野水伊織、声優として、女優として- パーソナルインタビュー(後編)
野水伊織さん
前回から少し時間が空いたが、声優野水伊織さんのインタビュー後編をお送りする。
後編ではマネージャーさんも迎え事務所側から見た野水伊織、そして彼女のこれからやりたいこと、声優という仕事は。野水伊織のパーソナルに踏み込んだインタビューをお送りします。
野水伊織インタビュー前編はこちらから!
――ではこの辺でもう一人登場人物がでてきます。マネージャーのMさんです。おはようございます。
M:おはようございます。
――せっかくご同席いただいているので、1つ2つお話しを聞いてみようかなと思うんですが。正直な所マネージメント側からみて野水伊織はどういうタレントですか?例えば扱いやすいとかここに困っているとか
M:そうですね…いろいろな人に話を聞いても野水伊織だったら大丈夫というか、肯定的な意見が多いんですね。実際僕もイベントに付くことがあるんですけど、事務所の中でも意識が非常に高いというか、受け答え一つとってみてもきちんと先をみて答えられているなっていうところをすごく感じて。そこは新人にみならってもらいたいところではありますね。
野水:よし、これからはNGいっぱい喋っていこう(笑)
――逆に野水伊織からみて自分の事務所に対する要望とかあったりします?
野水:好き勝手やらせてもらってると思うんです、私は。ありがたいことに野水はプロダクションエースのエースだって言っていただくことが多いんですが、私はアウトローだと思ってます。私としてはそのぐらいわがまま好き勝手言ってるなという自覚はあるんですが、その分自分のやること、言うことに責任を持とうという気持ちはあるので、そこをマネージャーさんたちはとてもよく理解してくれていますね。ただうちのマネージャーさんたち結構どじっこが多いので(笑)そういうところは気を付けてくださいって思うときはありますけど、まあ私もドジをやらかすので(笑)
――なんでこういう質問をするかというと、色々インタビューは多いと思うんですよね。でもトピックの有無関係なく、事務所から見てこの子はどういう立ち位置の子でどういう人なのかっていうインタビューはあまりないと思ってて。声優野水伊織は事務所からってどういう存在なのかっていうのを聞いてみたいと思ったんです。
野水:なるほど。
――あと、ざっくりとした本質の質問なんですけど、何かを演じるのが仕事で、その仕事でお金を稼ぐのが声優。じゃあその演ずるというのは野水伊織自身にとってなんなのか、というのを伺ってもいいですか?
野水:元々私がこの世界に入りたいと思ったのって、自分のことが嫌いだったからなんですよ。舞台の上だったら性別とかも飛び越えていろんな人になれるのがいいなって思って。でもやっていくとネガティブな気持ちだけではできないことに気づくんですよね。自分ひとりじゃ手の届かない世界があって…なんかきれいごと言ってるみたいだな(笑)
――好きなこと話して下さい(笑)
野水:でもそれはきっと手が届く世界なんですよ。例えば2015年4月に久々の舞台『LinKAge~凜国異聞』で主人公の雪を演じたときも感じたんですけど、私は自分が演じるキャラクターに導かれることが多いんです。うまくキャラクターと手がつなげないと結構お芝居とか方向性で悩んじゃって、「できない!わー!」ってなりやすいタイプなんですよ。だけど手がつなげたときに凄く引っ張って行ってもらえるというか…自分が演じるつもりで臨んでるんですけど、そのキャラクターに助けてもらったり手を取り合ったり…役と寄り添い合うのが演ずる事だと思ってます。
――元々ネガティブって意見も出ましたけど、今声優として6年やって、芸能やって10年以上、野水伊織は今の野水伊織を好きと言えるか、なにかしら変化はありましたか
野水:ありますね。もちろん落ち込むときもあるし、自信もてないとこも嫌いなとこもありますけど…なにより私が一番に考えるのは、自分より誰かなんです。イベントやライブのを買って会いに来てくれるファンの方がいてくれて、応援して下さるスタッフさんやお仕事仲間だったり、マネージャーさんが居てくれて、みなさん野水伊織をどういうステージに立たせたいとか真剣に考えてくれている中で「無理です、私はできません」って言ってたら申しわけなさすぎるじゃないですか。想いに応えるためにも絶対に求められたことは出来なきゃいけないし、自分に自信を持ってなきゃいけない。なので私はステージに上がる時「どうだ、私が一番だ!」と思って挑みます。もちろんその後で反省は凄いんですけど(笑)そういう意味では前より自信持てるようになったし、自分のこと好きだよって思えるようになりました。凄く変わりました。
野水伊織さん
――これはマネージャーさんも含めて聞きたいんですけど
M:はい。
