン…、ピコーン…」という波形のイメージなのですが、結成からの10年を振り返ってみて、日本エレキテル連合はすごく波のあるコンビだったと思うんです。売れない時期があり、急にガーッて売れ、でもブームはすぐに終わり、かと思えばライブで盛り返し。そういったこれまでを表せるタイトルにしました。メインビジュアルも病院を意識したものになる予定です。あと私、高橋留美子先生が大好きなので先生の作品のオマージュといいますか……。そんな感じの2人になっています。

――会場は渋谷のユーロライブです。

中野 席がフカフカでいいですよね! ギュッと濃密な空間で楽しんでいただけると思います。これから検討することなのですが、私たち公演中の着替えがものすごく多いんです。今までは“こしらえ部屋”みたいものを舞台袖に作ってもらっていたのですが、今回そのスペースがないんです。そこをどう工夫するか。「もう着替えて出てきた!」みたいな、早替えとかになるのかな。

――「パルス」のような激しい10年を終え、次の10年に向けた抱負はありますか?

中野 今までも自由にやらせていただいてきましたが、これからの10年はもっと違うこと、新しい違うジャンルに……。そうですね。ちょっと待ってくださいね。たとえば……。

橋本 何? 漫才?

中野 たとえば……。(橋本さんに)ちょっと先に言ってもらっていい? その間に考えるから!

橋本 よし、先に言ってみようか。では10周年と言うことですね。昔の映像を観かえしまして「こんなことをしていたんだ」「面白いことやってるな」と言った、そういう……。いや違いますね! ちょっと考えようか。そうですね。10周年を迎えた日本エレキテル連合は今までよりもパワーアップしこれからの10年は……。

中野 (橋本を遮り)ハイ! わかりました! 2人とも変わりたくないんです。

橋本 えっ?

中野 今、何となく無理をして「パワーアップ」とか「新しいこと」とか言ってしまいましたが、私たち本当にぶれないんです。環境の変化はあってもやっていることは10年前から変わりません。この10年間続けてきたことが正しかったかどうか分るのが、次の10年だと思います。だからこのまま信じて、変わらずに続けていきたいんです。

橋本 (はげしく頷き)そう思います!!

中野 パッと答えられなくてすみませんでした。鼻毛とか白塗りとか役に入ってスイッチが入れば恐いものはないんですが……。

橋本 あ。白塗りには自信があります。めちゃくちゃ研究しました。スピードでは志村(けん)さんに敵いませんが、今では仕上がりは誰よりも綺麗です。シワもなく、ピッと。

中野 よれないし衣装に触れても白くなりません。

――そういう研究も怠らないのですね(笑)。最後に読者の方へメッセージをお願いします。

橋本 (挙手して)行きます! 日本エレキテル連合はシュールで難しそうと言われたこともあります。でも実際にはベタな笑いです。いいものを作っている自信もあります。登場する色々なキャラクターの中から、お気に入りをみつけていただけるようなライブです。ぜひ楽しみにきてください。

中野 日本エレキテル連合に「朱美ちゃんと細貝さん」のイメージしか持たれていない方は多いと思います。でもそのイメージを完全に裏切れる舞台を毎回作っています。すごい刺激とトラウマを与えるライブになると思いますので、日常に刺激がないと感じている方にぜひお越しいただきたいです。

――どうもありがとうございました!

日本エレキテル連合の単独公演『パルス』は、6月14日より17日までユーロライブで上演。怖いもの見たさで足を運び、忘れたくても忘れられない笑いを体験してほしい。

取材・文=塚田史香

公演情報

日本エレキテル連合単独公演「パルス」
■日時:
2018年6月14日(木)18:00開場 19:00開演
2018年6月15日(金)18:00開場 19:00開演
2018年6月16日(土)13:00開場 14:00開演 / 17:30開場 18:30開演
2018年6月17日(日)12:00開場 13:00開演
■会場:東京・ユーロライブ
■料金:前売4000円 当日4500円
■一般発売:2018年5月3日(木)10時~
■公式サイト:http://www.titan-net.co.jp/talent/elekitel/
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