週刊朝日「司馬遼太郎シリーズ」担当、小林修の写真展が開催中 司馬の作品世界を捉えた写真たち
上空1万3700メートルから見た東京 司馬遼太郎の言葉3「漱石の旅路」より (C)小林修(朝日新聞出版写真部)
週刊朝日の人気連載「司馬遼太郎シリーズ」を担当する小林修の写真展が、2018年4月7日(土)~5月19日(木)まで、 朝日新聞東京本社2階コンコースギャラリー(東京都中央区築地5丁目)で開催される。
夕暮れの若草山からみた奈良のまちなみ 司馬遼太郎の言葉2「この国のかたち」より (C)小林修(朝日新聞出版写真部)
展覧会は『小林修 写真展 司馬遼太郎の世界』と題して、「司馬遼太郎シリーズ」の掲載写真の中から、昨年の「日本雑誌写真記者会賞最優秀賞」を受賞した「漱石の旅路」、親鸞とザヴィエルの時代を考えた「司馬遼太郎と宗教」、晩年の司馬さんの思想が結実する「この国のかたち」「風塵抄」を、司馬の言葉とともに展示する。
週刊朝日のこの連載は、 司馬の作世界を記者が歩くシリーズ。2016年1月に「週刊司馬遼太郎」として始まり、「司馬遼太郎の街道」「司馬遼太郎の言葉」「司馬遼太郎と宗教」と続き、いずれもオールカラーのムックとして発売されている。現在は、「司馬遼太郎と明治」のシリーズが連載中だ。 朝日新聞出版写真部長の小林は、シリーズ開始から12年にわたって写真を担当している。
潜伏キリシタンの里、 崎津に立つ海上マリア像 「司馬遼太郎と宗教」より (C)小林修(朝日新聞出版写真部)
週刊朝日編集部 村井重俊 推薦文
司馬遼太郎さんが亡くなって22年が過ぎたが、いまだに週刊朝日の目次には「司馬遼太郎」の文字が載っている。もし司馬さんが、連載中の「司馬遼太郎と明治」を読んだら、
「えー、まだやってるの」
と言うだろう。
ただし、自信を持っていえるのだが、写真にはかならず目を奪われる。
「この写真を撮ったカメラマンと話がしたいね」
と言ったと思う。
司馬さんは絵画や映画、そして写真が大好きな人だった。こんな写真を撮れるカメラマンに興味を抱かないはずはない。もっとも最初は写真の話から入ったとしても、その後はだんだん“身上調査”になる。
この写真展の主役、小林修はきっとあっさり把握されただろう。司馬さんの本はそれほど読んでいなかったが、奥さんが大好きでいろいろ教えてくれることはすぐにバレる。寒がりなのに八甲田山のような寒いところばかり、蚊に刺されやすいのにヤブ蚊が好む城跡ばかり撮影させられていること、相棒の担当者の私がドジで、ロンドンで三脚を持たせたらすぐ壊したことなど、“撮影秘話”も司馬さんは喜んだだろう。
つまり生前の司馬さんに、小林修は会っていない。
会っていないハンディをまったく感じさせずに写真を撮るまで、どれほど読み込んでいるかと思う。担当者のほうは読んでも読んでもすぐ忘れているが。
* * *
司馬さんの『街道をゆくーニューヨーク散歩』に、アメリカ資本主義の勃興期を撮影した写真家、マーガレット・バーク=ホワイトの話が出てくる。彼女は発電所や製鉄所など機械文明に美を見いだした人だったが、第2次世界大戦後の後半生では〈インドやパキスタンで、機械文明から対極にあるようなひとびとを撮りつづけた〉と司馬さんは書いている。
司馬作品を読み続けていると、司馬さんがこだわり続けた精神性の世界にたどりつく。今回の写真展のテーマは「漱石の旅路」「司馬遼太郎と宗教」「この国のかたち」「風塵抄」の4作品だが、いずれも司馬さんの積年のテーマにかかわる作品となっている。
精神性の世界となると、リンゴを写真に撮るようには撮れない。形が見えないものをどう表現するのか。たとえば神を祈る心、この国を支えてきた「恒心」といったものをどうやって撮るのか。活字の世界で表現することに苦心した司馬さんなら、表現者としての冒険を成功させてきた小林の写真を見て思うことがあっただろう。
さらに司馬さんに見せたいと思うのは、小林の「ユーモア」である。さりげないけれど、いつも小林はクスッと笑わせる瞬間を狙っている。温泉につかって合掌するおサルさんの表情を見てください。「司馬ワールドだなあ」と思わせる、ほんわかした瞬間がここにある。
イベント情報
会期:2018年4月7日(土)~5月10日(木)
※休業日5月6日(日)
時間:8時~22時(日曜祝日は17時まで)
会場:朝日新聞東京本社2Fコンコースギャラリー(東京都中央区築地5−3−2)
入場料:無料