――僕が感じたのは『これはゾンビですか?』をやった時ぐらいから野水伊織は変わってきた気がしてて。なんていうんですかね…「受けて立つ感」がでたというか、覚悟みたいなのがみえてきた気がしてるんです。
野水:確かに『これゾン』で演じさせて頂いたくらいから、お仕事を頂く機会が増えたのはあるかもしれません。ありがたいことに、その分挑戦することが多くなって…でも私負けず嫌いですからね(笑)
M:負けず嫌いは間違いないです。でもその割にすごくネガティブなので。結果的にきちんと立ち向かっていくので信頼感はあるんですけど、ちょっと受け答えが雑になったりとか、そういう時は落ち込んでるんだなって思うようにしてます。
――そこはそっと見ておくんですね
M:たぶんこれは一時的なもので、最終的にはちゃんともってくるだろうと(笑)
――なんかそれは感じますね、落ち込みやすくて負けず嫌いっていう。
野水:とてもめんどくさい人間だという自覚はあります、周りの人は良く付き合ってくれるなと常々思うんですよ。自分の中でネガティブと負けず嫌いが切り替わるスイッチみたいなものがあったりして。なのでマネージャーさんに言われた通り、泣きたいなら泣かせとけとか…そういう時間も大事なのかなと最近は思うようになりました。
――一回自分のなかで落ちるところまで落ちて、それをバネにして這い上がるというか…やっぱり悔しいんでしょうね。
野水:悔しいってのはいっぱいありますね。「もうどうでもいいよ!」みたいな気持ちになる時もありますし(笑)でもそんな事言ってても仕方ないじゃん!って冷静にみている自分もいるんですよね。
――そんな悔しかったりネガティブになったりしながらでも、やり続ける原動力は何なんでしょう?
野水:うーん…
――諦めるとか辞めるとか、その最後の一線を踏みとどまってよじ登る根っこの理由、と言うかな。
野水:私、これしかないんです。よく友達とかに愚痴ったりして「もうやだこの仕事やめたい!」って言っても、「でもやめないでしょ?」って返されるんです。今まで表現するっていうお仕事のことしか考えてこなくて、自分の好きなものとか趣味もお仕事から影響をうけてたりして、好きなことやらせてもらっている中でこれ以外思いつかないんですよ。だったらやめる道理はないだろうって思いますね。どんなに嫌なことがあっても、結果としてはお仕事ってそれもひっくるめてなんですよね。
野水伊織さん
――じゃあ、事務所のことは考えないで何やってもいいよと言われた時に今本当にやりたいことって、なにかあります?
野水:うーんなんだろう。いっぱいあるな…今は舞台がやりたいです。
――おー。まあ4月舞台あって。
野水:はい。
――東京きてはじめて?
野水:初めてでした。久々の舞台に立たせてもらったんですが、声優が主演をやるって周りの共演者さんは不安だったと思うんですよ。私は大御所でもないし。でも自分の名前が一番上に載ってるからにはこの短い期間で自分には何ができるだろうって考えながらやりました。お陰様で凄く高め合えるチームでやり切ることができて、いい評価を頂くことも出来て!
――結果オーライだったわけですね。
野水:舞台前にちょうど野水伊織のネガティブループが来て落ち込んでたんですよ。本当に自分のやりたいことってなんだろう、自分が望む自分の姿になれているのかとか…もやもやが凄くあったんですね。でも始まってみるととても集中してお芝居のことだけを考えることができて。やりきることができて自分の自信にすごくつながったし、またそれを支えてくれるメンバーが増えて、もっと色んな物を伝えていこうと思うきっかけになりましたね。
――あえてここはマネージャーさんに聞きますが、マネージャーからみて野水伊織に本当にやらせたいことはなんですか?
M:うーん。お仕事ですか?
――なんでもいいです。
M:共演者ともっと仲良くなってほしいです。
全:(笑)
――これは声優現場も含め全部?
M:全体的にですね。4月の舞台はものすごくいい雰囲気でやらせていただいて、なおかつ交友関係も広がったようなんですけど、もう少しだけでも一作品一作品でつながりを作っていければたぶん本人が今感じている現場でのプレッシャーや緊張感なんかはだいぶ薄れるし、やりやすくなるんじゃないかなとは思ってます。
野水:仲良くできることはできますよぉ!…なんていったらいいんだろう。
M:お仕事ってなると本人的にはスイッチが入るんですよね。
野水:それはありますね。
M:自分の演技だとか、役者同士の本番のキャッチボールだったりとかはもちろん真剣に取り組んでるんですけど、それ以外のものを極力触れないというか。自分の集中力を切らさないためかもしれないんですが、根本的に人に踏み込んでいくのが苦手なんだと思います。
野水:いや、あの女の子が苦手なんですよ。
――女の子が苦手?
野水:どう接していいかわかんないんですよ!現場でも男性声優さんの方が冗談を交えてお話してくれることが多くて、そうすると話しやすかったりするんです!女性でもそういう方とはお話できるるのですが、例えば「その服かわいいですね!」とかって言われると緊張してしまって…。
――男子中学生みたいですね。
野水:そうなんですよ!緊張するんです!(笑)このあとごはんいきませんかって言われても緊張しちゃって気をつかわせるのがわかってるから、なんか避けてしまうんですよ!緊張しぃなんです!tooシャイ、シャイなんです!
――シャイ(笑)脱却していかなきゃいけないタイミングなのかもしれないですね
野水:そうですね…だから現場で女性に話しかけてもらえると実はとてもテンションあがってるんです!
――じゃあもうせっかくなんで声を大にして、ちゃんと共演者の方にむかってお伝え下さい
野水:話しかけていただけると野水が喜びますので、たくさん話しかけてやってください!
――アピール成功ですね(笑)
M:自分からいかないっていうのがなんかもうって感じですね(笑)ぜひ自分から話しかけていってください野水さん。
野水:女の子と何話していいかわからない!
M:自分が話しかけられたらどうしてるんですか。
野水:「野水さん今日その服かわいいですね」って言われたら、「あ、そうですか、ありがとうございます、中身があれなんで、見た目だけでもかわいくしとこうかと思って」で終わっちゃうんです。
M:いや、どこどこでこの服買ったんですよ、とかあるじゃないですか。
野水:大概続かないから、続かないってことは向こうもしゃべりたくないのかなって思うと…!
M:続かない返しをしてるだけでは…?
野水:うううう
――自己啓発セミナーみたいな会話になってきていますが(笑)いずれにしろ周りが思っている以上に野水伊織は女性声優と仲良くなりたいと。
野水:そうです。なんか見た目が怖いんですかね私。
M:いや、不器用なんだと思いますよ。
――不器用なんでしょうねきっと
野水:事務所の社長も、私がおなかすいて静かにしていただけなのに、野水が体調悪そうだったって言ってたってマネージャーさんから後から聞いたり!直接言って下さい!(笑)
野水伊織さん
――そろそろ締めかなってところですが。二つ最後にメッセージをいただければなと思っております。一つ目は声優になりたいと思ってる、言い方かえれば昔アニメにあこがれていた野水伊織に今の野水伊織が何かメッセージを出すのであれば何を伝えますか?
野水:なんでもやってみることが大事だと思います。柔軟に飛び込んでみて、できない事があったらできるように努力すればいいだけなんです、ほとんどの事は努力すれば出来る事だから怖がらずにやってみることかな、それを伝えたいです。
――やっててつらいこともあるだろうけど、怖がらずにやる、と
野水:私のモットーは「はったり」なんですよ、北海道にいた頃「野水さんスケートできます?」って依頼があって、スキーは出来るんですけどスケートはやったことなかったんです。だから「やったことないですけど頑張ります」って答えたら母にすごく怒られまして…「なんで出来ないっていうの?出来ます、でしょ?出来ますっていって出来ないなら練習してきなさい」っていわれたんですよ。全くできないことを嘘ついてやれますっていったらご迷惑かけるんですけど、自分でやれませんっていうことってないと思うんですよね。足りないものだったらいくらでも練習なり勉強なりできるんだから自分の中でやれないって思うなって昔の私に言いたいですね。
――そしてもう一個の質問として、野水伊織って知ってるけど興味ないよとか、聞いたことないよ、って人に対して野水伊織が今なにか伝えるとしたら何を伝えます?
野水: 100人居て、100人全員に野水伊織が好かれることは絶対無理だと思うし、見た目がダメとか声質的に絶対むりとかあることだと思ってます。だからって努力しない訳じゃないけど、それで作品を見てもらえなくなるのはちょっと寂しいですよね。私もできるだけ頑張るので、まずは作品そのものに触れてほしいかなって。アニメが好きって思ってくださるならいろんなものに触れてほしいなって思います。その先で私に興味を持ってもらえたら嬉しいな、って。
――今回は歌のことはあんまり触れなかったんですけど、舞台もそうだしライブもそうですが、自分はこういう人間だっていうのを生で伝えると野水伊織がわかるのかな、って気がしますね。
野水:そういう意味では大きなステージも好きなんですけど、ライブハウスみたいな少し規模の小さいところでやるライブがものすごく好きなんです。後ろの方でもある程度顔が見えたりひとりひとり認識できるようなライブって伝わるものがより濃くなるというか、大きなステージでやるのとは違ったものが感じ取ってもらえるのではと思うので、イベントにしてもライブにしてもそういう場所でお会いできたら嬉しいです。
――いろいろ期待しておりますのでがんばってください。ありがとうございました。